もちろん、レオナルド・ダ・ビンチはご存じでしょ? 彼がどこへ放浪しよう
とも生涯決して手放すことのなかった有名な3枚の絵、その一つにモナリザが
ありますが、私がルーブル美術館で観て不思議に引きつけられた絵に「聖ヨハネ」
の肖像があります。聖人のはずの彼が上を指差してとてもエロティックな妖しげな
微笑みを浮かべながらこちらをじっと見ているのです。暗闇の中ぼっとした光の中に
上半身裸の絵です。私は思わずぞくっとしてしまいました(笑)。
この謎めいた、類型的な聖者のイメージとは異なるどこか淫欲的で女性的な表情と、
天を指差すポーズの中に、レオナルドは何を託そうとしたのでしょう。
エロスは本来は清らかで美しく汚れのないものだと思います。ただ人間の悪趣味や
悪意と結びつくから、いやらしくなったり、グロテスクになったりするのだと・・・。
本当は人はエロスに支配されて生きているというのにその自覚はあまりありません。
それどころかその誘惑をどこかで待ち望んでいながら、いざとなると怯えてしまう
のです。なぜかというと、日常生活に支障をきたしたり、自分が破壊しかねないという
不安があるため・・・。そういう意味ではエロスはとても危険な代物。とはいえ、
エロスの誘惑はいつだってどこにだってある。大切なのはどう誘惑から身を守るか
ということでは、きっとないような気がします。その答えは・・・そう、あなた自身で
見つけて下さいね。