(OPTION-7)Auto-Calibrator for 7MHz CW プリミックスTX 

2016.09.16

(K10)7MHz CW受信機(Radio)と、(OP-6)プリミックス方式CW TXには、トランシーブ機能がないので、ボタン/ワンプッシュで自動的にキャリブレーションできる機能、Auto-Calibrator(基板31x93mm)を試作しました。



Auto-Calibrator 基板キット を頒布準備しました。ご希望の方は、以下ページをご覧ください。
◇PICの頒布 (OPTION-7)Auto-Calibrator for 7MHz CW プリミックスTX 

TX_VXOのチューニングVR、AF VRを 前面パネルから省略できるので、幅100mmパネル面に必要機能が入り、ちょっと小さめでしたが、手元にあったタカチのプラスチックケース(ABS樹脂)SY-110A(110Wx46Hx140D)に、RX基板、TX基板、Auto-Cal基板をコンパクトに組み込みました。
プラ・ケースにトランシーバを組み込むのは、初めてでしたが、導電遮蔽性と内部温度の上昇(VXO周波数変動)に課題があるようです。これらの対策についての実験も行いました。

金属ケースで作る場合は、ちょっと大きめの、リードのPK-14(120Wx70Hx140D)、PK-4(150Wx60Hx130D)があります。

左の写真が外観
RX基板、TX基板とAuto-Calibrator基板をリードのプラ・ケース/SY-110Aに組み込み。
TX_VFO Tuningと AF_VRを省略できるので、100mm幅の前面パネルには、RX Tuningつまみと周波数表示LCDとKey Jack、押釦SWのみとなった。

左側の3つの押釦SWが AF-電子VRの+/-ボタンと TX_VXOのAuto-Calibrationボタン。
Auto-Calibを1〜2秒間押し続けると、受信周波数にキャリブレートし、Calib LkのLEDが点灯し、SPからは、ビート音が聞こえる。
Auto-Calibボタンを押さない限り、TX_VXOの周波数は動かない。
プラ・ケースだが、ABS樹脂で厚さ3mmあり、見た目には強度的に問題ない。



左の写真が上蓋を外したときの内部(7MHz CW Radio基板側)

中シャーシ(幅95mmx1mmt)を挟んで、 裏側に プリミックス方式TX基板と Auto-calibrattor基板を組み込んだ。

中シャーシと前面/後面パネルは、ビスナットで一体構造。 RX,TX両基板を隙間なく、押し込んだ感じですが、ケース上蓋 も下蓋もすっぽりと外した状態で動作確認できるので、メンテナンス性に問題はない。



下の写真に、上下カバー蓋を外した状態での、内部下側を示す。小型SPφ50mmも組み込んだ。
プリミックス方式TX基板(左側緑色)と Auto-calibrator基板(31x93mm)を、Al遮蔽板を挟み、並べて配置したもの。 上蓋ABS樹脂の内側には、静電遮蔽のためのアルミテープを貼った。これにより、上蓋に手を近づけたときのRX_VXOの変動は、抑えられる。



1) 仕様
バンド;7000kHz〜7030kHz
モード;CW
出力 1W(2SC2028 B+12V時)

2)全体構成と Auto-Calibratorの機能
下図に、全体ブロックダイアグラム(全体結線)を示します。
・7MHz CW受信機(Radio)受信周波数= F1(VXO;7,440kHz) - IF(440kHz)=7,000kHz。 ここにF1=15MHzVXO÷2
・プリミックス方式TX送信周波数 = F2(VXO;12,760kHz) - 5,760kHz=7,000kHz 

【受信周波数表示】
F1信号を Auto-CalibratorのNE602のpin6に、F2信号をpin1に入力します。PIC16F819は周波数カウンターとなっており、PICのRA2がH(+5V)出力のときは、DBM/NE602のPin1はDC電圧印加により、DBMのバランスは崩れ、F2信号はマスキングされるので、F1信号のみがPIC16F819に入力されます。PICのRA0に接続されているVR位置のIF設定値(433.5-443.0kHz)を読み込み、F1信号との差を計算し、RX受信周波数として LCDの下側8文字へ表示します。

MCP4922は、2回路のDACで、プリミックス方式TXの12.8MHz-VXO電圧と AF-電子VR(J310で構成)の電圧を制御しています。

【Auto-Calibration】
PICのRA2をL出力(0V)とすると、NE602のPin1にはDC電圧が印加されないので、NE602は本来のギルバートDBMとして動作し、NE602の出力には、F2-F1 の差信号(Mix_out=F2-F1=12,760-7,440=5320kHz)が現れます。
送受周波数が一致しているときは、
・ 「Mix_out;5320kHz + "IF;440kHz" ="TX水晶の5.760kHz" の関係が成立」
なのでPIC16F819に演算させ、この関係を保つように、MCP4922の VoutAの出力電圧を調整するのが、Auto-Calibratorのロジックです。
5,760kHzとの偏差を ±Δf_kHzとすると、VoutAの出力電圧の補正は、±Δf/16を MCP4922の制御12bit数(4096)に加減算している。
正確にキャリブレートするためには、プリミックスTXの Xtal;5.76MHzをきちっとゼロインさせることが肝要。



●回路各部の特徴/調整の要点

Auto-Calibrator基板(31x93mm)・・・ PCB基板と LCD(8文字x2列)で構成。

 ・LCD下段8文字は、受信周波数
   (左の例は、F1=未入力=0kHzで H'FFFFFFFF'-439.05kHz=D'4,294,528,245'Hzを表示)
 ・上段8文字は、Sメータ(単なる目安だが、)

LCDコントラスト(Vo電圧)設定用の 2x1N4148+ 1kΩは、左の写真のようにLCD本体基板の14ピン周辺に取り付ける。

【送信電力によるインターフェア防止】
本製作例(SY-110ケース組込)のように TX基板と近接して配置した場合には、送信時に送信電力のインターフェアを受けることがある。
NE602のpin6のF1信号も、pin1のF2信号も微小信号。 TX基板との間に遮蔽のAl板を挟んで配置したが、送信時に、送信キャリアの影響を受け、LCD表示周波数が、一瞬誤表示することがある(受信時には正常表示に戻る)。可能な限り、1mmでも2mmでも離したほうが良いでしょう。
  最初PIC-Pin4(MCR)に 0.1uFのパスコンがない状態では、送信時に、Calb-SWが押されたかの勘違いをしてPICが自動Calib動作を起こしたが、この誤動作は、パスコンで防止できた。



【NE602出力回路のLPF】
NE602の出力には、F2-F1 の差信号(12.76-7.44=5.32MHz)以外に、F2+F1=20.2MHz信号を含む。この妨害信号を除去するのが、22uHと30pFで構成される3素子LPF。 このLPFの通過特性を左に示す。横軸スパンは、1MHz〜21MHz。Fc≒8MHzで、20.2MHzの妨害信号は目的信号に対し、-30dBほど減衰する。この減衰でPICの周波数カウンターは、誤カウントしない。

また、このLPFは、受信周波数を表示するときには、F1=7.44MHzを通過させるが、Fc=8MHzなのでこの信号もほとんど減衰せずに通過する。



【遠隔 AF 電子VR回路】
一般的には、電子ボリューム専用ICを使うのがが普通であると思うが、回路が大掛かりとなってしまう。本機では、TX_VXO制御電圧用に MCP4922を採用しているが、2チャンネルのDACで 1チャンネル余るので、それを電子VR制御に使用した。

VR回路は、左図のような簡易な J310のソース接地の減衰アンプとし、ゲート遮断電圧(Vgs;3.4V)までソースに電圧を印加し、J310アンプゲインを絞り込んでいる(Vol 0)。減衰点では可変抵抗式VRに比較し音質は少し歪むが、やむなしとした。
ソース電圧を2.4vとすると、最大音量となる(Vol 16) 。
色々と回路を試したが、これが一番良いようである。
 以下が肝要。
 ・アンプB電源には、デカップリング回路(470Ω+100uF)を入れる。
 ・FETは、J310のように、Vgsの大きいものを選び、音量調節電圧幅を大きくする。
 ・ドレイン抵抗は、小さく、220Ωとし、ゲインは稼がない。



【 プラケースに収めたリグの VXO 周波数ドリフトの改善 】

【プラケース内の温度上昇】
金属ケースの場合、内部発生熱の多くは、金属部直接熱伝導により外ケースに伝わり、外気放熱されるが、プラスチックケースの場合は、ケース内面・外面の両面ともに、境膜熱伝達によるもののみとなるので、内部に熱がこもり易い。境膜熱伝達率は、h = 7 W/(m2・K)程度で、ケース外/内表面積≒0.05m2、発生熱1.3Wで計算すると、片側Δt=3.7℃。内部温度上昇は、その2倍の+7.4℃となる。

左図は、受信状態(消費電流;12Vx110mA)で、温度上昇を実測。
青線が完全密閉(オリジナル状態)での温度上昇率で電源投入後35分で、+6℃の温度上昇があった。
(内部に温度素子LM35を入れて計測)

通気孔による冷却効果を期待し、左の写真のように、穴を明けた。
 φ5mm x 片側22ケ x 右/左両側面 
 底面にも φ5mm x 40ケ
この結果が、赤色の線で、同じ35分間での温度上昇は、+2.5℃であった。

上蓋内部に静電遮蔽のアルミテープを貼った状態での計測結果は、黄色線で、赤色と大差ない。
(いずれも夏季でクーラーOFFの部屋で計測しているので外気温が高い)

水色の線は金属ケースの場合であるが、大きさの違うアルミケースの場合の温度上昇から、ケース内容積比率で補正したものである。 +2℃程度の温度上昇と推定される。通気孔により、金属ケースと同程度の温度上昇に抑えることができたと思う。



【プラケース/ 電源SW投入後のVXO周波数変動】
プラケース内の温度上昇は、上述のとおり、通気孔付きで、+2.5℃/35分間であるが、そのときのRX_VXO(7.452kHz=15MHzVXO÷2)の周波数ドリフトを計測してみた。

紺色グラフは、オリジナルの2SC1815VXO回路で、-2.1kHz/35分。
朱色は、22pF/C33をスチコン15pFに変えたもので、-1.4kHz/35分。
水色は、2SC1906改良VXO回路(詳細後述)で、-1.2kHz/35分。

周波数ドリフトの要因は、いろいろあるが、大きく2つに分けて考えた。

1)番目は、電源投入時の発振TR内部接合部温度上昇によるもの。
2)番目に、発振コイル、コンデンサー等周辺素子の温度変化によるもの。
 (温度変化は、RIGの発熱による温度上昇、昼夜/季節の温度変化がある。 コイルは、温度が上がると、インダクタンスが増え、発振周波数は下がるという、正の温度特性を持つ)



【オリジナル2SC1815VXO と改良2SC1906VXOの初期周波数変動比較】
上述のとおり、電源投入直後は、発振素子TR内部の PN接合部(接合部寄生静電容量)の温度上昇による初期ドリフトがある。
それを測定するために、左グラフは、RX基板をケースから取出し裸状態とし、 発振トランジスタ以外の素子が温度上昇しないようにして測定した。

紺色グラフは、RX Radioオリジナル2SC1815_VXOの回路で、電源投入後15分で -1.3kHzの変動。
朱色は、改良2SC1906_VXOで、電源投入後10分で -0.4kHzのドリフトで底打ち。 その後上昇に転じ、25分で 電源投入時の周波数へ戻った。理由は不明。オリジナルVXOに比べ、ドリフトは、4分の1となった。



【オリジナル2SC1815VXO:左側 と改良2SC1906VXO:右側 の回路比較】

周波数初期ドリフト・ミニマムとする改良は、以下1)、2)の2点が主眼。

1)発振する範囲内で、TRの消費電流/コレクタ消費電力を最小とする。
(エミッタ抵抗を1kΩから5.2kΩへ変更し、電流が1mAに減少。結果として2SC1815では、ゲイン低下、発振しなかったので、2SC1906と交換)

(消費電流が3.3mA→1.0mA かつエミッタ電圧が3.3V→5.2Vとなったことにより、コレクタ消費電力 は、10mW→1.2mWとなり、推定PN接合部温度上昇は+6.5℃→+0.8℃に減じた。その結果、周波数変動に大きく影響するコレクタ容量Cob、ベース容量Cib の温度による変化を小さくできる)

2)コレクタ容量Cob、ベース容量Cibの容量(pF)の小さいTRを選ぶ。 (データシートにCibを記載している例は、少ないが、一般的に、以下基準で選ぶ。
 ・コレクタ容量Cob(pF)の小さいもの、
 ・高い周波数で使用するよう設計された=fTの高い=TR、
 ・絶対最大定格/コレクタ損失の小さい=PN接合部が小さい=TR)



【2SC1815, 2SC1906TRデータ比較】
左に、2SC1815および2SC1906の トランジション周波数fT(MHz)vs コレクタ電流Ic(mA)の関係を示す。

fT;利得帯域幅積は、電流増幅率=Hfe=1となる周波数で、
2SC1815の場合、
・Ic=3.3mAでは、fT=250MHz。VXO発振周波数;15MHzではHfe=250/15=16.7。この増幅率で安定に発振。
・Ic=1.0mAでは、fT=150MHz。VXO発振周波数;15MHzではHfe=150/15=10。これでは、発振不安定。

2SC1906の場合は、Ic=1.0mAまで減らしても、fT=600MHz。15MHzではHfe=600/15=40。発振安定。

2SC1815、2SC1906ともに、コレクタ容量Cob、ベース容量Cib(pF)の対電圧変化は、データシートには、記載されていないが、同種TR 2SC945のデータ例を左図に示す。 Cob、Cibはそれぞれ、コレクタ-ベース間、ベース-エミッタ間の寄生容量で、バリキャップのように逆電圧依存性を示すので、左図のように、ベースを中心に、コレクタ、エミッタ間にバリキャップが接続されているようなイメージとなる。

バリキャップの容量は、 +300ppm/℃程度の温度特性を持つので、TRのCob、Cibも同様に+300ppm/℃程度の温度特性を持つと思われ、これが、電源投入時の周波数初期ドリフトの主要因となっている。
この初期ドリフトを小さくするためには、「PN接合部温度の上昇を小さく=コレクタ消費電流を小」、「Cob、Cib(pF)の小さいTRを使う」ということが肝要。



●回路

全体回路図を下段に示します。


● プログラムソース

プログラムソースは、マウス右クリックで「対象をファイルに保存」を選んで、ダウンロード。
PIC16F819用プログラム。
 ◇ダウンロード 7TXCal.asm & 7TXCal.hex

他バンド応用できるようasmコードも添付。MPLABでアセンブル。


"ひとつ前に戻る"には、ブラウザの「戻る」で戻ってください。

◇ホームページ インデックスへ戻る