Webサイトが新しくなりました。5秒後に自動的に転送させていただきます。
転送されない場合はこちらをクリックしてください。
www.fujii-junko.com

トップに戻る


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   コラム『カウンセリングの現場から』             【毎月2回配信】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 藤井 純子 Office カウンセリングルーム http://www.saturn.dti.ne.jp/~j6341005/

■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

               ◇◆◇ 1月のコラム ◇◆◇

              〜1日の始まりは朝の食事から〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□

最初のコラムですので、一番大切な食事についてお話しします。特に朝食について
は、どんなセミナーでも必ず話す内容です。
精神疾患のうつ病などは脳の病気なのです。脳内の神経伝達物質の機能が低下して
活力が不足となり、憂うつな気分になると現段階では言われてます。
この脳というのは、私達の体の中で最も栄養を使っている臓器です。寝ている間も
脳は栄養を使っているので、朝には栄養不足になっています。朝起きてすぐに元気
が出なかったり、なぜかボンヤリしているのは、脳に栄養が足りないからです。
更に朝は人間の体温も低くなり、体の働きが鈍くなっています。
そこで、朝は必ず朝食を摂って、脳や体に栄養を補いましょう!毎日3食のご飯を
食べますが、朝食が最も大切です。朝食抜きで1日の生活を始めるということは、
鍋を空焚きするようなもので、体に負担が掛かりとても危険です。
カウンセリングをしていて20代から30代の独身者に朝食の有無を聞いてみると
10名中8〜9名が欠食しているのが現状です。脳に栄養が届いていかないから、
学校や職場で「何となく元気がない」「物事に集中できない」となってくる訳です。
私は若い世代の方々に、うつになりたいのならこのまま朝食抜きでもいいけど、な
  りたくないのなら食べてきなさい、と具体的な実践アドバイスをします。
若手の多い某企業の技術部では、私のセミナーを受けた後、全員が朝食摂取を心掛
けてくれたところ顕著な反応が返ってきました。「大学の時からあまり朝食を食べ
ていませんでしたが、次の日からは少しでも食べるようにしています。午前中、ボ
ーッとする時間が少なくなった気がしています」「朝食が脳の活動に対していかに
大切であるかは、最近朝食を食べるようになったことで実感値としてわかった」等。
嬉しい限りです。きっと元気な社員が増えて、生産性も上がっていくことでしょう。
ちょっとした生活の習慣を変えてみることで、元気は取り戻せるのです。
食べることは生きること、です。どうかご自身の命を大切に生きていくためにも、
食事を丁寧に摂っていきたいものです。
寒中でまだまだ寒さが厳しいですから、どうぞお身体をご自愛下さい。

 (文責: 藤井純子)

■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

             『カウンセリングの現場から』
            ◇◆◇ 2月のコラム ◇◆◇
              〜 睡眠 について 〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□


 少し間が空いてしまいました。実はこの1ケ月間に、ふたりの生きることに
 疲れてしまった方からの最後の電話を受けました。そう、自殺未遂者の最後
 の生きたい!というSOSの叫びが私の携帯に入ったのです。緊急の指示と
 段取りをして、幸いにふたりとも一命は取り止めましたが、どちらも真夜中
 のことでした。少し心配だな、少し不安定だな、と思った方には、勿論、外
 来受診を指示して治療をスタートさせますが、と同時に万一の場合を想定し
 て、必ず私自身の携帯NO.を教えます。

 今回のコラムは、睡眠、寝るということについてです。こころが疲れていた
 り、自身では気づかないストレスを身体が感じると、人は質と量において、
 充分な睡眠が取れなくなります。カウンセリングの現場で、私が一番最初に
 確認する事は、前回書いた食事のことと睡眠のことです。精神的に疲労、更
 には過労状態になると、必ずといっていい程、睡眠障害がみられます。この
 頃寝付きがどうも悪い→入眠困難と言いますが、大体1時間くらいで寝つけ
 るのは正常範囲ですね。それが、2時間3時間経ってもなかなか寝つけない
 日が、週に3〜4日あると、昼間の生活に支障が出てきます。又、この頃ち
 ょこちょこ目が覚める→中途覚醒と言います。ひと晩に3回以上目が覚めて
 しまって、時計の針が1時間毎に動くのがわかる、等々。更に、この頃何で
 だか朝早く(4:00代頃)目が覚めてしまって、未だ早いからと思って寝
 ていたいんだけど、今日やるべき事やあれこれ思うと又寝ができなくて、そ
 のうち起床時間になってしまう→早朝覚醒といいます。大体、こころが過労
 してくると、この3つの症状が出てきます。全部出てくる人もいれば、ひと
 つふたつとさまざまですが、皆さん全く同じ症状を訴えます。

 カウンセリングをしていると、人間にとって、眠る、ということは最重要事
 項だとしみじみ思います。寝る=寝薬、でもあるのです。疲れきった脳を休
 ませる、というとても大事なことなのです。が、実際にはぐっすり眠れた、
 寝起きがすっきりした、という人は少数です。ご自身はどうですか。不眠の
 症状はありませんか?もし、ひとつでも該当する事項があれば、今の自分は
 精神疲労状態なんだな、と自覚して意識的に休息を取ったり、リラックスす
 る方法を自分にしてあげて下さいね。この初期の不眠というSOSを感じれ
 ば、真夜中の緊急SOSを私に発信することは、未然に防げるのです。

 年間に1,200名位の方々のカウンセリングをしていると、痛切に「眠る」
 という行為を丁寧に生活していかなくてはいけないな、と実感します。と同
 時に、その人が病んでいるか病んでいないかは、夜眠れるか、眠れないか、
 で極められると私は思います。どうぞ、質と量、どちらも良い眠りを大切に
 丁寧に取って下さい。

■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ◇◆◇ 3月のコラム ◇◆◇
            〜 子どものうつについて 〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□
     
 新年度を目前に控えて、この時期は環境が大きく変化する季節です。厚生労
働省の2003年の自殺者傾向の分析結果によると、月別では就職や転勤な
どで大きく環境が変わる4、5月に集中していました。一方曜日では月曜日
が多く、最も少ない土曜日の約1,5倍に上っていたようです。週の始まりや4
 、5月は要注意、という意識を持っていただきたいと思います。身近な人で、
少しでもいつもと違うなという異変を見つけたら、外来での治療につなげて
 もらいたいと切にお願いします。

 このところ企業でのカウンセリング現場で、お子さんの相談が多くなってき
ているなと感じています。企業でメンタルヘルスを導入するに際し、私は必
ずセミナーを実施します。日本にはカウンセリングを受けるという文化がな
い上に、精神疾患に対して根強い偏見が存在しているからです。そのセミナ
ーの中には「うつ病とは」という基礎知識を必ず話すのですが、それを聞い
たお父さんからの相談を受ける機会がこのところ多く感じられます。もしか
して家の子どもはうつなのではないか、という内容です。症状や生活状況を
伺い外来につなげていますが、結果としてうつでした、という報告をよく聞
くようになりました。2003年度文部科学省が日本で初めて「子どものう
つ」に関する実態調査を行ないました。調査リーダーで日本ではまだ少ない
児童青年精神医学を専門とされている北海道大学助教授であられる傳田先生
の調査結果によると、小学生で12人に1人、中学生では4人に1人がうつ
の傾向がある、という衝撃的な内容でした。詳細は著書の中で述べられてい
ますので省略致しますが、やっぱり多いんだな、という実感は毎日のカウン
セリングの現場で体験しています。本来うつ病というのは、心も身体も疲れ
果てた状態、ということです。こころと身体全体の病気、と理解していただ
きたいと思います。大人と子供のうつに違いはありません。同じ症状が身体
にもこころにも表れます。但し、子どもの場合には大人のように体調の不調
を自覚してうまく表現、訴えができない、ということの違いがあるように思
います。大人であれば、憂うつ、という一言で表現できる症状が、なかなか
うまく表現できずに登校拒否やひきこもりやイライラして周囲に当たったり
します。だからこそ、身近な親が子どもの変調に早く気づいてあげて欲しい
と思います。

傳田先生が教示する親が子どものうつをチェックするポイントとは、?ちゃ
んと寝ているか ?食事を食べているか ?自分の好きなことを楽しめてい
るか です。これは大人でも一緒です。うつの初期の身体症状としては、眠
れない・食べれない・疲れが取れない・今まで興味関心があったものがなく
なる、が挙げられます。今やうつというのは、大人も子どもも家族全員が対
象になる精神疾患だと言えます。正しい知識で早期発見・早期治療に結びつ
けていきたいものです。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『カウンセリングの現場から』
            ◇◆◇ 4月のコラム ◇◆◇
            〜 私の若い親友について 〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□
     
 4月新生活がスタートした方々も多いと思いますが、体調はいかがですか?
 生活のリズムはできましたか?きっと緊張した毎日と思いますから「疲れた
 な」と感じられる正常範囲内に、早めの休息を取って下さいね。セミナーで
 いつも話すのですが、五感や疲れたな、眠いな、お腹すいたな、が感覚とし
 てある範囲が正常範囲です!過労になってくると、その感じがわからなくな
 ったり感じなくなったりするのです。それでも走り続けていくから、悲しい
 過労死があるのです。どうか感じられるうちにセルフケアをお願いします。

 今月は私の若い親友についてです。私が今年47歳、彼女は19歳。年の差
 はありますが、見えない絆で繋がっている大切な親友がいます。
 私と彼女との出会いは、ちょうど2年前の平成15年3月5日。私が顧問を
 している彼女のお母さんが勤めている会社のカウンセリングルームで初めて
 会いました。企業でのカウンセリングをしていると、家族の問題で面談に来
 る社員の方々も多くいらっしゃいます。彼女のお母さんもそんなひとりでし
 た。可愛い大切な娘がリストカットをしていてほとほと困っている、という
 内容でした。
 早速そのお嬢さんに面談をしました。入室して席につくと、彼女はじっと私
 の顔を見てました。とても警戒している様子でした。と同時に、母親から言
 われてきたのでしょう、リストカットをしてきている両腕の洋服を上げ始め
 ました。私は、その両腕を見た途端、そのひとつひとつの傷跡が彼女の悲痛
 にも似た叫びのように感じ涙が止まりませんでした。「こんなにも」という
 程、彼女の外側の両腕には無数のリストカット跡があり、腕の内側も外側ほ
 どの深さではなくても、相当数のためらい傷がありました。私は思わず両手
 を彼女の両腕の傷に当てていました。外側の傷は相当深くカットされていて、
 少女の柔らかな皮膚は既に無く、象のおしりのようなごわごわした分厚い皮
 膚になっていました。私は今でもあの時の彼女の腕の感触を忘れることはで
 きません。私は、手を当てながらずっと泣いていました。きっと随分と長い
 時間だったような気がします。その無言の空間に言葉を発したのは、カウン
 セラーの私ではなくて彼女の方でした。「先生は、どうしてリストカットし
 たか聞かないんだね」と。彼女は今までリストカットした腕を見せる度に繰
 り返されてきた恒例をしない私に質問を投げかけたのです。「今日はいいよ、
 話したくなったら言ってみて」と応えました。それから月1回毎の面談を希
 望してきました。確か3回目くらいの時に、彼女は理路整然と今までのこと
 を話してくれました。とっても聡明な賢い少女でした。友達も親も埋められ
 ない寂しさがあってリストカットをし続けてきたこと、死と生について考え
 てきたこと、家族のこと、友達のこと、等々。堰を切ったように語り出しま
 した。そして彼女は最後に、「ずーっといい子でいて、親の前でも、学校で
 も。だから本当の自分がどこにいるのかわからなくなって。リストカットを
 して流れる血が好きなの。あのにおいとドロッとした質感。それを見て本当
 の私がここに生きてるんだ、って確かめるの」そう彼女は教えてくれました。
  
 あれから2年。去年の夏には初めて半袖を着て来ました。太陽光線にはまだ
 まだ痛々しい両腕でした。長袖の方がいいんじゃない?紫外線が痛そうだよ、
 と言う私に「もういいんだ先生。隠すのやめたの。私はこの腕をもった私だ
 から」ときっぱりと言い放ちました。私の方が戸惑うくらいのさっぱりした
 顔で。その間、恋愛ではらはらさせられたり、憂うつ感や不定愁訴で外来受
 診を指示したり、一緒に2年を過ごしてきました。リストカットの実行頻度
 は、行ったり来たりでしたが、徐々にその数は減っていき、両腕の皮膚は人
 間の皮膚らしい真皮が再生し始めてきました。深く刻まれた跡は、若さの威
 力で次第にその溝も埋まっていきました。
 いよいよ進路を決める時期になった時、彼女は「私、心理学を勉強すること
 にした」と決めた進路を報告してくれました。「先生と出会ってそう決めた
 の」と。この時程嬉しかったことはありませんでした。元々成績優秀な彼女
 は、志望大学を学校推薦で見事に合格を勝ち取ったのです。
 
 この春近況の電話やメールが入ってきましたが、声も元気で大学生活を満喫
 している様子が伺えました。本当に嬉しい出来事でした。彼女の洞察力は凄
 いものを天性として持っているし、自分がいろいろと逡巡しながら魂の軌跡
 を経験しているからきっと相手の心根に響くカウンセラーになると信じてい
 ます。私よりもずっと懐の深い先生になれると応援しています。今から将来
 が楽しみです。ずっと見守っていこうと思っています、親友として。

 毎日毎日カウンセリングをしていると、感じることがひとつあります。それ
 は、落ち着く居場所が無い人が多いな、という事です。自分が本当の自分で
 居られる安心できる場所、本当の自分を受け入れてくれる人、がいない人達
 が多い、と。世の中でたったひとりでいい、本当の自分をわかってくれる人
 がいるだけで、人は生きる力が湧いてきます。そんなひとりでありたいな、
 と日々思いながらカウンセリングをしています。

 少し長いコラムになってしまいましたね。読んで下さってありがとうござい
 ました。
  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                   『カウンセリングの現場から』
                    ◇◆◇ 5月のコラム ◇◆◇
                    〜家族が燃え尽きないように〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□

 皆さん、お元気ですか? 新緑のこの季節、杉花粉もようやく下火になり、
 清々しい空気を身体一杯に吸い込みたいですね。  

 うつの患者さんの中には、この時期は地球がザワザワしていて落ち着かない、
 という方もいらっしゃいます。新芽があちこちで伸び始める季節をそう表現
 するのですね。な〜るほどね、と感心したことがあります。

 今月は、うつの患者さんのいる家族の対応についてです。
 企業でのカウンセリングをさせて頂いていると、度々家族の方々との面談が
 行なわれます。うつになって1ケ月の自宅療養が必要になった社員の家族へ
 アドハイスをしたり、家族が近況を心配して相談に見えたり、いろいろなケ
 ースがあります。

 私は、精神疾患の患者さんにとって家族こそ本人を支える土台だ、と思って
 いますので、家族の対応にも全力で臨みます。
 その社員さんは1ケ月の自宅療養が必要となり、奥さんから対応のアドバイ
 スを受けたい、ということでした。ご主人の診断を受けて、彼女はうつ病と
 いう病気を調べて何とか理解しようと努力を続けていました。
 「頭で理解はしていても、病気で元気がない主人に対して、私だって大変な
 のに、何で私ばっかり、という感情がどうしても無くならない」との訴えで
 した。このように家族の方々の心労は、想像を絶する程大変なものが存在し
 ます。

 私はまず、彼女の努力に敬意を表し、心労を労いました。そしてから、病気
 の基本的な知識、回復は三寒四温で波があること、自宅では無理や気遣いは
 あまりさせないように、適度な距離を持ちながら、温かな無関心の意味等々
 をアドバイスしました。
 そして、彼女自身へのご褒美を忘れないでね、と添えました。うつの本人を
 支える家族の方々を多く見ていると、一緒に溺れてしまい共にうつになって
 しまったり、懸命に支えていて燃え尽きてしまったりする家族を沢山知りま
 した。

 家族の支援こそ大切だな、というのが実感です。共倒れにならないように、
 専門家として支えていくことも産業カウンセラーの大事な業務だと痛感して
 います。

 ご褒美というのは特別なことではありません。少しの時間でもいいから、自
 分だけの為の時間を作ること、です。でないと毎日が辛く重くなってしまい
 ます。

 彼女はこの話しを聞いた途端、「そうですよね、がんばって踏ん張っている
 んだから、ご褒美あげてもいいんですよね」と、それはとても嬉しそうな顔
 をしていました。

 少し元気になった彼女を見て、この瞬間からご主人の本格的な治療が始まる
 んだ、と私は思いました。
 どんなに良い医療スタッフがいても、やはり土台となる家族が揺らいでいた
 ら、いい治療は届きません。何と言っても、家族!です。家族に勝る支えは
 ありません。

 今、うつの患者さんを支えている家族の方々のご苦労は筆舌に尽くしがたい
 ものがあると思いますが、必ずその思いは通じていますから、どうぞご自身
 にご褒美をあげながら、たまには真っ青な青空に向かって深呼吸をしながら、
 一緒に支援していきたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『カウンセリングの現場から』
            ◇◆◇ 6月のコラム ◇◆◇
        〜昨年のデータから と 学会報告PART1〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□
     
 毎年6月は、昨年のデータが発表される月間です。
 今年もまた、過去最悪更新の結果でした。

 * 昨年1年間の全国の自殺者数−32,325名
    7年連続で3万人を超えた。
   男性=23,272名
   女性= 9,053名           (6/2警察庁発表)

 * 仕事が原因で精神疾患を発症したとしての労災申請件数−524件
    過去最多。
   認定件数−130件
    過去最多。            (6/17厚生労働省発表)

 日々メンタルヘルスを普及推進している現場の当事者としては、あまりに
 も厳しい現実を数字で突き付けられた思いでいます。
 何としても自殺者の歯止めをかけなければ、との思いは、全ての関係者の
 祈りにも似た心境だと思います。

 本日も、午前中に職場で4名のカウンセリングの後、急いで宇都宮に戻り、
 午後からは管理職対象のメンタルヘルスセミナーを実施させて頂きました。

 最近ではもう既に来年3月までの予定が埋まっているものですからなかなか
 日程が取れずに、午前午後とセミナーや面談の掛け持ちをして動いている現
 状です。

 どの職域の現場でも、精神疾患の社員を抱えた上司が、その方の職場復帰に
 いろいろと苦慮されながら、プレイングマネージャーとして日頃の業務をこ
 なしている、というのが実態です。
 本当に毎日が大変な中で部下のマネージメントをされています。

 そんな上司には頭が下がる思いが致します。それとは反対に、上司自身がス
 トレス源で、それに本人が全く気がついてなく、周りの部下がメンタル不全
 の精神疾患になっている方々も沢山いらっしゃいます。
 組織のいろんな断面が浮き彫りにされる渦の中で、私は今自分に出来得る範
 囲の事を、ひとつひとつ着実に遂行していこうと決めて日々の業務をしてい
 ます。

 先週末、日本産業精神保健学会に出席してきました。メインテーマに「生産
 性と人間性」を掲げ、産業分野で職場におけるメンタルヘルスに関係してい 
 る医師・保健師・看護師等多職種で構成され、働く人のメンタルヘルスの保
 持増進を図ることを目的とした学会です。

 ・長期疾病休業者への精神医学的な理解と戦略−−難治性うつ病、統合失調
  症、神経症、パーソナリティ障害、の各視点から 
 ・産業精神保健における外来森田療法的概念の活用
 ・職場復帰支援−−業務遂行能力の回復が遅れているケースを中心に
 等々、示唆に富んだ現場からの報告や調査内容がとても勉強になりました。

 産業カウンセラーを取得した後の今の方が、はるかに学んでいるのが実感です。
 現場での臨床を積めば積むほど、学会等に出て最新の情報を吸収し研鑚してい
 く必要性を感じています。

 来月には日本うつ病学会も開催されますので、又ご報告致します。

 梅雨時で湿度も多く不快な天候が続きますが、
 どうかお身体をご自愛なさって下さい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ◇◆◇ 7月のコラム ◇◆◇
           〜緊急提言! 経営幹部の皆様へ〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□


 コラムが大変に遅くなり、申し訳ありませんでした。
 今月は、上記の標題で発信しなければ、との思いになる様々な出来事に遭遇
 致しました。

 今般、海外でのカウンセリングを実施してきました。日本の海外駐在員の方
 のご不幸があったとの報告を受けての、私自身が志願しての渡航でした。
 日程を凝縮して、全駐在員の方々の面談を実施し、早期教育が再発防止には
 急務と判断して夜のセミナーを行ない、現地の病院へ出向いての情報提供と
 治療依頼等々を行なってきました。

 原因は、上司によるすざまじいパワーハラスメントでした。
 詳細は記載できませんが、それでなくても心理的負荷が高い海外勤務の社員
 の方を、守るどころか精神疾患を発病させるまで追いこみ、尊い命を無にさ
 せてしまった痛ましい現実でした。

 この様な上司によるパワーハラスメントによって精神疾患を誘発させ、現に
 治療を受けている方々というケースに、私は毎日のようにカウンセリングル
 ームで遭遇します。

 どこの組織であっても、大なり小なり必ずパワハラは存在します!
 その現実を、どうか経営者や幹部管理職の方々は、わが身の事として現実を
 直視して、受け入れていただきたいと切望致します。

 ○ 上司のパワハラによって、体重が10kg以上減少し、吐き気・頭痛・
   めまい等の強い不定愁訴が出て、睡眠障害、食欲低下になり、その上司
   が傍を通ると手が震えて動悸が激しくなってしまった方がいました。外
   来での診断結果は神経症でした。

 ○ 前任上司によって毎日毎日追い詰められ、数ヶ月前には、縄を手にして
   首にかけてしまった部下の方もいらっしゃいました。

 ○ 上司の執拗な人権を無視したパワハラによって、同職場で数名のうつ病
   が発症して何名かは退職せざるを得ない程になってしまいました。が、
   その現実を経営者は知らないために、そのパワハラ上司は次期昇格して
   いきました。

 ○ パワハラ上司が行なう会議では、毎回きまって怒鳴れ叱られるだけだか
   ら、参加すること自体が相当の負荷になり、閉塞感・やる気がなくなっ
   ていき、抑うつ状態となってしまいました。
                             −−−−等々。

 こういうパワハラ上司に、私は産業カウンセラーとして面談を申し入れます。
 今後2度と犠牲者を出さないための施策として最重要だと確信しているから
 です。

 面談をしてみると、共通事項が見えてきます。パワハラ上司のその上の上司
 や役員には大変に評判・評価が良い。ごますり上司の方もいます。重篤な慢
 性身体疾患がある方。

 多く見られるのは、家庭が不安定の方、です。シェルターや癒しの場である
 筈の家庭にいろいろ抱えている感情があって、それを家庭で処理出来ずに職
 場に持ち込んでいるのです。

 自分にもう精神的余裕がないから、当り散らす・怒鳴り散らす等々感情のコ
 ントロールが不可になり、職権を乱用してストレス発散を職場でしているの
 です。

 面談した上司・役員等に、私は何人にもご自身が心療内科や精神科へ受診す
 る指示を出しました。そうしなくては、部下が全て犠牲者になるからです。

 又そんな進言は、現状をわかっていても同じ職場の方々は絶対に言えません。
 解雇を覚悟しなくては言える内容ではないからです。

 だから、第3者の進言が必要なんだと思います。

 精神疾患の切り口からその組織の経営マネージメントをしていくこと、働く
 命が軽んじられている職場環境に最初の風穴を開けることこそが産業カウン
 セラーの仕事であります。

 そして、経営者の皆様が現実を真正面から受け止めて、改善改革をしていか
 ない限り、職場のメンタルヘルスは無力と化すと実感しています。

 だから私は、セミナーを役員会で実施させて頂いています。
 EAPと同時にMAPも最重要事項です。

 経営者や幹部管理職の方々へ緊急提言させて頂きたいのは、絶対に命を追い
 詰めてはならない、命より重要な仕事なんてあり得ないし、命より重い役職
 なんて決して存在しないんだ、という事です。

 私の父も経営者でした。私自身も長く法人経営をしてきました。
 だから、経営者や幹部管理職の皆様の耐え難い苦労を日々こなしながら経営
 をされている現実はよくよく我が身を以ってわかります。

 それでも敢えて提言するのは、あまりにも命が大切にされていない、という
 現実がどんな組織にも身近にあるからです。

 私は、今月から経営者や幹部管理職の方々へのカウンセリングを広報し始め
 ました。

 アメリカなどは、経営者には弁護士とカウンセラーが必須アイテム、という
 社会ですが、日本の経営者もそろそろ専任カウンセラーの存在が必要な時代
 になってきたのではないかと思います。

 と同時に、私が経営者の方々にお会いして実感するのは、真剣な覚悟を持っ
 た進言を待っている、ということです。

 このコラムを読んでいる産業カウンセラーの同志の方々に、命を守る真剣さ
 を組織TOPの方々に言っていくことをお願いします。

 どうぞ、働くひとりひとりが「気持ち良く働いて、良い仕事が出来る」ため
 に今何ができるのか、を一緒に考えながら社員の方との人間関係を再構築し
 ていただきたいと思っております。

 今日は台風一過での熱風がきています。温暖化で35℃と聞いても驚かなく
 なってしまいましたが、夏本番ですので、水分補給をしながら踏ん張ってい
 きましょう、ね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ◇◆◇ 9月のコラム ◇◆◇
             〜学会報告PART2〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□

 すざまじい猛暑が続いておりますが、いかがお過ごしですか?
 体調など崩していませんでしょうか?
 (8月コラムは夏季休暇にてお休みさせて頂きました)
  
 過日7/14・15に日本うつ病学会がありました。
 前回の6月に引き続き、学会報告PART2をお伝え致します。

 今回が第2回目になる日本うつ病学会総会ですが、毎年とっても現場で為に
 なる内容が多く、参加者も医師に限らずコメディカルの方々も沢山参加して、
 熱心に勉強されていました。

 濃い内容の中でも、私自身がとても感銘を受けたものがありました。
 特別講演「私のうつ病診療」と題した名古屋大学名誉教授の笠原嘉先生の講
 演でした。

 笠原先生といえば、精神神経科、うつ病の第1人者の大教授でいらっしゃい
 ます。心理職を志す者であれば、一冊は笠原先生の本を持っているという、
 いわばうつの教科書を著する先生です。

 私も何冊も勉強していますが、相当数の臨床に裏付けられた諸理論は、うつ
 治療の骨子となるものばかりです。

 会場で初めてその笠原先生、という人格とお会いすることができました。
 正直、今まで出会ったことのない崇高な人格者でいらっしゃいました。
 個別に話すことはありませんでしたが、講演中のひとつひとつの言葉づかい
 や振る舞いからにじみ出る高尚な人格、に私は終始圧倒されていました。
 
 こんな精神科の先生もいらっしゃるんだ、と。
 先生の話を聞いているだけで、患者さんはきっと回復するだろうな、と実感
 しました。
 
 1928生まれですから既に77歳という高齢ですが、背筋もピンと伸びか
 くしゃくとされていました。現在も外来診療をされているそうです。先生が
 うつ病に関しての講演をされた最初が昭和43年だそうです。

 産業分野で精神保健の活動をされたのが昭和50年頃だそうですから、日本
 のうつ治療の大先生です。でも少しもおごることなく、「こんなふうに存じ
 上げます」と丁寧な日本語で講演をして下さいました。

 講演内容では、「うつ病は軽症だからといって、早く治せるわけではない。
 むしろ軽症だから放置される危険の方が大きい。

 私のここ十年の関心は、6〜12ケ月の間に治癒しない慢性軽症うつ病の人
 をどう社会復帰させるか、にあった。うつ病は、今後益々軽症慢性型が増え
 ることだろう。

 私はこの頃、うつ病は軽症でも3年はかかりうる病気、と考えることにして
 いる。だから本人だけでなく、家族へのフォローも必要になってくる。」
 「うつは、薬が勝手に治してくれると思ってはいけない。医師と患者さんと
 の信頼関係があって、初めて治癒していくもの。

 うつを治す上で大事なことは、患者さんと同じイメージを共有すること、が
 大切なんです。」「うつ病の自殺予防に我々が出来る実行策は何かと言えば、
 再発患者の再初診を一人でも多くすることです。

 なぜなら、再発時に受診をためらう人は少なくなく、困ったことにその時は
 自殺念慮が高く、病識も不十分になり、自殺決行される危険も高いからです。

 軽症うつ病も、この時だけは軽症ではないのです。妄想的ですらある。」
 「早い段階で、心理的な休息を取らせることが大切。職場から少し離れるこ
 とを指導したり、土日は人に会わずにごろ寝を勧めたり。」

 最後に私のこころにずっしりと残った教示は、「うつ病とというのは、その
 人、人間全体の問題。だから、家族のことも含めて診ていってあげなさい。
 うつを治療する者というのは、治らない人の傍らに居る、動じないで居る、
 ということが医師の極意です。薬でパッと治すことだけが、医師の役割では
 ありません。」
 
 講演を受けていて涙が出た、という経験を、私は初めて体験しました。

 笠原教授の足元にも及びませんが、その崇高な人格に接することが出来た者
 のひとりとして、志を持って毎日の臨床を続けていこう、と魂に刻んだ日で
 した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ◇◆◇ 10月のコラム ◇◆◇
             〜復職支援指導のポイント〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□

うつ病の基礎知識−−うつとは、脳の病気:神経伝達物質の機能低下
うつ病の治療−−−−1休養 2服薬 3周囲のサポート
復帰〜精神医学の捉え方:完治=寛解 →完全に治してから復帰=非現実的
            回復=症状の消失が2ケ月以上続くこと
            症状がある程度良くなったら復職を検討する
復帰の段階とは−−−・うつ病初診患者の回復率(日本うつ病学会発表)
            1ケ月以内=20〜30%
            1〜3ケ月以内=50%   
            18ケ月でも回復していない=15%
            治療してうまくいけば、3ケ月程度で復職を考える
          ・再発することが多い病気(同上)
            1年以内再発=30%
            5年以内=40〜60%
            再発まで2年半〜5年:中央値

復帰の大前提
 ・症状が良くなっている →本人の感覚が大事(復職面談時に要確認)
              50%〜60%回復=×−−本人が復職を焦る
              80%〜90%回復=OK
 ・睡眠が完全に回復している →質も量も取れているか
 ・朝の起床時間とその時の気分は重要
 ・生活リズムが戻っている →2W位は、朝出社のリズムで生活指導を促す
 ・本人の復職に対する意思が有るか無いか−−復職への焦り、周りへの懸念

医師の職場復帰可能診断書について
 産業カウンセラーの立場では、絶対に鵜呑みにしてはいけない
 ダメ元で復職診断書を書く場合もある
 医師は患者の会社業種や仕事の詳しい業務内容まで理解は不可能(産業医は可)
 →会社は会社で本当に復帰可能かどうかを吟味する必要がある!

主治医からの意見収集に関して、医師との面接をする場合の注意点
 全て本人の同意を得てから、必ず事前APO取り後訪問すること 
 医師との面接費用はだれが支払うのか(会社か本人の健康保険使用か)
 謝礼は常識的に絶対必要〜今後のためにも

会社としての復帰判断における重要事項
 ・働く意欲の有無
 ・一人で始業時間に通勤可能かどうか
 ・決められた勤務時間の間、ずっと会社に居られるのかどうか
 ・仕事ができるだけの注意力や集中力が回復しているかどうか
 ・昼間の眠気がないかどうか
 ・その日の疲れがその日のうちに回復しているかどうか〜その週で回復可か

復職面談をしてみて、本人が諸事項に耐えられない場合には、
 復職不可能の判断を会社へ提出する
 →主治医が可でも復職不可の場合(業務内容や職場の受け入れ体
                  制等々の問題にて)は多々発生する!

受け入れ側としての判断事項
 戻しても良い職場環境が準備できているのかどうか→産業カウンセラーが確認
 無理:生活リズムを取り戻すためのリハビリを、自宅療養の中で指導する

復職可能かどうかの判断は、会社で独自に判断していかなくてはならない
 その為の必要な情報収集や本人との面談、職場調整等が重要
 
復職プログラム作成のノウハウと◎注意事項
 ・2〜3ケ月に渡る段階的な復職プログラムを作成する
  cf)1:1/ 1〜15 8:30〜12:00 半日勤務
     2:1/16〜末日 8:30〜15:00 6時間勤務
     3:2/ 1〜末日 8:30〜17:30 通常勤務
     但し、1〜3期間は残業厳禁とする
 ・3ケ月間は、残業無しのプログラムが最良
 ・1ケ月以上の休職者=少なくても3ケ月位は復帰に時間がかかる
 ・うつ病疾患者は、断れない/noと言えない方が多いので、余計な仕事の負荷が
  かからないようにプログラム作成は復職には大切

 ◎リハビリ勤務の取り扱いについては、メンタル導入時に会社としての
  取り扱いを事前に決めておく必要がある 
    →リハビリ勤務期間の給与の取り扱い、人事考課の取り扱い、
    有給や傷病手当の取り扱い、通勤途上の災害やケガの取り扱い、等々
    cf:試験出社の期間は療養期間と含める為、勤務ではない、
       従って給与対象外とする 等
 ◎会社と労働組合へ、精神疾患社員の自宅療養期間、リハビリ勤務期間の取り扱い
  に関する、就業規則の附則を作成するように指導する必要がある
  会社と労働組合の合意として「健康管理規定」等、枠組みやシステム作成の助言 
  が重要になる →メンタルヘルスの推進、浸透には不可欠

復帰先の職場について
 ・原則は、元の職場へ復帰させる−−慣れている業務の方が負荷軽減になる
 ・配転が望ましい場合でも一旦は元の職場へ復帰させて、定期異動で異動させる
 ・上司のパワハラで精神疾患になった場合=人事と調整して、復帰から配置転換
  先の新職場とする

復帰時の業務内容
 ・病気の症状の改善と、業務遂行能力の改善には、ずれがある!
  半年位は60〜70%程度の能力しかない、うつの回復=三寒四温
 ・半日業務期間:指定業務無しで、身の回りの片付けやメールの整理、休んでいた
  間の業務の申送り、単純作業、等→1日居るだけでもぐったりする程疲れる!
 ・リハビリ期間中厳禁の業務内容
  ものを考える仕事、突然変化する内容、期限がある仕事、出来なかった場合に
  多人数が負荷を追ってしまう業務、責任がある仕事、対人関係が係る仕事 等
  cf:皿洗いや洗濯は可、食事メニューを毎日考えるは不可

会社はどこまで精神疾患の社員を面倒見なくてはならないのか
 ◎期間を決めて復職支援をしていくことが最重要=2〜3ケ月位
  業務上の配慮を上司や周囲の社員へ依頼するのだが、限りなくは無理
  →あいつだけ何で、我々はこんなに負荷がかかって、という不満が発生する
   面倒見の良い上司程、気を使いすぎて上司自身がうつになってしまう
   周囲が巻き込まれてしまい、士気の低下・不調者の発生に直結してしまう
  2ケ月で無理なら延長も可、とするが、+1ケ月の範囲が限界 →現実 
 ◎復帰に際しては最大の支援を約束、会社の支援も理解も指導する、
  支援プログラムも延長1ケ月は可能を言う、但しラストチャンス、であること
  を本人へ申し伝える、支援期間内で復職ができなかった場合には、治療に専念
  してもらうことをはっきりと申し出る →本人も本気で治そうと意志が固まる 
   
復帰後のフォローアップが再発防止のポイント
 ・3ケ月を過ぎて半年位経つと、バリバリ以前のように働けるようになるのが多い
  ので、無理をしがちになって再燃が出てくる →3ケ月間は要注意期間
                        3ケ月以内にぶり返す事が多い
 ・再発=一旦良くなったものが、又ぶり返すこと
  再燃=良くなりかけたものが、元に戻ってしまうこと
 ・復帰後のフォローアップ面談:半年位までは毎月1回面談実施
  以降は2ケ月毎に面談1年〜2年間実施(藤井)
 ・フォローアップ面談で必ず指導すること
  1:服薬:水での服用を指導、軽快になっても途中で止めないこと
  2:外来受診は医師の指示に必ず従って通うこと
  3:アルコール厳禁指導:記憶障害の発生、薬の作用が強く出る場合がある
   
復職がうまくいかない場合
 ・職場の問題:受け入れ体制の不備、業務の内容に無理がある →上司へ指導
 ・本人の問題:気質、性格の問題で長引く(抑うつ神経症、神経症系)
         →認知療法を早期の段階で指導開始する
          創元社 大野裕著 「こころが晴れるノート」自習帳
          服薬と外来の中止 →厳重指導〜半端な治療では回復不可能
 ・医師との関係:相性が合わない →状況を確認して転院の指示を出す場合もある


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ◇◆◇11月のコラム◇◆◇
           〜うつ病は、誰が治すのか〜
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□

  心理職が多忙なのはあまり良い事ではないのですが、
  毎日社会の断面を垣間見ているような、
  時にはやるせない場面にも多々遭遇致します。

  うつ病は一体、誰が治すのか
  最近いろんな場面に出会うと、
  ふっとこんな素朴な疑問が持ち上げてきます。

  根本は、本人です。
  そして、治療をして下さる医師、医療関係者、
  それに加えてより回復が早いのは、
  家族・職場・周囲の方々の理解と支援、
  となります。

  このとてもシンプルな当たり前の事に気づかない方や組織が多い、
  という現実があります。

  産業カウンセラーとして、個人や組織に対して、
  相当な気遣いと配慮、支援をしていっても、
  当の本人が本気で治そうと思わない。

  当の組織が、自分達の組織のおかしさから目を避けようとしたり、
  精一杯の助言を聞き入れない場合が多々あります。

  そればかりか、逆に真実を歪んで受け取ったり、
  こじれさせる場合すら見られます。

  私自身その場合には、責任を遂行する事が不可能、
  と判断をせざるを得ませんので、
  どんなに懇願されても、契約の継続をお断りさせていただいております。
  
  カウンセリングを行なうという事は、
  労働科学研究所の鈴木安名先生によると、
  感情労働を行なっている事だそうで、
  自分のホンネの感情を抑える代わりに対価を頂いているという事だそうです。

  自分の感情をコントロールして、顧客に満足感を与えるという事は、
  相当な脳の疲労と消耗を発生させます。

  我々カウンセラーは、相手の心に寄り添って共感すること、
  が求められます。
  資格取得の際に、徹底的にトレーニングしてきたことです。

  この時発生する共感疲労は、同時に自分の心が傷ついたり、
  過労状態になったりするリスクを同時に抱えている、という事でもあります。

  自分の命を削ってカウンセリングをしている、という現場は毎日あります。

  その中からどうしても
  個人や組織に提示しなければならない事を進言しているのに、
  全く聞く態度もなく、逆に非難を受けたのでは、
  私自身が成り立たなくなってしまいます。

  組織にとっては、耳が痛いことや傷口を露呈する場面も多々出てきますが、
  今までにおいて、組織が見事に生まれ変わった所というのは、
  そういう進言した内容を真摯に受けとめ、
  本気で取り組み始めた組織だけです。

  個人においては、こんな方もいらっしゃいました。

  うつの症状が長く続いていた方でしたが、私が顧問になってからは、
  ご自身が随分前向きになって、
  いろんな工夫をしながら治療を続けて下さいました。

  ある日私の所に来て、
  「僕はがんばり過ぎちゃったから薬を飲むようになったので、
   がんばり過ぎないようにこれを持ってるんだ」と見せてくれたのは、
  必ず使用する家のカギにつけたマスコットでした。
  「これを見る度に、がんばり過ぎないんだ、って思うんです」と。

  彼はほどなく職場復帰をして、今では元の元気を取り戻しています。
  面倒見の良い彼は、きっと懐の深い管理職になっていくと思います。
  そんな社員の方を見ると、素直に真摯にご自身の病気を認知して、
  付き合っていったかたの方が、回復もより確実な気がしています。

  個人にしても組織全体にしても、病症を治そう!
  という意志が無いところには、
  治癒は絶対に来ない、と私は断言したい心境です。

  これは精神疾患に限らない共通項だと痛感しています。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

トップに戻る