ガンと医療の参考になる映画

アメリカ映画「ロレンツォのオイル 命の詩」(1992年):不治の病に冒された息子を救うために奮闘する両親の姿を描く
アメリカ映画「誤診」(1997年):一人の母親が息子を薬漬けにしてしまう病院のやり方に疑問を抱き息子を救うために奔走する
アメリカ映画「心の指紋」(1996年):末期の肺ガンのナヴァホの少年があらゆる病を治すというナヴァホの伝説の湖を目指す
アメリカ映画「恋愛小説家」(1997年):民間の医療保険しかないアメリカの医療事情がよくわかる脅迫神経症の作家の恋物語り

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アメリカ映画「ロレンツォのオイル 命の詩」(1992年)

解説:副腎白質ジストロフィー(ALD)という不治の病に冒された息子を救うため、奮闘する両親の姿を描く実話をもとにした人間ドラマ。監督・製作・脚本は「イーストウィックの魔女たち」のジョージ・ミラー。共同製作は「君といた丘」のダグ・ミッチェル。エグゼクティヴ・プロデューサーはアーノルド・バーク。共同脚本は、オーストラリアで俳優・作家・劇作家として活躍するニック・エンライト。撮影はジョン・シールが担当。主演は「サウス・キャロライナ 愛と追憶の彼方」のニック・ノルティ、「テルマ&ルイーズ」のスーザン・サランドン、「死海殺人事件」のピーター・ユスチノフ。

ストーリー:1983年、美しい島国であるアフリカのコモロ共和国で暮らしていた小学校1年生のロレンツォ(ザック・オマリー・グリーンバーグ)は、銀行員の父オーグスト・オドーネ(ニック・ノルティ)の転勤で、母ミケーラ(スーザン・サランドン)とともにアメリカへ移り住んだ。3カ月後、学校や家で理由もなく乱暴をするなどの奇行が目立ち始めたロレンツォを案じたオドーネ夫妻は、ワシントン小児病院で、ロレンツォが副腎ジストロフィーという不治の難病に冒されていることを知る。夫妻は食療法の権威ニコライス教授(ピーター・ユスチノフ)の指導や、免疫抑制剤による治療も効果が上がらず、ロレンツォの病状は悪化していった。ある日、ALD患者家族の会に出席した夫妻は、医師にすべてをゆだね、半ばあきらめの境地にある親たちの姿に失望し、自分たちで治療法を見つけようと無謀な挑戦を決意した。2人はロレンツォの世話はミケーラの妹ディードレ(キャスリーン・ウィルホイト)に任せて、図書館に通いつめた。1カ月後、ミケーラは小さな論文から病気解明の糸口を見つけた。自力で資金を集めて開催した初の国際シンポジウムに、この研究成果をはかったところ、オリーブ油から検出されるオレイン酸が、有害な脂肪酸を抑える可能性が出てきた。夫妻は早速ロレンツォにオレイン酸を投与した。薬の効果はすぐに現れ、喜んだ2人はこのことを公表しようとするが、一時的な効果でしかなく、ロレンツォの発作は日を追って激しくなっていった。発病から1年が過ぎ、脂肪酸のからくりを解明したオーグストは、菜種油の一成分である、エルカ酸をロレンツォに投与したいと提言、ロンドンの製薬会社に勤めるサタビー老博士の協力を得る。いまでは植物人間と化したロレンツォを、コモロ共和国からやって来た友達のオモウリ青年(マドゥーカ・ステディ)がはげまし、勇気づけた。ついに純粋なエルカ酸抽出に成功し、ロレンツォに投与を始めて3カ月後、彼の脂肪酸は始めて正常値を示した。それからの回復は目覚ましかった。彼はある日、ついにまばたきで意志表示し始めたのだった。それから数年、14歳になったロレンツォは沈黙の世界から脱出し、新たな医学の進歩を待ち続けるのだった。

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アメリカ映画「誤診」(1997年)

解説:患者中心の医療、EBM、インフォームド・コンセント、アメリカの医療制度などを考えさせる。一人の母親が、息子を薬漬けにしてしまう病院のやり方に疑問を抱き、息子を救うために奔走するメディカル・ヒューマン・ドラマ。

ストーリー:ローリはごく平凡な主婦。ある日、息子のロビーが突然激しい発作に見舞われる。彼女は息子を病院に連れてゆくが、医師はてんかん発作の疑いがあると診断する。彼らはロビーに投薬治療を施すが、副作用がひどいためローリは再び病院に訴える。だが、病院は副作用を抑える薬を与えるだけだった。 母親が図書館で調べた治療を受けるために、病院を脱出する。

突然の発作で病院に担ぎ込まれた少年ロビー。母親は幼い息子を襲った悲劇に動揺しながらも、 次々と行われる過度な薬物投与に疑問を抱き始める。治療も空しく次第に衰えていく息子を救うべく、 母親は巨大な医療システムを相手に勇気ある行動に出た…。病院を舞台に、 現代医学の盲点と恐怖に立ち向かう母親の姿を描いたメディカル・サスペンス。実話を基にした脚本に共感し、 自ら制作にも参加したオスカー女優のメリル・ストリープが、 愛すべき息子のために戦う母親の姿を力強く演じている。キャストとスタッフの作品に対する情熱が見る者の心を動かす感動作。

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アメリカ映画「心の指紋」(1996年)

解説:殺人を犯した末期ガンのインディアン青年と、彼の逃避行に巻き込まれたエリート医師が、伝説の湖を目指して西部の荒野を旅する姿を、ヒューマンなタッチで描いた一編。監督は「天国の門」のマイケル・チミノで、「逃亡者」(89)以来6年ぶりに手がけた一作。

ストーリー:ナヴァホ族出身の前科6犯の強盗殺人犯ブルー(ジョン・セダ)は16歳で、末期ガンの患者。UCLA医療センターの医師マイケル(ウッディ・ハレルソン)は、ガン科部長への昇進も嘱望されるエリート。運悪く彼は、医療センターに連れて来られたブルーの診療をすることに。マイケルはブルーを肝臓ガンの末期と診断、院長は国立ガン研究所での実験的な延命治療に回すことに決める。マイケルは反対できず、研究所まで彼を届ける役目を引き受ける。ところが護送中ブルーは脱走、マイケルを人質に故郷のアリゾナのナヴァホ族居留地を目指す。その奥地には伝説の山があり、そこの伝説の湖で泳げばあらゆる病が治るという。マイケルは次第に彼を放っておけない自分に気づいた。彼は少年時代に最愛の兄をガンで失っていたが、実は苦しむ兄に懇願されて生命維持装置の電源を切ったのは彼だった。それが彼が医師になった動機だったが、いつしか金と出世のためにその初心を彼は忘れていたのだ。アリゾナにたどり着いたとき、乗って来た盗難車のバッテリーがあがり、二人はヒッチハイク。乗せてくれた中年女性レナータ(アン・バンクロフト)は神秘思想の信奉者で、マイケルを徹底的にばかにし、自分も博士号をもっているという。逃避行を続けるなか、ブルーの病状は悪化、マイケルは処置をするにも薬もなく、ブルーの拳銃をもって近くの病院の薬局に強盗に入る。その姿が防犯カメラに映り、ブルーとマイケルは警察に追われる身に。その報道に妻ヴィクトリア(アレクサンドラ・タイディングス)は心を痛める。ナヴァホ居留地の玄関、ユタ州境のモニュメントバレー。道路は検問で封鎖されているが、二人の乗ったキャデラックは馬の放牧をするナヴァホの青年たちに偽装されて検問を突破する。だが居留地に住むとブルーの言っていた祈祷師は、不動産詐欺で警察に追われて姿を消している、とその孫娘(タリサ・ソト)に言われる。彼女から聖なる山の場所を聞き、二人は山脈に分けいる。その二人を警察のヘリコプターが追う。追跡を振り切った二人の前に、祈祷師が現れる。もはや力尽きようとしているブルーを彼に託し、マイケルは自分が囮になってヘリコプターの尾行を引き寄せる。聖なる山にたどりついたブルーは、その湖へと走って行く。湖水に分け入ったとき、彼の姿は静かに、飛び立つように消えて入った。マイケルは逮捕され、ロサンゼルスに護送される。手錠姿の彼は晴れやかな顔で、空港に迎えに来たヴィクトリアを抱き締めた。

"ぬくみちほ"さんからのメイル:ナバホの大地が舞台となった映画です。この映画のパンフレットに訳書『ナバホ・タブー』が引用されました。懐かしい映画です。大人向けの本でネイティブ・アメリカンや南西部を舞台に書いたり訳したりしたものは、『ナバホの大地へ』写真・文(‘01) 理論社『俺の心は大地とひとつだ』訳(‘00) めるくまーる『ホワイトサンズ 白い風・白い時』(‘96)文 講談社『クレイジー・ホース』(‘98)訳 パロル舎 です。

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アメリカ映画「恋愛小説家」(1997年)

解説:ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハント共演の恋愛ドラマ。偏屈で嫌われ者のベストセラー作家と、バツイチで子持ちのウェイトレスが織りなす不器用な恋を、さりげないユーモアを交えて描く。誰かれ構わず悪態をつく、小説家役のニコルソンがハマリ役。甘く切ない女心を描き、書いた本はすべてベストセラーという恋愛小説家メルビン。しかし実際の本人は、異常なまでに潔癖性で神経質の嫌われ者。周囲に毒舌をまき散らし、友人は誰もいない。。そんな彼がある日、ウェイトレスのキャロルに淡い恋心を抱くが……。

潔癖家で毒舌の変人小説家が、なじみのウェイトレスや隣人との交流を通して人並みの愛を知るまでを描いたラヴ・ロマンス。主演のジャック・ニコルソン(「ブラッド&ワイン」など)、ヘレン・ハント(「ツイスター」)がそれぞれ97年度(第70回)アカデミー賞で最優秀主演男優賞・同女優賞を受賞したことでも話題に。監督は「愛と追憶の日々」でニコルソンと組んだ「ブロードキャスト・ニュース」のジェームズ・L・ブルックス。

ストーリー:マンハッタン。メルヴィン・ユドール(ジャック・ニコルソン)は人気恋愛小説家だが、実生活の彼は中年を過ぎていまだ独身の、潔癖症で毒舌家の嫌われ者の変人だった。そんな彼だが、ある日隣人でゲイの画家サイモン(グレッグ・キニア)の愛犬ヴァーデルをあずかる羽目に。街で拾ったモデルのヴィンセント(スキート・ウールリッチ)の仲間がサイモンの部屋を荒らして、彼に重傷を負わせたのだ。サイモンのパートナーの黒人の画商フランク(キューバ・グッディング・Jr.)はなかば脅してユドールに犬を押しつけるが、なぜかユドールはヴァーデルに心の安らぎを見いだす。それを契機に、毎日ランチに通うカフェのなじみのウェイトレス、キャロル(ヘレン・ハント)とまともに話を交わすようになるユドール。喘息持ちで病弱な息子を抱えたシングルマザーの彼女の境遇を知った彼は、彼女にひとかたならない興味を持ち出した。ユドールは、彼女が息子の介護で店での給仕を辞めないようにするためと称して自費で彼女に名医を世話。思いがけない親切にとまどいを隠せないキャロル。だが、息子が日に日に元気になって彼女の人生は一変、キャロルはユドールに感謝するが、そんな彼女の真情あふれる態度にも毒舌で応えたりするユドールの相変わらずの変人ぶりに彼女は呆れるばかり。そんな折り、サイモンは退院するが、高額の治療費と展覧会の失敗のためついに破産。絶望するサイモン。サイモンは長年絶縁状態にあった彼の両親に頼るべきだと判断したフランクは、郷里ニュー・オーリンズへの旅の同行をユドールに頼む。ユドールはゲイとの旅行だからひとりでは不安という口実でキャロルを誘う。かくして旅立つ3人。ところがキャロルとサイモンは初対面から意気投合、思惑が外れてユドールは腐る。気持ちが晴れやかなキャロルは夕食にユドールを誘う。ユドールは「君が僕の人生を変えてくれた」と初めてキャロルにロマンティックな告白をするが、ムード最高潮のところでつい要らない毒舌が出る。傷ついたキャロルはホテルに戻り、ユドールへの当てつけにサイモンの前で入浴しようとする。するとサイモンは彼女の裸身を見て絵心を取り戻し、たちまち以前の活力を取り戻した。翌朝。両親に会う必要がなくなった3人はニューヨークへ帰る。だが、キャロルはメルヴィンと仲たがいしたまま去ってしまい、メルヴィンは後悔に苛まれる。サイモンはアパートは差し押さえられたが、メルヴィンは彼を同居人として迎え入れた。初めて味わう気持ちに混乱するメルヴィンをサイモンが励ます。朝の4時。メルヴィンはキャロルの元を訪ね、ついに彼女に愛を告白するのだった。

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