*     *

――昼間はまだまだ残暑が厳しかったが、夜ともなると吹く風は一気に涼しくなり、虫達の鳴く声が聞こえるようになっていた。
ほたるは寝室の自分のベッドの上に上体を起こし、窓から外を見上げていた。
かぐや島の、文字通り降るような星空にはとても敵わないが、それでも幾つか星を見つけることが出来た。
「あら、ほたるまだ起きていたの?」
ドアからせつなが顔を覗かせる。
「うん・・・」

アルティカのプリンセス、海賊に身をやつしていたルーフ・メロウの命と引き替えに暗黒水晶による封印は解かれ、ほたる達はセーラー戦士へ変身することが出来るようになった。
そしてコンは、自らの全ての力をセーラームーンに託し、エターナルセーラームーンへの変身を遂げさせた。
それによりダーク・プラズマンとの最後の戦いに勝利し、コアトルは再び地球を離れ、銀河の彼方へと去っていった。
本来の姿に戻ったミック達は無事母親達――ほたる達をかぐや島へいざなった、ダークプラズマンの妻たち――と再会し、彼らもまた旅立っていった。
そうしてほたる達は無事東京に帰ってきて、夏休みは終わり、学校が始まり、またいつもの生活へと戻っていった。
この夏休みがほたるにくれたのは数え切れない思い出と、真っ赤になった日焼けの痛みと、そして。
「ねぇ・・・せつなママ」
「なぁに?」
「コンは・・・死んじゃったのかな?もう星にはなれないのかな?」
「あら、そんなことはないわよ」
せつなは微笑む。
「命を終えた星は爆発して、そのからだは塵に帰るの。
けれどもその塵は、宇宙を漂いながら永い永い時を掛けて再び集まって、そこからまた星が生まれるのよ。
だからコンもいつか、もう一度星として生まれてくるかも知れないわね」
「・・・そっか。じゃ、いつかまたコンに会えるね、きっと!」
ほたるも微笑む。そして手を広げ、中に持っていたものを見つめる。
星の力を失っても十分美しい"天の螢石"は、ほたるに応えるように一瞬、キラリと輝いた。
ほたるは再び、思い出の石をそっと握りしめた。

(終)

'00.09.06 by かとりーぬ

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