お 母 様

    

    お山の雪も溶けそめて

      麓(フモト)の木々も芽を吹いた

     もう、春でしょうお母様

       聞いた昔がなつかしい

 

そよそよ吹くよ春風が

  ひらひらひらと蝶が舞う

 蜜をのませた菜の花が

   ちらちらちらと散りました 

 

若葉もにほう五月晴(サツキバレ)

  今年も来たよつばくらめ
    空にも元気な鯉登り

   今日は嬉しいお節句よ

 

涼しいお庭の木の下の

  ゆらゆらゆらと揺籠で

 聞いた優しいあの歌を

   何で私が忘れましょ

 

あっちの水は辛いぞ

  こっちの水はあまいぞ

 田圃(タンボ)にうつる蛍狩り

   そばで蛙が鳴いている

 
     夜目にも白く美しい
   
        萩の花咲く草の中
 
      リーロリーロとこほろぎが
  
           秋が来たぞと鳴いている

 
    ぺったんぺったんぺったんと

        月の世界のお餅つき
 
    今日は十五夜かれすすき

          おいでおいでと靡(ナビ)いてる

  
    私が病気になった時
    
        夜通し看病ご苦労さん

     本当に母様有難う

         こんなに元気になりました

 

    大きくなって兵隊に

      僕は行きます国の為

    御苦労ですがお母様

         後はしっかり頼みます

 

     雨の降る日も雪の日も

       敵の陣地を取った時

     何時も優しい母様の

       お顔が胸に浮かびます

 
   花と散るのが男なら

      一発必中体当り

    ああその時に母様の

      優しいお顔が浮かぶでしょ

 

    世界で一番良い所

     遠い南のお国でしょ

    いいえいいえ違います

     それではそれでは何処でしょう

 

    恋しい優しい母様の

     お膝に抱かれた其の時が

    世界で一番良い所

     本当に優しいお母様

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