世界遺産登録

 1999(平成11)年の12月2日、モロッコのマラケシュで開催された第23回世界遺産委員会において、「日光の社寺」が世界遺産に登録されました。

 「世界遺産」とは、「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」(「世界遺産条約」)に基づき、人類にとって普遍的な価値をもつ文化遺産と自然遺産を「世界遺産リスト」に登録し、国際協力によって保護していくことを目的としています。

 日本は1992(平成4)年に「世界遺産条約」を批准しており、「日光の社寺」は、国内における世界遺産としては10番目の登録でした。

 なお、2000(平成12)年5月の時点で、世界の 160ヶ国がこの条約を批准しています。

 日光は勝道上人により、8世紀の末に開山されました。以来、1200年の長きにわたって山岳信仰の聖地としての歴史を有しています。中世には東国の有力な武士団の庇護の下、日光山が関東一円で大きな勢力を示し、17世紀の初頭、徳川家康を祀る東照宮が鎮座してからは、天台宗の山王一実神道に基づく徳川将軍家の霊廟として威容を誇り、江戸時代の政治体制を支える、きわめて重要な役割も果たしました。

 また、19世紀末には、アーネスト・サトウやトーマス・グラバーといったイギリス人が日光に避暑地としての魅力を発見したことで、国の内外からたくさんの文化人や著名人が訪れるようになり、現在にまで至る国際観光都市の基礎が築かれます。

 そして、その背景には、イギリスの湖水地方やハイランズによく似た日光の豊かな自然美と明確な対比を示す、絢爛たる社寺の建造物の人工的な芸術美に、とくに外国人たちがエキゾティックな興味を覚えたことがありました。

 このような歴史を踏まえ、以下では、日光の社寺が「世界遺産」に登録されるまでの経緯と、その概略について御紹介いたします。