(K18)5351OSC=Si5351A VFO; 1M-240MHz

UP dated 2023.06.10 Rev1.23.10.16

●PIC16F883 Si5351A-B-GTR VFO 1MHz-240MHz

Si5351Aを使用したVFOを製作しました。

 このICのプログラムは、難解で、まともに動作するまでにかなりの時間を費やしました。比較的コンパクトとなるPICアセンブラーでも プログラム領域2kwordsに収まらず、2.5kwほどになりました。
周波数可変は、エンコーダで増減しますが、全周波数域を連続可変にすると かなり複雑な演算が、さらに追加となり、プログラムの計算時間が、エンコーダの回転に追いつかずに、空転するようになるので、今回は、分周器の数値を変えるたびに、バンド切替という構想で 0バンド〜14バンドで、1MHz〜240MHzをカバーするようにしました。  

 Si5351A のVFOは、ジッターも少なく、トランシーバ局発VFOとして使用できるので、IFオフセットにより、上側、または下側ヘテロダインの運用周波数表示もできるようにしました。
また、Si5351Aの出力は、+7dBm以上ありますので、パッシブ・ダイオードDBMを直接駆動が可能です。

出力周波数範囲は、
・1MHz〜240MHzを 最少25Hzステップで任意の周波数を設定できる(LCD表示は、100Hz単位)
 データシートAN619では、IC内部の PLL_VCOの発振周波数は、600-900MHzとなっていますが、実際は、400MHz〜1100MHzの範囲でロックします。分周器=4 設定で 280MHz発振を確認しています。
 
・このSi5351 VFO PIC16F883プログラム済みのものをご入用の方は、以下ページをご覧ください。
◇PICの頒布 (K18)Si5351

 

上左;Step=50Hz、Band7 で出力周波数=10.499.7kHzを出力。 Band7は、10.5-20.0MHzをカバー。
右側は、LCD を外した状態。LCD1602は、ピン直列16Pin も Pin7x2列14Pinも基板に差せる。



 

上左;Si5351A上限の280.4MHz発振。出力は、-1.7dBm。これ以上の周波数は、ロックせずに乱れる。
右;280MHzを GigaSt5でながめる。ATT10dBパッドを入れている。-47dBcにヒゲ状のスプリアスが見える。

 

上左;10.5MHz発振(初期default)。 出力は、+11.1dBm
右;10.5MHz信号を GigaSt5で観察。主信号の 3倍高調波が-5dBcで強烈に現われる。偶数2倍高調波は、-32dBcで小さい。基板にはLPFを非設置。LPFを入れれば、3倍波なので -50dBc程度減衰するかな?

VFOとしての出力電力
 ・1MHz〜100MHzでは、+7dBm以上
 ・それ以上の周波数では徐々に減衰し、280MHzで -1.7dBm。


●回路

回路は、至って簡潔なもので、秋月電子の Si5351モジュールを PIC16F883で I2C制御するだけです。
・ロータリーエンコーダは、クリック付でも ノンクリックでもOKです。
・RB0-タクトSWは、Stepを変える。 押すたびに、25Hz、50、500Hz、10k、100kHz、(ハイバンドは追加 1MHz)が循環する。
・RB2-タクトSWは、そのときのBand、周波数をEEPROMにSAVEするSWで、電源を切っても、その周波数で起動する。

・RB1-タクトSWは、Band切替で、回路図左上に記載のとおり、0-14Bandを循環する。

Si5351について、特徴、留意点等もろもろ

●PIC-5V系 と Si5351-3.3V系のミスマッチ;

PICは、5V系で動作、一方Si5351Aは、3.3V系で動作。このミスマッチは、左図のように、SDA,SCL制御信号回路に1.2kΩ抵抗を挿入することで 簡易的に取り扱っています。
Si5351の制御ポートには、静電破壊防止のダイオードD1,D2が内蔵されています。 
 今PICよりH(+5V)信号が送出されたとき、3.3Vと5Vの電位差1.7Vにより 1.2kΩを通じて ≒1mAの電流がD2を経由して 3.3Vラインに流れ込みます。が、Si5351側の消費電流は 1mA以上なので、3.3Vライン電圧に変動はなく、Si5351は H信号として受け取ります。
どこも破損しません。

一方、Si5351が 受信確認のAcknowledgeを返すために SDAポートがLとなると、PICポートは、1.2kΩで接地された状態なので、PICはLと認識し、Si5351がAckを返したことを認識します。

●5V系LCD 1602を 3.3V系PICで動作;

ここで気が付いた。 左図のように 3.3V系PICで動作させれば、何のミスマッチもない、と。
PIC16F883は、クロック10MHz以下であれば3.3V動作が保証されている。 
LCD-5V系は、Vdd電源とコントラストVoのみ5V供給する。
 E,RS,DB4-7の制御ポートへはH信号として 3.3Vが送出される。LCDの閾値は、2.2V以上でH論理なので、何の問題もない。
新規基板を発注するときは、このようにしよう。


 

●単品IC Si5351A半田付けパターンもあり;

本体基板には、秋月のSi5351モジュール以外の、単品IC-Si5351Aの取り付けパターンも準備しています。水晶は、HC49US(基本波25MHz)を使います。このICは、Vdd(Pin1)とVDDO(Pin7)に同時に 3.3Vを与えないと破損するようです。 ピンの半田付けの浮きを十分に確認します。1個壊しました。  

この水晶は、負荷容量≒20pFでちょうど25.000MHzを発振するものが多いようなので、右図のように 水晶と 10pFを並列接続(23.10以降7pF+68p-FPin3)します。すると IC内部の容量≒10pFと合成で 20pF付加となり、25.0MHzにゼロインできます。  

余談ですが、秋月のモジュールの水晶は、セイコーエプソンのFA-128 負荷容量8pF,周波数許容偏差+/-10ppmが、使われていますが、私の入手したものは、IC内部負荷容量を 8pFにすると-27ppmの偏差(25MHzで-700Hz)がありましたので、プログラムでは IC内部 6pF負荷容量としました。
もし、読者の方が製作されたもので、周波数が高いようであれば、2pF程度のコンデンサを モジュールの水晶(2x1.6mmの小型ですが、)に、並列追加してください。 あるいはプログラムを8pF負荷に変更してもよい。

 

●Si5351A を外部クロックで動作させる;

左図回路のような発振器を Si5351の Pin2(XA)に接続する。これで問題なく動作した。
25MHz水晶は、基本波でもオーバトーンでもよく、また、回路、負荷コンデンサの調整により、25.000MHzにゼロインできるので、Si5351の出力周波数の精度も上がる。
まだ実験はしていないが、Si5351の出力周波数バンドに合わせて 適切な周波数偏移変調をすれば、FMモード、FSKモードにもなりそうだ。


 

●Amazon Si5351モジュールでの発振確認;

Amazonで入手できる上左写真のようなモジュール。 これで実験をおこなった。
まず、回路を実基板から読み取った。上右のような回路で これには、3.3V-5Vレベル変換のFETが実装されているので、PIC-5V系で直接制御できる。
回路図にあるように PICの RC3、RC4からモジュールのSCL, SDAポートに接続。モジュールの VINには+5Vを接続。約30mA流れた。


これで問題なく動作した。10.5MHzで出力は、+10.0dBmであった。

ただし、出力周波数は、秋月モジュールの場合とは逆で、上側にずれており、10.501.0kHzであった。 (25MHz原発振で 25.002.6kHz)

プログラムで設定できる IC内部負荷容量を 6pFにするのか、8pFか、10pFか 迷う。



● Si5351の周波数補正とスプリアス;

   

Si5351aは、最高280MHzまで発振可能であるが、周波数の上昇に伴いスプリアス(Spur)の増加傾向があり、またアマチュアの用途では、100MHz以下で使うのが一般的かと思うので、90.2MHz発振で、Spur発生状況を比較してみた。

上の写真は、いずれも90.2MHzを発振させたときの10MHz巾近傍Spurの発生状況を示した。
左端の A は、秋月モジュール(水晶は、セイコーエプソンFA128、10ppm、負荷容量6pF)でSi5351の内部負荷6pF、出力電流2mAでの状態。90.2MHz +/-4MHzに比較的大きな(-50dBc)Spurが見える。 山裾の近傍にも -55dBc程度の無数のSpurらしきものが見える。 測定器は、GigaSt5でBW=180kHzの広帯域でかつフィルターのゆらぎがあるので、正確ではないと思えるが、比較検討はできる。

中央の B は、単品Si5351を半田付けし、X'tal=HC49USで 25.000MHzにゼロインさせるために水晶に10pFを並列接続している。 +/-1MHzに -30dBcで大きなSpurが見える。

右端の C は、単品Si5351を取付け、X'tal=HC49USで 25.000MHzにゼロインせるために水晶に7pFを並列接続し、かつ水晶片側(Si-Pin3)を68pFでGNDに落としている。Bほどでないが、 +/-1MHzに -38dBcの大きなSpurが見える。


・・水晶をシールドしたり、+3.3Vラインのパスコンを増設したりしたが、水晶へのコンデンサー並列でのSpur悪化から逃れることは、できなかった。



   

上の写真Dは、X'talはHC49USであるが、外部に 2SC1923YによるピアースBE発振回路をもち、同調コイル2次側から、Si5351a-Pin2に 25.0MHzを注入したもの。A〜Fのなかでは、一番Spur特性が良好であり、発振回路側で 25.000MHzにゼロインさせているのでプログラムでの周波数補正も不要。

写真Eは、HC49USを補正コンデンサなしで接続したもの。-40dBcにSpurがある。同様な水晶裸の A(秋月SMD FA128)に比べて、特性は悪い。

写真Fは、同じ水晶HC49USに直列に 負性抵抗100Ωを接続したもの。100Ωだけでこれだけ違うのか?とも思うが、Spurはかなり減っている。 ただ、周波数が少し変わると(PLLの分数分周器の値が変わると) この比較状況は、目まぐるしく変化するので、一般的傾向としてみてほしい。



・・Si5351aの内部構造は、左のようなものだと推定する。
PLL分周器、出力分周器、両者ともに分数分周器となっており、分周器が整数の場合は、Spur特性が良好であるが、分数になると Spur特性は悪化する。 両方の分周器を同時に分数にするとそのぶんだけSpur特性は悪化するので、出力側分周器は、整数(即ちe=0)とするのを原則とする。

 また VCOはA,Bの2個、出力分周器は、3個あり、同時に3波の出力が可能であるが、複数同時出力とすると、Spur特性は悪化するというWeb情報であるので1波出力を原則とする。

上述のA〜Dの比較や、他の試行錯誤結果、Webでの情報等を総括すると、
1) 出力周波数が高くなるにつれて 近傍Spurは増加傾向がある。

2)水晶発振周波数を25.0MHzゼロインさせるために、水晶周辺に補正用コンデンサを追加すると、Spurは大きく増加する。 特に水晶に並列コンデンサーは、1pFであっても、明らかにSpur悪化する。Pin3のGND接地コンデンサー(68pF,220pF)は、余り影響しない。 Pin2側のGND接地コンデンサーは、水晶発振が正常であっても、PLLがアンロック状態となって、まったく使い物にならないことがある。

3)外部発振回路から25MHz信号を入れる方法(写真D)が、もっともSpurが小さくなった。Spurは、-55dBc以上を確保できている。 色々と試行錯誤した結果からの推定ではあるが、Pin2の25MHz信号は、高調波を含まないきれいなサイン波とすれば、もっともSpur特性はよくなるようだ。 ちなみにDuty50%の矩形波を入れたら、かなりのSpur悪化が観察された。

4)Si5351の出力電流は、プログラムで 2mA,4, 6, 8mAが選択(Register16)できるが、2mAとしたときが、最もSpurは低い。 8mAと比較すると10dBc位の差がでることがある。 また、Si5351は直接接続で、50Ω負荷/+10dBmの出力が可能であるが、高負荷1kΩとした方が、Spurレベルは下がる(差はあまり大きくないが)。



・・25MHzの信号源、外部発振回路は、左図の2回路で実験した。

いずれもSpur特性は大差ない。 

25MHz信号は、Si5351-Pin2へ注入する。 Pin3はインバータ発振回路の出力側なので、Pin3に不用意に接続し、信号短絡するとIC破損の原因になる。

下側はFET J310を用いた無調整発振回路で ソースから2pFで疎に BPF(FCZ25)へ接続し、同調回路のQを高くし、高調波レベルを下げた(実測では、2倍高調波は-55dBc以下)。 Pin2は、40mVrms以上で Si5351は、正常に動作するようなので、出力の大きい発振回路は不要である。

FETのソース抵抗1kΩは、J310(Idss≒40mA)の場合は、これで良いが、2SK192, 2SK241(Idss≒5mA)の場合は、発振しないので、1kΩに代えてRFC 10uH〜とする。

2SC1923Y もJ310回路も 水晶25.0MHzのゼロインは、水晶に直列に入れている39pFの値で調整する。 また発振は、控え目で安定したサイン波を出力するように帰還コンデンサ(2SC1923Y-エミッタコンデンサー、J310ソースコンデンサー)は控え目に。 またPin2への接続ケーブルは最短にする。



以上A〜G画像は、90.2MHz発振での実験結果であるが、もっと低い周波数、38MHz, 19Mhzではどうだろうかということで 下に そのSpur画像を示す。

画像Gは、秋月モジュールでの 38MHz。 画像Kは、HC49US裸での38.2MHz。画像Nは、HC49US裸での19.2MHz発振。
 Spurレベルは、-50〜-55dBcとなっている。ただし、画像K, Nは、HC49US水晶の並列補正なしなので、発振周波数は、25.006.6kHzとなり、PICプログラムでの周波数表示補正が必要になる。

   



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 K18キットのオプションとして、「単体Si5351a +水晶」を頒布していますが、2023.10.16以降頒布品は、HC49US水晶に代えて 中華製SMD 3225 25MHz水晶に変更します。

 左の写真のように 3225(3mmx2.5mmサイズ)の SMDで Si5351基板には、このSMDの半田付けパターンがないので、写真中央に貼り付けているように、16穴ユニバーサル基板を変換基板として使い、SMD3225のPin1, Pin3を半田付け後、2本のリード線を出して、Si5351基板の HC49US穴に取り付けます(左写真参照)。 

変更理由は、HC49US(負荷容量20pF)では、Spur対策として、水晶に並列コンデンサーを追加しないことにすると、発振周波数を25.006.6kHz以下に下げることが出来ないためです。 

中華製SMD水晶は、負荷容量の仔細は不明(14pF程度か?)ですが、左図回路のように、Pin3に220pFを追加すると Si5351内部C=10pFで 25.000.5khzまで下げられ、プログラムで周波数補正するのは、0.5kHzで済みます。

 なお、このSMD水晶は、220pFをつけないと、25.002.5kHz付近で発振し、これは上述の実験で使った Amazon のsi5351基板と ほぼ同様なものでした。



この SMD水晶を使用した基板での 各周波数での Spur特性は、以下の写真のとおりです。

左より、P;19.2MHz発振、Q;38.2MHz発振、R;90.2MHz発振です。 Spurレベルは、-50〜-55dBcとなった。
HF帯の Supr法規制は、-50dBcなので、目的周波数のBPFを1段程度通過させれば、規制は、クリアすると思われる。
 50MHz以上の法規制は、厳しくなり-60dBcなので、局発として使うときには、1MHz程度のバンド巾の局発用BPFを通して、近傍のSpurを20dB程度下げたい。

   




● プログラムソース

プログラムソースは、マウス右クリックで「対象をファイルに保存」を選んで、ダウンロード。
Rev1での変更。 RA2(H)内部負荷容量6pF(秋月モジュール用)、RA2(L)で内部負荷10pF、水晶25.000.5kHz発振で周波数表示が真値を示すように表示値補正(キット付属SMD3225水晶用)を行った。
PIC16F883用プログラム
 ◇ダウンロード 5351OSC1.hex &5351OSC1.asm

 プログラムの詳細は、省略しますが、以下の基本情報、公開しているASMコードより読み取ってください。
◇Si5351設定の基本情報のダウンロード


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