(OPTION 10-1, 10-2) SG周波数拡張モジュール  
  [ 50-100MHz, 100-200MHz] 

UP dated 2018.12.03

●周波数拡張モジュール 

(K9)Signal Generator & SCAN計 の出力周波数は、0-50MHzですが、その25-50MHz帯を 2逓倍、 4 逓倍して、50-200MHzを出力する 周波数拡張モジュールを製作しました。 50MHz, 144MHz等のVHFリグの 実験、製作に役立ちます。

基板サイズは、50mmx50mm。 ダイオード2逓倍、アンプμPC1677C、出力をdBm表示するためのAD8307-SOPを実装しており、入力+5〜+10dBmを逓倍して、最終出力は、50-200MHzで+10dBm。

上右は、ケースYM150に組み込んだ。ケース左半分には、これとは別のスペアナもどきを組み込んでいる(これは本Webでの紹介省略)。  出力をdBm表示する場合(写真では+7.7dBm)は、別途(K2)PIC16F819 RF AD8307 dBm計 が必要であるが、
(OPTION 10-1)には、キット(K2)を含む。
(OPTION 10-2)には、キット(K2)を含まないので、電圧計等により、出力表示する。

キットを頒布準備しました。ご希望の方は、以下ページをご覧ください。
◇PICの頒布 (OPTION 10)SG 周波数拡張モジュールキット


●ダイオードダブラーの原理 

左は、最も簡素なダイオード・ダブラー(DD)。50MHz@+10dBm入力で、100MHz@+0dBm を出力する。これだけでも便利ツールになる。

DDの原理を下図に示す。例えば、1Hzのサイン波を加えると、DDは、全波整流回路なので、周期は半分になり、波形は歪むが2Hzになる。 波高は半分なので、出力は単純に-6dBc弱となるはずだが、実際はダイオードの通過損失やリカバリー遅れ等があるので、出力は、1/10程度に下がり、≒0dBmとなる。
 DDへの入力が+10dBmより減ると、ダイオード損失の比率が無視できなくなり、2逓倍出力は、1/20、1/30・・というように更に下がる。

DDに使うダイオードは、高速高周波用で、かつ順方向降下電圧の低いショットキーバリアダイオード(SBD)を選定する。ダイオードのデータシートで、「高周波用」とか「高速」とか記載あるもので、電極間容量の小さいもの、結果として Vr(逆方向耐電圧)の低いダイオードとなる。1SS97とか1SS108、1N60がよい。SD103Aはだめ。



下左側は、DDへの入力信号(50MHz@7dBm)を示す。 右側は、DDの出力で 2逓倍波は、-11dBC下がり-4dBm出ている。 一方、元信号(50MHz)は、二つのダイオードで打ち消され、-32dBc低減している。 

●周波数拡張モジュール回路図

回路図は、下図のとおり。

ダイオード・ダブラーが2つあり、リレーで信号の1段通過(2逓倍)、2段通過(4逓倍)を切り替えている。
(K9)SG単体で50MHzまで出力できるので、この周波数拡張モジュールは、それ以上の50MHz以上で使用する。したがい、入力周波数は、25〜50MHzを対象にして、最高200MHzまで出力できる。 

アンプIC, uPC1677Cは古いタイプのデスコン品だが、PG=24dB、飽和出力+19.5dBm(89mW)の特性を持つ優秀なRFアンプで IMD3(3次相互変調ひずみ)も小さい。ダイオードダブラーを外せば、ちょっとした実験用のリニアアンプとなり1MHz〜1GHz,-10dBmの信号を +10dBmに 歪なく増幅できる。

 

既存(K9) AD9850 Signal Generator の性能改善

【改善1;AD9850モジュール内部LPFの改良】

上記回路図の下左側のとおり、AD9850モジュール内部LPFの既存チップインダクターをT25-6コアに変更する。 この改善前後の SGの f(MHz) vs.出力特性を左図に示す。 
10MHz出力時に+10dBmとなるようにVRで出力調整し、VRは固定したままで、周波数を60MHzまで上昇させた。

オリジナルのチップインダクターでの特性(青線)は、だらだらと直線的に出力減衰してしまう。
アミドンコアT25-6に変更後(赤)は、50MHzまでは、-5dB以内の減衰で収まっており、本来のLPF特性に近い。
オリジナルでは、50MHzで、VRを上げても-5dBm程度しか出力しなかったが、改善後は +8dBmまで出力が増えた。


【改善2;SG外部出力部への LPFの追加】
DDSユニットは特性として、発振周波数を f_MHzとすると、その高調波、2f, 3f,4f・・以外に、クロック周波数(AD9850モジュールのクロックは125MHz)からの折り返し周波数である、(125-f), (125-2f), (125-3f)・・をスプリアスとして含む。  高次になるほどその強度は低下するが、DDS原発振を50.4MHzにし、その1次の折り返し周波数の 125-50.4=74.6MHzのスプリアス強度を実測したところ -12dBcほどを示した(下図左端)。予想外の邪魔になるほどの強度である。

このAD9850モジュールのオリジナルLPFは性能が悪く、出力信号に含まれるこれらの不要スプリアスの減衰性能があまりよくなく、チップインダクタ1608を外して アミドンコアT25-6(黄) に変更するのが 上記の【改善1】である。
この改善を行わないと、このOPTIONキットの逓倍出力には、それぞれのスプリアスの相互歪による、無数のスプリアス が発生し、さながらコムジェネレータの様相を呈し、使い物にならない。
 上記の【改善1】に加え、(K9)SGの最終出力回路に Fc=58MHzのLPFも追加した。上記回路図の右側 。これが【改善2】である。

 左写真のように、既存SG(ケースYM150)の アンプ用の内部シールドの生PCBの側面にランドを作成し、LPFを取り付けた。上蓋ケースの側面との隙間は、7mm程度しかなく、そこに押し込んだが、特段悪影響はないようだ。

 以上のふたつのLPFにより、原発振50MHzのときの その1次折り返し75MHzの信号の漏れは、-50dBC以下となり、GigaSTでは認識できないレベルまで下がった。

下図左端が、オリジナルチップインダクターでの出力スペクトラムを示す。クロックの125MHzも漏れ出している。 中央は【改善1】LPFのみの場合。 右端は、【改善1】+【改善2】を実施した場合。1次折り返し信号漏れは、認識できない。

● x2逓倍、x4逓倍の 出力スペクトラム

下図は、50.4MHz x2逓倍の このモジュール出力のスペクトラムを示す。 左は0〜200MHzスパン。 右は、0〜500MHzスパン。
原発振周波数、50.4MHzは、目的信号100.8MHzに比較し、-40dBc下がっており、実験信号源として問題ない。入力周波数の相違、入力電力レベルで この減衰量は、まちまちとなる。 

100.8MHzの2倍、3倍、高調波は、-15dBcで並んでいるが、通常は特に問題とならないであろう。 減衰させるためには、信号取り出し外部に所用周波数帯のBPFかLPFを追設する。




左図は、50.4MHz x4逓倍=201.6MHzの出力スペクトラムを示す。
2逓倍に比較すれば、不用信号レベルは高いが、-20dBc程度の差があるので、まあまあというところか。

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