ガン治療の参考になる本

<ガンと共に生きるための知識> <残された日々の過ごし方> <生き方のための知識> <アメリカの医療がわかる本>

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<ガンと共に生きるための知識>
『大病院はなぜか教えてくれない ガン医療のスキマ30の可能性』 伊丹仁朗 著(三五館)
『やっと名医をつかまえた 脳外科手術までの七十七日』 下田治美 著(新潮文庫)
『からだを温めると増える HSPが病気を必ず治す』 伊藤要子 著(ビジネス社)
『がんで死ぬのはもったいない』
 平岩 正樹 著(講談社)
『がん患者学 長期生存をとげた患者に学ぶ』 柳原 和子 著(晶文社)
『真利栄ちゃんママがんばってるよ 絨毛がんに冒された母と子』 奥迫 康子 著(家の光協会出版)
『幸せはガンがくれた 心が治した12人の記録』 川竹 文夫 著(創元社)
『ガンを予防し克服する 図解 生きがい療法』伊丹 仁朗 著(産能大学出版部出版)
『がんは自分で治せ がんにならないために、がんを治すために』 間瀬 健一 著(海竜社出版)
『癌を語る』寛仁親王、国立がんセンター主治医団(主婦の友社出版)

「日本列島徒歩縦断!がん克服落語会」笑福亭小松著(講談社)
「私たちがガンを治した体験談集」帯津良一編(二見書房)
「生きがい療法でガンに克つ」伊丹仁朗著(講談社)
「ガンを予防し克服する図解生きがい療法」伊丹仁朗著(産能大学出版部出版)

<残された日々の過ごし方>
『苦しみの中でも幸せは見つかる』 小澤竹俊 著(扶桑社)
『13歳からの「いのちの授業」ホスピス医が教えるどんな時でも「生きる支え」を見つけるヒント』 小澤竹俊 著(大和出版)
『告知 外科医自ら実践した妻へのガン告知と末期医療』 熊沢 健一 著(マガジンハウス出版)
『それぞれの風景 人は生きたように死んでゆく』 堂園 晴彦 著(日本教文社出版)
『告知せず、ガンで夫との愛の深さを知った妻たちの四季』山口喜美子著(文春文庫)

<生き方のための知識>
『緊急発言 いのちへ1、脳死・メディア・少年事件・水俣』
 柳田 邦男 著(講談社)
「いばるな!医者 おごるな!!病院」平岩正樹著(大和書房)

<アメリカの医療がわかる本>
『名医と迷医の見分け方、裸のお医者さまたち』 桑間雄一郎著(ビジネス社)
『ハーバードの医師づくり』 田中まゆみ著(医学書院)
『アメリカの医学教育、アイビーリーグ医学部日記』 赤津晴子著(日本評論者)
『アメリカの医学教育、スタンフォード大学病院レジデント日記』 同上
『市場原理に揺れるアメリカの医療』 李啓充(医学書院)
『アメリカ医療の光と影 医療過誤防止からマネジドケアまで』 同上
『人は誰でも間違える より安全な医療システムを目指して』 (日本評論者)

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『大病院はなぜか教えてくれない ガン医療のスキマ30の可能性』(三五館)2005年11月発行
すばるクリニック院長「笑いの健康学」推進医師 伊丹仁朗 著

ガン医療のスキマ30の可能性<目次>
スキマ1 免疫ドックで、まずはガンに打ち克つ自分のチカラを調べよう
スキマ2 うつ病治療がガン克服の隠れた秘訣だった
スキマ3 ガン闘病中は、何をどう食べればいいの?
スキマ4 ガン免疫増強には、適度な運動が効果的
スキマ5 女性のガン手術には、再発が大幅に少ない大安日がある!
スキマ6 睡眠剤メラトニンを手術前に飲むと、再発率が低くなった!
スキマ7 「PET検査」なら、再発・転移がひと目でわかる
スキマ8 ガン闘病中には必ず、インフルエンサ・ワクチンを!
スキマ9 抗ガン剤は「ゆっくり・少なく」のほうが、効果あり!
スキマ10 必要のない手術をする外科医がいるって、本当ですか?
スキマ11 脳転移ガンだって、「切らずにできる手術法」がある
スキマ12 温熱療法で「熱に弱いガン細胞」を撃退する
スキマ13 骨粗しょう症の特効薬が、骨転移ガンに効く
スキマ14 胃ガン予防に決定的に重要な「ピロリ菌」退治
スキマ15 あリふれた胃炎の薬が、ガン細胞を兵糧攻めにしてくれる!
スキマ16 イレツサとマクロライドで肺ガン治療に光が見えた
スキマ17 インターフェロン投与で、肝ガン発生率が大幅に減少
スキマ18 リウマチの患者さんにガンになる人が少ないのはナゼ?
スキマ19 胃漬瘍のクスリが、ガンの再発・転移を減らす!
スキマ20 今でも認可されない丸山ワクチンの入手方法
スキマ21 あの「サリドマイド」は、じつはガンの治療薬
スキマ22 甘い言葉にご用心!キノコ類の注意点と活用法
スキマ23 自家がんワクチンは、あなたの体にもっとも適したお薬です
スキマ24 科学界もその効果を認めた、中国発「歩く気功法」
スキマ25 ガンが自然に消える……そのメカニズムを解明せよ
スキマ26 ガン治療をしてくれないホスピスヘの提言
スキマ27 ガン闘病者の人命は、なぜ軽視されるのだろう?〔
スキマ28 担当医の「タイプ」を知ることは重要です
スキマ29 「ガン難民」にならないためにできること
スキマ30 「患者よ、ガンと閾うな」は本当に正しいのか?

ソラリア療法(ガンの多角的基本療法)の原則
@ガンに対する作用の異なる方法をなるべく多く組み合わせて用いること
Aなるべく早く開始し、できるだけ長く続けること
B副作用がほとんどない方法であること
C科学的裏付けのあること
D比較的安価であること

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『やっと名医をつかまえた 脳外科手術までの七十七日』(新潮文庫)2002年4月発行
ジャーナリスト 下田治美 著

目次
それは小さな違和感からはじまった
この病院にはナニカある
患者より自分がだいじなお医者サマ
それでも患者は耐えねばならぬ
このままいたら殺される
名医は自分でさがしだす
最後の決断は自分の直感
母のえらんだ先生を信じなさい
生還(い)きてみせる
心臓が止まった!ードキュメント・手術ー
わたしの選択は完勝した!
名医は、かならず存在する!
あとがき
対談ー「患者」の権利:松本繁世、酒井和夫
 「医者でも名医はさがせない」
 「名医を選べた三つのポイント」
 「これからの医療にのぞむこと」
「受診・入院される方の権利について」
解説:小林光恵

わたしを悩ますナゾの頭痛の正体は「脳動脈瘤」。いつ破裂してもおかしくないバクダンを抱え、巡り会うのはなぜか迷医ばかり。点滴もできない未熟者、患者を怒鳴りつける冷血漢、病名まで間違えられて、本当にこのままじゃ殺される! 手術前夜、病院から逃走した時、真の闘病が始まったー。へこたれない女、あきらめない患者の、命をかけた名医探し奮戦記。

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『からだを温めると増える HSPが病気を必ず治す』(ビジネス社)2005年2月刊行
愛知医科大学医学部附属核医学センター 助教授 医学博士 伊藤要子 著
2004年6月にNHKラジオ「ラジオあさいちばん」で放送された「温熱療法の不思議」。放送直後から多数の問い合わせがあり、再放送・続編の放送を経て、ついに「温熱療法」が書籍になりました!

著者紹介
名城大学薬学部卒業後、名古屋市立大学で医学博士学位取得。日本ハイパーサーミア学会会員・学会認定指導教育者、日本医学放射線学会会員。95年に日本ハイパーサーミア学会優秀論文賞受賞。

熱ショック蛋白(Heat Shock Protein、頭文字をとって「HSP」と呼ばれる)は、文字通り熱というストレスによってつくられるタンパク質で、感染・傷害・疲労などで傷ついた細胞を修復し、生体をストレスから防御してくれます。最近、HSPが、がんや病原菌を見つけだして殺傷するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を高めたり、抗原提示によりがん細胞を免疫細胞が攻撃しやすくする事がわかってきました。体を加温する「温熱療法」というと、日本では主にがんの治療方法として知られていますが、がんだけではなく、正常細胞を加温してHSPを増加させ免疫力を高めたら、様々なストレスに対して細胞は強くなり、正常細胞や弱々しい細胞を元気にすることができます。正常細胞を加温する際は、細胞がHSPを誘導する温度で体を加温すればよいので、がん治療の高い温度と区別して、私たちはこれを「マイルド加温」と呼んでいます。

突然の大きなストレスは、細胞に傷害を与えたり細胞死を起こしますが、事前に加温して体にHSPを増加させておけば、手術、感染、脳梗塞、ショックなどの傷害性ストレスを防御することができます。また、加温すると脳から痛みの緩和物質であるエンドルフィンが出てくるので、がん末期の患者さんもマイルド加温を始めて以来痛みがなくなり、治療において重要な疼痛緩和にも役立ちます。運動競技も体にとっては一種のストレスです。運動の一定期間前にマイルド加温を行うと、疲労物質である乳酸の産出が遅くなって疲労しにくくなり、成績が上がります。この熱ショック蛋白・HSPと温熱ストレスをうまく利用すると、医学(温熱療法)、看護(温熱看護)、スポーツ(温熱トレーニング)の分野のみでなく、日常的にマイルド加温を行う事で日々の健康維持(ウイルスへの感染、老化、などの防御)に大いに活用できます。

書籍では、家庭での全身浴や半身浴、お風呂に取り付けるミストサウナなど、自分でできるマイルド加温の方法をわかりやすく解説しております。体内のHSPの存在やその効果を知っていただき、病気や健康増進対策に役立てていただけるよう、ぜひご一読ください。体を加温すると増加する熱ショック蛋白(HSP)が、自然免疫能を増加し、さまざまなストレス傷害・疲労・病気を治してくれます。お風呂・温泉・サウナなどで、自分でHSPを増加させ健康を維持しよう!

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『がんで死ぬのはもったいない』
平岩 正樹 著(講談社)
中国新聞2002年9月12日コラム「天風録」

広島市出身の外科医、平岩正樹さん(48)=東京在住=に話を伺う機会があった。新著「がんで死ぬのはもったいない」(講談社)で、日本の進行がん治療のお粗末さと、それを変えようとする試みを、実例を踏まえて書いた人である▲治療や相談、講演、原稿執筆などで、「プライベートな時間はゼロ」。休んだのは一年間に、風邪で倒れた一日だけだった。そのエネルギーの源は「必死で頑張っている患者さんの存在」と言う▲各地の病院で、「もう治療法はない」と言われてやって来る患者。考えられる最良の抗がん剤治療を続ける平岩さん。一緒になって闘う姿が本に紹介されていて感動的だ。同時に、このような治療が行いにくい日本の現状には驚かされる▲がんであると患者に気付かれないことが最重視されたため、本格的な抗がん剤治療は大きく後れを取った。がん治療といえば手術と思われ、抗がん剤は副作用が強いという認識が定着した▲七年前、平岩さんはがんの百パーセント告知に踏み切った。患者と徹底的に話し合った。工夫を凝らし副作用を抑えた。優れた抗がん剤があるのに使えない国の承認の遅さも批判した・・・▲がんで死亡する日本人は年間約三十万人。医師の中には「どうせ進行がんは治らないから、がんとは闘うな」との意見もある。だが、平岩さんは強調する。「少しでも長く健康に暮らせるように努力するのが医学の使命」。開拓者の心意気といえようか。


『がん患者学 長期生存をとげた患者に学ぶ』
柳原 和子 著(晶文社)

治すために長期生存者たちはいかに生きてきたのか?がん、もう一つの最前線。
代替療法は有効か?
医療の限界は越えられるのか?
ノンフィクション作家が自らのがん体験を記録し、専門家とともに思考し、患者の心で聞いた。


『真利栄ちゃんママがんばってるよ 絨毛がんに冒された母と子』
奥迫 康子 著(家の光協会出版)

胎盤のがん「絨毛がん」から奇跡的に生還した母 生後39日で逝った娘へのレクイエムは、がんとの壮絶な闘いの記録でもある


『幸せはガンがくれた 心が治した12人の記録』
川竹 文夫 著(創元社)

自らの心の力によって絶望から生還し、真の健康と新しい人生をつかんだ人達の喜びに満ちた証言の記録


『ガンを予防し克服する 図解 生きがい療法』
伊丹 仁朗 著(産能大学出版部出版)

ガンを予防し克服する方法 それは免疫能を高めることである その具体的方法を「生きがい療法」は示している


『がんは自分で治せ がんにならないために、がんを治すために』
間瀬 健一 著(海竜社出版)

何が、私を末期癌から生還させたのか? 体験的自然治癒力活性化超健康法


『癌を語る』
寛仁親王、国立がんセンター主治医団(主婦の友社出版)

毎日新聞コラム「余禄」1999年6月27日

食道がん発見から6回に及ぶ手術、闘病体験をつづられた著書「癌を語る」(主婦の友社)を寛仁親王殿下から贈っていただいた▲筆者が食道がんの手術を殿下と同じ国立がんセンターで受け、執刀医も同じという話を、人づてに聞かれたらしい。読んでいるうちに5年前のつらい日々が蘇ってきた。今年4月に上梓されたが、手術に携わった国立がんセンターの医師6人が執筆に参加し、一種の共著となっていることが新鮮だ▲主治医は食道がん手術の世界的な権威、渡辺寛外科部長である。渡辺医師らとの対話には、医師と患者ならではの激しい葛藤とその結果生まれた強い信頼感がみえる。「術後、何も異常がないのに『痛いから何とかしろ』とおっしゃる。普段お側の方がおられて何かあればすぐ解決出来ると思っておられる」(渡辺医師)▲「本当に痛いわけですからその事を正直に申し上げているのに、それを皇族のせいにされてはかないません。先生が食道がんの手術を受けておられないので、痛みの程度がお分かりいただけないのが一番問題でした」(殿下)。渡辺医師も負けていない。「しかし、やたらと痛み止めを使うと回復が遅くなります。心を鬼にして殿下とかなり言い合いもしました」と述べている▲前書きに「医師の立場でどのようにして患者の私に対処してこられたか、それに対抗して患者の立場で何を考えたのか、という共著の『癌物語』です」と書かれているとおりだ。率直な意見の交換は同病の筆者にとっても貴重な情報になった。難治がんといわれる食道がんの治療は日本が世界のトップレベルにある▲渡辺医師は世界の専門家による「国際食道疾患会議」の事務局長だ。最近の不況で寄付金が激減し、運営に四苦八苦しているそうだ。この本にはないもう一つの情報である。


『苦しみの中でも幸せは見つかる』
めぐみ在宅クリニック院長・元横浜甦生病院ホスピス病棟長 小澤竹俊 著 2004年2月 扶桑社発行

朝日新聞、毎日新聞で紹介された、「苦しみの中でも生きていけるヒントがここに!
友人、知人、夫婦、親兄弟、教師・生徒、上司・部下、学校・仕事関係…
すべての「苦しみ」は人間関係を見直すことで改善される!!
限られた"いのち"を生きる ホスピス病棟ー究極の「苦しみ」と向き合う ホスピス医だからこそ伝えたい、
「苦しみ」を和らげる人間関係のあり方。
「苦しみ」とは:希望と現実のギャップ


『13歳からの「いのちの授業」ホスピス医が教えるどんな時でも「生きる支え」を見つけるヒント』
めぐみ在宅クリニック院長・元横浜甦生病院ホスピス病棟長 小澤竹俊 著 2006年7月 大和出版発行

いのちが限られるー。それは大変な苦しみ。しかし、その中でも幸せは見つかる。
「死の苦しみ」と向き合っている人に
「生きることの意味」を見失っている人に
我が子に「いのちの大切さ」を伝えたい人に


『告知 外科医自ら実践した妻へのガン告知と末期医療』
熊沢 健一 著(マガジンハウス出版)

愛する妻をいかにして安らかに死に導くか。幼い子供たちとの静かな別れは可能か。


『それぞれの風景 人は生きたように死んでゆく』
堂園 晴彦 著(日本教文社出版)

寺山修司の薫陶を受け、唐牛健太郎を看取ったがん専門医が多くの終末期患者から学んだ生と死のランドスケープー風景ー


『緊急発言 いのちへ1、脳死・メディア・少年事件・水俣』
柳田 邦男 著(講談社)

この国の制度疲労・組織疲労の落とし穴はどこにあるのか。この発言で社会が動きはじめた!!専門家集団も目をそらせなくなった発想と提言、第1弾


『アメリカ医療の光と影 医療過誤防止からマネジドケアまで』
李啓充(医学書院)

医療は変らなければならない!なぜ医療過誤は起こるのか…、どうしてマネジドケアは失敗したのか…、医療を市場原理に委ねた時、何が起こるのか…、苦闘する米国医療の現況から現代医療の根本問題に迫り、21世紀医療の原則を示す

プロローグ

医学部を卒業後、彼は、地方都市のある総合病院で臨床研修医となった。臨床研修の二年間には数多くの忘れ得ない経験をしたが、彼にとって特に忘れられないのは、新人研修医のオリエンテーションでの「注射・採血実技講習」である。駆立帯の使い方も知らなかった新米医たちが、お互いを相手に静脈採血の練習から始めたのだが、同期の研修医たちの(針を刺す方も刺される方も)緊張と恐怖に凍りついた顔は、今でも懐かしく思い出される。やがて静脈注射の実習となった。新人研修医たちを相手に教官役を務めたのは三年目の先輩レジデントであったが、彼は静脈注射の手技実習に入る前に、「君たち、注射で一番大切なことは何か知っているかにと、一日目の新米医たちに質問を投げかけた。「空気を入れないこと」、「不潔にしないこと」、「静脈外に漏らさないこと」、新米医たちの答えは、どれもコ番大切なこと」の正解とはならなかった。こんな基本的なことも知らないかというような口調で、教官役のレジデントは次のような言葉を新米医たちの肝に銘じさせたのだった。「一番大切なのは、一度静脈に入れた薬は絶対に戻ってこないということだ。間違った薬を一度静脈に入れたら、絶対に戻ってこないんだぞ。君たち、これから医者をやっていく上で、これだけは忘れるなよ」と。「一度静脈に入れた薬は絶対に戻ってこない」という先輩レジデントの言葉の本当の意味を、やがて身を灼く苦しみで思い知ることになろうなど、彼は夢にも思っていなかった。


『人は誰でも間違える」より安全な医療システムを目指して』
TO ERR IS HUMAN
L.コーン、J.コリガン、M.ドナルドソン 編
米国医療の質委員会、医学研究所 著
医学ジャーナリスト協会 訳(日本評論社)

はじめに

『人は誰でも間違える一より安全な医療システムを目指して』というタイトルが、本書の目的を端的に表している。人間は、どんな仕事でも間違いをおかす。間違うことが難しく、正しくすることがやさしい、といった設計をしておけば、間違いは防げる。車は後ろ向きにスタートできないように設計してある。だから、事故が防げるのである。パイロットの飛行時間は、休みなく連続して何時間も飛ばないように組まれている。敏捷な反応と無理な飛行計画は両立しないからである。より安全な医療システムをつくるということは、患者が被害に合わないように安全を保証するプロセスを設計することである。それによって、病院内で治療コースが選択される場合、患者は、正確で安全な治療が行われ、望ましい結果を達成できる保証を得るべきなのである。

この報告には、これまで密室で議論されてきた医療上の重大問題が記述されている。医療システムが複雑になるにしたがって、エラーが生ずる機会も増える。これをただすには、医療従事者、医療機関、医療サービス購入者(保険者)、医療消費者、法律家、政策者などがともに努力する必要がある。伝統的な医療の壁や、当事者を非難する文化を壊さなければならない。最も大切なのは、安全の観点からプロセスを組織的に設計し直すことである。本書の報告は、米国において医療の質を点検し、その質をどう向上させるか、という大プロジェクトの一部である。当委員会が最初に注目したのは、エラー(errors)をもたらす「質」であった。それには、いくつかの理由がある。第1に、エラーは、患者の傷害、苦痛、死といった広範囲の出来事に対する原因だからである。第2に、医療サービスのなかでは、エラーは起こってはならない事柄として仮定されており、患者に危害を与えたり、危害の原因となるようなことは誰も起こしてはならないと考えるからである。第3に、エラーの問題は一般の米国人に次第に理解できるものになっているからである。第4は、医療の安全問題に取り組むのに十分なほど、他のビジネス分野の成功例が蓄積されているからである。第5に、医療提供システムは急速に大きな変貌を遂げつつあるが、それは改善を導くものであると同時に新たな危険を孕むものでもあるからである。当委員会は今後引き続き他の問題を検討していくつもりである。

米国医療の質委員会(Committee on Quality of Health Care in America)のプロジェクトは米国研究審査会(the National Research CounciI : NRC)より大きな資金提供を受けている。またこの報告書の作成のために全国基金(Commonwealth Fund)からの資金を用いて、医師、看護婦、薬剤師による作業部会を開いた。さらに州政府健康政策ナショナルアカデミー(National Academy for State Health Policy)の支援で、州の法律専門家や規制担当のリーダーたちを呼んで、患者の安全についての議論を行った。この報告の作成には、38人の人々が関与した。まず、質確保のための外部環境を整える小委員会(the Subcommittee on Creating an Extemal Environment for Quality)が設けられた。J.クリス・ビスガードとモーリー・ジョエル・コイエの両氏が代表となり、一連の複雑で微妙な問題に取り組んだ。加えて、21世紀医療システム小委員会(the Subcommittee on Designing Health System of the 21st Century)が、ドナルド・バーウィックを代表として開かれた。最後に、ジャネット・コリガン、リンダ・コーン、モーラ・ドナルドソン、トレイシー・マッケイ、ケリー・パイクの多大な支援に感謝したい。われわれは誰しもいつかは患者となり、医療機関の世話になる。この報告が、われわれ誰しもが傷害を受ける可能性があることを明るみに出すことに役立つよう希望するものである。

1999年11月米国医療の質委員会議長ウイリアム・C.リチャードソン

訳者まえがき

医療事故に関する報道が相次いでいる。だがマスコミはとかく集中報道の傾向を持つので、それは報道が増えたのか、それとも事故そのものが増えたのか。そんな疑問を抱えているときに、東海大学医学部長の黒川清教授から私たちに、アメリカで公刊されて話題になっており、読了したばかりという、この本の原著を示された。氏自身、大学病院のなかで起こった医療事故が報道されて、その渦中にあった直後であった。

医療事故はしばしば報道によって表面化するので、ジャーナリズムが関与する役割が大きく、当協会としても関心の深いところである。本は、アメリカの公的機関である医学研究所が設立した米国医療の質委員会が、おりから同国でも問題化していた医療事故への対応を、クリントン大統領に求められたことへの報告書であるが、内容は体系的であると同時にきわめて具体的で、おそらくはこの問題では、最善のテキストブックと考えてよいものである。まさに協会の10周年記念事業としてもふさわしく、ぜひとも協会として緊急的に翻訳に当たることを希望し、関係者の了解を受けて有志がただちに作業に入った。

翻訳者の一人として参加した筆者が痛感したことは、何か問題のある事象が起こったとき、徹底的に調査し、そのデータを解析し、実際にエビデンスを集めながら改善法を構築していく、そのスキルとともにこの国のカルチャーのすばらしさである。これは、数十年前から先駆的に活動していた人々があったのが、徐々に発展しながらここに来て大きなうねりとなり、この一大プロジェクトに結集したのである。しかもそれが医療人自身によって推し進められてきたことにも、畏敬の念を覚えざるをえなかった。

そして、このプロジェクトが遂行されたのには、日本同様、マスコミによって医療事故が相次いで報道されたことが契機として大きく、ここでもジャーナリズムの役割を再認識させられた。ただ、日本でそうであるようにこの国でもマスコミ報道は「誰がやったか」というふうに犯人探しが先行することが多かった。これは医療ミスを「個々の医療提供者の問題」ととらえる社会意識の反映でもあろうが、このとらえ方は医療事故防止にはなんら役立たない。

医療事故の原因となるエラーには、目に見えるエラーと、目に見えないエラーがあり、すべての目に見えるエラーの背景にはかならず目に見えないエラーが潜んでいる。そしてそれは、日常的に起こっている。これは人間である以上、かならずおかす間違いである。だがそれが事故に結びつくのは、個々人の問題ではなく、システムに欠陥があるからだ。それにはエラーを「ありえないこと」と言い張るのでは、事故を防止することはできない。「絶えず起こりうること」と認識してすべてのエラーを報告させ、いかにシステムを改善するかが、このプロジェクトのテーマであり、本書の主眼でもある。この考え方は、透明性と説明責任をグローバル・スタンダードとする広い意味でのインフォームド・コンセントの一環として、とかく閉鎖的であった医療文化を180度転換しなければならないとの、壮大なパースペクティブを持つ。

研究者の徹底的な調査と討論によって作成されたこの報告書は、いっそう対応の遅れている日本の医療関係者に大きなインパクトを与えるはずである。もちろん医療人にひろく読んでいただくだけでなく、いまや医療のたんなる受け手から参加が強く求められている、一般の人にも読んでもらう価値のある一書であることは疑いない。同時につねにセンセーショナルに報道しがちなマスコミ関係者にも、情緒的な事実報道だけでなく改善方法まで視野に入れた報道姿勢がとられることへの期待をこめながら、読まれることを、自省をこめて願うものである。

幸い遅ればせながら日本でも最近、氷山の一角にすぎない医療過誤を、透明性の確保によってまず明らかにするという原点から、改善策を模索しようとの試みが、一部の医療人、医療機関によって推進されている。その意味でも、まことに最良のタイミングで本書が刊行されたと考える。

訳出に当たっては、たとえば頻出するerrorという言葉を過誤と訳すべきかという導入部からディスカッションが行われ(原則的にエラーと訳されることになった)、訳語の統一には苦心した。ことに日米間では医療システムが異なることが少なくないのもハザードであったが、この面では、訳者のなかで日米両国の医療に通暁している瀬尾隆氏によってカバーを受けたことをとくに記したい。さらに北九州大学文学部教授・山内陸久、東京電力株式会社原子力研究所・河野龍太郎、弁護士・堀康司の諸氏にもそれぞれの専門分野についてアドバイスをいただいている。最後に、時間と闘いながら懸命の編集作業に当たった日本評論社の守屋克美氏の奮闘はめざましいものがあり、氏によって励まされたことも追記して、各氏には心からの感謝を捧げたい。

医学ジャーナリスト協会会長
宮田親平

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