時計仕掛けのオレンジ

時計仕掛けのオレンジ



少年アレックスは仲間と共に、日々、強盗、レイプ、殺人といった超暴力の限
りをつくします。ところが、仲間の裏切りにあって捕まり、14年の実刑判決を
受け、刑務所に送られるのですが、特別更生プランの実験に名乗りを挙げて、
わずか二週間で出所します。この更生プランとは、レイプとか暴力などとい
った衝動に駆られると、吐き気をもよおし、ストップがかかるというもの。実験
は成功したかのように見えたのですが・・・・・。この映画の題名「時計仕掛けの
オレンジ」というのは、更生させられてしまったアレックスを指しているのでしょ
うね。時計仕掛けのオレンジの「orange」というのは発音されないeをとって
並び替えたら「organ」になるのと何か関係があるのでしょうか?。

キューブリック監督は、人間が生まれながらにして持っているもっとも根本的な
衝動、攻撃欲と性欲というものを、生々しくも美しい映像で、スクリーンに描き
出しています。そして、更生させられてしまったアレックスに降りかかるいろん
な災難を通して、これらの衝動は人間存在の根底に横たわるものであって、
決して否定できるものではなく、それを否定できると思っている人たちの、浅は
かさ、愚かさ、滑稽さを、むしろ風刺しているかのようです。大切なのは、意志
による選択なのだと・・・。

ですが、キューブリック監督が映画の中でもっとも描きたかったことは、そんな
もの、つまり道徳やら常識とはまったく無縁のものです。むしろ、芸術の領域
にまでくい込んでいるのでは?と思えるほどしゃれています。芸術は本来気高
い。それ故芸術家は俗なものを恐れない。純真で無垢でわるで・・・こういうけ
なげさが究極のエロス的人間の凄みかもしれません。アレックスのように・・・。
そして、アレックスを通して、あなたの中に包み隠された何かがあるのよと、
ほのめかしているところがこの映画の凄いところかも・・・。




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