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ペェター・セルギー
(セルギー神父)
Отец Сергий
Pater Sergius

[かいせつ]
 文豪トルストの原作「セルギー神父」を忠実に映画化した作品である。これは、文学を映画化したロシア映画として、最初に成功した作品であり、同時に帝政ロシアの終焉を記念する作品ともなった。帝政ロシア期には、王室、教会、修道院などをモチーフとした映画を製作することは禁じられていた。監督のプロタザーノフは、自作の「スペードの女王」(1916)を撮影中からこの作品の映画化を望んでいたが、教会を破門されたこともあるトルストイのしかも教会を批判的に描いた原作を取り上げることは、帝政下では無理なことであった。1917年の2月革命によって帝政が崩壊し、その直後からこの映画は、撮影が開始された。映画は、この年のうちに完成したが、公開は10月革命後の1918年5月であった。
 プロタザーノフ監督のそれまでの活動の集大成ともいうべきこの作品は、批判的リアリズムをロシア映画にもたらしたものとして映画史に輝いている。また、主演のイワン・モジューヒンもこの作品によって、ロシア映画を代表する俳優としての地位を確立した。女地主マコーフキナを演じるナターリヤ・リセンコ(ナタリー・リセンコ)は、モジューヒン夫人である。
 この作品の後、革命から逃れようとした映画人たちはクリミア半島のヤルタに移って、映画製作を行っていたが、1918年の末、ナターリヤ・リセンコが、赤軍兵によるあらぬ嫌疑で投獄された。これがきっかけとなって、夫のモジューヒンも含めたエルモリエフ・プロダクションのメンバーが会社ごとフランスに亡命することとなった。この時、プリントも持ち出され、ロシア映画が世界中で上映されることになった。この映画も、ドイツのビッキンガー映画の配給作品として日本に輸入された。

[あらすじ]
 1800年代の半ば、ニコライ1世治下のロシア。近衛士官のスチェパン・カサツキーは、皇帝の覚えも厚く、コロトコフ伯爵の娘メリーと婚約して上流階級への階段を昇ろうとしていた。しかし、そのメリーがニコライ1世の愛人であったことを知ったカサツキーは狼狽する。結婚式も目前となった頃、彼は職を辞して修道僧となった。
 世俗を捨て、欲も捨てたはずであったが、欲望がカサツキーをしばしば襲う。彼は修道僧としての勤めに一生懸命になることで、欲望を振り切ろうとした。それでも、欲望は捨てきれなかったが、教会は、カサツキーの働きを認め、セルギーという名を与えて一人前の聖職者とした。
 セルギーは、山深い僻地の僧院へ移る事を願い出た。修道僧の他は、ほとんど人も訪れることのないその僧院で数年が過ぎた。煩悩を断ち切れた訳でも、悟りを開けた訳でもなかったが、俗人との接触を断ったことで、少しばかりの心の安らぎを得たような気がしていた。
 しかしそこへ、遊び心でセルギーを誘惑してみようと考えた女地主のマコーフキナが現れた。マコーフキナは道に迷い、病気になりそうだと偽って、セルギーの草庵に入り込む。そして、一心不乱に祈りを捧げるセルギーを誘惑した。思い余ったセルギーは自分の指を斧で切り落とし、迷いを断とうとした…
 自分の思慮のなさを悟ったマコーフキナは、修道院から逃げ去り、その後、尼僧となった。そして、また年月が流れた。
 ある時、修道院を訪ねて来た母親に頼まれて、その息子のために祈祷をした。その息子は重い病気を患っていたのだが、それから暫くして元気になった。その事が噂を呼んで、セルギーの祈祷を受けようとする人々が、各地からやって来た。セルギーは聖人扱いされるようになって、修道院もセルギーを種に寄付をたっぷりと集めた。
 さらに数年が過ぎた。セルギーも老境に入ろうとしていた。そして、自身も自分が聖人ではないか、とも思うようになっていた。そんな頃、年頃の娘ユリヤを連れて年老いた商人がやってきた。精神を病んでいるというユリヤを夜更けに庵に呼ぶと、彼女は豊満な身をセルギーに任せた。翌朝、早く、ユリヤを寝床に残したまま、セルギーは修道院から逃げ出した。
 数ヵ月後、物乞いに身をやつして村から村を渡り歩いていたセルギーは、無宿人として捕らえられ、シベリアへ送られた…

[スタジオ/製作年] エルモリエフ・プロダクション 1917年製作


[スタッフ]
原作:レフ・N・トルストイ
監督:ヤーコフ・アレクサンドロヴィッチ・プロタザーノフ
脚本:アレクサンドル・ヴォルコフ
撮影:N・ルダコフ
    A・ブルガーゾフ
美術:V・バルザック

[キャスト]
スチェパン・カサツキー:イワン・モジューヒン
女地主マコーフキナ:ナターリヤ・リセンコ
ニコライ1世:ウラジミール・ガイダロフ
商人の娘ユリヤ:ヴェーラ・オルロヴァ
ピョートル・バクシェイエフ
ニコライ・パノフ
V・ドゥジェンネーヴァ

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / 黒白 / 無声 / 6巻
[上映時間] 1時間19分

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パンフレットソヴェート映画史−七つの時代

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