(OPTION 17)ICS570B SG周波数拡張モジュール  
  [ 24M-180MHz] 

UP dated 2024.01.31 Rev2024.03.18

●ICS570B 周波数拡張モジュール 

(K9)Signal Generator & SCAN計 の出力周波数は、0-50MHzですが、その4.5M-50MHz帯を 逓倍IC、ICS570Bで 4 逓倍して、16M-200MHzを出力する 周波数拡張モジュールを製作しました。 50MHz, 144MHz等のVHFリグの 実験、製作に役立ちます。

左ブロック図は、(K9)AD9850 SG(0-50MHz)を信号源に使用した場合。 右ブロック図はFRMS(0-20MHz)を信号源にした場合です。
FRMS(0-20MHz)での周波数拡張、x4倍(16-80MHz)がオリジナルですが、あるいは、x8倍(16-160MHz)も可能です。


基板は、ICS570B SOP8-DIP変換基板、AD8307用出力値検出基板、0-50dB ATT基板、および(K2) AD8.07 dBm計キットより構成されています。最終出力は、16M-200MHzで+10dBm(高域は+3dBmに下がる)。

上左は、ケースYM115(115x20x80mm)に組み込んだ状態。ケースが小型なので、工作机の工作スペースにちょこっと置いて、測定・調整に使えるので邪魔になりません。

上右は、その内部を示します。 ICS570B SOP8-DIP変換基板、AD8307-SOP出力検出基板、出力調整の 500ΩVR+ATT 0-50dB(10dB刻み)のトグルSWx3個が見えます。
 出力をdBm表示(写真では+3.3dBmを表示)するためには、(K2)PIC16F819 RF AD8307 dBm計・・Kit OP-17には、これも含む・・が必要で、YM-115の 内法高さ18mmに入れるため、3桁LEDは、基板側面に配置しています。

下写真2つ;(K2)dBm計の3桁LED取付状態。 3つ目;74AC00は、16ホール基板に取付。 4つ目;(K9)SGのLCDには、16ホール基板を使い、DIP-SWを追加取付の改造(LCDピン11)。


 ICS570Bで4逓倍するだけならば、、この(K2)AD8307 dBm計は不要です。

キットを頒布準備しました。ご希望の方は、以下ページをご覧ください。
◇PICの頒布 (OPTION 17)SG 周波数拡張モジュールキット

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●144MHzアンプでの 測定・調整例 

(K9)SGと 本逓倍器を使っての、「144MHzBPF+BGA420アンプ」の通過特性測定例を紹介します。(K9)SGには、「(OP-16) K9,K17適用 SG表示用 低速オシロSG12864」 が組み込まれていて、通過特性が目視できるようになっています。
 二つの FCZ144(07S)コイルのカップリングコンデンサ容量を変化させたときに、通過特性がどのように変わるかを観測したものです。 なお、BGA420は、最大定格入力は、+0dBmなので、本機の固定ATT=30dBとし、どのように操作しても入力は、-20dBmを超えないようにしました。+0dBmを超えると、ほぼ間違いなく、BGA420は、破損します。
 本試験での、144MHz入力は、≒-35dBmです。

下図左は、横軸スパン100M-200MHzで、カップリングコンデンサ=0.5pFとしたものですが、カップリング容量が大きすぎて、両方の同調回路が相互に影響して、双峰特性となってしまいます。このような場合、それぞれのコイルのコアを どのように調整しても、双峰となってしまい、目的の144.2MHzに同調させることはできません。
 下図右側は、カップリング=0.25pF(実際は、0.2UEWをねじったもの2mmL長さ)で、144.2MHzに単峰で同調できます。


●FRMS で使ってみる 

RF入力源は、(K9)SGにこだわりません。 0.5Vrms以上であれば、水晶発振でも 他のSGでもかまいません。 FRMSを使ってみました。

下写真のように 50MHzLPFを Case1; Center;50MHz, Span;50MHz   /Case2; Center;50MHz, Span;100MHz の二通りで測定してみました。

(OP17) ICS570B で周波数は4逓倍しているので これらのFRMS画像の横軸周波数は、4倍計算して観察することになります。
中心の50MHz より減衰していることがわかります。

 左の写真は、Case1; Span=50MHzですが、右側は Case2; Span=100MHzとしてみました。 10MHz以下の乱れは、ICS570Bが、3MHz以下の周波数源に対応していないことを、また90MHz(FRMS出力=22.5MHz)以上は、FRMSのRF出力電圧が下がってICS570Bが正常に動作していないことを示しています。
 それでも この50MHzLPF3段は、2倍高調波(100MHz)の減衰率は、40dB+α であることがわかります。 

 今回は、100MHzの広帯域スパンでの測定例ですが、ハイフレフィルター測定の10kHzスパン等の狭帯域での測定も、問題ありません。





●逓倍IC、ICS570B(8Pin-SOP) について 

ICS512は、Webでの使用例が散見されますが、それと同様な逓倍器です。データシートによれば、ICS570Bの出力信号のジッターは、ICS512より改善されています。
内部ブロックダイアグラムを左図に示しますが、内部PLL-VCOの分周信号と 外部(ICLK)からクロック信号を位相比較してロックさせます。その分周比は、S1,S0により3〜16の範囲で設定されます(左下表)。
  S1,S0の 0はGND接地、Mはピン開放、1は、VDD(3.3V)接続です。




本機は、ICS570Bの4倍モードで使用していますが、8倍モード(S1=0,S0=1)とすると、FRMSの出力4M〜20MHzで、32MHz〜160MHzの範囲で信号を出力します。

また、このICS570Bは、「(K17)9833SG=AD9833 Signal Generator & SCAN計」では、6逓倍で採用しています。

●周波数拡張モジュール回路図

回路図は、下図のとおり。

ICS570Bは、3.3Vで動作。必要な入力信号強度は、周波数によってばらつくが、0.5Vrmsで全域(24-180MHz)で動作する。  
SG出力が小さい場合は、回路図にも記載しているが、74AC00のインバーターを挿入すると、0.125Vrms以上で動作するようになる。

AD8307 と(K2)mV07w AD8307 dBm計は、ATT入口の電力値を表示するために使う。 VR500Ωで -20dBm〜+10dBmまで調整でき、 固定のATTで 0〜50dB減衰できるので、総合的に、+10〜-70dBmの範囲で 出力信号を調整できる。(最大実出力は、周波数により異なり、+10dBm/60MHz〜+8dBm/100MHz〜+3dBm/200MHz) 。

 

既存(K9) AD9850 Signal Generator の性能改善

【改善1;(K9)AD9850モジュール内部LPFの改良】

(K9)SGの原型での出力(10MHz時+10dBmになるVR位置固定で)は、左図の青線で 40MHz以上では出力不足の恐れがある。
 74AC00を挿入(0.125Vrms以上必要)しても、50MHz以上ではなお出力不足の恐れがあるかもしれない。 原因は、AD9850モジュール内部LPFの既存チップインダクターの性能が良くないことに起因するが、そのインダクタx3個をT25-6コアに変更すると 赤線のように出力が増加する。  

 この改造の詳細は、 ◇OPTION-10 SG周波数拡張モジュールキット の中段の記事を参照。
 74AC00を挿入すれば、ぎりぎり、この改造は、なくても済むかもしれないが、??した方が良いのは確かである。


【改善2;(K9)PICプログラムの変更】
本機周波数拡張ユニットを使うと、出力は、(K2)SGのLCD表示の4倍、 Stepは、1/4倍で 電卓計算しなければならない。
 これは使い勝手が悪いので、PICのプログラムを 9850_128SG8に変更することにより、4倍の実出力周波数をLCDに表示するようになる。RB7(LCD_11Pin)を 1k〜2.4kΩで GND接地することにより、実周波数表示になる。RB7をOpenのままだと (K9)は、従前のSGとなんら変わらない。
 既存LCDのピン11の側面に DIP-SWを追加して対応した。
 改造プログラム 9850_128SG8.hex は、(K9)のページにUpします。

● x4逓倍の 出力スペクトラム

下図に、17.05MHz x4逓倍=68.2MHz および 34.45MHz x4逓倍=137.8MHzのスペクトラムを示す。


左図は、17.05MHz x4逓倍=68.2MHz の出力スペクトラムを示す(20dBATT挿入)。
2倍高調波は、-20dBc程度で発生している。原発振17.05MHzのレベルは、-53dBc、2倍波、3倍波は、-60dBc以下となっている。
 GigaST5では測定できないが、校正した受信機Sメータで確認すると、PLLの位相ノイズ(フロアノイズレベル)は、≒-80dBcであった。

下図は、34.45MHz x4逓倍=137.8MHz の出力スペクトラムを示す。
原発振34.45MHzのレベルは、-41dBcで上図と比較すると 大きい。周波数が高くなるにつれて、漏れが大きくなるようだ。

下図左は、200MHzスパン、下図右は、近傍10MHzスパンを示す。
GigaST5のフィルタ幅が180kで すそのの切れ味が悪く、揺らぎでスペクトラム幅が広がっているが、特に近傍のスプリアスはないと思われる。137.8M-3.5MHz付近の ヒゲ(-55dBc)は、GigaST5固有の測定上のスプリアスかもしれない。





この逓倍信号のビート音を ジェネカバで聞いてみると、思っていたよりも信号音は、澄んでいたので、ジッターは、それほどひどくないようだ。 
ちなみに下図左のように結線をして、この逓倍信号を局発として 7MHzSSBを144.9MHzにへテロダインしてみた。
 SSB信号は、何ら違和感なく、復調できていて、この逓倍信号は、SSBトランシーバーの局発信号として使えるようだ。

下図右は、16M-200MHzスパンでの 発振出力を示す。 70MHz以下で+10dBm以上を確保できている。標題は、「24-180MHz」としているが、試作機では、16M-210MHzで発振できた。  

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