ダークロウ(アスキー)


あのやうなものは一種の装飾品に過ぎぬ、と企画会議の段階でパッケージ士(そのようなジョブが果たして存在し得るかどうかは其々の会社の営業形態やら労働条件やらに準拠するもので御座いますが!)が熱弁されましたどうかはその場に居合わせました各々の胸の内にのみ懐疑的に刻まれて待ち受けビトたる消費者こと我々の知り得るところでは御座いませぬのでしょうが、そのやうな情景を心中に描写させかねないほどの所以は当作品でありますところの「ダークロウ」のパッケージングに染め上げられた闇と飾り気のなき素朴さでありますことよ?…いや簡単に申せば全体的に地味な印象を与えかねぬほどの渋さであり最初から購入層を絞り込んでいるようでもあり。まあ1997年という時世にスゥパァファミコムにて発売されているという事実を踏まえれば(かのプレイステエションにおかれます某大作のシリーズ7つ目よりも微妙に後であるという事実が!)必然的に遊び倒さんとするプレイヤーにもかなりの猛者であることを義務付けられていると考えられるかもしれません。まあ其処には蓋を開けてみなければ分からぬ玉手ボックスの如き事情もあり得るやも知れませぬし実は斯様に漆黒たるパッケージとは裏腹におてんば娘っこさん数人組がだ〜いかつやくっ☆する一幕もあり得るやも知れませぬのでたかが、ほんの、わずか、一欠けらであっても、希望は捨ててはならないんだよっ☆という一つの娘っこさん教訓三十六か条の内の一つに他なりません。カ?

…それはさておき本作「ダークロウ」、所謂シナリオ解決型のロールプレイングゲームでありまして、同系統のゲームとしてまず引き合いに出されるべきものはFC「ダークロード」やSFC「Wizap!」などで御座いましょう(本来は「引き合い」として出すべきものではないのでしょうが…)。更に古に遡れば「ソーサリアン」などを思い浮かべることも可能でありましょう。寧ろそもそものコンピュータRPGの源流たるテーブルトークRPGの風合いを思い出して頂ければ幸いでありましょうか。即ち各所で受託することのできるシナリオとしてのイヴェントを解決する毎に莫大なる経験値を取得することができ、時々起こりますところの戦闘での経験値は割と微々たるもの、というシステムであります。ならばサクサクと進んでイヴェントこなして稼げ稼げ稼げッ、とボーナスモードに洒落こみたいのも山々ですがそうは問屋が卸さぬわけでして、まず序盤のバランスが厳しいという問題が浮上してきます。っつーか厳しすぎるのでありますッ。例えばLv2に上げるまでに必要とされる経験値は一千五百。勿論最初のイヴェントをクリアすればかなりの経験値を取得できるのでありますが、それでも甚だ高セキュリティ設定としか言いようがありません。いやセキュリティとは関係ありませんが。

更に申せば序章を終えて街に着いた後に王より最初に得られる軍資金は50goldとごく僅か。これでパーティーの最大人数でありますところの3人分の装備を物価高なるシャノア・タウンにて揃えるというのは無理な相談ですヨ。まあこの突き放し具合が何ともまあ美味でありもう辛抱堪らぬわッ、というマニアックにしてマゾヒスティックであらせられるであろう人々には好ましく思われるところでありましょうか。更にこれまた「ソーサリアン」の如くに各々のパラメータに応じて職業が用意されており、Lvアップ時に収入を得ることができ(というより、この際とシナリオクリア時にしかまとまったgoldの収入がないンですが!)、そして更に特殊技能としての「スキル」が得られるのですが、このスキルがまたえらく重要でありまして、例えば「スクロール」のスキルがなければ魔法すら唱えられないというリアル志向(…なのでありましょうカ?勢いに乗って斯様に書き示してしまいましたが!)なのであります。そんなにLvアップの回数は多くないのに(大体Lv15程度でクリアできます)コレほどにまで職業とスキルがあるのはコレ如何に?と疑問符を「シュート」のスキルで投擲せざるを得ません。更にLvアップ時に恰も「ウィザードリィ」の如くにパラメータが下がることがあるときたもんだからこれは最早スパルタと申せましょう。果たして何の教育の為であるかは定かではありませんが。

また各種イヴェント内において状況を進行させ得る手順は殆どの場合ヒントのない総当り制。一応コンフィグ内で「状況」を知ることもできますが大抵はあてになりません。歩き回ってボタンを叩きまくって漸く手掛かりを発見、といった事例も少なくありません。このあたりは正にTRPG的と申せましょうが、何かと融通の効くゲームマスターとしての人間とは違ってこちらは石部金吉たるコムピュウタァ御老体(勿論性別については未確認で御座いますが!)でありますゆえどうにもならない今日なのです。いや別に今日一日とは限りませんが。

…そして最大のプロブレムとして挙げられるものは「Lvを上げすぎると本来起こり得る筈のイヴェントを受けられないことがある」というソレであります。重要なイヴェントが起こらねばバッドエンドに近付くばかりでしてコリャ困ったわい、と。つまり他のRPGでありがちなごり押しが全く通用しないのであります。兎に角近年のムーヴィー的(観客的とも申せましょうカ?)なソレらに慣れ親しんだ連中などには苦痛以外の何者でもないコレと言わざるを得ません。まあ私にしてみれば先のソレらこそがワードオブペイン(言葉だけとは限りませぬが!)なので御座いますがネ!

…つまり、簡単に言ってしまえば、万人にお勧めできる一作ではありません。かなりの難しさです。

ただ、これだけは申しておきたいッ!徐々に明らかになるストーリィの本質と演出は見事であるとッ!例えば序章から各種シナリオ、そしてエンディングに流れる一つのテーゼであるところの「死」と「運命」。それこそ既にしてソフトの副題として掲げられし「Meaning of Death」にも如実に示されているのでありますが、「デスクリーチャー」「邪神」「破滅」等の影がちらつき始める頃から俄然掘り下げられてゆきます(若干説明不足の感が否めない点もありますが、其処は其処、皆々様の想起でカヴァーして下さいナ!)。そして先に述べたイヴェントの不通過によるシナリオ、というよりエンディングの悪化もこの世界を知る上では見逃せません。その辺りの情趣を理解し得るプレイヤーに向けて送られたゲーム、と言えましょう。または「この手のゲームが本当に好きな人達が、同好の士に向けて送ったメッセージ」とも言えましょうか。売れ行きは兎も角として(本来ならば兎も角としてはならぬのでありましょうが!)、己の信念を貫き通さんとした開発スタッフには万感の拍手が捧げられて然るべきなのですッ(まあここらには多分に筆者の有り余るばかりの妄想も蔓延っておりますが!)。…ただ、この時世に、その迸らんとする熱い情熱(馬鹿馬鹿しい重複具合も溢るるパッションを指し示すものとして御容赦頂きたいッ!)を受け取ることのできるプレイヤーは、数少ない。それがこのゲームの不幸でもあり、ここ最近のゲームを取り巻く各種状況における不幸でもあるのかもしれません。そんなことを考えているのは私だけかもしれませんが…!

…「邪神の影」は、もうすぐ其処まで、迫っているのですヨ?(深遠そうで実は全くそうでもない科白を残しつつ幕引き!)


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