【はぇた】

「さあ しまった」「あら まあ」「さて 困ったなあ」

【はっから】

 早々と 最初から、もかな?
はっから来て待ってだ

【はぐる】

より分けて捨てる。
*「」は、鼻濁音。

【はがおれ】

(朝食などを食べて、農作業などに就くこと。
ちゃっちゃどママ食ってはがおれするどー

【はだる】

 ねだる。調べてみたら全県に流布しているようだが、聞いたことがなかったなあ。たぶんどこかの飲み屋で聞いたのだろう。箸袋にメモしてあった。しかし、記憶にない。語源は「徴収」の「徴る」で、責め立てて徴収する」「催促する」だそうだが、この言葉も知らなかった。
 オレ、ホントに文学やってるのかしら。

【はみこぐ はびこぐ】

 言い訳する。
んにゃ そうでねぇ」と自我を表に出して言い張る、だろうなぁ。秋田衆の得意技。

【はらよごす】

 気分を害する。というより、はみこいで言い募り、結果、さらに立場を割るくして、「気分わりィ」状態。
 これもまた、秋田衆のよく落ちるどつぼ。

【はんちゃ】

 羽織。(どちらかというとカジュアルな、どちらかというと女性の)

【はんて】

 半纏。これは、どちらかというと男性用。

【ヒカヒカでぇ】

 太陽を受けて輝き、眩しい様子。
 包丁などがよく研げていること。
 

【ひぐる】

 目を瞑る。語源、わからず。
 *「ぐ」は、鼻濁音。

【ひとへ ふとへ】

 一背負い。
 山菜採りにいって、たくさん収穫があったとき、
ほぎ(蕗)どじぇんめ(ぜんまい)、えっぺ(たくさん)採ってきた
 と吹聴したばかりに、隣近所にお裾分けしてしまう。
 これ、秋田衆のお人好しでいいところ。

【ひんじぇした へんじぇどした】

「ゆったりできる」「肩の荷を降ろしてせいせいした」

【ビンビでぇ】

 頑丈で、硬く反り返るようにピンピンしている。立派。

【ふぐろび】

 昔は、「ズボンのふぐろびのって(縫って)ける」というような言葉がおふくろの口からよく出たものだが、そんな腕白坊主はいなくなったし、ズボンやシャツのホコロビを縫ったり、継ぎを当ててもっと着せるなどしないですぐ捨てる。もったいない話だ。綻び。

【ふごむ】

 ぞうりのまま炉に入る。
 膝上まで積もった新雪の中をドフドフと歩く。
 子供のけんかに親が出たり、隣家との境界線争いで相手の家に、玄関の戸を荒々しくあけて、上がり框に片足を上げるように猛然と抗議に行くこと。

【ぶしょたがれ】

 無精者。
 「ぶしょ」「びしょ」は、「不精」。
 「たがれ」は、「よぐたがれ(欲張り)」「しらみたがれ(無精者で不潔にしており、衣類などに虱がたかっている者)」

【ふるあぢぎ ふるまめ】

 なかなか寝ない子供。
 古い小豆や豆は、なかなか煮えない。「煮えない」「寝ない」こじ付けくさいけど、ま、いいか。

【べった】

 結婚して40年余り。二人の子供もすでに一人前。それぞれの実家との付き合いも良好で、円満な夫婦であった。
 夫と妻の生まれ在所は、車で30分ほどの距離。
 夫は海辺の村、妻は山村。
 年に何度かたずねていた。
 夫の兄が亡くなり、葬儀万端滞りなくすみ、夫婦は帰宅。二人は喪服のままお茶。
 妻が、さりげなく、しかし、しみじみ、話し始めた。
「お義兄さんが生きているときに、あなたの実家に行くのは死ぬほどいやだったわ」。
 突然離婚の話でもはじめるのか。夫は、体の中心から血の引くのを覚えながら両手の掌で湯飲み茶碗を持ち、しばらくじっとして気持ちを落ち着け、やがて問うた。
「ここに来て、いまさら何を言い出すのだ」
 妻は、特に表情を変えず、ゆったりと言う。
「だって、行くたびに加代ちゃん(わたしの姪)を、お義兄さんが何度も何度も『べったべった』って大きな声で呼ぶんだもの」
 そういえば、兄は、娘に何か用事を言いつけるときに、たとえば、
「べった、ビール持って来い」
 というふうに、1泊2日ぐらいいると、数十回はいう。
 この言葉は、夫の田舎では、かわいい女の子の呼び方として当たり前に使われている。
 ところが、妻の生まれ在所では、女性のもっとも大切な場所を言う方言なのだという。夫はそれを知らなかった。
 妻は、40年余り、それに耐え、夫に訴えることもできなかったから、夫はそれを知らずにすごしてきた。
 せめての救いは、夫が娘を一度もそう呼ばなかったことだ。
 妻ははにかんで笑い、夫は、大声で笑い、
「ビール!」
 と催促した。
 円満な夫婦であった。

【へっぺ】

 精一杯 たくさん。
へっぺ食って、へっぺ稼げ」 
 語源、「精一杯」。なのだが、なんか別の意味もありそうな気がして、しかし、思い出せない。
 あ、あれは「けっぺ」か。男性の玉袋のこと。「陰嚢」。
 大館、北秋田地方だは、女性自身のことを「けっぺ」というらしい。
 もっと横道にそれる。先日、仙北市に行ったとき、「あんべ」はスラングだ、という説を唱える人がいた。いわれてみれば、「あっぺ」「あんびん」は女性自身のことを言うところが多い。「あんびん」は『餡餅」。これは白くてふっくらとして、連想十分。
 困ったなあ。何だっけ、秋田県のキャッチフレーズ「あんべいいな秋田」か。これ、一部の地方では、聞くと赤面し、とても口に出せないとは。
 参ったなあ。大体、「あんべいい」とは、あまりいわないものなあ。
 普通は、「えあんべだなあ」だものなあ。
あんべわりなあ」。

【へどもの】

 瀬戸物。陶磁器一般。

【へな】

 兄。長兄。年上の男。

【ほえんさま】

 
 神官。「法印様」が語源。

【ぼっちり】

 突然 急に 何の予告もなく
どやぐ(友人)ぼっちり来て、ジェンコ(お金)貸せ、だど。オラさあるわげねぇべ

【ぼんぼら】

 間抜け。

【ぼんぼらがす】

 おだてに乗せる。

【ほんまぢ】

 たとえば、「ほんまぢ仕事」などといい、思いがけない仕事ありつき、ちょっとした臨時収入を得ることを言う。
 強い風が吹くなどして船が港に閉じ込められたときに、船乗りたちがちょっとした仕事して、収入を得ることをいうが、語 源は「帆待ち」。
 私はかつてそれを知らず、「泡沫」が語源と書いた。 「秋田弁大娯解 (1997)」解説に、「プラスアルファー 計算外のこと」と書いた。ごめんなさい。
(2018/09/24)
2012/08/05
2018/09/24

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あゆかわのぼる の 秋田弁豊穣記