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アパショナータ
АППАССИОНАТА

[かいせつ]
 “アパショナータ”(熱情)は作曲家べートーヴェンのピアノ・ソナタの名曲である。ロシア革命の指導者ヴラジーミル・イリイッチ・レーニンは、音楽を愛し、ベートーヴェンを愛し、なかでもこの“アパショナータ”を愛した。
 この映画は、 レーニンの生涯の中の革命後の厳しい情勢のなか、彼がマクシム・ゴーリキイの家で、当時、全ヨーロッパを席巻したピアニスト、イサイヤ・ドブロヴェインのひく“アパショナータ”に耳を傾けたエピソードを描いている。
 闘争によって幸福をかちとるというベートーヴェンの思想は、レーニンにとってきわめて身近いものであった。そしてレーニンとベートーヴェン、とくにその“アパショナータ”との結びつきは、この偉大な革命家の精神と人間性のゆたかさを端的に物語ってくれる。
 レーニンには、モスクワ芸術座の舞台で、 「クレムリンの鐘」 「第三悲愴」などのレーニン役を演じて絶讃を博したボリス・スミルノフが扮し、イサイヤ・ドブロヴェインには、撮影当時、ソ連音楽界の第一線で活躍していた名ピアニスト、ルドルフ・ケレルが抜擢
された。またゴーリキイ夫人エカテリーナ・ペシュコーワを演じるのは、ヴァフタンゴフ劇場の女優ダーリヤ・ペシュコーワだが、彼女はゴーリキイの孫娘にあたる。演出は新人のユーリイ・ヴィシンスキーが担当した。

[あらすじ]
 1920年10月。革命につづく反革命軍との戦いに、モスクワにも飢えが迫っていた。その雰囲気に似つかわしいかのように、秋空は陰うつな雲がたれこめ、荒涼とした風のひぴきが人々の耳をさびしくうつ。あたかも、そのひぴきを消し去ろうとするかのように、ベートーヴェンの“アパショナータ”その力づよい調べが流れてくる。
 マクシム・ゴーリキイの家。ピアノにむかっているのは、全ヨーロッパを征服したといわれた名手イサイヤ・ドブロヴェイン、そしてゴーリキイとともに耳を傾けるのは、世界最初の偉大な革命家レーニン。
 レーニンはゴーリキイにいった。「私は“アパショナータ”よりすばらしいものを知らない。毎日でも聴きたいと思う。すばらしい!この世のものとは思えない音楽だ。私にはほこらしげな気分、多分素朴にほこらしげな気分にさせてくれる――何と驚くべきものを人間は創造できるのだろう」
 “アパショナータ”のきびしい施律がつづく。その調べがレーニンの心に、一連の思いや感情をかきたてた。このようにすばらしいハーモニーをつくり出すことのできる人間、その創造的な天才を知るよろこび、人間の無限の可能性への信頼のよろこび。
 レーニンはロシアを訪間した英国の作家H・G・ウェルズのことを思いだした。ウェルズは、「ロシアの未来は暗い」――と予言した。いまレーニンは“アパショナータ”に耳を傾けながら、心のなかでウェルズに反論する。「いや、ロシアの未来には暗黒ではなくて、明るい電気の光と花開く人間の才能がある」 と。
 そして戦いによって幸福を達成するという、ベートーヴェンの力づよい主題が、ドブロヴェインのピアノの弦からあふれ、レーニンの心をゆさぶりつづける……………。

[スタジオ/製作年] モスフィルム・1963年製作

[スタッフ]
監督:ユーリイ・ヴィシンスキー
脚本:デ・アフィノゲーノフ
   エム・アンチャーロフ
   ユーリイ・ヴィシンスキー
美術:イサーク・シュピーネリ

[キャスト]
ヴェ・イ・レーニン:ボリス・スミルノフ
マクシム・ゴーリキイ:ウラジーミル・エメリヤーノフ
イサイヤ・ドフロヴェン:ルドルフ・ケレル
エカテリーナ・ペシュコーワ(ゴーリキイ夫人):ダーリヤ・ペシュコーワ
運転手ギーリ:エム・ベルネス

[ジャンル] 中編劇映画
[サイズ] 35mm / 黒白 / スタンダード / 5巻
[上映時間]
42分
[日本公開年] 1964/10/26 第2回ソビエト映画祭(東京・有楽町読売ホール 10/29新潟・松竹大竹劇場)にて上映

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パンフレットソヴェート映画史−七つの時代
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