パートTではイギリスの教育をざっと紹介してきましたが、それがどんなに素晴らしい内容であろうと、
全ての子供達に等しく教育を与えようとするならば、必ずといっていいほどはみ出す者が出てくるのは
当然の現象ですよね。日本の教育に、いじめや校内暴力・不登校、挙句の果てには学級崩壊
や学校崩壊があるように、イギリスでも日本のような単線式教育ではなく、複線式できめ細かな
教育システムであるにもかかわらず、いじめや校内暴力は存在します。こういったことをする生徒
達に対してはイギリスでは、いくら指導してもダメな場合、彼らを学校から永久追放します。
統計では、イングランド地方だけでも、1994年と1995年の二年間で
12458人の生徒が永久追放になっています。そのうち小学生が16%を占めています。
みなさんは、いじめ・校内暴力・学級崩壊という言葉は知っていても、その具体的な内容は ご存知でしょうか?。ここではより理解していただくために、学級崩壊について 具体的な例をお話しましょう。学級崩壊の教室では先生が授業を行おうとしても、一部の生徒 から授業妨害を受けるみたいです。当然先生は注意しますが、生徒のほうは突然切れて暴れ出すしまつ。 先生は授業にならないといったん教室を後にします。そして職員室へ戻る先生の後姿に「何もたもた してんだよ。お前太ってんだからコロコロ転がっていったほうがはやいぞ」と浴びせるわけです。 ある生徒さんが、こんなことを言っておりました「あそこ(学校)は勉強する ところではない。門を一歩入ればそこは戦場だ」・・・いかにいじめのターゲットにならないか それが一番の心配事だったりするようです。もちろん全てのクラスでそういうことが起こっている という訳ではないんでしょうけれど、どのくらいの割合で学級崩壊が起きているのでしょうね?。
さて話を元に戻しましょう。イギリスの教育システムをお手本にして成功している国があります。
それはあの徹底的な能力主義で有名なシンガポールの教育システムです。ここでは、ちらっと
シンガポールの教育システムを見ていきましょう。
かの国では小学校4年終了時に語学と数学の共通テストが実施され、その成績の結果で5年生から
三段階能力別クラスに分類されます。そして小学校卒業時にはさらに小学校終了試験があり、
その成績をもとに
中等学校での能力別学級でどのクラスに属するかが決定されます。一番上のクラスだと大学行き切符を
手にしてますが、一番下のクラスだと職業学校の切符のようです。もちろん切符をもっているだけで
果して最後まで到達できるかは、それぞれにまた試験があったりしますから、難しいです。日本の
教育でしたら失敗してもやり直しがききますが、シンガポールでは一度失敗するとやり直しがきかない
という厳しさがあるみたいです。今のところ、シンガポールの教育システムではいじめとか学級崩壊
はないようです。とはいえシンガポールの教育に問題がないわけではありません。シンガポールは
多民族国家ということもあって、英語と母国語のバイリンガルを教育の中で強力に推し進めて
います。ところがバイリンガル政策は全ての人に有効という
わけではなく、どちらの言語も消化不良をおこしてしまってどっちつかずの児童もたくさん出て
きてしまっているというのが現状です。バイリンガルは全ての人がこなせるというわけではなくて、
それなりの能力があってこそなんでしょうね。
ドイツやスイスの教育もイギリスとはまたちょっと違うんですけれど、複線式の教育が行われて います。ですがどこの国においてもそれぞれに問題点があって、教育とはかくも難しいものなのかな って思います。たぶんこれからもどんどんと高度に発展していく文明の中で、今までの優秀性では 太刀打ちできなくなってきおり、さらにもっと優れた知的かつ道徳的レベルの要求があるのかもしれません。 その中で今まで世界に誇っていた日本の平等教育も足元からぐらついてきているのではないでしょうか。 とはいえ、素敵な社会とは、私のようなぼーっとした抜けた人間でも 楽しく暮らせる社会でなくてはいけないんですけどね。