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アエリータ
АЭЛИТА

[かいせつ]
 ソビエト文学の巨匠アレクセイ・トルストイが、亡命先から帰国して1924年に発表したSF小説「アエリータ」の映画化で、実質的にはソビエト初のSF映画。革命直後、ソビエトが外圧と内乱のため非常な困難に直面していた時代を背景にした作品で、衰弱し滅び行く火星の文明と若いソビエトになぞらえた地球とが比喩的に対比され、当時の社会のパロディや調刺も横溢するものとなっている。
 主人公ローシをめぐるメロドラマやその演技には革命前の心理ドラマの徴候が見られたり、また、兵士グーセフやその妻の形象は非常にリアルに描かれるなどスタイルは混然としているが、それはそのまま20年代のソビエト映画の現状を反映するものであった。
 監督のヤーコフ・プロタザーノフはロシア時代から既に「セルギー神父」(1918)など80本もの作品を撮っているが、1920年、海外に亡命し、パリとベルリンで6本の映画を製作した。(この中には、当時プロタザーノフのアシスタントとして働いていたルネ・クレールが出演した作品もある。)その後、1923年に帰国し、初めて製作したのがこの作品であった。やがて、斬新なテーマ、そして風刺に富んだ機知とユーモア溢れる作品の数々を生みだしてコメディ映画の作家としての地位を不動のものとした。この作品でも、地球文明と火星文明の対立という本来ならば哲学的ともいえる物語を技師とその妻をめぐる大衆的な恋愛喜劇というパロディに構成して、後のプロタザーノフの片鱗を窺わせるものがある。
 この映画の構成主義美術家による装置、衣裳、メーキャップはロシア・アヴァンギャルドの光芒を伝えて美術デザインとしても、映画の美術、とりわけSF映画のデザインとしても先駆的意義を持っている。美術は初め、舞台装置家イサーク・ラビノヴィッチ(1894〜1935)とモスクワ芸術座の美術監督ヴィクトル・シーモフ(1858〜1935)が、緻密かつ滑らかで幾何学的な多面体で構成された火星の舞台のモデルを作ったが、監督はこれを却下した。(おそらくこのモデルが白色で構成されていたため、それが多面体であることをスクリーンに表現するには、当時のフィルムの感度や撮影技術では困難な問題があったのではあるまいか)そこで、美術監督のセルゲイ・コズロフスキー(1885〜1962)は、二人のデザインをもとに当時の舞台美術の影響を思わせる抽象的なものと現実的なものを混合させたものを作った。また、衣装デザインは構成主義の女性美術家A・エクステルが担当した。
 技師ローシと無頼漢のスピリドノフの二役を演じたのは、1914年設立のカーメルヌイ劇場の俳優で洗練されたデカダンスが売り物のニコライ・ツェレテリ。火星の女王アエリータには、同劇場の女優で、後にはアレクサンドル・ドヴジェンコ監督夫人として、さらには女流監督としても名をなしたユーリヤ・ソーンツェワが扮して映画デビューした。赤軍兵グーセフのニコライ・バターロフもこの作品がデビュー作で、その後「人生案内」などにも主演することになった。

[あらすじ]
 火星ロケットの設計に没頭する若い技師ローシは、あこがれの星での生活を想像することが多かった。その上、この地球での生活の何と煩わしいことか。寒さや飢え、それに新妻に言い寄る隣家の男……。ある日、ローシはつまらぬ口争いから妻をピストルで射ってしまう。もう一刻も早く、ここから逃げ出さねば……。
 いよいよ火星に向けて飛び立つことになったローシに同行するのは復員した赤軍兵で、火星での革命を夢みるグーセフと、妻殺しの犯人を追う刑事である。
 さて、火星は女王アエリータと大臣トゥスタブが権力闘争の真最中だった。アエリータに魅せられたローシは、トゥスタブの策略によって同行の二人とともに投獄されてしまった。一方、グーセフは獄舎に繋がれた火星の奴隷たちを煽動してついに反乱を起した。
 まさに反乱が勝利せんとする時、アエリータは地球人、ローシを裏切った。絶望するローシ……。その時、ローシは夢から醒めた。全ては夢のまた夢であった。そして妻も無事で、彼女がローシの貞節な妻であることもわかった。

[スタジオ/製作年] メジラプポム・ルーシ 1924年製作

[スタッフ]
原作:アレクセイ・トルストイ
脚本:アレクセイ・トルストイ
    フョードル・オツェフ
    A・フアイコ
監督:ヤーコフ・プロタザノフ
撮影:ユーリー・ジェリャプジスキー
    エミール・シューネマン
美術:セルゲイ・コズロフスキー

[キャスト]
アエリータ:ユーリア・ソーンツェワ
技師ローシ、友人スピリドノフ:ニコライ・ツェレテリ
ローシの妻、ナターシャ:V・クインジ
グーセフ:ニコライ・バターロフ
グーセフの妻:V・オルロワ
刑事:イーゴリ・イリンスキー
山師、エルリック:P・ポーリ
トゥスクブ:K・エッゲルト

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / モノクロ / サイレント
[上映時間] 1時間24分
[VIDEO] IVCV-3093S アイ・ヴィー・シー

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