【しなぶる】

 しゃぶる。
 赤ちゃんがお母さんのおっぱいをしゃぶる。
 それにしても辞典の中には、語源を「吸いなぶる」としているものもあるが、もしも「なぶる」が「嬲る」だったらヤだなあ。ついでに言えば、今、大沢在昌の『新宿鮫]T暗約領域』を読んでいるが、「しゃぶる」の「しゃぶ」もやばいことばだなあ。
しなべる」というとこもあるらしい。

【しなぷける】

 お母さんのおっぱいついでに言えば、「おかあさん」がやがて「おばさん」になり、「おばあさん」に辿り着くと、「おっぱい」は、お母さん時代には膨らんで張って静脈が浮き出て、指で押すとそれを撥ね返すほどの弾みがあったのが、次第にしぼみだし、萎びて、やがてするめのようになって垂れ下がる。
 男性の一物も右に同じ。ゆえに人生は楽し。
「しなびる」。
「萎れる」「萎縮する」もそういうらしい。

【しらぱちける】

 オレ、嗤ッちゃった。この間、秋田弁の辞典(見たいなもの)を見ていたら、「しらぱぢけだ」というのがあって、そこに、「しらぱぢける」という動詞の「過去形」と書いてあった。オレは、「しらぱぢける」は秋田弁、というか、方言と思い込んでいたので、うるだいで(急いで)広辞苑を紐解いた(第4版でちょっと恥ずかしいが)。しかし、載っていなかった。不勉強な老人はボー然と立ち往生し、やがて、自らを嗤った。その、秋田弁の辞書みたいなものは、正しいノダ。
 色褪せる 生気がない。
「河童の川流れ」という言葉があって、それに似ている、といえば、恥の上塗りになるか。

【じんぎなしに】

「遠慮せずに」。
 昔から「世紀の手抜き王」と自認する私は、かつて、何かに秋田弁について書いたとき、「じんぎ」の語源は「仁義」という説を勝手にでっち上げた。ところが、30年ほど前、横手にいたころ、卸団地の仲間の「小西陶器」の社長に「語源はお辞儀」と教えられ、しかし、ほったらかしておいた。本にもそのまま載せた。数十年して、なにか、秋田弁に関する資料を漁っていて、また、「お辞儀」説に出会った。これはプロの説だった。自分の浅知恵を棚に上げて小西さんを侮ったツケを私は恥じた。それから、いろんなところで謝り、訂正をしたが、本に載ったことは直せず、取り返しがつかない。
 口からでまかせ、勉強の足りない老人は、これを抱えて死ぬしかない。
じんぎなし」の「じんぎ」は、「お辞儀」の「じぎ」。国語の辞書の「お辞儀」を引けば、ちゃんと「遠慮」と出ている。あァ、しょし(恥ずかしい)。

【せこむ】

 生きる

なぜこんな年まで生きたのか
どうしてこんな年まで生きてしまったのか
原因の分からぬまま
腰の痛みに悩まされ
やがて疼くような痺れるような左下半身の痛みに苛まれ
81歳

令和2年の年が明ければ
数えの83歳
従兄弟はかつて
「立てでねぐなった 歩げねぐなった」
と言い続けてガンで死んだ
従兄弟は70代だった
戦争から辛うじて帰ってきて
三菱の化学工場で働き
子どもを育て
二番目の息子は国立大学を終え
伯父に進められて警察官
小さな警察署の署長を一年やって停年

膝が痛い
太ももが痛い
ふくらはぎが痛い

オレも
サラリーマンとして31年
やくざな世界で25年
妻を娶って60年近く
息子と娘を一人前に育てた
ドップリ
男の生きた滓が
腰と太ももと脛に溜まったのか
数えで83の一途だった男にだ
一途に生きてきた男の体と心にだ

生きる

せこむ」は『熱中する』だって。出会ったことがなかった言葉だ。
 県南で聞いたことがあったかもしれない。語源は「勢込む」かしら。
 そういえば、そんな名前のガードマンの会社があったな。

【そらぐ】

 海さえぐ

アバ
アバ
どごさえぐ(行く)
 海さえぐ
アン二ァどごむげに(迎えに)
海さえぐ
いくさにとらえだ(召集された)
アン二ァむげに
 海さえぐ

オラしらねェ南方の海ささらわれで
そごで殺されだアン二ァどごむげに
 海さえぐ
アバ
 アン二ァ
 人殺したのが
 なんもしねで(何にもしないで)威張っている人に騙さえで
 オメさ向かってきたを
 殺したのが

 オメ 
 このままでは殺されるど思って
弾撃ったのが
刀で浚うど思ったのが

アバ
どごさえぐ
アン二ァが育った
下浜の海さえぐのが

海さえって
アン二ァが殺した人さ
砂浜に跪いで
詫びるのが
アバ

アバを帰せ
アン二ァを帰せ

オレの心の命の心を帰せ


【そらぐなし】

そらぐ」は、『粗略』、「なし」は『無し』かしら。『為し』かしら。
 しおらしくない。
 でも、この言葉、メモ帳に書いてあるから、どこかで聞いたのだろうが、記憶にないなあ。マッ良いか。

【そぐなれ そごなれ】

 子供のころ、悪さをしたり、言いつけを守らなかったりいえの手伝いをしなかったりすると、お袋によく、そういって怒られたものだ。
この生まれそごなれッ
 それに、
誰の子だッ
 と口答えして逃げて走った。
 余されものの腕白だった。
 いや、出来損ない、間抜け、未熟者、だった。
 ほんと、良くここまで、まずまず、まともに生きてきたね。
 ごげんは「損ない」だね。  
 そして、この年齢になっても、ちっとも変わっていないのが、
 ハッハハハ。
2020/2/18
続く

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