タバコ

[あなたはタバコと健康とどちらをえらびますか] 香川医科大学医学部放射線科助教授 佐藤功先生のパンフレット
[カードがなければ、たばこは買えません] 中国新聞「天風録」2008年2月1日
[がん対策 たばこ規制がないなんて] 朝日新聞 社説 2007年(平成19年)6月12日
[「世界禁煙デー」病院が模範を示して] 朝日新聞社説 2001年5月31日
[何も言っていないに等しいことば] 朝日新聞「天声人語」2000年2月9日

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[あなたはタバコと健康とどちらをえらびますか]
香川医科大学医学部放射線科助教授 佐藤功先生のパンフレット

[タバコは何でできているのでしよう?]

タバコは南アメリカ原産のナス科の植物です。原住民が祭りの時に、葉を乾燥させて火をつけて煙を吸ったそうです。約500年前にコロンブスがアメリカ大陸から、タバコをヨーロッパに持ち帰って世界中に広まりました。

[タバコは体に悪いと言うけれど、でもみんな吸ってるし大したことはない?]

以前は、成人男性の10人に9人はタバコを吸っていて、タバコを吸うのが当然という考えでした。タバコの害を知る前から喫煙を開始していたわけです。今の世の中、タバコが体に良いと思う人はいないと思います。でも大人も吸ってるし、病気になる人はそんなに多くないし、まして、自分は大丈夫と思っているのではないでしょうか。それではどのくらいの割合で病気になるのでしょうか?ここで、「10万対比」とうのは10万人に何人か、また「何人中に1人」は「2」とあれば2人に1人、「2000」とあれば2000人に1人、発生するということです。(*男性喫煙者)

              10万対比    何人中に1人

  軽症肺気腫*        5万        2

  重症肺気腫*        1万        10

  切手シート、年賀     3000        33

  交通事故傷者       800        126

  肺癌(CT検診)   300−500    200−300

  肺癌(バス検診)      50       2000

  ふるさと小包、年賀     20       5000

  交通事故死者        13       7700

反対に例えば男性の肺癌患音の90%以上はタバコを吸っています。家族、親戚、知り合いでタバコを吸っている人が心配になりませんか?

[なぜタバコを吸い続けるのでしよう?]

それはタバコに含まれる「ニコチン」のためです。ニコチンは殺虫剤の成分としても使われています。一本のタバコでもまちがって食べると、子供が死ぬことがあります。しかし少量では、神経を興奮させたり、リラックスさせたりする効果があります。タバコを吸って40分くらいすると「ニコチン」が分解されて体から少なくなります。そうするとイライラしたり集中できなくなったり、おこりっぽくなって、タバコをすいたくなる、いわゆる禁断症状が出現します。その繰り返しで、ニコチン中毒に陥る訳です。タバコは一度吸い始めるとなかなかやめることができません。

[なぜタバコは害を生じるのでしょう?]

タバコは「毒のカンヅメ」といわれています。ニコチンの他にも、発癌物質が200種類以上含まれています。普通、口にするものでこれほどのものはありません。タバコを吸ってなる病気を「タバコ病」といいます。喘息、肺胞の断裂や破壊が生じる肺気腫など呼吸器疾患、肺癌や喉頭癌などの悪性疾患、心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞などの神経疾患等々、全身の臓器に関係します。日本では一年で10万人以上の人たちがタバコのために死んでいます。特に肺癌死は男性の癌死のトップになりました。これからも増加することが考えられています。1本のタバコを吸うと寿命が5分弱、短縮されるためタバコを吸うことは「ゆっくりした自殺」ともいわれます。

[受動喫煙が怖い!]

タバコから吸い込む煙を「主流煙」といい、タバコの先端からでる煙を「副流煙」といいます。発癌物質など有害物質は「副流煙」のほうに何倍もたくさん含まれています。自分は吸いたくなくてもタバコを吸う人のそばにいると「副流煙」を吸い、これを「受動喫煙」といいます。

[なぜタバコを売るのでしょう?]

明治時代、日清・日露の戦争の戦費調達のため、タバコ製造は国営になりました。現在は専売公社から日本タバコと民営化されていますが、株の多くを大蔵省が保有し、タバコの売上税が国に入るようになっています。しかし、種々の研究によりタバコの害が判明して、欧米諸国では30年も前から厳しい税制が敷かれました。日本で1箱280円のタバコが800円もする国もあります。欧米では公共の場での喫煙が制限され、特にアメリカでは厳しい内谷になっています。空港の全面禁煙は当然のことで、他には州にもよりますが、酒場でも禁煙、子供を乗せた自動車内の親も禁煙、というように違反をすると法律で罰せられます。アメリカではタバコ会社が政府などに50兆円を超すような賠償金を支払う判決がでています。これはなぜかというと、アメリカのタバコ会社は、青少年に有害であり、しかも一度喫煙を開始すると止めることができない事実を研究していながら、研究をしたこと自体や研究結果を隠していた事実が分かったためです。現在アメリカのタバコ会社は自国でのタバコの売り上げが減少し、賠償金の支払いもあり、どのようにしているのでしょう?その対策のため自国での売り上げ減少分を輸出しようとしています。ターゲットは日本、中国、東南アジアや東ヨーロッパです。アメリカのタバコ会社の人はタバコと健康に関する国際学会で、「タバコは健康に悪い。でもそれを吸う人も悪い」と発言しています。日本タバコもアメリカでタバコを販売しているため、今後、何億円もの賠償金をアメリカヘ支払い続けなければなりません。

[健康日本21とは?]

厚生省はタバコの害を撲滅するため、10年間で喫煙率を半減させる「健康日本21」という検討を始めました。ところが平成12年1月に日本タバコや大蔵省などが反対し、目標の大幅な変更・縮小をせまられました。反対意見の中に税収の落ち込みがあります。しかし、タバコの税金以上に、タバコ関連の病気により、かえって医療費がかかりすぎています。この高騰した医療費を考えた場合、タバコの値段を少なくとも倍以上にする必要があるとの試算があります。

[タバコを買うお金はどのくらいでしよう?]

1日1箱のタバコを吸う場合、1箱260円とすると、1ヶ月で7800円、1年で93600円、10年でほぼ100万円も節約できます。今、アメリカヘの格安の往復航空券は。季節や目的地にもよりますが、10万円もかかりません。タバコを買う金額を他のものとも比較してみて下さい。

[タバコをやめる方法は?]

病院では「ニコチンガム」や「ニコチンパッチ」という禁煙補助剤を使ってタバコをやめる治療をしています。これをしなくてもすむのが最良ですが、タバコをやめるのは難しいので、このような治療で比較的楽にやめることができます。タバコをやめたい人がいれば、ぜひ教えてあげて下さい。

[タバコ吸うのも、吸わないのも、決めるのはあなたです。]

あなたはタバコを吸うのも吸わないのも自由に選ぶことができます。でも一度タバコを吸い始めると、タバコにしばられて自由な選択ができなくなります。どうか十分に考えてみて下さい。自分の健康は自分の力でまもりましょう。

《香川医科大学医学部放射線科助教授 佐藤 功先生のパンフレットから引用しました》

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「カードがなければ、たばこは買えません」
中国新聞「天風録」2008年2月1日

本人を証明するカードがなければ、たばこは買えません。そんな時代がやってきそうだ。たばこのパス.ポートを意味する「タスポ」の申し込みがきょうから始まる▲大人であることを識別するICカードで、未成年者の喫煙を防ぐのが狙い。三月から順次導入し、七月からは自動販売機の読み取り部分にカードをかざしOKにならなければ、たばこは出てこなくなる。電子マネーとしても使える仕組みだ▲コンビニなどでは今まで通り買えるから、レジで年齢のチェックを厳しくしなければ尻抜けにもなりそうだ。他人のカードを貸し借りしたり、親のカードを不正に使ったり、インターネットで売り出したり。そんな「抜け穴」への対策も欠かせないだろう▲たばこをめぐっては周囲の受動喫煙の害も指摘され、売れ行きは下降線の一途だ。これからは食品事業を強めようと、日本たばこ産業(JT)は昨年、日清食品と手を結び、冷凍食品の大手企業を買収。その途端、思わぬ「落とし穴」が待っていた。傘下のジェイティフーズが輸入した、中国製の冷凍ギョーザによる中毒である▲虫の駆除に使われる農薬成分が、混じっていたらしいというからあきれる。「化学物質の検査はしてなかった」といった弁解は通用しない。見逃した穴があったのには違いあるまい▲「毒は入っていません」「偽装表示もありません」。食品をかざすと、そんな証明をしてくれる仕組みでもできないものか。

根本的解決法は、自動販売機(原発3基分の電力を消費している)の廃止!→健康に絶対悪いものを売ることがモラルに反する!
[JT子会社、被害把握しながら回収遅れ 中国製ギョーザ中毒] 中日新聞 2008年1月31日

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[がん対策 たばこ規制がないなんて]
朝日新聞 社説 2007年(平成19年)6月12日

75歳未満のがんの死亡率を10年以内に20%減らす。患者やその家族の苦痛を和らげる― こうした今後のがん治療のあり方を示す初の基本計画案がまとまった。がん対策基本法が4月に施行されたのを受け、患者や家族、医師らでつくるがん対策推進協議会が論議していた。政府はこの案に沿って基本計画を閣議決定し、都道府県も地域版のがん対策推進計画をつくる。がんは81年から死因のトップで、最近は年に30万人が亡くなる。男性の2人に1人、女性の3人に1人はがんにかかる可能性があり、国民病といってよい。政府も3次にわたって対策を進めてきた。しかし、抗がん剤や放射線を使う治療は、全国どこでも受けられるわけではない。病院を求めてさまよう「がん難民」という言葉すら生まれている。

計画案は、患者の側に立って総合的な対策を計画的に進めるべきだと提案している。そのうえで、医師の育成、病院の整備、予防の推進などについて数値目標を示した。例えば、5年以内に全国の拠点病院で抗がん剤や放射線の治療ができるようにする。10年以内に、がん治療にあたる医師全員が痛みを和らげる緩和ケアを学ぶ。5年以内に乳がんや大腸がんの検診の受診率を50%以上に引き上げる。こうした数値目標が盛り込まれたのは、協議会に参加した患者や家族らが強く働きかけたからだ。患者ら当事者が政策決定に加わる意昧はやはり大きい。

問題は、医療費が抑えられ、医師不足が目立つ中で、本当に目標を実現できるかどうかだ。病院の整備にしても医師の教育にしても、先立つものは資金だ。がん対策には今年度、約210億円の予算が投じられる。政府はこれを大幅に増やさなければならない。そうでなければ、基本計画は「絵に描いた餅」になってしまう。

もうひとつ、見逃せない問題がある。たばこを吸う人の比率を減らす数値目標が計画案に入らなかったことだ。そもそも、たばこに手をつけないで、がん死亡率を20%減らせるのだろうか。たばこががんの有力な原因であることは世界の常識だ。協議会も、いったんは「喫煙率半減」を盛り込むことでまとまった。ところが、日本たばこ産業(JT)が柳沢厚生労働相に抗議文を突きつけ、流れが変わった。加えて、自民党の族議員のほか、たばこの税収が減るのを恐れた財務省の働きかけもあったのだろう。喫煙率の削減目標を書き込めば閣議決定が難しくなるとの判断から、最終的には見送られた。しかし、こんなたばこ業界の横暴に屈していては、がん予防はできない。厚労省は生活習慣病の予防を通じて医療費削減を叫ぶなら、まず喫煙率を減らすことだ。いつまでも自民党や財務省に遠慮していては、やる気を疑われる。

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[「世界禁煙デー」病院が模範を示して]
朝日新聞社説 2001年5月31日

日本の病院が真っ先にやるべきは、「全館禁煙」だ。全米医療管理学会の資格試験官であり、先進的な医療で知られる私立亀田総合病院で10年前から病院管理に携わりつつ、各地の病院を見て回ったジョン・ウォーカーさんはこう指摘する。病院の使命は病気や死を防ぐことだ。喫煙は予防可能な死亡原因の代表例である以上、それを禁じなければ病院は使命を果たせない、というのが理由である。米国やカナダの病院では、禁煙が行き渡っている。日本には病院の廊下で点滴を受けながらたばこをくゆらせる患者もいる。ウォーカーさんは「まるで大昔に逆戻りしたような気分」と、あきれる。

旧厚生省が実施した医療機関の禁煙実施状況の調査(99年)によると、診察室を禁煙にしているところは95%と多いものの、病室では55%、待合室となると46%が禁煙にしているに過ぎない。残りの大半も「分煙」はしていると答えている。しかし、きちんと壁などで仕切った喫煙室をつくり、煙が出入り口から院内へもれないように排気にも注意した分煙をしているところは少ない。医師の控室である医局を禁煙にしているのは4割を切り、逆に自由に吸えるとしているところが34%にのぼる。

きょうは、世界保健機関(WHO)が定めた世界禁煙デーである。今年の標語は「他人の煙が命をけずる受動喫煙をなくそう」だ。喫煙者のまわりにいる人が、いや応なしに煙を吸わされるのをなくそう、というのである。火がついたたばこの先から立ちのぼる煙は、喫煙者が吸い込む煙より有害物質が多い。ニトロソアミンという発がん物質は52倍、アンモニアは46倍で、一酸化炭素が5倍、タールやニコチンも3倍ある。危険を承知でたばこを吸う喫煙者はともかく、非喫煙者が他人の煙の害にさらされるのを見過ごしてよいわけがない。

たばこの害への認識は深まり、地下鉄など公共交通機関の禁煙は着実に広がってきた。病院はもっと努力する必要がある。日本医師会の坪井栄学会長は昨年「禁煙運動の推進」を表明、会員の意識調査やポスター配布などの活動を続けている。たばこ対策に消極的だったこれまでの姿勢を転換したことを歓迎したい。「隗より始めよ」ということか、日本医師会館は喫煙コーナーを個室にして完全分煙化する。都道府県の医師会館にも完全分煙を働きかけるそうだ。患者にとって切実な病院の禁煙・分煙対策の面でも医師会の指導力を発揮してもらいたい。.医師会会員であるお医者さんたちの喫煙率は男性が27%、女性は7%という。国民平均のほぼ半分とはいえ、これをもっと少なくする努力も必要だろう。医師や医療機関は率先垂範する責務があることを肝に銘じてほしい。

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