【かがぺ】

 草庵の周りの休耕田が一昨年あたりから少しずつ田んぼへと回復し、今年春、一気にかなりの面積が田んぼに戻った。特に南側の縁側越しに見る田んぼの95%ぐらいが復活した。調べたわけでも訊いたわけでもないが、5、6ヘクタールぐらいのうち、1昨年くらい前までは3分の2ほどが草ぼうぼう、柳やガザの木〔タ二ウツギ〕も生えてきていた。農家ではないからそれを嘆く権利は無いが、絶望的な気持ちでいた。それが今年一挙に田んぼとして息を吹き返した。減反愚策から開放されたせいで農家が目覚めた訳ではない。大型農業と取り組んでいる人が、惰眠や死んだふり農家をかき口説いて借りて作付けしたのである。
 それでもいい。
 春、代掻きして苗が植えられ、水を張ったキガキガで(キラキラ輝く様)田んぼを見たときはかがぺくて目が眩むようだった。黄金色の稲穂が頭を垂れる。
 まだ手がつけられていない5%ほどのうち、大半が草庵の縁側の目の前なのは少しつらい。

【かげじぇん】

 陰膳。
 戦争は、やだ。アンニャを殺した鬼畜米英を許るさねェ。アンニァが殺した人がいても誰に詫びればいいかわからねえ。戦争は、やだ。

【かざばっこ】

 かざばっこ 泣ぐ夜は 夫(つま)ど ザッパ汁

 NHK秋田放送局の「秋田弁de川柳」の選者を務めて10年になる。半素人の私は作品を寄せてくださる方々から教えられることが多い。
 数年目、年間最優秀賞に輝いたこの作品を時々思い出す。
 過疎の村の老夫婦だろう。冬の夜、軒下をヒューヒューと泣いて走るかざばっこの音に身をすくめながら鱈のザッパ汁を啜る。「ザッパ」は、鱈や鰤など魚の、少し肉のついた頭や骨のことを言う。
 この作品、気持ちがホッコリするけどセツナイねェ。
かざばっこ」は虎落笛(もがりぶえ)。

【かなしんべり】

「スケート遊び」。
 子供のころ、「けど」(道路 語源は「街道」)でゴム長靴に上等のものは皮、ほとんどは縄で結わえたスケート滑りをした。馬橇の荷台の後ろに掴まったり。凍った川やツヅミ(沼)などでも。氷が割れてしまったことなど無かったなあ。それにしても、「かな」(金属)「しんべり」(滑り)とは。直截的だなあ。

【からちら】

 空面。
 手ぶらで他所のうちを訪問すること。

【からもむ】

 喜寿の祝いの酔った席で、いかにも冗談ぽく、
「オラ、オメどご好ぎだったんだ」
そうへって(言って)笑ったば
「そのどきちゃんとそうへってければえがったべ」
そうへってにこりと笑うトワ

オメ クモ膜下出血で倒れだってが
からもむじゃ

 身悶えする 焦る もがく。(病気などのため七転八倒する)
「から」は」躯」、「骸」。

【かわらげ】

 擂鉢。
 秘所に毛が生えていないこともそういうなあ。でも、こっちは共通語ダナア。「土器」「瓦筒」で「かわらけ」と読むらしい。 古語かも知れないね。

 かわらけも ままあるものと 湯番いひ(雑俳 末摘花)

【きったいに】

 不思議に。語源は「奇態」?

【ぎぼしる】

 焦る。

【ぎぼつく】

 もがく あがく 暴れ抵抗する
 この二つの言葉に共通するかどうかは分からないが、「ぎぼ」ってなんだろう。

【きゃんこ】

昨日 ふるさとの海を見に行ってきました
  今はもう秋 誰もいない海 *
砂浜の波打ち際で
白いきゃんこを二つふるってきました
わげもなくアンダのごど考えでいました
んだえてふとちアンダさケます
* 誰もいない海 トワ・エ・モア

【ぐじゃ】

 しゃべっちょ おしゃべり

【くせけ】

 つわり。「癖」と「気」。これでくせけ。

【くまみる】

 重箱の隅を穿る。
 他人のアラを探す。
「くま」は「隅」。

2018/9/24
続く

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