(K2)PIC16F819 RF AD8307 dBm計 

UP dated 2011.7.21 Up2020.08.30

●PIC16F819 デジタル3Digits AD8307 dBm計=プログラム呼称mV07W

回路、基板は@マイコンチップPIC16F819電圧計と同じで PIC16F819のプログラムを mV07W.asm とすることにより、AD8307の出力電圧を dBm表示させることができます。 DIP-SWの切り替えにより、mW、W表示もできます。
ケースはタカチYM80(W80×H30×D50mm)に組み立てました。

探針での回路中の 通過電力測定へ飛ぶ

測定範囲は、dB表示で -75〜+17dBm。ただし、フロアーノズルレベルがあるので-69dBm以下には下がりません。外部に-20dBアッテネータを付けた時用に、オフセット+20dB加算した表示が可能(DIP SW切替)。 

DIP-SWの切り替えは、回路図の表を参照ください。

・写真は、Type1(メータ付)、SW-1=OFF SW-2=OFF 、測定端に +0dBm(と思われるRF電力)を入力し、+00.0dBmを表示している状態です。
・左側の10Wの バラック-40dB 抵抗式ATTで 1mWを入力。


・PIC16F819プログラム済みのものをご入用の方は、以下ページをご覧ください。 ◇PICの頒布基板付


・その状態で SW-1=ON とすると 1mWの表示に変わります(下左写真、1.02mW。上とは別のType2)。
・0dBmをRF devider2分割して、2個の電力計に供給。LED点灯で負、-03.0dBmと -03.3dBmを表示(下中央)。  
・ケースはタカチYM80の内部(下右側)


●回路

上半分Type1 が、AD8307の出力を OPアンプで1倍バッファし、電流計(1mA)も振らせるようにしたもの。 
下半分Type2 は、AD8307の出力を直接 PICに入力したものです。

・PIC電圧計と基本的に回路は同じですが、電力計とするために、Type1 では、Ref+電圧を AD8307の+20dBm時の出力電圧=2.7Vに合わせてあります。

・Type2 では、別の方法で、AD8307の出力エミッタ抵抗を下げることにより、勾配調整をし、+20dBm時の出力電圧=2.50Vにしてますので、PICの+Refは、2.5Vとします。




・単独の測定器として DCプラグジャックで ACアダプターからB+電源を供給する場合は、正負の極性(芯側が正か負か)に注意します。
・ACアダプターによって、芯側が正か負かは、ばらばらです。誤接続をするとICが破損します。


・左図のように電源供給部にブリッジを配置して、いちいち極性を確認しなくても良いようにするのが安全です。

・少なくとも右図のように、逆接保護ダイオードを付けるようにします。


●ここで AD8307について

・==勾配調整===; AD8307の 入力電力(dBm) vs 出力電圧(V)の感度調整
アプリケーションデータの本文では、勾配は、0.025mV/dBmと記載されていますが、(正確な測定器ではなく自作の抵抗ATTで)実測してみると勾配は、ほぼ 0.025V/dBm で入力=0dBm時の出力電圧は、2.20Vでした。

・実測結果 Y=0.025X+2.20を 朱記のグラフで表しています。すると左図のオリジナルのグラフ(黒線)の勾配と一致していますので、これが正しいのかな、と考えます。X軸切片は、-88dBmとなります。

  ・この勾配は、上記回路図の左下に記載しているようにAD8307のエミッタ出力抵抗12.5kΩに流れるΔ2μA/dB の両端電圧で出力されます。
  ・PIC電圧計の入力抵抗は、オリジナルでは10kΩですが、これがこのまま残っているとType2の回路では、AD8307のエミッタ出力抵抗が あたかも5.5kΩ(10kと12.5kの並列)となってしまい、勾配がくるうので オリジナルの10kΩは取り外し、かつ勾配が 0.023V/dBmとなるように147kΩの抵抗に変えます。(勾配を0.023V/dBmとすることにより、+20dBmのときの出力電圧が、2.7Vから2.5Vに変更できます)

・なお、AD8307の特性として入力が+15dBmを超えると、出力電圧は、勾配が平らになりやがて負勾配になりますので、指示dBm値は異常に低い値を示します。


・==X切片調整===; AD8307の 切片調整のデータ

水平X軸と グラフの交差点の値を X軸切片と称しますが、上記で説明したように-88dBmでプログラム設計しています。

・AD8307のINT Pin.5に与える電圧を変えることにより、切片を平行移動して調整することができます。
・INT Pinをオープンにしてピン電圧を測ると4.6Vでした。このピンにVRを接続して電圧を5Vにすると グラフは赤いグラフから右下に移動(X切片が約4dBm大きな値に移動)します。逆に 電圧を4.6Vより下げて4.0V、3.5Vというようにすると グラフは左上に移動(X切片が負の方向に移動)します。

  ・このINT Pinの電圧調整により、X切片が移動。すなわち、一定の入力のRF電力に対し、表示値を+4dBm/ -11dBm変えることができるので、正確な信号源があれば、精度の良い電力計に仕上げることができます。
  ・もっとも、私の場合もそうですが、正確な信号源がない場合は、VRは取り付けず、 Pin.5をオープンにしておくことも一つの選択肢となります。(それほどバラツキはない)

手持ちのAD8307A、あるいはAD8307ANを4個差し替えて、同じ+0dBm入力のときの表示値は、+0.0dBm、+1.1dBm、+1.9dBm、+0.9dBmのバラツキであった。AD8307の特性ばらつきは、ほぼ +/- 1dBmの範囲に入っていると思う。


● プログラムソース

プログラムソースは、マウス右クリックで「対象をファイルに保存」を選んで、ダウンロード。

 ◇PIC16F819用 ダウンロード mV07w.hex

 ◇PIC16F818用 ダウンロード18mV07w.hex

・ここで プログラムのアルゴリズムについて 概略の説明をします。


・+Refと同じ2.7Vの電圧が RA0ピンの入力されたときに PIC内部のADコンバータは、1023(10bit)の値ADRESとして読み込む。

  ・関係式 Y(Vout)=0.025X(dBm)+2.20 を変形すると
 dB=(ADRES-834)x[1 + (14+ 1/4 + 1/64 +1/128)/256 ]となるのでこれを計算してLEDに表示させる。
 


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・dBmから mWへの換算は、次のようにしている。

・dBmとmWの関係は、例えば、P(+21.9dBm) =P(154.9mW) である。
 同様に    11.9dBm=15.4mW、
 負の場合は、 -1.9dBm=0.646mW =1/1.54、
同様に    -11.9dBm=0.0646mW =1/15.4となる。
・154の数字、負のdBmでは、646が共通して出てくることに気付くであろう。

・P(mW)=10^(dBm/10)の関係式において、具体例として +21.9dBmとすると、
   P(mW)=10^[21.9dBm/10]= 10^(2.19)= 10^(2+0.19)= 10^2 x 10^0.19 --(1) 
・同様に 11.9dBm時、P(mW)=10^1 x 10^0.19 --(2)  

・負の場合、-11.9dBm時、P(mW)= 10^(-1.19)= 10^(-2+0.81)=10^(-2) x 10^0.81 --(3)  
・ここにおいて 10^0.19=1.548、10^0.81=6.46。これらが共通した154、646である。  

・ 10^0.00 〜 10^0.99の値をプログラムの最初に100行に亘り、左表のように参照Tableとして埋め込んでおく。  

・下位8bitの数字では、255までの有効桁しかないので 上位8bitのTable(H_inv)と下位8bitのTable(L_inv)を組み合わせ、有効桁数を確保している。 

・Mainプログラムでは、例えば、+21.9dBm=154mW のときには、Workingレジスタに下2桁の W=19を入れ、H_invをcallすると上位8bitのH'06'を持ち帰る。
・次にWorkingレジスタにW=19を入れ、L_invをcallすると下位8bitのH'0C'を持ち帰る。 

・するとH'060C'=D'1548'を持ち帰ったことになり、LEDへ表示する3桁の数値は 154となる。

・あとは、位取りでdBmの最初の数値は、+2であったので 154という数値の頭文字を100mWの桁の表示すればよい。

・dBmが負の場合は、(3)の式が示すように、0.19の1.0からの補数、0.81、W=81で参照表をcallすれば、H'1938'=D'6456'を持ち帰るので、645という3桁を位取りして表示する。


●AD8307 dBm計の使用例

1) 自作機器/アンプ の調整、特性把握
下の回路系統図は、AD8307 dBm計を2個使って、自作機器の調整、特性を数値的に把握する方法を示しています。 
左上のRF Power Divider は、RF Signal Generator(SG)からの入力を 2分割して出力するものです。

・SGから +0dBm (=1mW)の入力があれば、それを2分割して、outA, outB それぞれに -3dBm (=0.5mW)を出力します。

・outBの出力(要するに試作品の入力電力)は、「AD8307 電力計 1」で読み取り、試作品の出力電力は、「AD8307 電力計 2」で、読み取れますので 試作品の 周波数 vs 電力ゲイン特性を測定できます。
・試作品は、FET1本のRFアンプなのか、FETx3段のIFアンプなのか、TR3段のRFリニアアンプ(10W)なのか、それぞれの入出力に合わせて、適宜50ΩATTを挿入します。


・左の写真は、RF Power Dividerの内部構造です。タカチYM80(W80×H30×D50mm)に組み込み。

・T1コア 3txTri は、アミドンFB801に、φ0.3UEWを 3本撚り(トリファイラ)、3回コアの穴を通したものです。

・簡単なものですが、予想していた以上に正確に 損失なく、電力を2分割します。



2) RFアンプ回路中の任意ポイントでの 通過電力値(dBm)の 探針(タッチプローブ)計測 (2020.8追加)

製作した RFアンプで設計通りの出力が出ない場合、どのポイントでゲイン不良となっているかを 探針(タッチプローブ)で探ります。下の回路は、この探針回路図です。

 左は、簡易抵抗分割のプローブで、単に抵抗450Ωを介して AD8307_50Ω dBm電力計に接続するもので、生基板片7mm巾x70mmLに簡単に製作できるものですが、見た目以上に便利なツールです。
 探針を当てると、DUT側回路に 500Ω抵抗を並列接続することになり、影響を与えるので、その分を勘案します。

右側は、FETソースフォロワー式のプローブとなります。 FETの入力インピーダンスは高いので、DUT側への影響は小さくなります。
 FETにJ310を使い、ソース抵抗を 330Ω+ 50Ω(=AD8307の入力側抵抗)とした場合に 入力電圧 Vinの 1/10が AD8307の入力となるので、電力値では -20dB低い値を表示します。
   言い換えれば、「表示値+20dBm」が そのDUTの探針ポイントでの通過電力となります。

そのFETソースフォロワーについて 補足します。
ソースフォロワーのVoutは、ゲイン≒<1 で、これは、FETの相互コンダクタンス(gm)やソース抵抗により、決まります。

 ここではJ310を使い、データよりgm(ΔId/ΔVgs)を読み取ると gm≒10mSなので、ゲインは0.79となります。
 このときソース抵抗を 「330Ω+AD8307電力計内蔵抵抗50Ω=380Ω」とするとAD8307で検出する電圧は、1/10になるので、電力値では、-20dB低い値を示します。
使用上の注意点として、入力電圧が10Vを超えると FETが破損するかもしれないので、通過電力1W以上の回路には、使わないようにします。




・下左の写真は、左から 簡易抵抗式プローブ、FET式プローブ、 バラックのAD8307 dBm電力計です(入力Openで、表示は-61.0dBm)。

・下右写真は、21MHz +0dBmの信号を FB801 3tトリファイラコアの 入力端子(50Ω)に入れているもの。 抵抗式探針を触れて 表示値-22dBm。 +20dBの加算をして 入力電力は、-2dBm。 +0dBmとならないのは、元の50Ω系に プローブ500Ωが並列接続されて、電力値が下がっていることと、トリファイラコア損失、計測誤差が含まれている。



下の一覧表は、上図と同様に +0dBmを FB801トリファイラコアに入力して、50Ω、200Ω、450Ωの各ポイントに、探針を当てて 計測した結果です。
 AD8307 dBm計の表示値と それを各ポイントのインピーダンスで補正したものです。

 簡易抵抗式探針は、インピーダンスが高いポイントに触れると、計測値が下がりますが、FET式探針は、インピーダンスの影響を受けずに、3点すべてで -1.4〜-1.5dBmとなっています。 



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