KP6 RF Converter基板 

UP dated 2017.07.13

●RF Converter基板

基板サイズ 100mmx 100mm。 IF(12MHz) をハムバンドに変換する送受コンバータ基板です。この基板と上側にはGenerator基板が隣接している。

1. BPFとして、Aバンド、Bバンド、Cバンドの3つの回路パターンを準備している。
最左の縦に10Kボビンが3個並んでいる列が、Aバンド。
中央がBバンド。 そして その右がCバンド。

Aバンド1列のみに部品を組み込めば、シングルバンド・トランシーバとなる。(例えば、50MHzシングル)

2. TX Amp 2SK241は、A,B,Cバンド毎に専用であるが、その後段のJ310x2 Ampは、全バンド共通で1組のみ。
その後段に、RD00HVS1x2 Pushu-Pull Ampを設置し、この基板の出力は、、500mW(ゲインを上げて1W)となる。

3. 下側に9個並んでいる2SC1815は、9バンド(3.5,7,10,14,18,21,24,28,50MHz) LPF切替用 2SC1815 オープンコレクタ回路。 PIC16F819により、バンド切り替え時に自動選択される。

●回路図

RF Converter基板の回路図は、下図のとおり。
1.IF 12MHz入力(-5dBm)をDBM ADE-1により、各ハムバンドに変換し、2SK241 Amp+ J310x2 Amp+ RD00HVS1x2 Ampにより、基板端で 500mW(1W)の出力を得ている。

2.基板内に BPFとして、Aバンド、Bバンド、Cバンドの3つの回路を組込むことができ、それぞれ固定周波数帯とすれば、3Bandトランシーバーとなる。
 試作品では、A、B、Cそれぞの同調コイルのカバー範囲を 可変容量ダイオードにより、fmax/fmin≒1.5倍可変し、C゙ンド(7M,10M)、Bバンド(14M,18M)、Aバンド(21M,24M,28M)に対応し、7Bandトランシーバーとしている。

3.DBM ADE-1 とBPFは、送受共用。(受信用BPFは10Kコイルx4個のうちの2個T1, T2のみ共用)

4.付属アクセサリー回路として 9バンド(3.5,7,10,14,18,21,24,28,50MHz)切替用 2SC1815 オープンコレクタ回路(74HC595は、PLL用のPIC16F819により制御)を準備している。ダイオードマトリクスでA,B,Cバンドの電源を任意に設定できる。

5. このRF Converterの Q8,9 J310 AmpをCWキーイングしている。最初は、このJ310のみキーイングしていたが、RXでモニターしたところ、スペース時のキャリアのすり抜けが気になったので、RD00HVS1x2のゲートBiasのON/OFFも追加した。



●BPF回路部の動作

下図のBand Cの回路例で BPF(7-10MHz)の動作/調整要領を説明します。

T1、T2の同調コンデンサ容量は、コア位置にもよるが、概ね67pF(7MHz同調時バリキャップ2.2V)-33pF(10.1MHz同調時バリキャップ10.4V)となる。 T1、T2間の結合コンデンサは、一般的に同調容量の5-10%が適切な値となるが、本機では、C5(10pF)とバリキャップ1SV287(5pF/2V-1pF/10V)の直列容量と 並列接続のC6(2pF)の合成容量となり、計算では5.3pF(7MHz同調)−2.9pF(10MHz同調時)。
  このように7MHz、10MHz両バンドで結合コンデンサは、そのときの同調容量の8%程度になるよう変化させることにより、両バンドともに良好な共振特性(単峰特性)、同程度の通過損失となる。固定値の結合コンデンサではこのようにならない。

RX動作時には、"C-R+"端子に B+12Vが印加され、T2コイルの2次コイルは、SWダイオードにより、Q2 J310xAGG Amp(右上で矢印表記の先)のドレインに接続され、受信信号は、+10dB増幅後入ってくる。
送信用Amp 2SK241へは、C8経由で受信時も常時接続であるが、受信信号の2SK241への漏れ損失はごくわずか-0.2dB程度であるので無視できる。当初ダイオード切替回路を入れていたが、却って送信信号波形が歪んだので、C8で直結とした。
送信動作時には、"C-T+"端子に B+12Vが印加され、2SK241 Ampがアクテブとなり、RF増幅信号は、T4に励起される。 C8(10pF)は、大きいほど通過電力が大きくなるので、この値と 2SK241のソース抵抗値の調整により、C゙ンド(10pF=7M,10M)、Bバンド(33pF=14M,18M)、Aバンド(120pF=21M,24M,28M)の基板端出力電力のばらつきを抑えている。

T1、T2、T4の10Kコイルの1次:2次の巻き線比は、略8:6としている。FCZコイルの場合は概ね10:3であるが、それよりも比率を高くしている。その理由は、2次コイルインピーダンスを、設計値として450Ωとし、各バンドを切り替える SWダイオードのアイドル電流10mA程度で、そのときの通過RF信号の歪(IMD)を小さくするためである。 通過電力をP(3mW)とすると、SWダイオート通過電流変化 ΔI(mA)は、ΔI(mA)=√(P/R)=1000x√(0.003/450)=2.6mA。ピーク値に直すと1.4倍なので、±3.6mA。これは、アイドル電流10mAに対してIMDの影響を無視できる程度の電流変化となる。
一方、2次コイルインピーダンス 450Ωに代えて、例えば50Ωで設計すると、ΔI(mA)pp=±10.8mAとなり、SWダイオードのアイドル電流10mAのままであると、これは、コムジェネレータといわざるを得ない。アイドル電流を30mA程度流さないと実用的ではない。

Band Aの回路例では、46pF(21MHz同調時バリキャップ1.6V)-34pF(24.5MHz同調時バリキャップ4.8V)-27pF(28.0MHz同調時バリキャップ10.2V)となる。
チューニング電圧13.5Vでは、最大29.0MHzが精一杯であるが、可変容量ダイオード1SV231は、容量変化比が大きく、57pF/1V〜8pF/13V〜3pF/25Vで絶対定格VR=30Vなので、チューニング電圧を30Vにあげると合成同調容量は、23.5pF(30.0MHz/30V)となり、全28MHz帯をカバーすることができる。

なお、このバリキャップ可変同調回路は、扱うRF最大電力を +0dBm(1mW)程度に抑えておくほうが良い。 大きくすると波形が歪む。
 最低周波数同調時のチューニング電圧も 1.5V以上となるようにする。共振回路のインピーダンスを仮に1.5kΩとし、1mWが通過するときのRF電圧は、±1.4x√PR=±1.4x√0.001x1500=±1.7V。これが、カソードを突き合せた2本直列のバリキャップに印加されるので、1本あたり、±0.9Vかかり、これがチューニング逆電圧を超えて、順方向電圧となると 通過電力は、クリッピングされ歪んでしまう。



●J310 Ampの動作

RD00HVS1x2 Push-Pull Ampの前段として 左図のJ310カスコードアンプを採用した。これは、CQ誌にも何回か発表されているが、原典は、QST@ARRL AGC IF Amplifierである。 これをRF Power前段Ampに使用してみた。

Q8のゲート電圧、左図ではALC端子と表記している電圧、を変化させる(下げる)と増幅ゲインが下がることで、出力を調整できる。
その原理は、下のJ310の特性 ”Id vs. Vds”のグラフで説明できる。

Vds=5Vのとき、Vgsが0V〜-1.2Vに変化すると、Id変化は 赤矢印で示した通り、Δ17mA。

Vds=3VのときのId変化はΔ15mA。
同様にVds=1VのときのId変化は Δ9mA。

J310のドレイン負荷インピーダンスが一定であれば、出力はドレイン電流変化の二乗に比例するので Vds=5Vが、Vds=1Vに下がれば、出力が28%まで下がることになる。

ALC電圧=5.5Vのとき、Q8のソース電圧は、+0.9V高く、6.4Vとなる。Id変化はグラフには記載されていない右側であるが、約Δ18mAであろうから、増幅ゲインは、Vds=5Vのときとほとんど変わらない。
ALC端子に抵抗を並列に接続し、ALC端子電圧を0.5Vに下げると Q9ドレイン電圧は、≒1Vで、Δ9mAとなり、比較PGは、-6dBとなるので、RD00HVS1x2 への入力電力を絞ることができる。

ALC端子電圧を 終段出力から フィードバック制御すれば、ALC制御ができる。



このAmpのPGを実測したものが、左図である。 入力には、7MHz 0dBmの信号を入れた。
ALC端子電圧が、3〜6Vのときは、PGはあまり変化なく、≒8-9dBであるが、ALC端子電圧を 3V以下にすると急激に、PGは下がる。
 反面、IMD3特性については、ゲインを絞ると悪化する。ALC電圧=5.5Vのときの出力+9dBmで IMD3は、−40dBcであったが、ALC電圧=1Vのとき、IMD3は、−35dBcまで悪化した。

Q7 2SK30Aは、リグの供給電圧が、10V〜14Vと大きく変化した場合でも、ALC電圧を設定値に保持するためのもので、定電流ダイオード代わりに使っている。[2SK30A-Y 5E] または、[2SK30A-GR 3A]を 実測によりIdss選別をして、使用している。 ソース抵抗1.2kΩで Id=0.8mA。

●BPF特性

Cバンド(21M,24M,28M)を実例に 各バンドでのBPF通過特性を示す。

21MHzバンド
横軸スパンは、10MHz〜30MHz。
縦軸スパンは、-40dB〜+20dB。 10dB/div。

DBMの出力側(50Ω端)を切り離し、SGトラッキング信号(10MHz〜30MHz)を入れ、J310x2出力端(+10dBm)信号を観察。

バリキャップに1.6V荷電で 21MHzに同調。

バリキャップ荷電圧が、1.5Vを下回ると、RF信号電圧によりバリキャップに順方向電流が流れるためか、BPFのIMD3特性が急激に悪化する。望ましくは、常に2.0V以上としたい。





24MHzバンド

バリキャップに4.8V荷電で 24.5MHzに同調。

他のバンドにも共通であるが、バリキャプ式同調BPFの通過電力<0dBm (1mW) とするのが良い。 通過電力を増やすと、RF信号により、バリキャップ電圧が変動し、BPF特性が乱れる。





28MHzバンド

バリキャップに11V荷電で 28MHzに同調。

13.5V荷電でも fmax=29.0MHzなので 29.0-29.7MHzは、苦しい。 30V荷電とすると29.7MHzまでカバーするか?
21M, 24Mバンドに比較し、出力も若干(-2dB)低下。

●RFコンバーター基板各バンドの出力(RD00HVS1x2出力)

CWでの実測値(B+13.5V LPF通過後)
7.0MHz   +32.1dBm(1,620mW)
10.1MHz  +32.2dBm (1,660mW)
14.1MHz  +32.3dBm (1,700mW)
18.1MHz  +31.5dBm (1,410mW)
21.1MHz  +31.8dBm (1,510mW)
24.9MHz  +30.6dBm (1,150mW)
28.1MHz  +30.4dBm (1,100mW)

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