(OPTION-8)7MHz SSB受信対応 外部VFO  

2016.09.16

(K10)7MHz CW Radioは、基板内の局発に15MHz VXOを採用しているので、受信帯は、7,000-7030kHzに限られています。
この内部VXOに代えて 7,000-7150kHzのSSB受信対応可能とする外部VFOです。

1) 仕様
局部発振/VFO周波数;7440kHz〜7587kHz
 (Hバンド;7,542-7,587kHz)
 (Mバンド;7,490-7,538kHz)
 (Lバンド;7,438-7,491kHz)
受信帯;7000kHz〜7150kHz CW/SSBバンド帯

2)9MHz Xtal OSCと ハートレーOSC(1.5MHz帯)のプリミックスVFO

なお、CW Radioオリジナルの世羅多フィルターは、CW用狭帯域(-6dB)1kHzですが、両肩がなだらかに減衰している特性の恩恵をうけ、そのままでSSB受信音に違和感はありません。

Auto-Calibrator 基板キット を頒布準備しました。ご希望の方は、以下ページをご覧ください。
◇PICの頒布 (OPTION-8)7MHz SSB受信対応 外部VFO 



左の写真;
外部VFO基板 (50mmx68mm)
  (周辺は、17mm幅の生基板でシールド箱)
  (蓋は、0.3mmt両面生基板を使用)


右写真;
のように、先に作ってあった RX/TXトランシーバ(ケースYM180) のRX基板の下側に滑り込ませた。


●回路

VFO回路図を下段に示します。

●回路各部の特徴/調整の要点

【9MHz X'tal OSC】
NE602への入力は、-25dBmの微小電力で十分なので、9MHz水晶発振回路は、軽く発振させ、消費電流の小さい、高調波スプリアスを抑えた回路とする。
特徴は、エミッタ抵抗を大きめの4.7kΩとすること、帰還分割コンデンサへの接続にR3/2kΩを介したことにある。
これにより、消費電流=0.4mA、2倍高調波(18MHz)強度は-30dBc、となった。 R3の最適値は、X'talのアクティビティーにより左右されるので、仮に5kΩ程度のVRを接続し、電源投入時に安定に発振起動する範囲でできるだけ大きな抵抗値を 試行錯誤で決定する。R3=0Ωで直接接続すると、2倍高調波(18MHz)強度は、下がらず、-15dBc程度になる。R3=1kΩ〜2kΩであろうか。



【NE602 1500kHzハートレー発振器】
発振部の回路図を 以下に示す。
NE602の消費電流は、2mA/5V時 と小さく、外周器はDIP8パッケージで放熱面積も大きいので内部消費電力による温度上昇は、小さい。
 中でも、内部OSC用TR部の消費電流は、特に小さく≒0.2mAで データ記載にはないが、内部寄生容量Cob、Cib(pF)は小さいと推定。この理由から、電源投入直後の初期ドリフトの少ない安定した発振器を構成することができる。

T1コイルのタップ点(NE602のP7,エミッタ)に接続のバリキャプ、
1SV149(700pF/0V〜55pF/5V Δ650pF)の同調容量への影響度は、T1コイルのタップ比率の2乗に比例し、製作例では 、
Δ650pFx(14t/60t)^2= Δ35pF 。

OSCの同調容量は、500pF(C8+TC+C9)で、1SV149 の電圧可変;5〜0V、変化容量Δ35pFで 1,562-1.509kHz(Lバンド)の50kHz幅をカバーする。

TR Q4をONとして、同調容量にC10/30pFを追加して、
1,510-1,462kHz(Mバンド)、
更に TR Q5をON、C11/33pFを追加して、
1,458-1,413kHz(Hバンド)をカバーする。

SWダイオード 1S2222/NECは、UHF/VHF TVチューナのバンド切換用に開発されたもので、ON抵抗値が小さいので、共振回路のQが高くなる。 手元にあったので使ったが、多分、汎用1N4148でも問題ないと思う。

同調コンデンサー、C8/200pF,C9/270pF,C10/30pF,C11/33pFは、温度変化の少ないマイカコンを必ず使うこと。NP0であってもセラミックコンを使うと、マイカに比べ、3〜4倍の周波数ドリフトがある。



【VFO スプリアス特性】

本プリミックスVFOのスプリアスについては、映像周波数である 9+1.5=10.5MHz、および本信号の2倍高調波をチェックした。

 映像の10.5MHzは、本信号に対して -35dBC。
 2倍高調波15MHzは、ちょうど罫線と重なって見難いが、-40dBC。

RFアンプJ310の同調コイルx2段では、こんなところかな、というレベルであるが、飽く迄、RX側に、LPF(下に記載)、BPF、およびANT同調コイルを持ったRXの局発として使用するので、このレベルで問題とならない。


【RX Radio内のLPF特性】
参考まで、
この外部VFOは、回路図に示すように 7MHz CW RX基板内パターンをカットして、LPF前に接続するが、RX基板側に、簡易な2素子(10uH+33pF)のLPFが設置されている。 このLPF特性を 左図に示す。横軸スパンは、1MHz〜21MHz。

VFO信号(7.5MHz)に対し、映像スプリアス( 9+1.5=10.5MHz)を、-8dBc下げる LPF特性。

2倍高調波15MHzは、-20dBc下げる LPF特性。



【 VFO 周波数ドリフトの温度補償 】

今まで真空管式を含めて VFOは、数え切れないほど製作してきた。温度補償に真面目に取り組んだのは、今回が初めての経験であったが、思いの他うまくいった。エアバリコンに比べ、バリキャップは、容量(pF)の温度依存が、+200〜500ppm/℃ と大きく、周波数ドリフトの要因となるが、きっちりと温度補償をすれば、十分実用になるVFOが完成する、という確信を持てた。
温度補償の実験に 2か月間もはまってしまった。その試行錯誤の詳細を記載する。
今回は、1.5MHz帯のVFOであったが、4倍の6MHz帯の安定したVFOもできそうである。X'tal OSCを30〜40MHzとし、6MHz帯のVFOとプリミックスすれば、50MHz帯TRVの バリキャップ式局発も可能である。

【AA. 周波数温度補償 テスト確認治具】
アルミシャーシ200x150x60 の内部に セメント抵抗(15Ω5W)x2本直列をビス止めし、外部に 可変電源24Vx2A を接続した。

温度計測は、計測素子LM35を内部に入れ、1000mV電圧計で測定した。左写真の314mV=31.4℃。

実験時には、シャーシは、厚紙で蓋をして、周辺は、ウェス50mm厚で保温し、熱を逃がさず、全体が均一温度となるようにした。

セメント加熱抵抗に通電し、32℃→60℃(約15分)まで上昇させた後、通電OFFの自然放熱で 60℃→32℃(約2時間)に下げたときの各温度での周波数を記録した。


【BB. 温度補償なしでの 周波数ドリフト】
左図は、加熱抵抗に通電し、32℃→60℃上昇(青)させた後、60℃→32℃に下げたとき(赤)のVFO出力周波数変動の実測値です。

32℃から60℃に変化させたときのVFO出力周波数変動は、
7,451.5kHz(原発振;1548.5kHz)から7,453.25kHz(原発振;1546.75kHz)となり、
原発振の温度依存性は、-1.75kHz/Δ28℃、となった。

同調容量は、200pF+270pF+40pF(TC及び浮遊)+15pF(1SV149依存)=525pF なので、1549kHzが Δ-1.75kHz変動するときの、同調容量の容量変化ΔCは、
 ΔC=525x (1548.5/1546.75)^2-525=+1.2pF・・・@
と見做される。この+1.2pFを相殺する -1.2pF/Δ28℃が温度補償の対象となる。

温度による発振周波数変動の原因は、コンデンサの温度特性、発振コイルの温度依存性、発振素子(NE602)の温度依存等であるが、プラスの依存特性のために、「温度の上昇により発振周波数は下がる」という傾向がある。


【CC. 温度補償後の 周波数ドリフト】

温度補償後の結果(左図)を先に見て頂くが、以下A),B) 2種類の補償により、周波数変動は、Δ70Hz/28℃ となり、十分安定したVFOとなった。

A)1SV149補償により、-1.75kHz変動のうちのΔ0.75kHz分の補償(詳細後述)

B)C9(270pF)を マイカ200pF+75pF(温度補償セラミック;黄色-220ppm/℃)とする補償
 補償容量=75pF x -220ppm/℃ x28℃= -0.46pF
 ΔF=1548.5kHzx √{ 525/ (525pF -0.46pF) }-1548.5kHz= Δ0.68kHz

Δ1.0kHzの補償目標に対し、7割程度で控えめであったが、前述のとおり、これで安定したVFOができた。
最近は、温度補償コンデンサの入手が困難であるが、サトー電気のHPで 22pF(黄色 -220ppm)が販売されている。 22pFx4個並列での補正で 本記事と同様な温度補償ができると思う。



【DD. 上述のA)・・1SV149バリキャップの温度補償】
左図のように、チューニングVRと1SV149の間に、Siダイオード1S2076Aをはさむ。

バリキャップ容量(pF)は、正(温度上昇により、容量が増える)の温度特性を持っている。

Siダイオードの順方向 降下電圧;Vf は、負(温度上昇により、Vf(V)が減る)の温度特性を持っている。
このとき左図のように、バリキャップ電圧印加回路に、Siダイオード1S2076Aをはさむと、温度の上昇で、Vf(V)が減るので、1SV149 への印加電圧は上がり、バリキャップ容量(pF)を減らす方向に補正をかけることができる。これが、1SV149の温度補償となる。定量的詳細は、以下。



【EE. バリキャップの容量特性】
左図は、1SV149のデータシートから抜き出した。
逆電圧 VR=2Vを荷電しているとき、容量C=270pF。C=160pF@3V
容量の電圧感度は、Δ110pF/1V=Δ0.11pF/mV。 (VR=2〜3V間で)
 ppmで表示すると、Δ0.11pF/(270pF+160pF)/2 /mV= Δ512ppm/mV・・・A。

異なった電圧領域でも同様に、
逆電圧 VR=4Vを荷電しているとき、容量C=105pF。C=65pF@5V
容量の電圧感度は、Δ40pF/1V=Δ0.04pF/mV。 (VR=4〜5V間で)
 ppmで表示すると、Δ0.04pF/(105+65)pF/2 /mV= Δ471ppm/mV ・・・B。

AとBの平均をとり、1SV149の容量電圧感度は、Δ500ppm/mV・・・C。とする。


【FF. バリキャップの温度特性】
左図より、温度が25℃から75℃まで上昇したときには、
容量変化 δC=+3%なので、容量温度感度は、+600ppm/℃・・・D



【Siダイオード1S2076A Vfの温度特性】
(左下図)は、1S2076A の順方向電圧Vf の温度依存を示す。 0.1mA(10^-4)の順方向電流で Vf=0.495V(Ta=25℃) 、Vf=0.37V(Ta=75℃) の関係より、
 温度依存性は、  ΔVf= -2.5mV/℃ ・・・E
(一般的に Si-Diodeは、ΔVf= -2mV/℃程度と言われている)

【GG. バリキャップの温度補償の定量的検討】

上述Dのように、バリキャップ1SV149の温度特性は、+600ppm/℃・・・D。

1S2076A による温度補償は CとEを掛けて、
  Δ500ppm/mV x -2.5mV/℃ = -1250ppm/℃ ・・・F

-1250ppm/℃(F)は、+600ppm/℃(D)を補正して余りある。余剰補正分-625ppm/℃は、発振系全体の補償に寄与している。同調容量(525pF)への寄与の 補償容量pFは、2Vのときに、
 270pF x (-625ppm/℃) x (14t/60t)^2= -0.01pF/℃ ∴-0.28pF/28℃  

これは、@ の「 -1.2pF/Δ28℃が温度補償の対象」の23%に相当し、
上述CC. で「黄色75pF温度補償セラミックでの補償は、Δ1.0kHzの補償目標に対し、7割程度で控えめであったが、前述のとおり、これで安定したVFOができた。」という結果と合っている。


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