さくらケーブルチャンネル

ウィークリーすみだインタビュー概要  04.6上旬放送


Q1
(キャスターからの質問)

    もうすぐ梅雨入り、そろそろ食中毒が心配となる季節になりましたが、最近はどんな食中毒が発生しているのでしょうか

A1 ちょっとこのグラフ(グラフ1)を見ていただきたいのですが、これは昨年東京都で発生した食中毒事件を月別の表にしたものです。棒グラフが発生件数で折れ線グラフが患者数です。昨年は冷夏だったこともあり7月9月の発生が少なく季節的な変化が少なくなっています。こちらは10年間の平均のグラフ(グラフ2)ですが、夏場を頂点とした山なりの発生状況となっており、これからの9月にかけて多く発生していることがわかります。

Q2 どうしてこのようなことになったのでしょうか
A2 こちらのグラフ(グラフ3)見てください。どんな微生物によって起こるのかを表したものです。この緑のグラフがノロウイルスというウイルスによる食中毒です。12月から3月までの冬場に多く発生しています。紫の線はカンピロバクターという菌ですが4月から6月にかけて多く発生しています。ブルーは腸炎ビブリオです。この菌は7月から9月の前半の夏場に集中して発生しています。赤の線はサルモネラです。8月後半から10月にかけて発生しています。季節によって活躍する菌が違っていることがわかります。
Q3 なぜ、寒い冬場に食中毒が発生するようになったのでしょうか?
A3 それはウイルス性の食中毒が増加しているのと、少ない菌数でも発病する食中毒が増えているからです。

日本で最も多く発生していた食中毒は腸炎ビブリオという菌で、夏場、海水温度が高くなると大量に発生し、魚や貝類に付着して調理場や家庭に持ち込まれます。

この菌は30度くらいの気温で急激に増殖するという特徴を持っており、刺身などを3〜4時間室内放置しただけで食中毒を起こす場合があります。

また、手荒れた手指や化膿したところに付いているブドウ球菌という菌で多く発生していますが、この菌が増えるときに出す毒素を食品と一緒に食べることによって食中毒が起きます。

これらの菌は25度から35度くらいで急速に増えるので、気温の高い夏場に食中毒が集中します。

いまでもこれらの菌による食中毒は起きていますので、引き続きこれからの季節は注意が必要です。

Q4 少量の菌数というのはどれくらいなのですか?

A4 ここ数年、多く発生しているカンピロバクターやノロウイルス、それにO―157などは数10個から500個程度の菌数で発病させることができといわれています。

腸炎ビブリオは100万、ブドウ球菌は1000万くらいの菌数が必要ですから、10数個というのは、これまでの食中毒では考えられないかったことです。

昨年1月に都内の小学校の給食で起きたノロウイルスの事件で、原因となったのはバターロールパンでした。パン工場の従業員がノロウイルスに感染しており、その従業員の手指を介してバターロールパンを汚染していたもの推定されました。ウイルスがほんの少量パンに付着していただけでこのような事件となってしましました。

Q5 生の肉類や少しあぶった程度食べるような傾向が見られますが、食べ方の変化などは関係してないのでしょうか

A5 大いに関係しています。最近、鶏の肉や鶏のレバーなどを生や生に近い状態食べさせるお店が増えてきています。これらを食べてカンピロバクターの食中毒になるという事件が多く発生しています。また、高校などで鶏肉を使った調理実習でも時々発生しています。以前東京都が調査結果では一般に販売されている鶏肉の13%がカンピロバクターに汚染されているということが分かりました。

ただし、カンピロバクターは熱に弱いので、鶏肉を十分加熱することによって食中毒を防ぐことができます。

Q6 最近あまり事件が起きているというニュースは聞かないのですが、腸管出血性大腸菌O157はどうなっているのでしょうか?

A6 堺市の小学校の事件があまりにも大きな事件でしたので、その後の情報が小さく扱われるので、あまり気が付かないのと思いますが、実はこのグラフ(グラフ4)のようにO157などの腸管出血性大腸菌の感染者はサルモネラに次いで多く発生しています。食中毒事件としては統計に乗らないのですが、散発患者、あるいは家庭や施設で、食品を介さないで感染する例も入れるとこのようなグラフになります。

今年は、特に3月下旬から全国的に患者が発生しており、菌の型も一致たものが多く、何らかの共通した食品が流通しているのではないかと疑われています。
Q7 最後に、ではどうしたら防げるのでしょうか?

A7 食中毒の予防には、三原則と言って@菌を付けないA菌を増やさないB菌を殺してしまうことで、このどれかを実行すれば食中毒を防ぐこいとができました。現在でもこのことは有効です。しかし、ウイルスやカンピロバクター、O157は少量の菌数で感染し発病しますので、Aの菌を増やさないということが効果的でなくなってしまいます。残された予防方法の菌を付けないようにするか殺菌するということになります。

そのためには、何よりの手洗いを徹底することです。トイレの後や調理の前、食事の前にも良く手を洗ってください。また、生の食材には菌が付いている可能性があります、牛・豚・鶏等の肉類や内臓などの生食は避けるようにしましょう。小さいお子さんや高齢者の方は特に注意が必要です。生肉などを調理する際は十分に加熱するとともに、生ものに触れたまな板や包丁、手指はしっかり洗ってください。そして、生でたべる野菜などは流水で十分、洗浄するようにしましょう。

以上のような注意事項を守って、夏バテしないように食生活を多いに楽しんでください。
グラフ1



グラフ2


グラフ3


グラフ4

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