世界遺産登録の条件

 「日光の社寺」が世界遺産へ登録されるためには、どのような条件が満たされる必要があったのでしょうか。

01 暫定リスト(暫定一覧表)への登載

 まず、最初に、国によって世界遺産に推薦されなければなりません。そして、それには暫定リストに登載されることが必要です。これは、世界遺産条約の各締約国が5年ないし10年以内に、世界遺産に推薦しようとする資産を登載するリストであり、国が選定して、文化遺産のみ世界遺産委員会へ提出します。「日光の社寺」は、1992(平成4)年に登載されました。

02 国内法による法的保護(史跡の指定)

 また、世界遺産に推薦されるには、該当する区域が国内法によって、法的に保護されていることが前提条件となります。
 もちろん、「日光の社寺」の個々の建造物は、これまでも、国宝や重要文化財として法的な保護を受けていました。しかし、今回の世界遺産への推薦に際しては、対象が建造物群と遺跡(文化的景観)、すなわち、二社一寺の建造物群だけではなく、境内地と周辺の山林地域まで含まれることになったので、それらの区域全体に及ぶ、面的な保護が必要となるのです。そのため、文化財保護法に基づく「史跡」としての指定が必要でした。
 そして、二社一寺や、関係各機関をはじめとする多くの方々のご協力によって手続きが進められ、1998(平成10)年5月、「日光山内」は史跡に指定されます。

03 バッファーゾーン(緩衝地帯)の設定

 さらに、世界遺産条約の作業指針には、推薦される資産を保護するために、その周辺にバッファーゾーン(緩衝地帯)を設けなければならないと定められています。これは、周辺の環境や雰囲気までをも含めて保護しようとするもので、このバッファーゾーンも、法的に保護されていることが必要です。例えば、フランスの文化遺産保護法制では、遺産の周囲半径500mが自動的にバッファーゾーンとして指定されることになっているそうです。「日光の社寺」の場合、自然公園法、都市計画法、森林法、河川法、砂防法、日光市街並景観条例を根拠としてバッファーゾーンが設定されています。

04 推薦書の作成と提出

 このように、いくつもの手順を踏んで前提となる条件が整えられました。あとは、世界遺産委員会への推薦書の提出です。この推薦書は、推薦する資産の歴史や価値などを記載した本文、建物の形や配置などの図面、写真、スライド、ビデオからなっており、全て英文で作成されました。
 提出の期限は毎年1回、その年の7月1日までです。
 「日光の社寺」の推薦書は、1998年6月、文化庁と環境庁の共同推薦というかたちで、日本政府により、外務省を通じてパリのユネスコ世界遺産センターへ提出され、「日光の社寺」が世界遺産に推薦されました。