CHAPTER 7
 
全員集合   

 koteiがICQで呼びかけてきた。「今日はみんな早いうちから集まる。ninnin、joinのチャンスだ」。   

 ベスパーの前でkoteiと再会。すぐにauroraも現れた。これからギルドマスターの家にいきましょう、ということになった。…らしい。だってムチャクチャセンテンスの長い英語を話されるもんだからなにがなにやら。   
 とにかくgo with themである。   

 あっちゃこっちゃ走り回ったがなかなか家が見つからない。どうやら、マスターが現れる時間まで時間潰しをするようだ。途中、オークやらトロルやらが出てきてkoteiと共同で戦う。しかし僕が持っているのは木こり用の斧なのでさっぱりダメージを与えられない。モンスターのHPがなくなりそうになるところで、kotei「hit it(とどめをさすんだ),ninnin!」という。   
 うーむ、UOはもう1年くらいやってるのになんだか情けないのう。キャラが弱いのでショボショボだ。   

 auroraが先に行ってるから走ってきてね、と言ってリコール(ワープの魔法)で消える。koteiとガンガン走ることに。うおーなかなかつかないぞー。ときおりはぐれつつ、10分くらいは走ったろうか。半島の先端にその家はあった。auroraと再会。少しすると、とうとうギルドマスターjacomusが現れた。感動の対面である。   

 jacomusはなにやらいろいろ喋っているがチンプンカンプンである。あまり喋るのが多いわ早いわで、全然さっぱりちっとも意味不明こうなるともう外宇宙生命体とコミュニケーションしてるのとなんら変わらんとにかくギルドに入るための操作をいろいろ試してみて、うまくいったようだ。こんなんはアドリブだ!Oh yeah!   
 おそらく途中で「名前の横につくタイトルはなににする?」という質問があったのだろうが、答えなかったので勝手につけられた。「mystic of ninnin」というタイトルが表示されるようになった。   
 「神秘のにんにん」? どうせなら「God of」にしてもらえばよかったかな。でもそうしたらギルドマスターより偉いことになるので、みんな揃って「…」とかされたかも。   
 まあいいや、とにかく神秘だ! 神秘神秘! 衣装もギルドで統一されているスタイルにして、これで僕は晴れてメンバーになった。   
 なにやらもう1人メンバーが現れた。このギルドはどうやら僕を含め、今5人のメンバーで構成されているみたい。   
 入信が済んだところで、彼とjacomusで街に戻ることになったようだ。   

 koteiは僕を向いて「abunai」という。なにか危ないことが起こるのか!? それとも僕を危ないやつと思っているのか!? と思ったが、どうやら「気をつけて」という意味で言っているらしい。既にコミュニケーションは素人のバケツリレー状態である。   

 jacomus連れのもう1人(名前失念)はとてもきさくな人で、途中、倒したモンスターの肉を焼いてくれたり、お金を多めに分けてくれたり、鎧を作ってくれたりする。肉を焼いてるところで「mmmm,good smell」と成功したときのマネをしたら、談笑になった。日本語を教えたらかたことで喋るので面白い。   

 よし、面白くなってきたぞ。   

kotei   

 UOをやらない間にも、koteiauroraからICQが送られてくる。   
 「集まりがあるんで出ませんか? メンバーがみんな集まるんですよ」、という内容の英語。でも今はRL(real life)の方が忙しいのじゃ。しかも太平洋時間の午後6時、つまり日本時間の昼の12時に集まるという。テレホタイムでもないし、出れんよなあ。   

 そんな時、anikiという日本人メンバーが加わった。彼は英語バリバリらしく、集まりの報告をしてくれたりする。いい人そうだ。   

 ところでkoteiはかなりおっちょこちょいというか、元気というか、テンションの高いやつのようだ。   

 「HOHOIというやつにPKされた〜! damn(畜生)pissoff(しょーべんたれ)なそいつを見たらカタキを討ってくれ! それからおいらをおいていくなよ!」   

 「ブリテンのはずれの森中で死んで取り残されてるんだ、誰か助けてくれ〜!」   

 Xodusが仲間になりたいと言ってるんだ、どうかな?」。   

 とにかくなんかあると送ってくる。テンションで生きてるような人っているよなあ。楽しいけどね。   

ギルド・コミュニケーション(1)   

 RLで一息ついたのでUOをやることに。かなり久しぶりだ。   
 anikiがちょうどonlineになっているので会うことになった。   

 「Xodusという人が仲間になったそうですね」と聞いたら、「ああ、あの人はkendersというギルドスパイだったんだよ。だからすぐ脱退させられたよだって!? なんとスパイなんてもんが存在したのか! しかし、スパイってなにするんだろう。物盗んでバックレるとかかな。それにしても面白いなあ。   

 ベスパーの銀行前で待ち合わせ。   
 anikiがなかなか現れないなと思って待っていたら、ガンガンガン、ギンギンギン! 町中で戦闘が始まった!! うおーっ、またギルドウォーズかああ! 今回は馬に乗った連中がやたら大勢いて、ひとりの敵対勢力の男をブチ殺しにかかっている!   

 あんたら、そんな袋にみたいにしなくてもそいつ死ぬって! 囲まれて動けなくなってるじゃねーかよ! しかも剣でぶったたくやつの外側から弓矢で追い打ち! 死ぬ死ぬ、絶対死ぬ! もうあの男生きてる心地してねー絶対。   
 ほら死んだ!   
 ドロボーどもがたかって、あわれ素っ裸でポツンと取り残されるそいつ。エイメン。情けない姿を公衆に晒すのであった。   
 どうやら争っている片割れはUOで最大の勢力を持つというCoSの連中らしい。異常な数のメンバーが、ところせましとベスパー銀行を占拠している。こんなにも集まるとそら恐ろしい光景に見えてくるな。しかしほんとになんたる数だ…。   
 UOの中でAOEができるぞ、これは!   

 aniki登場。そばにはarcaneというタイワンの人が。この人もメンバーだ。なんだか、知らないうちにメンバーが増えてるなあ。しかもタイワン。国際色の強いギルドになってきたな。   
 とりあえずギルドハウスに行くことに。anikiがゲートトラベル(ワープホールを開いて移動する魔法)にチャレンジするも、なかなか成功しない。   
 どうでもいいが銀行の一角に裸の人がたくさんいる部屋が。なんじゃこりゃ!? そこのあなた、この人達をどうするつもりなんで?   

 結局、ルーンを使ってそれぞれリコールしてギルドハウスに行くことになった。   

ギルド・コミュニケーション(2)   

 リコール先はshrine。みんななにかを祈っている。   
 om…om…。これは日本でいうナム…ナム…だな。   

 ギルドハウスにつくと、前来たときにはなかった大きな家が立っている。どうやらここが新居のようだ。ちょうどkoteiがonlineになり、合流。みんなで記念撮影だ。   
 koteiは馬にまたがっていて、装備もかなり揃っているようだ。もうかなり強くなっている。なんか差がついちゃったな。オレなんて今持ち金4gpビガーだよビガー。乞食! ダンボーラー!   

 arcaneが眠いと言うので別れ、3人でブリテンのはずれにある森へハンティングに行くことになった。   

 リコールで到着直後、いきなりオーク2匹が襲ってきた! このアクシデントでkoteiとはぐれ、anikiと2人で行動。koteiを探しつつ、やたらめったら襲ってくるモンスターをハンティング。anikiはアイテムやらお金やらを全部譲ってくれる。「お金必要でしょうからね。気にしないで」。なんていい人なんだ! なんだか僕はこうしていつも人に与えられてばかりだな。   

 aniki「なんで英語がそんなに使えるの」と聞いたら、10年くらいアメリカで暮らしていたらしい。流暢なわけだ。故郷を2つ持つ人の心境ってどんなもんだろうか。   

 koteiからICQが。どうやらウィスプに戦いを挑んで負けたらしい。あのバカ強いウィスプにひとりで戦いを挑むとは…。なんだかkoteiテンション人生がまた炸裂という感じだ。どうしてそこまで高いテンションを維持してられるんだ? インド哲学でいうカファ体質のおいらにはさっぱりわからん。まったく矛盾律でありカオス的でありヒルベルト空間でありフラクタル世界。   

 そういやNETRPGやNET対戦ゲームは面白さがフラクタル的だ。無限入れ子構造だ。   

 koteiはまたICQを送ってきて「mayday、mayday、生き返って荷物を取ろうにもムチャクチャな数のモンスターに囲まれてて取れない、助けにきてくれ〜、mayday」とのこと。   

 「koteiらしいよね、場所わからないけど探しにいこう」と探し回ってると、スパイダーをガンガン叩いているところをあっさり発見。   

 この時点で「kindman」anikiのサポートで倒したモンスターのgpが既に1000も溜まっていた。アイテムも売り払えばいくらになるか…。   

 うーむ、協力することでこんなにもウィットに富んで楽しく効率のいい冒険ができるなんて。やはりUOの本質はここにあるんだな。   

ギルド・コミュニケーション(3)   

 お金も貯まりスキルも十分上がったので、ギルドハウスに戻ることした。   

 ギルドハウスにはauroraがいて、セッセと内装を整えていた。   
 挨拶をしたあとで、aniki内緒話を教えてくれた。   

 実はこの内装を整える作業が、家具の方向がランダムで決まるのでかなり面倒なんである。ここで事件が起こった。   

 anikiと一緒にkoteiがギルドハウスに入ったまではよかったが、koteiが手伝うと言って、勝手に家具の配置をめちゃくちゃにしてしまったんである。ここで夫婦ギルドマスターaurorajacomus大激怒「なんてことしやがるんだこのクソッタレ! おれのケツをなめろ! 母親とやってろ!」アメリカンジョーク風の文句の嵐になったことうけあい。   

 なんとかおさまったはいいが、結局罪ほろぼしとしてkoteiがlog(木の枝)をかき集めることになったのだった。普段は楽しいkoteあばれん坊ぶりがここで仇になってしまったなあ。   

 ところでこのGCMというギルドは、けっこうWASP的な雰囲気を感じる。WASPというのは、hite、nglo−axon、rotestantの略で、正当派アメリカ人の意。伝統的なマスターの全権掌握と、厳格な入党儀礼、そして敬意を重んずるギルドの風格。特にマスターに対する敬意の念は重要視されるようだ。ロールプレイと言ってしまえばそれまでだが、このかたくなな雰囲気は、NETRPGにおいて遊びの様相の境界をギリギリで越えないでいるという感じ。   
 メンバーはすでに23人になったようだ。これは、yamatoサーバーで10指に入る数らしい。   

 そのせいもあってか、auroraにはボスとしての風格が生まれている。そう感じる。見た目はそこらへんにいるキャラなのに。aniki「ギルドの所有物はすべて彼らのものなんだよ」という言葉も象徴的だった。モニターの上から眺める世界にあるそれは、なかなか不思議だった。   

 僕はこういう風情を生み出す構造が面白く感じられて、ギルドのメンバーと話すことでもっと知りたいと思った。   

 そこでaurora「I want speak to you.」と話したら、やたら誠実に受けとめられたらしく、「じゃあ座って話しましょう」などと言われ、anikiからも「なんだい、告白でもするのかい?」と言いたげなふうなことを言われるはめに。口語的な話し方がわからんとこうなるよなあ。   

 「あなたとお話がしたいからもっと英語覚えますよ」   
 「ありがとう、光栄です。わたしも日本語を覚えるわ」   

 そんな感じで話を終えた。   

 anikiが言う。「僕はこのギルドに入ってとてもよかったよ。ギルドの中の人間関係はとても面白い。koteiやaurora、jacomus、あと他のメンバー、面白い関係ばかりだ。一番エキサイティングなのは、人間関係だよ。そこから起こるいろいろなことが面白いんだ。ギルドの外にも、スパイなんてのもいたりするしね。今日はとても楽しかったよ。…ninninももっとUOをやる時間がとれればいいのに」。   

 僕はaurorakotei「Fare thee well.」と別れの言葉を言い、anikiにも「see you my friend.」と言って、今回のプレイを終えたのだった。