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[大学病院で子宮癌の検査を受けたところATL(成人T細胞白血病)と言われて治療中]
[後腹膜と肺の胎児性癌に手術後の化学療法を受けるべきか?]

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[大学病院で子宮癌の検査を受けたところATL(成人T細胞白血病)と言われて治療中]

(相談)大阪府1999.9.19.
はじめまして大阪府在住の○○(31歳男)と申します。実は先日、実母(57歳)島根県隠岐島在住が、陰部に腫瘍が出来、島根医大産婦人科へ検査に行ったところ子宮ガン自体は数ヶ月、数年単位での経過を見てからの治療で十分なのだが採血の結果HTLV-1(成人T細胞白血病)と、いうことでないかに搬入されることとなりました。私が(長男)が主治医に説明されて、ないようは「現在、HTLV-1を発病しており、余命が3ヶ月程度のレベルであり抗がん剤による治療を至急要する」と言うものでした。私自身主治医の先生に抗がん剤による副作用などのある程度の内容は聞いて、抗がん剤治療を御願いしたのですが、入院してすでに2回の抗がん剤治療(点滴によるもので、骨髄周辺に針を通している)ですでに、入院後2週間経過の今でも母は、元気で痛いところも、苦しい所も泣くという状態を維持しております。私自身、この病に対してある程度参考図書などを見て、調べてみたつもりではいるのですが、母には「こういう病気で母乳感染による可能性が高い病である」と言う説明はしましたが、“死”に至るものではないとしか伝えられませんでした。私自身、現状(入院する前、今の状態)を考えると、治療(抗がん剤治療)を続けた方が余命が長いのか、あるいは治療を受けない方が余命が長いのか判断がつきません。しかし、ナンとか少しでもの可能性にと思い現在は、私の判断により抗がん剤治療を行っているところです。現状では骨髄周辺に2本針を入れて24時間点滴の上、週に1回(毎土曜日)抗がん剤を点滴投与し無菌室に入っております。主治医の話では「データ上慢性ではあるが急逝型に添加する可能性があるということでした。治療としては増殖している悪化の白血球を殺し輸血および造血材も投与し、ある程度の所まできたら、年齢的に骨髄移植は無理だが、それに近いレベルのものを考えている。」と言うことです。

〜先生に相談したいことは、下記のとおりです〜
1、 現状母はいたって元気です。いきなり3ヶ月の余命と主治医にいわれても、信じないわけではないのですがヒョっとしたら抗がん剤治療を行わないで今まで通り普通に生活してしていても何ともないかもしれない。あるいは、抗がん剤の副作用により”死”を迎えるリスクの方が高いのではないか?という悩みです。主治医の先生が二人いて、前の説明を聞いた先生と違う先生に昨日、もう一度私が「なにも治療しなければどうなるのですか?」ときくと、その先生は「2〜3週間かもしれない」と言い、「でもあんなに元気なのに、突然くるのですか?」ときくと、「恐らく旧に意識を失って・・・・。と言う状態になると思う」と言われました。 HTLV-1というのは、そういう病気なのでしょうか?
2、 私は長男で一人息子です。こういう状態にある母を毎日少しの時間でも看病したいのが心情です。しかし私は、大阪、母は島根医大、片道6時間掛かりますので、私も仕事を持つ身ですから、毎日病院には行けません。せいぜい、1週間に一回です。病院の近くに身内もいません出来る限り、母のつらさと寂しさを思うと、毎日顔を見れる大阪の病院に移したく、主治医の先生に大阪の病院を紹介していただきたいとご相談したのですが、「このような状態の患者は紹介しても受けたがらないと思う。それに抗がん剤を投与して白血球が減少しているので今はやめたほうが良い。意向はわかりましたので様子を見ながら、チャンスがあれば考えます。」と言うことでした。しかしながら、大学病院のこの先生たちは、忙しくて時間をかけてゆっくりと話す機会がないので、私自身本当の所どうなのか?大阪の病院に移すチャンスは有るのか、どのようなものでしょう?医者は病気を治す立場です。やはり患者の、頭から尻尾までわかっている医者がベストなのでしょうか?それとも、臨床試験としては大事なサンプルなのでしょうか?
3、 この病に関して先生の知っておられる過去のデータ(生死、過去の余命例、また寛解の例など)先生の見解。(今の状況と寛解あるいは、余命に関する可能性)
以上の3件が質問です。

母の経過
1999.9.7 子宮ガン検診で島根医大に搬送され採血する。9.9 HTLV-1を発症していると診断される。9.10 主治医と面談(私)病名、治療法、抗がん剤副作用の説明を受け、抗がん剤の投与を依頼する。9.11 第1回抗がん剤投与。治療の開始、以後無菌室、骨髄への24時間点滴(水のようなものと言っていました)。9.16 私(長男)の採血をしキャリアでないことを診断する。9.18 第二回目抗がん剤投与。
以上ですが、先生の見解とお答えをお待ちしております。長々と、要領の得ない文面ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

(答え)1999.9.20
お答えします。大変ご心配のことと思います。まず成人T細胞白血病はATLといい、HTLV-1はウイルスのことです。ですから「現在、HTLV-1を発病しており、余命が3ヶ月程度のレベルであり抗がん剤による治療を至急要する」と言うのは、ATLを発病しているということだと思いますが、何か症状があるでしょうか。

>1、 現状母はいたって元気です。いきなり3ヶ月の余命と主治医にいわれても、信じないわけではないのですがヒョっとしたら抗がん剤治療を行わないで今まで通り普通に生活してしていても何ともないかもしれない。あるいは、抗がん剤の副作用により”死”を迎えるリスクの方が高いのではないか?という悩みです。

もしリンパ腫型や急性型であれば、治療してもしなくても、あまりかわらないようです。くすぶり型や慢性型なら治療しなくていいようです。つまり、あなたの考えている通りだと思います。

>2 「このような状態の患者は紹介しても受けたがらないと思う。それに抗がん剤を投与して白血球が減少しているので今はやめたほうが良い。意向はわかりましたので様子を見ながら、チャンスがあれば考えます。」と言うことでした。

あなたの考えている通り、大学病院では患者さんは臨床試験としては大事なサンプルなのです。

>3、 この病に関して先生の知っておられる過去のデータ(生死、過去の余命例、また寛解の例など)先生の見解。(今の状況と寛解あるいは、余命に関する可能性)

参考までに、最も一般的な医師向けの参考書から引用しておきます。

成人T細胞白血病Adult T-cell Leukemia(ATL)
朝長万左男  長崎大学教授・分子治療分野(原爆後障害医療研究施設)
治療方針の決定
 病型分類に従った方針決定が重要である.くすぶり型と慢性型では原則として経過観察で十分である.急性型とリンパ腫型への進展時に化学療法の対象となる.
 急性型と悪性リンパ腫型は入院のうえ,直ちに悪性リンパ腫の治療に準じた多剤併用療法を開始し,高Ca血症の症状がある例では補助療法が重要となる.また高度の細胞性免疫不全のため,高率にカリニ肺炎などを合併する可能性が高く,予防投与も行わなければならない.
 このような治療によって寛解状態にはいる例はいまだ少なく(20%未満),いったん腫瘍量は減少し改善が認められても,早晩再増殖する例が多く,予後はきわめて不良の疾患である.(今日の治療指針1998年版/(c)1998 IGAKU-SHOIN Tokyo)

ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.9.30
母の症状について、本人に聞くところによると、入院する前日、あるいは抗がん剤を投与するまでは、いたって元気でなにもありませんでした。ただ、9月11日の第1回目の抗がん剤投与の後、4日目ぐらいから少々頭痛がする程度の経過の様です。再度先生に質問なのですが。大学病院の医師としてATLが発症していない、あるいは発症していても軽度のもの、このような場合でも抗がん剤治療を行うことはあるのでしょうか?私自身がもっとも懸念することは、抗がん剤治療による母の現状の悪化です。また「現在は慢性型(データ上)であるが、急性型に移行する可能性が非常に高い」と主治医の先生はおっしゃいましたが、これは何を根拠におっしゃっているのでしょうか?過去のデータから見た見解なのでしょうか?このような、事例のあまり多くない疾患と言うのは、たくさんの患者を見た例の有る病院を探すのがベストなのでしょう?たとえばそれはどこの病院なのでしょうか?先生の見解を、お聞かせください。やはり、私自身としては、近辺に身内(親族は大阪に在住しており面会に一人も来れない)のいない遠い所よりも、長男であり一人息子の私が毎日見守ってやりたいのが心情です。(現状は週に1回しか病院に行くことが出来ません)すでに2回の抗がん剤を投与していますが、大阪の病院へ転院するチャンスはあるのでしょうか?また、それはどのような時なのでしょうか?主治医の先生には、どのような形で話していくのがベストでしょうか?本人(母)も非常に不安で、寂しがっています。最後に、ひとつだけ、先生に私の一番の苦悩を聞いていただきたいのですが。先生のご家族が、私の母のような症状の場合、化学療法を選ばれますか?選ばれませんか?長々と申し訳ございませんでした。またお返事を、お待ちしております。

(答え)1999.10.1
お答えします。
>大学病院の医師として,ATLが発症していない、あるいは発症していても軽度のもの、このような場合でも抗がん剤治療を行うことはあるのでしょうか?

大学病院は研究のための病院ですから、何でもありえます。

>「現在は慢性型(データ上)であるが、急性型に移行する可能性が非常に高い」と主治医の先生はおっしゃいましたが、これは何を根拠におっしゃっているのでしょうか?過去のデータから見た見解なのでしょうか?

全くわかりません。主治医に聴いてみてください。今までに、母上と同じような年齢、病状の人がどれくらいいて、どのような治療をして、結果がどうであったかを聴くと参考になると思います。

>このような、事例のあまり多くない疾患と言うのは、たくさんの患者を見た例の有る病院を探すのがベストなのでしょう?たとえばそれはどこの病院なのでしょうか?先生の見解を、お聞かせください。

おそらく無いのではないでしょうか。比較的多くの治療経験のある所は、長崎大学や広島大学、それに岡山大学などでしょうか。病気自体が、九州を中心として西日本に多い病気ですし、白血病の一種ですので、前記のようなところになります。

>大阪の病院へ転院するチャンスはあるのでしょうか?

家族の努力次第でしょう。

>また,それはどのような時なのでしょうか?

ご本人の状態が落ち着いている時ということになりますが、その気になれば、いつでも可能だと思います。

>主治医の先生には、どのような形で話していくのがベストでしょうか?

本人と家族の希望をそのまま話すのが良いと思います。

>最後に、ひとつだけ、先生に私の一番の苦悩を聞いていただきたいのですが。先生のご家族が、私の母のような症状の場合、化学療法を選ばれますか?選ばれませんか?

化学療法をするための理由があって、納得できれば、受けます。ではまたいつでもメイルをください。

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[後腹膜と肺の胎児性癌に手術の化学療法を受けるべきか?]

(相談)1999.1.31
はじめまして。癌で現在入院中の友人(年齢29歳、男性)の事でご相談お願いいたします。友人は、胚芽細胞腫(左肺に500円玉大の腫瘍)と診断され、昨年8月17日に左肺S4, S5区域切除手術により腫瘍を摘出しました。この腫瘍は、のちに原発である腹部の癌からの転移であると診断を受けました。この腹部の癌は、後腹膜腫瘍(胎児性癌)、または性腺外腫瘍ともいうそうで、本来は睾丸に出来る癌なのだそうですが、彼の場合は非常に珍しい症例で睾丸には出来ず、腹部できたということでした。肺の手術の後、9月から12月迄4クール化学療法の後、今年の1月13日摘出手術を受けました。摘出組織は病理判定では、癌細胞は腺維化しているとのこと。現在の所、転移は発見されておりませんが、開腹手術の際、肝臓、腸の色が悪くなっているとのことを主治医より聞かれています。また手術後の経過が悪く、現在約3週間目ですが、十二指腸の動きが悪く、食べてもすぐ嘔吐するためここ1週間ほど食事をとらず、点滴による栄養補給を受けています。後2週間ほどでよくなるとは言われていますが、数日は食事ができないそうです。腰痛も続いています。こういう状態ですが、主治医から後2クールの化学療法を勧められています。本人は、現在の空腹を耐えての栄養補給のための点滴治療の辛さで体力的にも精神的にも限界を感じており、今までの化学療法の副作用の辛さを再び味わうことや治療を受けないことでの再発の可能性など、色々考えて化学療法を再度受けるかどうかかなり悩んでいます。再発の防止を考えるとやはり化学療法を受けるべきでしょうか?本人は、あと1クールだけなら化学療法を受ける意志は多少あるようです。大変お忙しいところ恐縮ですが、先生のご意見を是非聞かせていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

(答え)1999.1.31
お答えします。化学療法(抗癌剤)が大変良く効く腫瘍ですので、病院での充分な治療を受けておくべきです。副作用がつらいとは思いますが、副作用が強ければそれだけよく効いている、これで治るのだと思ってがんばることです。中途半端な化学療法はしないほうがよいかもしれません。ではまたいつでもメイルをください。

(相談)1999.2.1
数野先生、お忙しい中メールの返事をいただきまして、本当にありがとうございました。すぐに返事をいただけて大変感激いたしております。今日病院へ行き、友人にメールの内容を伝えました。余談になりますが、友人は最初入院していた病院で小細胞性癌で手術は受けられないと診断されておりましたが、転院した現在の病院で今の病名がわかり化学療法と2度の手術を受けることが出来たという経緯があります。手術前には、手術後も化学療法を行う話を聞かされていなかっただけに、主治医の勧める化学療法をそのまま受ける気にならなかったようですが、それだけに数野先生に化学療法を否定してほしいと期待していたようです。7ヶ月間愚痴一つ言わず耐えてきて、現在食事も出来ないのでもう気力が全くないという感じです。2クールの内の1回だけならという本人の希望も、中途半端な化学療法はしないほうがよいかもしれないという先生のご意見ですので、化学療法を止める方に気持ちが傾きつつあるようです。もし化学療法を受けなかった場合と受けた場合の再発率は、数字にするとどの程度なのでしょうか?また胎児性癌は、再発しやすい癌なのでしょうか?大変お忙しいところ度々恐縮ですが、先生のご意見を聞かせていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。

(答え)1999.2.3
お答えします。当方のサーバーのIDのトラブルで遅くなりました。化学療法を受けなかった場合と受けた場合の再発率は、わかりません。胎児性癌といっても細胞の種類によって色々ありますが、充分な化学療法を受ければ治る可能性のある癌だと思います。治ると信じてがんばることです。化学療法で同じような癌を克服した人の本がありますので紹介します。
奥迫康子著(家の光協会出版)「真利栄ちゃんママがんばってるよー絨毛がんに冒された母と子」
ではまたいつでもメイルをください (返礼)1999.2.10
数野先生、友人の事で再度お返事いただきありがとうございました。お礼が大変遅くなりまして申し訳ありません。友人に先生のご意見を再度伝えましたところ、化学療法を受ける決心がついたようです。相変わらず手術前に受けた化学療法の副作用などの影響などもあり、手術後の経過が悪い状態が続いておりますが、気持ちが前向きになってきたようです。主治医と数野先生の方針が同じだったので、友人も安心したようです。色々と助言をいただきまして、本当にありがとうございました。友人が回復したのちには、またご報告させていただこうと思っております。また何か相談することがあるかと思いますが、その時はよろしくお願いいたします。

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