【みんじゃでぐ】

 父は大工だったという。腕のほうは分からない。私の物心つく前に亡くなっていたから。しかし、住む家は土壁などない粗末な、安普請だった。頑丈な家を建てるお金がなかったのか、みんじゃでぐの範疇を超えられなかったのか、大人になってそのことを母から聞かなかった。母は戦争で長男を亡くし、夫に先立たれ、三人のの男の子を育てるのに死に物狂いだった。母も三人の子供も襤褸を身にまとい、その日その日をなんとか生きていた。何とか生きるについては、父と母が新所帯を持ち、親からの財産分与も無く、しかし、何箇所かに田を買い、畑を手に入れ、それを土台に、母は行商をして金を稼いだ。そこそこの土地を手に入れたということは、ある程度の稼ぎがあったということで、父はみんじゃでぐではなかったのかもしれない。
 「水屋大工」。「水屋」は『台所 流し』」。「流しの修繕程度しかできない腕の悪い大工」。
 【かますでぐ】とも言う。大工道具を入れる箱が買えず、藁で編んだ米などを入れるかますに入れていたから。

【みだぐなし】

 ブス。

【みだぐねえ】

 みすぼらしい様子。「み」にアクセントを置くと、『見たくない』。

【むしなぐ】

 
「絆を深める」とメディアが言うと、それだけで、そのニュースやドラマが信用できなくなる。
 私は一応、ものを書いたりしゃべったり、を生業としているが、決して「絆を深める」とか、「絆をあたためる」などという言い方はしない。1992年の『新明解国語辞典』第4版だからかなり古いが、そこに「絆」について、「動物をつなぎとめる綱(肉親などの)離れにくいつながり」とある。『広辞苑』第4版
1995(これも古いなあ)には「断つにしのびない恩愛、離れがたい情実」などがあるから、暖められないわけでもない。しかし、いずれも、「結ぶ」がキイ。「絆」は「強める・弱める」もの。
 言語学を修得した息子は「言葉は変化する」というが、結ぶ「綱」を「暖めたり・冷やしたり・深めたり」してはいけない。
 「むしなぐ」は、縄やロープなどを「結ぶ」。

【むせぇ】


 ケチ。みみっちい。持ちがいい。容易に尽きない。長持ちする。(仕事などが)捗らない。
 前後につく言葉によって意味に幅がある。
オメのえの(お宅の)えぶりがっこ、よぐ干したせいで、むせごど

【むたっと】

オメのひたむきさ
オメの一心不乱
オメのひたすらさ
オメの一所懸命さ
ただただ頭が下がるばりだ
結果だとか成果だとかは
あどがらついてくる
そう思うオメの気持ちこ
わがらねわげではねぇ
ただ、目的ァべづのどごさあるべ
それァ目くらましだべ
それでもオメのひたすらさ
それでもオメの一生懸命さ
むたっとかがる見だ目
アべ ノメクテ アべ


【むどつら んどつら】

ああ気の毒に 気の毒に
ふとどごだますってのァ
むずがしもんだべ
アベ ちゃったやど アベ
オメぼご見でれば 
オラもむどつらで んどつらで
ナァ


【むんつける】

こんつける」。これでもっと分からなくなる。「拗ねる」「ひねくれる」「へそを曲げる」。これでどうだ。
 わかいころ、もてすぎて、からかったりソデにして泣かせたり、むつけさせたりした女の数を数えていると、「羊が一匹、羊が二匹」、そのうちに眠くなる。とうそぶいているようだけど、オレは村中で一番――アホだと言われた男、ハハハハ。
 笑いものになってこっちもむんつける

【めうり】

 まくわ瓜。語源は『美味い瓜』?!
 子供のころ、畑に植えてあった。ちょいと瓜を持ち上げると付け根のところからポロリと離れる。これが完熟の証明。自分のうちのヤツがまだ熟していないときは近所の畑のヤツを失敬した。ワルだった。
 あのめうりはどこに行ってしまったのだろう。メロンより数段野性味があり、美味かったあのめうり
 そういえば、子供のころ、めうりやかぼちゃやサツマイモが植えられていたふるさとの畑は、すっかり荒地になっている。
 農業王国ニッポン。我が秋田 バンザイ!
 声高らかに県民か歌を歌おう!!

【めぐせぇ】

みだぐねぇ」「みだぐわり」。『恥ずかしい』。

【めんこ めご めんこがる めごがる】

 「めんこ」は『かわいこちゃん』。「めご」も。
 「めんこい」は、『かわいい』。「めんけ」もあってこれも『かわいい』。
 「めんこがる」は『かわいがる』。

【めんこ】

 『お面』もそう言う。

【めんちょこい】

 かわいい。

【もぐれる】

 むくれる。ご機嫌斜め。怒りムッとする。
 皮がめくれ中身が出る。男根の皮がめくれ、亀頭が現れる。

【もんじゃねぇ】

 まとまりが無い。収拾がつかない。
 「もんじゃ」は、『亡者』。
オメのしゃべってるごどァ、もんじゃねくてわからねえ」。

【もんぞ】

 寝言。たぶん『妄想』あたりが語源だろう。
なにもんぞこいでる」と罵倒される。

【もそけぇ】

 (背中などが)むず痒い。
 相手にそう言われるくらい心にも無いヨイショッを言う。褒め殺しになるか、こちらの気持ちが滅入るか、そんなこたぁ、知ったこっちゃ無い。

【もちょこでぇ】

 くすぐったい。ファファハハハ。

【もったりまげだり】

 度々前言を翻すこと。中身の足りない政治家の慣用語。
 昔はこれで大臣の首が飛んだり、自ら命を絶ったりしたが、最近は、トップが日本語や自分の立場を理解できずに平気でそういうことを言うようになって恬として恥じず、首が飛ぶことも自殺することもなくなった。そのぶん、政治がでたらめになり、民草が惚けて夢遊病者のように反応せず、国が崩れていく。そういうのを某国では、「平和」と言うらしい。
 めでたし、めでたし。ありがたきかな なんまいだ。

【もよす もよう】

 準備する。装う。
ちゃっちゃどもよわねば、祝言さまにあわねど」。

【もへしょう もへしょわせる】

 昔、モヘイというヒョウキンもので、すぐおだてに載る男がいた。おだてると女の、腰巻などの日常品が入っている箱を背負って見せた。という話が伝えられていて、「もへ しょう」のそれが語源。「もへしょう」にはいくつかの語源があるようだが、私はこれが一番好き。「もへきる」というにもある。モヘイはおだてると、箱の中の女物の襦袢を着て町中を歩いた。なんて説があれば大拍手。
 秋田弁に、面白いことを言う「おもへ」があるが、それが「もへ」になって「もへしょう」が生まれたという説があるが、なんかこじつけッぽいよ、ね。
もへたげる」は、『調子に乗る』。
もへらがす」は、『おだて挙げる』。
2015/01/13
続く

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