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愛の奴隷
РАБА ЛЮБВИ

[かいせつ]
1976第5回テヘラン国際映画祭「黄金の牛」(最優秀監督)賞
   第13回イニル国際映画祭審査員特別(撮影)賞受賞

 歴史が世紀末から新しい時代に変わり、ロシアが革命の嵐のなかで変貌しつつあった頃、映画もまた、革命の時代にふさわしい新しいドラマを求められていた。南ロシアの無声映画のロケ地を舞台に、女優とカメラマンの悲恋を通して、時代の嵐に翻弄されながらも新しい愛と人生に目ざめゆく女性を描いたミハルコフ監督の長編第二作である。
 この作品は、瑞々しい映像感覚、滅びゆく階級の残照を表現した幻想的で美しい画像、そして巧繊な演出で、ソビエト映画に新しい世代の登場を印象づけ、世界各地で激賞を受け、監督ミハルコフの名を内外に不動のものにした。
 以後も"ミハルコフ組"として活躍めざましいカメラのレベシェフ、美術のアダバシャン、加えて、ミハルコフと共にモスフィルムのニューウェーヴを担った監督ロジオン・ナハペトフが共演するなど、70年代に胎動を始めた若い世代の映画人達の才能と熱意が結実した作品となっている。
 また、時代の嵐に翻弄されながら自らの意志で羽ばたき、新しい愛と人生に生きる女へと生まれ変っていくヒロイン、オリガを演じて"東のグレタ・ガルボ"(仏、"ル・マタン")と絶賛されたエレーナ・ソロヴェイ(以後「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」「オブローモフの生涯より」などのミハルコフ作品に出演)、アレクサンドル・カリャーリギン、オレーグ・バシラシグィリらの演技派が出演する。
 脚本を監督の兄コンチャロフスキーが担当、監督自らはカフェの主人イワン役で出演しており、作詩は監督の母ナタリヤ・コンチャロフスカヤが手掛け、芸術一家の面目躍如たるものがある。
 なお、ミハルコフ監督によれば、オリガ・ヴォズネセソスカヤは監督が考え出した人物で、特にモデルはないそうである。だが一部に映画史上に残るグェーラ・ハロドナヤと彼女のパートナー、ウラジーミル・マクシーモフの名コンビを想像するむきもあるが、彼らの実像と符合するところは、この映画の主人公たちには何もないとのことである。
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[あらすじ]
 1918年、秋のロシア。革命が映画界をも揺るがしつつあった頃である。映画企業は新しい映画を求める観客の意向を無視したまま、相変らず「泥まみれのベラ」「ギロチン台の娘」「愛と竜」などの残忍なメロドラマを製作していた。
 監督のカリャーギンやプロデューサーのユジャコフ、女優のオリガ・ヴォズネセソスカヤは良識あるインテリだが、政治には無関心で、革命を理解しようとはしない。彼らは革命のモスクワを逃れ、南部の黒海沿岸の小さな町に移って撮影を続けている。
 オリガはすでに高名な女優だったが、ブルジョア映画の旧習に縛られ、演技もセリフも当時の無声映画の決まりきった様式に染まっていた。まるで自分が演じている「愛の奴隷」のヒロインの如く、男の意のままに動く、まやかしの人生を送っていたのである。しかも撮影現場にはフィルムが届かず、撮影はずっと中断されたままである。オリガはむなしくリハーサルを繰り返しながらもいらだちをつのらせていた。相手役のマクサーコフもいっこうにモスクワから到着しない。監督はなすすべもなく狼狽し、プロデューサーは代役の俳優を物色し始めた。オリガはついに、マクサーコフ以外の役者とは共演せぬと自ら宣言した。この時に至っても冷静なのはただひとりカメラマンのポトツキーだった。
 ポトツキーは密かにオリガを愛していた。オリガの心はモスクワにあり、マクサーコフの到着を待ち恋がれていたのだが、ポトツキーの誠意を見落しはしなかった。やがて毎朝、ポトツキーと連れ立ってドライブを重ねるようになったオリガの表情に明るい輝きが差すようになる。
 そんなある日、オリガはポトツキーが共産党員であることを確かめようとする。彼はそれを否定しなかったばかりか、いま周辺で起っている事柄を彼女に理解させようとした。 オリガは敢えて耳を貸そうとはしなかったが、すでに自分がまつりあげられたアイドルでしかないことに気づいていた。かの女は押し寄せるファンに向って叫ぶ「わたしは普通の女です!」。
 オリガはある時、ポトツキーから非合法フィルムを預かる。撮影現場にはしばしば、フェドートフ大尉が率いる憲兵隊が共産党員や非合法フイルムの捜索に現われたから、彼女が嫌疑を受けないはずはなかった。いや、殺される危険すらあった。−−殺されるかも知れないような仕事をするなんて素晴らしい!−−彼女はもう、何も恐れなかった。
 そして飢えた子供たちや逮捕者を処刑する残虐な憲兵隊を映したその記録フィルムを見て、彼女は衝撃を受け、初めて真実に目ざめる。強い衝撃と不安のなかで、オリガの胸に熱く燃えあがるポトツキーへの思い……
 だが二人が深い愛を確かめ合ったのも束の間、ポトツキーはオリガの眼前で、憲兵隊に射殺されてしまう。
 …それからほどなく、オレンジ色の朝焼けの地平に、騎馬憲兵に追われる、オリガが乗った電車の影が静かに消えた。

[スタジオ/製作年] モスフィルム・1976年製作

[スタッフ]
脚本:アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー
    フリードリフ・ゴレンシュテイン
監督:ニキータ・ミハルコフ
撮影:パーヴェル・レベシェフ
美術:アレクサンドル・アダバシャン
    アレクサンドル・サムレキン
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ

[キャスト]
オリガ:エレナ・ソロヴェイ
ポトツキー:ロジオン・ナハペトフ
カリャーギン:アレクサンドル・カリャーギン
ユジャコフ:オレーグ・バシラシヴィリ
フェドートフ:コンスタンチン・グリゴーリェフ

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー / 全10巻 2560m
[上映時間] 1時間33分
[VIDEO・DVDなど] DVD = IVCF-2232 (I.V.C. 2003/08/25)
 VIDEO=IVCB-7084 DVD=IVCF-87 アイ・ヴィー・シー

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