CHAPTER 2
 
「looter」  

 YEWのラットマンキャンプにリコール。今回は一人。いきなりラットマンが攻めてきたと思ったら、ついでにPKも攻めてきやがったガンガン魔法を浴び死亡ちくしょう!人殺し!  
 せっかく大枚をはたいて買ったマジック装備を全部取られる。なんてこった。しかし、どんな装備をすれば負けないようになるんだろうか?  

 気を取り直してもう一度行く。今度襲われたら回復ポーションを速攻で使うようにしなきゃ。  
 しばしラットマン相手に戦う。合間、yoshuaという人が魔法耐性をつけるために自分で出したファイアフィールドに飛び込んでいた。  
 そこまではよかったんだけど、なんと青い人(善人)がその人にファイアボールをぶつけた!yoshuaは体力が思いっきり減っていたため、すぐに死亡!そのblue PK平然とloot。  

 新しいシステムには「カルマ」と「名誉」というランクがあり、「カルマ」は今までの評判と同じようなもので、「名誉」は自分より強いものを殺すと上がる。評判より名誉を優先する人はカルマが適当に上がったところで人を殺し、名誉を上げるのだ。  

 近くにいた日本人が「殺すヤツも、殺されるやつもアホ、だな。今度のシステムはPKを助長するよな。っていうかさ、青いやつらでもPKになるから気をつけないといけないよ。オレが愚痴ってもしょうがねーけどさ」だと。  
 なんだかシニカルなヤツだなあ。バカ、アホを連発して喋る。イヤミな口調。適当に話を区切ることにした。  
 しかし、今日はPKが多い。襲われている人を何人も見る。うーん、これも新システムのせいなのか?  

 ラットマンが湧いた。ガンガン戦っていると、さっきのyoshuaが参戦。彼はPKされて装備がない。回復してあげたりして一緒に戦う。  

 そうしているうちに、間違ってyoshuaを攻撃してしまった!犯罪フラグが僕に立つ。yoshuaは「wtf(どういうつもりだ)」と懐疑の目。  
 謝ろうと思ったら、「looter!」と誰かが僕を攻撃してきた。違う、誤解だ!しかし僕には犯罪フラグが立っている。彼はどんどん矢を放ってきて僕の体力はどんどん減っていくポーションで回復。こんなことにポーションを使うことになるとは…。  
 走って逃げ、hidding(隠れ身)。僕に「looter!」と言った男が近くを通り過ぎる。どうやらやり過ごせたようだ。  

 しかし…。誤解を解けずに逃げることになった僕は、いたたまれない気持ちになったのだった。  

Guild wars  

 街の中を歩いていると、なにやら戦っている音が!?  

 その方向に行くと、人がわんさかたかっており、その中心で2人の裸の男馬に乗った男が戦っている。  

 先日「評判システム」がリニューアルされ、泥棒したヤツは犯罪フラグが立ち、そいつに攻撃してもよくなった。しかし、今回はそれとはまた違うらしい。泥棒風の格好の2人の男「Hakim」「Zodiac」非常に体力があり、鎧を着て馬に乗ったどこかのギルドマスター「DarkShadowKJ」を相手にひるまない。しかも一方的に攻撃している。彼らのギルドネームは「DIE」「死ね!」とはまたわかりやすい名前だな。  

 町中でのギルド同士の抗争ははじめてだ。新システムでは対立するギルドに宣戦布告をし、おおっぴらに戦うことができるようになったのだ!  

 ギルドマスターは小競り合いの末に街の外に逃げるが、2人組の男らは執拗に追いかける。僕も野次馬根性でそのあとを追う。他の見物人もぞろぞろと街の外へ!なんだかすごいことになってるぞ!  

 街の外でも激しい交戦!ファイヤーボールが飛び交い召還魔法で呼び出された「Blade spirit」が見物人を巻き込んで暴れまくる!「Blade spirit」はぐるぐる回転して見境無く切りつけケガ人続出だ!  

 結局、援護が多かったために「KJ」は死なず、「Hakim」と「Zodiac」は逃げてしまった。巻き込まれて死んだ人3人。  

 ギルドの概念が発展して戦争状態が明確になったことで、UOソサエティは中世のころのリアルな戦争を醸し出した。各プレイヤーはある思想を持って団体に属し、意思を持って生活する一兵士になりえるのだ。それも、生活も仕事も、すべてUO世界の中でシミュレートされる。  

 ここまでくると、UOはマジでヤバいバーチャルリアリティになってきたように思えてくるなあ。こんなにエキサイティングだと、ハマって抜け出せなくなる人ますます増えるってもんだ。  


再びオークキャンプ   

 ZEPHが「オークキャンプいくけど行く?」などと言う。   
 あのPKの渦巻く残虐地帯にまた行くってか?少し躊躇してしまったが、ここで行かねーと男じゃねぇ。SCOPも合わせて3人で行くことに。   

 ゲートでジャンプ!む、あれぇ?ここ、船で来なくても脱出できるんや!このあいだ困っていたオレってマヌケだったんや!なんや!なんや!   

 やはりPKは現れているらしい。いろんな荷物が散乱している。恐いのう。だけど今回は3人だから、少しは抵抗できるというもの。いつでもこいや!この鉄を頭の中に叩き込んでやるぜ!   

 奥にいくと、青い人(善人)がたくさんいる。ああ、今回はPKがきても大丈夫だな。こんだけいれば安心だ。だけどなんかさみしい。「すべてに困難うぉーーー!」っていう感じもするんだよね。   

 オークがいるいる。ヴァイ状況になるとZEPHが魔法をかけて回復してくれる。ZEPHは魔法を相当使えるようだ。「Thanks!」と言うと「当然だよ、仲間なんだからさ!」。おおお、感激!ギルドってスンバラシーぜ!仲間ってスンバラシーぜ!なんてこった、協力することの楽しさってこれかよぅぅ!   

 そんな感じでだべりながらオークを倒していると、けっこう金も貯まった。ちょうどいい区切りで脱出!   
 今日はギルドの面白さを1つ味わったなあ。   


銀行の前でなにしてる?   

 他のギルドの人とお話をしていたら、初心者の人が「なにしたらいいんでしょうか?」などと聞いてくる。「好きなことすればいいよ」と答えたが、やはり小目標を設定しないとダメか。とりあえず魔法を覚えたいというのだが、初心者だけに操作がわからず、話がいっこうに進展しない。他のギルドの人が一生懸命説明していたのだが、とうとうICQ(インターネットで有名なメール&チャットソフト)を使うことになった。   

 その初心者の登録名を見ると「さきっぽだけ」。さきっぽだけ?なにがさきっぽだけなんだ?「sakippo dake!」と叫ぶとみんな大笑いである。   

 ふと隣を見ると、裸の男女が。   
 おいおい、おめーら銀行の前でなにやっとんじゃあああ!   

 男の方が「aaaaaahhhhh!」と叫んだりして、銀行の前は騒然だ!   


入信   

 「最弱チーム」のギルドマスター「ZEPH」なる人を見つけた。   
 今度一緒にお供させてと声をかける。ZEPHは快くOKしてくれた。   

 その後、ペスパー銀行前でしのぶとZEPHを発見。SCOPという人もどうやら最弱チームの一員らしい。しのぶの紹介で入信することに。   
 実は、入るかどうか迷っていた。自分の家を建ててそこで自分のギルドを作ろうと思っていたのだ。しかし、やはり一人で冒険するのはなんかわびしい。PKどもに対抗できないし、強いモンスターとの戦いも苦しい。なにより、UOはネットゲームなのだ。コミュニケーションを促進しないでどうする!   

 ということで最弱チームの一員だ!ZEPHの家で手続きを済ませ、頭の上に「Fighter,saijaku TEAM」と表示されるようになった。うーん、なんだか嬉しいぞ。なんていうか、仲間がいるっていう心強さ?   
 日本人はよく「オレさあ、×××っていう会社にいるんだ。すげーだろ?」という集団帰属意識で自分を誇ることが多くて、個人としての自分を誇れないというが、この感覚ってもしかしてこれかいな?ちょっと違うか。   

 いやいや、余計なことは考えなくていいや。とにかくこれでみんなで冒険できるし、お話相手もできた。お友達探しの冒険第一段階終了