【にこしょい】
祝言の時、花嫁(あるいは花婿)の家からの花嫁(あるいは)花婿行列で、お祝いの品を背負って運ぶ少年。祝い樽を背負うこともあって、『たるこしょい』とも言う。
子どものころ、この役にあこがれた。祝言当日、箪笥担ぎ、親戚一同とともに静々と進む花嫁道中は豪華で、晴れがましいものだった。私は遂に経験できないまま大人になった。
【にし】
鰊。秋田では『かど』とも言う。
子どものころ、近所の男達が、
「まづめさ、にし獲りに行ぐ」
「まづめ」は松前で、北海道の総称で、漁業の出稼ぎを意味した。
生まれ故郷のお寺に相当数のお地蔵さんがあって、これは、天売島に漁に行った船が帰りに時化に遭い遭難した人たちのものである。
『かどかやぎ』は、名物の鍋物。
【になぎ】
天秤棒。語源は、「担い木」。
【ねごぼ】
腫れ物。おでき。根太。
子どものころ、顔などによく出来た。
洟をたらしてねごぼを作った子どもが多かった。衛生事情か、栄養のバランスのせいか。今、全く見ることがない。
【ねっちょふけ】
執念深い。
ボクは淡白な人間だと思っている。しかし、時々他人から「ねっちょふけ人間」と見られているのを背中に感じる。
こだわりもないしくどくもないのになあ。
ただ、年とともに他を簡単に納得するということが少なくなった。
例えば、内陸縦貫鉄道への県と関係する市の取り組みのいいかげんさを15年も指摘し続けているし、最近は、「えぶりがっこ」がなぜ、いつの間に「いぶりがっこ」になってしまったのか、これは明らかに秋田弁の崩壊である、と。
「煙い」ことを秋田弁で『えぷて』と言い、「燻す」事を『えぶす』と言う。語源がこれだ。
県が企画して、秋田大学の教授陣が二人も加わって調査してまとめた『秋田のことば』というもっとも収載数が多くて新しい秋田弁の辞書に勿論、『いぶる』も『いぶす』も載っていない。何より、その辞典に「い」で始まる秋田弁はない。しかし、その大学で「いぶりがっこ」作りに取り組んでいる。
辞典を作った教授たち、からかわれているのかしら。
「えぶりがっこ」を「いぶりがっこ」にしてしまった元凶は誰だッ、出て来いッ。
【ねぷかぎ】
その大学は、県立大に追い越され、国際教養大は遙かなた。私大もそこそこで、青息吐息なのかしら。
横道にそれた。元に戻す。
国会や県、市町村議会などで、センセイたちがねぷかぎしているのは、あれはたぶん、脳のヒダヒダが少なくて、さらに脳そのものが軽くて、難しい話になると自然にねぷたぐなる。
「おれ達も難しい本を読んでいるとねぷてぐなるじゃないか」
そういったら、それ程中身の濃い演説はしてないよ、と返された。する方も聞く方もその程度なんだナア。
ついうとうとする事。居眠り。
【のっかがる】
「寄りかかる」。これは『よっかがる』かなあ。
漢字で書けば「乗っかかる」。
まっ、いっか。使い方にそれ程違いがないし。両方に「よっかがったり」「のっかがったり」しておこう。
でも、これって無責任体位。どっちかを外されたら、思いっきりコケルぜ。
【のさばる】
甘える。
これ、古語らしいよ。江戸語って言われているらしい。
『のさばりこ』と言えば「甘えん坊」。
野草では「ぬすびとはぎ」。野道や田圃の畦を歩いていると、ズボンの裾に小さな実がくっ付いている。あれだよ。と言っても都会の人は知らないね。
【のごれ】
名残惜しい。心残りだ。
【のっちめぐ】
大騒ぎする。
秋田県立美術館建設の文化とも芸術ともおよそ関係のない不毛のカラ騒ぎ。秋田県て面白いところだね。なのになぜ、自殺者がこんなに多いんだろ。
【のっちり】
量の多いことを言う。
これで『もっちめぐ』と合わせて、語源はおおよそ分かったね。
【のめくる】
前のめりになるように歩く。急ぐ。
邪魔者を追い出す時など、
「ちゃっちゃどのめくれ!」
という。こういう場合は、「行け!」だね。
【のりでねえ】
「法外だ」。「とんでもネエ」。「ひでえ」。
【のんのめぐ ののめぐ】
大騒ぎする。
「のんの」「のの」は、大騒ぎしている擬声語。
「めぐ」は、「ざわめく」の「めく」で、接尾語。
2011/12/02
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あゆかわのぼる の 秋田弁豊穣記