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ここでは私の研究手法を紹介したいと思います。大きく分けて、研究手法は3点あります。これもとあるところに提出した研究計画をベースにしていますが、頭の整理にもなりますので掲載しておこうと思います。最初に研究の大枠を述べておこうと思います。
0.研究の大枠
経済学の主流派と呼ばれる理論には「ワルラシアンオークショナー」が存在します。彼は全知全能です。全ての市場の価格をうまく上下させて市場の需給を均衡させ、均衡価格を設定してしまいます。更に、全ての市場で需給均衡を一致させるという大仕事を絶え間なく行っておきながら、彼は無償奉仕です。一銭ももらいません。非常にすごい存在ですが、非現実的な設定ともいえます。経済学を現実的なものに近づけるには彼を排除する理論が必要です。
そこでいろいろな方法が考えられる中で、ワルラシアンオークショナーの仕事を主流派経済学で想定されているような利潤最大化主体に任せようという動きがありました。その中で出てきたのが実物市場のマーケットマイクロストラクチャー理論であるといえます。なお株式市場のマーケットマイクロストラクチャー理論は問題意識として、根元的に株価はどのように決定されるのか、というものであるため登場文脈は実物市場とは軌を一にしません。株式市場の参加者達の行動関数を特定化すると同時に,市場の売買制度や規制等の市場の仕組みをモデルに組み込むことで株価形成メカニズムを明らかにしようしています。この点では理論をより現実的な方向に持っていこうという動きが見られ、その意味では実物市場のマーケットマイクロストラクチャー理論と同じスタンスであります。また、実物市場のマーケットマイクロストラクチャー理論は時期的に株式市場のマーケットマイクロストラクチャー理論より遅れて登場したもので、株式市場の理論から多大な影響を受けています。
株式市場のマーケットマイクロストラクチャー理論に対するコメントが長くなってしまいましたが、僕がやっているのは実物市場バージョンです。比較的新しく1980年代後半から徐々に登場してきた理論です。ここでは仲介業者が自らの利潤最大化を目指して需要と供給を一致させるように買値と売値を設定します。これはまさにワルラシアンオークショナーをモデル内に取り込んだものです。独占的仲介業者の場合は競争相手がいませんから、利潤をごっそり持っていきます。競争相手がいる複占の場合は、理論的にはラフに言ってベルトラン競争を行い均衡価格に落ちていきます。差別化された市場では半分独占のようなモデルになります。このようなモデルに関する研究は多く存在します。ただし、現在のところ新古典派ベースの理論研究が多いように見受けられます。
そこで僕は考えました。「それやったら理論の発展もする必要があるけど、理論発展の時に新古典派べったりではなくて最近の研究成果も入れたらおもしろものが出来るんと違うか?」それなら自分に出来る最新の研究成果は何だろう?・・・
そこで考えたのが理論研究を中心に計算機実験、被験者実験を織り交ぜた研究プログラムです。何でこう考えたかと言われるとなかなか難しいのですが、ひとつには僕の中で新古典派経済学べったりというのが嫌だという点があると思います。指導教官はマルクス経済学と学史、進化経済学ですし僕自身も少し変わったことをするのが好きだということがあると思います。新古典派を崩すにはいろいろな仮定をはずさなければならない。特に合理性ですね。それをはずしたときには人間のリアルな行動を実際に検証する必要があるでしょう。そうすることで理論との乖離度合いが測れます。さらには計算機実験で理論(=紙と鉛筆)では解けない(乃至は解きにくい)複雑なモデルを検討する必要もあるでしょう。
その意味で理論・被験者実験・計算機実験の3本柱が登場するわけです。
1.理論研究
「産業組織論」や「流通の経済学」の成果を用いるものです。この分野では前章で紹介したモデルの他にもさまざまな具体例を含んだものが発表されています。企業の立地競争モデル、広告や研究開発などの持続的な効果を扱った長期戦略モデルといった様々な例があり、これらは僕の研究に応用可能だと思っています。これは来年度特に中心に考えないといけないと思っています。しかし、理論研究で出来ることは限られています。人の手に負えない部分(特に計算の複雑さ、理論化の難しさ)も出てくるかもしれません。そこを次の計算機実験でカバーしていこうと考えています。
2.計算機実験の援用
計算機実験といっても新古典派マクロ経済学で用いられるような数値解析もあれば、エージェントベースシミュレーションなど多彩なものがあります。しかし、基本的には複雑で挙動の予想が難しいモデルに使用します。このようなモデルに対して遺伝的アルゴリズムや強化学習などを用いれば、仲介業者間の競争過程を研究することが出来ると考えられます。計算機実験の結果が理論の予想とは異なる結果をもたらすことも想定されます(低位均衡へのロックイン、協調の発生など)。さらに計算機実験は理論を検証する際にも使用可能であります。これはどちらかというと数値計算の側面を強く持つものだと言えます。
このように計算機実験は発見的な文脈でも、検証的な文脈でも様々な成果をもたらすものと考えられます。これも重要な柱として研究していこうと思っています。
3.被験者実験の援用
三点目は実験経済学との連携可能性です。実験経済学において深い蓄積のあるダブルオークションの実験では、実施された当初は市場均衡との乖離(例えばChamberlin[1948])を問題にし、その後は取引情報を共通知識にすることで市場均衡の達成が可能になると言う議論が展開されてきました(Smith(1962)など)。しかし現実の市場は価格や品質といった取引情報が市場参加者の共有知識となっているとは言えません。そこでダブルオークションに仲介業者を導入する実験が考えられます。というのは実際には買い手と売り手しか存在しない市場というのはあまり考えられませんから、財のやりとりを仲介する経済主体を導入する必要があるためです。仲介業者がいる場合といない場合で市場厚生や取引数を比較するといった実験が実施できると考えています。さらには実験経済学の結果を計算機実験で再現することを通じて、人間の行動と計算機のアルゴリズムや強化学習の比較を行うことも出来ると考えています。
実験自体は京都産業大学オープンリサーチセンターの協力を得て行います。
4.研究の帰結
これから考えます(笑)。ただ、仲介業者の役割って結構大事なので、それをもとに移行過程諸国などの市場経済に関する何らかの提言が出来るかなーと漠然と思っています。例えば、仲介業者がしっかりしていないので市場がうまく機能しないんだよ、とかでしょうかね。某先生のように「もう、見えてますわなあ」とか言わないでね。それ言われるととても悲しい。
その他:資料(どんどん増えていきます、多分)
Workshop2002 ・・・2002年1月の京都産業大学でのワークショップで発表した資料。パワーポイントになっています。ただしやっつけ仕事で作ったのでしょぼいです。