ナポリ・カプリ・ポンペイ
イタリア・インデックス
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 二月十八日、ナポリにて。
「・・・十七日にボンペイの遺跡を見に行った。・・・・遺跡のいろいろな発掘もおもしろくはあったが、こういう町が土に埋もれていて、その上が葡萄
畑になり、千何百年かの間、人々がその上で何にも気づかずに葡萄を作っていたということが、私にはひどく興味あることに思えた。ここはすで
に発掘したからその間の関係が明瞭であるが、しかしまだ発掘されないところは、そんなものが埋っていると誰も気づかないところのことを思うと、
妙な気がする。気づかない限りそんなものはないのである。そういう場合には、ボンペイの町の何尺か上で葡萄を作りながら、地下のそんなもの
があるとは全然思っていなかった人と、我々もまた全然同じ立場に立つのである。そういうことがいかに多いだろう。いや、そういうことのほうが多
いのではないか、そんなことを考えながら私はヴェスヴィオの裾野をながめていた。・・・」・・・・・・和辻哲郎 著「イタリア古寺巡礼」より