特別寄稿

 ロシア映画社刊行『ソヴェート映画史 七つの時代』の出版記念パーティーがモスクワで開催されました。参加された翻訳者の扇 千恵さんからこの時の様子を伝える原稿をいただきましたので、掲載させていただきます。
ルスタム氏から祝杯を受ける
パーティ風景 モスクワでの
ソヴェート映画史

七つの時代

出版記念パーティー
祝辞を述べるロシア映画人同盟の議長ルスタム・イブラギムベコフ氏とロシア側パーティ出席者たち
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 ネーヤ・ゾールカヤ著『ソヴェート映画史−−七つの時代』日本語版(ロシア映画社刊)の出版記念会が3月22日にモスクワの映画人同盟で行なわれた。ロシアでの発行に先駆けて完成した本をモスクワに持っていくからね、とネーヤさんに連絡したら急遽、出版パーティを準備してくださったのだ。
 立派な招待状がすでに30名ほどの映画人に送られていた。モスクワに住んでいる知人を全員招待するように、と言われて日本人とロシア人の友人にかたっぱしから電話をかけた。
 当日会場に集まった人々の中には15年前にトルクメンの撮影所に招待してくださった時以来の知り合いである監督ホジャクリ・ナルリーエフ氏(『うちの嫁さん』『詩人フラーギ』)、旧ソ連映画輸出公団総裁のコロソフ氏、古くから交際のある日本歴史小説家グザーノフ氏、そして大阪外国語大学で3年間教鞭をとられたネボリシンさんも来られていて、彼らがそれぞれに私との交流の歴史を語った上で今回の出版を祝う言葉をくださったのにとても感激した。それは単なる祝辞ではなく、個人的で心のこもった挨拶だったからだ。 お礼の挨拶
 これまでにも何度も感じたことだが、ロシアの人は挨拶が大変うまい。言葉の力を信じている民族だからか、詩的で心を打たれる。私のお礼の挨拶は型通りになってしまったけれど…
ドキュメンタリー映画の監督アンドレイ・オシポフ氏の自作ビデオ『声』と共に
 ▲アンドレイ・オシポフ監督と
 主催者であるロシア映画人同盟の議長はルスタム・イブラギムベコフ氏。ミハルコフ監督の『ウルガ』『太陽に灼かれて』『シベリアの理髪師』(他40本)の脚本家でもある、可愛い顔のおじさんだ。日本通が多い中で自分だけが日本に行ったことがないよ、とおっしゃった。日本映画研究家として著名なインナ・ゲンスさんは、今回のあなたの仕事はロシアと日本の映画界にとって大変大きな業積になりました、とほめてくださった。現在、最も期待されているドキュメンタリー映画の監督アンドレイ・オシポフ氏が自作のビデオ『声』(銀の時代の代表的な詩人、マクシミリアン・ヴォローシンの時代と生きた人々の思い出を綴ったもの)をプレゼントしてくださった。彼の新作『エトセトラ…』は今春のニッカ(ロシアのアカデミー)映画祭で受賞するだろうと言われている。
 また、1992年に大阪と東京で開かれたレンフィルム祭のカタログ編集部から依頼されて翻訳した論文(「1980年代のソヴェート映画」)の著者である映画批評家アンドレイ・プラホフ氏と今回初めて知り合うことができた。実は彼の友人(京都在住のロシア人女性)が私の親しい友人でもあって、以前から紹介するからと手紙を書いてくれたりしていたのだが、私はその機会を利用しなかった。今回会って、こんなにハンサムな人ならもっと早くに知り合うべきだったと少し後悔している。ウズベクの監督アリ・ムラーエフ氏は来日経験もあり、黒澤明監督とも親交があつかったらしい。日本とロシアの映画界を結ぶこの機会を大変喜んでくださった。 映画批評家アンドレイ・プラホフ氏と共に
▲アンドレイ・プラホフ氏と
サインをするネーヤ・ゾールカヤさん
▲ネーヤ・ゾールカヤさん
 ネーヤ・ゾールカヤさんはロシアの映画界にとっての誇りである、と「映画学紀要」の編集者で映画批評家のイリーナ・シーロヴァさんがおっしゃった。その通りである。モスクワ滞在の8日間、彼女の後をついて歩き回った。行く先々で、彼女がいかに尊敬されて
いるか、いかに大切に思われているかを知らされた。しかし、彼女は決していばらない。誰にでも丁重に接するし、細かい心配りを忘れない。他人の力を借りず、すべて自分で解決する。だからもちろん頑固である。滞在中、ネーヤさんに似てきたね、と何度か言われた。もしそうなら、光栄なことだ。あるロシア人によれば、彼女は若いころ「炎のかたまり」のような人だったという。彼女との出会いは私にとって神の采配としか思えない。炎のひとかけらでいいから彼女から分けてもらって、私もこの先仕事を続けていこうと新たに決心して帰国の途についた。
 他日、映画人同盟のカフェでタジキスタンの監督バフティヤル・フドイナザーロフ氏(『少年、機関車に乗る』『コシュ・バ・コシュ』『ルナ・パパ』)に会った。日本であなたの映画はとても人気がありますよ、と話しかけて本を見せてツー・ショット。 タジキスタンの監督バフティヤル・フドイナザーロフ氏と共に
2001.4.4 扇 千恵 記
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