END CHAPTER
 
ナイスなふたり   

 UOには素っ裸の人がよくうろついている。これはもしかしたらストリップ願望なのか、いや、ヌーディスト願望か? みんなしてふんどし一丁である。   

 そしてわけのわからない話。たとえばこんな場面である。   

    
 ふたりの裸の王様はこんな話をしていた。   

 「おれら部族の王様。ヤリはおれらの命だから、肌身離さず持っている。王座に座るときももちろんさ!」   

 「いや、お前はただのみぐるみはがされたホームレスだ」   

 「違う、これは悟りを開くための正装なんだ。おれは王様であり、教祖なんだ」   

 「だけど金なくてほどこしを受けてるんだろう。それは間違いなくホームレスだ」   

 「違う、王様だ」   

 「ホームレスだ」   

 「お前こそホームレスだ」   

 どっちでもいいけど、おまえたちナイスだ。   

ギルドミーティング   

 週末になると jacomus から「ギルドミーティングに出ませんか」とICQが送られてくる。しかし日本時間の12:00にやるのでなかなか出られなかった。   
 今回はそのミーティングに初めて出ることにした。   

 ドバアと集まるかなー、なんてったって20人以上のギルドだからなー、と思ったら、少ししか集まらない。なんだ、あれは間違った情報だったのか?   
 しかし久しぶりに会ったメンバーは「oh,ninnin!」「ninnin,what's up?」などと喜んでくれる。ああ、こんなんだったら毎回出てればよかった。仲間がいるってのは嬉しいもんだな。   

 どうやら、今日はメンバーの即儀式のようだ。   
 「line up,ninnin.」。   
 なに言ってるんだ? ラインナップ? すぐにわからなかったが、どうやら「line up」というのは「列を組んで」という意味らしい。マジシャンの列に加わる。   

 しかしkoteiが動かない。どうやら回線が落ちているようだ。   
 しびれをきらしたメンバーのひとりが「kotei,what are you doing? eat this!!」などどとファイヤーボールkoteiドーン! 調子に乗ったみんながkoteiに次々とファイアーボールをぶつける。   
 オイオイ、そろそろ死んでしまうぞ!  

    
 回線の戻った kotei「what happen???」などと驚いている。ナイスだ。   

 今日はどうやら、anikiが金色のマントを貰ってknightsになるらしい。   
 といっても、ステータスになんらかの変化があるわけではない。しかしギルド内での地位が上がればメンバーへの影響力が増すわけだから、なかなか無視できないことだ。   
 しかしお気楽ギルドである。ゲームである。これがあるからって上下関係でギスギスすることなどはないのだ。そしてanikiはそんな権力などを振りかざさない人だ。   
 喜んで即位を祝福しよう。   

    
 即位式が終って解散。koteiなどとスパーリング(お互いに戦ってステータスを上げる)をすることに。   
 すでにステータスがMAXに近いkoteiファイアフィールドを広げてそれに突っ込む。これで魔法耐性をつけるのだ。   
 ガンガン減って行くkoteiのHP。オイオイ、そろそろまずいぞ、死んじゃうぞ!   

 「np(no plobrem),ninnin」。余裕をかますkoteiであったが…。   

 死亡。ほれみたことかkotei! いつも無茶しすぎなんやアンタ!!   

    
 みんなその情けない姿にあきれるのであった…。   

Happy holyday   

 今日はクリスマス当日。   
 やはりUOはクリスマス一色だ。銀行の前にはクリスマスツリーが置いてあるし、NPCは「Happy hoyday!!」と喋っている。   
    

    
 この木は持っていけないもんかなあと挑戦するが、やはりだめ。持っていけたらすでにないよな、そりゃ。   

 ん!? あの団体はなんだ? サンタの格好をした連中が大挙して攻めてくる! もしや暴走族の正月参りならぬクリスマス参りか! しかもサンタの格好でPKか!?   
    

    
 と思ったら、どこかのギルドのプレゼント配りらしい。なあんだ。   
 プレゼントを貰うと、中にはケーキにシャンパン、そして少々のお金と巻き物、クリスマスカード。   
    
    
 銀行の前にいる人達に次々とプレゼントを配り出す。すごい。なんていいギルド活動をしてるんだあんたら! 殺伐としたUO世界の中にも、こんなにwarmなことをする人達がいるなんて。   

 みんなはその和やかな雰囲気を与えてくれた彼らに、感謝の言葉を絶やさなかった。   
 「Happy holydays to you too!」。   
    

 追放   

To Creator :   
   You are rude and a pig inconsiderate and a jerk you art banned from GCM go your own way. I read you letters to everyone else and it is amazing to me that even sum have listened to your ramblings. GCM will no longer need your services. short and straight to the point i think good bye.   
Jacomus   

To Creator :   
 あなたの無礼で思いやりのないふるまいをGCMは禁止する。私はあなたが他の皆に送った手紙を読んで、あなたの支離滅裂な行為に驚いた。GCMはもはや君の奉仕を必要としない。短く率直に要点を言えば、君の追放を考えている。   
Jacomus   

 いきなりこんなICQが送られてくる。しかしCreatorとは? ゲームクリエイター(と自分を呼ぶにはおこがましいのだが)としての僕のことか?   
 僕はメンバーにメールを出した覚えはない。しかしjacomusのこの檄文は由々しき事態だ。僕にも送られてきているのだから、メンバー全員に送られているはず。   

 いったい誰のことを言っているのか。もしかして僕が変な英語で失礼なことを言ってしまったのか?   

 気になるのでkoteiに聞いてみると、これは「Creator」という名前のメンバーに対する警告文らしい。どうやら、影でいろいろjacomusの悪口を言っていたということらしかった。   

 普通に考えれば、jacomusもひとりのプレイヤー。UOに参加しているプレイヤーは、プレイヤーキャラのレベルは違えど、立場上はなんの上下関係もない。Creatorはそこをついて不平を言っていたらしい。   

 しかしUOはいわばごっこ遊びなのである。みんな、それを分かってマスターにdonate(寄付)をしたり、集まりではマスターを中心に動いていたりしたのだ。   
 それを分からずに悪態をつくなんて、大人げないといえば大人げないが、Creatorはもしかしたらまだ年端のいかない子供なのかもしれない。   

 しかしギルドではいろいろあるもんだが、こんなメールがおくられてくると生々しさ爆発だ…。そのうちこの「Creator」は追放されてしまうのだろうな。   
 どうしたもんか人間関係!まったく世の中は渋い…。   

 数日後、事態は予想以上に悪化した。   

 かなりの人数の人がGCMから自主脱退したとのメールが、koteiから送られてきたのだ。そしてkoteiまでもが脱退したらしい。Creatorの除名を発端にして、揉め事に嫌気がさした人達が抜けたようだった。   

 「ninnin、君はどうするつもりなんだ? そしてanikiは?」   

 どうするったってな…。こういう遊びで集まった人同士は集まるのも早いが、分裂するのも早いのか。   

 とりあえず、koteiに会ってみることにした。   

Ever Quest   

 ベスパー銀行の中でkoteiarcaneに会う。   
 事情を聞いてみた。   
    

    
n「どうしてGCMを抜けたんだ?」   

k「creatorは友達なんだ。だから彼とはたもとを分かちたくない。jacomusには悪いけど、僕はcreatorの作ったギルドに入る」   

n「jacomusにはもう抜けると言ったのかい」   

a「ああ、ICQを送ったよ。jacomusは僕らのことを怒ってはいない。君たちの無事な冒険をクレッセントムーンに祈ると、そう言っていた」   

n「そうか…」   

k「ninninはどうするんだ? もうたくさんの人達が抜けてしまった。よかったら、僕らのギルドに入らないか」   

n「…少し考えさせてくれないか」   

k「わかった」   

a「ところでanikiの意見はどうなんだ、kotei」   

k「わからない。彼とはもうしばらく会っていないんだ。どうやら仕事が忙しいらしくてね。ninnin、これからどうする? 狩りにでも行くかい?」   

n「いや、僕は用事があるから落ちるよ」   

k「そうか。じゃあまたね。いい返事を待ってる」   

 友達だから、か…。付き合いの深さで選択が決まる、か。わからんでもない。   
 だが、Creatorが無礼なメールを送ったという、この事実をkoteiはどう解釈しているのだろう。現実を優先した、そういうことなんだろうか。   

 Creatorのギルドに入るのは別にいい。しかし僕はUOからかなり離れていた。一ヶ月に1回やればいいくらいになっている。目的なくぶらついて終る、そういうことが多くなったからだ。   
 こんな状態でギルドを移るだのは、なんだかどうでもいいように思えた。   
 そんなとき、またkoteiからメールが送られてきた。   

 koteiはなんでも「Ever quest」という別のネットゲームに移るから、UOはやめるという。理由は、GCMの事件とは一切関係なく、端にベータテストから参加していて面白かったかららしい。   

 「Ever Quest」は3DタイプのネットRPGだ。日本ではまだ売られていない。   
 「EQにこないか、ninnin!」koteiは言う。   
 「Ever Quest」、過ぎし日の探求…。   

 UOはコミューンが構築されるゲームとして、一世を風靡した。しかし僕はここでゲームの上で「世界を作る」とはどういうことなのか、そういう疑問を抱かざるを得なくなった。   

 UOで経験した世界は、確かに豊かなものだった。温かみもあり、争いもあり、混合玉石の複雑な物語がどんどん生まれ、それはかつてない面白さだった。コミュニケーションは現実世界にも拡大するほどだった。   

 だが、ここで出会う人間関係は思ったよりも稀薄なままなのだ。うわべのまま。直接面と向かって会う人々のレベルまでいかないのだ。相手を知ることすらままならない。   

 ネットゲーム上の出会いは、優秀な対戦相手を探したり、多様な展開のある場を求めて、一時的に集まるに過ぎない。ここでの人間関係も、やはり余興の延長にすぎないのかもしれない。   

 このレベルを超える世界を作るとしたら、どういう世界を作ればいいのか?   
 NETRPGとは、どういう方向に進むべきなのか。   

 これを解決するには、ヒトを知ること、これが必要なんだろう。   

To be continued...