【まがだう】
40年余り前、津軽で暮らしていたころの話。業者の寄り合いで酒になったとき、地元の人が「まがだあう」という言葉を使った。私は「捗る」とか「人やものが賄えた」という意味だと思っていたので「津軽ではどういう意味だ」と訊いてみた。その人は、意味は同じだが「これには「馬方が合う」という語源がある」と教えてくれた。当時はまだ方言にまったく関心を持っていなかったが強い印象を持った。ネ、深く追求されると困るけど面白い解釈だよね。
農作業などのとき、
「なんとがまがだったじゃ」。
「片付く」もかな。
【まがだわせる】
(仕事やそれに必要な員数を)なんとか帳尻を合わせる。
【まがす】
皿やコップなどの容器をひっくり返して中に入っているものを零す。酒の席などではしょっちゅう。お膳に躓いてひっくり返したりして騒動。ハツハハ。時々やるよ、オレ。
【まがる】
右に同じ状態。少し違うかな。
「あんまりえっぺ(いっぱい)へれば(入れれば)まがるど」
【まンちぺ まンぷてえ】
まぶしい。
まァ、言ってみれば、生の吉永小百合を見たらそう感嘆の声を上げるだろうね。そんなこと残りの人生で有りえないだろうけどさ。
【まぢびやし】
待ち遠しい。語源は「待ち」「久しい」。
たとえば、次の知事、秋田市長選。それまで秋田県と秋田市が持つか。
【まっか】
子供のころ、悪さをするとよくお袋から叱られた。
「オラの子でねえ。木のまっかがら生まれできたなだ」
この言葉、子供のころでもちょっと刺激的だったね。
木の股。なーるほど。言いえて妙。
【まで】
「待てー」ではもちろんない。「丁寧」。
「ケチ」をそういうところもあるらしい。
【まよう】
他人から借りたもの、他人のものを壊したり失くしたりしたとき、それを償う。
【まるぐ】
しかしこのごろの稲刈りは、見ていて面白くもおかしくもないね。やっている人たちはどうなんだろう。矛盾だよねえ。米あまり、減反、「米が安い」、。一方で大型農業機械が一家に数台。その機械で田を起こし、苗を植え、除草し、刈り入れをする。矛盾だよねえ。そうやって農業が縮小し、若者のなり手が、秋田県はほぼゼロ。ノーキヨーが「TPP反対」と言っても農業はGDPとやらの1.5%ほど。政党も政治家も1票としては頭を下げるが当選すれば、知らんふりを決め込む。
いっそ美味くて高い米を小量作ったほうが、若者にも人気が出そうだが。いや、すでに打つ手などないか。昔は、稲刈鎌で一握りづつ刈り、束ね、ハサ架け、ホンニョ架けの天日自然乾燥で美味しい米を作ったもんだ。その束ねることを「まるぐ」と言った。
子供のころは、山の柴、まめ、麦、でごん(大根)、なんでもまるたもんだ。雑然と散らばっていたものが束ねることで丸くなる。いい言葉だねぇ。
【まろくた まるくた】
「まろくたもんでねぇ」
どこでどういうときに、誰から言われたのかなあ。誰かに向かっていったのかなあ。言った記憶はないが言われた記憶はあるなあ 。
今だったら、ツバでも吐きながら言ってやりたい人やものが山ほどある。
「ろくなのんじゃない!」。
資金集めパーティーなどに行くと、大枚1万円も取って「まろくたものが出てねえ」ことがほとんど。まろくたもんでねえ奴等が、まろくたもんでねえ食い物を出すのを”逆やっこほいど”とでも言うのか。
【まんき まんきたげる】
作家の野坂昭如が、エッセイを書く3要素として「妬む」「嫉む」「僻む」を挙げているが、これなしでエッセイは書けない。
それをひとまとめにして、「まんき」という。「やっかみ」だね。
【まんきご】
夫婦の間になかなか子供が生まれなくて、養子を貰ったらその後に生まれた実子をそういう。
【まんけわり】
「極まりが悪い」「恥ずかしい」。
【まげる】
@負ける
A容器などに入っている水などを零す。(この場合、アクセントは「げ」。
B値引きする。
【まぎ】
この言葉、訳も無く禍々しい印象があって、怖い言葉だった。血族とか血統などという意味を持っていせいかもしれない。あるいは、子供のころ、大人が使うその言葉があまよくない場面で出てきたせいかも知れない。でも、「美人のまぎ」とか「頭脳(あだま)良しのまぎ」など、いい意味で使われれることが多い。いずれにしても、その二つの場合、「オラえのまぎ」には関係ない。ハッハハハ。
【まぐもぞ】
寝言。漢字で書けば、獏妄想。
私には特技があって、寝言と鼾。
寝言は、はっきりした言葉で、理路整然と命令口調でしかも大声で言うらしい。鼾は往復。この二つが渾然一体となって一晩に数度。ここ30年余り寝所を別にしている賢妻が、「立派な離婚理由になる」というほど凄まじいらしい。よってもって他人の家に泊まること叶わず。仲間や知人と、もちろん家族とも泊りがけの旅に出ると、夜は完全隔離。ハッハハハ。
【まぐる】
捲る。引き剥がす もかな?
中学校時代にやった特技。スカートまぐり。
何の関係性も無いけどふと思い出したので。某県が2年ほど前に決めたキャッチコピーが「あんべいいな。○○県」。この発表の席で、記者が、
「あまり聴かない言葉だけど」
と問うと、知事が、
「よく使うよ」
と答えた、とテレビや新聞が報じた。
この言葉は、この地方のスラングだということは知る人ぞ知る。それを知事は、「よく使う」らしい。
この地方のスラングだと思っていたら、かなり古から武士社会でも使われていた全国区のスラングらしい、と先日、逢坂剛の時代小説「道連れ彦輔2伴天連の呪い」(2008文芸春秋)を読んでいて発見した。詳しく知りたければ、145ページを読んでみてくれ。
某県知事はさておき、県民の多くが、その言葉をスラングと知っているせいか、県がポスターや名刺、その他にせっせと刷り込んでも誰も使わず広まらない。ハッハハ。
たぶん、こう言いたかったのだろう。
「ええあんべだなあ」
これは津軽弁の「あずましいなあ」と並ぶ「いい気持ちだなあ」「心地いいなあ」という意味を持つこの地方の魅力的な方言である。
「スカートをまぐる」からとんでもない脱線をしてしまったが、某県民の名誉のために書いておく。
「あんべ」が先に付くのは、具合が悪いときに使う、
「あんべわりなァ」
【まぐれだおし】
よく言えば、「大食漢」。別の言い方をすれば、「かまどけァし」。まったくイコールではないが、大食いでろくに働かないヤツのこと。「どッかの着倒れ、大阪の食い倒れ」に似て、秋田の県民性を言うこともある。
【まんぺ】
女性の大切な部分。
【まんぺはれ】
さぎごけ。
田んぼの畦などに生える雑草。紫の花をつけるのでムラサキゴケともいう。白い花をつけるのもあるという。
それにしてもなぜこの名前なのか。花の形からきたのかなあ。植物学の博士は分かるだろうか。興味あるねえ。
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あゆかわのぼる の 秋田弁豊穣記