日瑞関係のページ | 井上まゆみさんのローマ放送局 |
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本編は書籍化されました。(2021年2月16日〜) 全編をお楽しみになりたい方はアマゾンでお求めになれます。こちら 拙文「日本人小学生の過ごした戦時下のイタリア」において、日本人小学生がイタリアの独裁者ムッソリーニの謁見を受けたことを紹介した。 謁見の直後に小学生の一人であった井上まゆみさんがローマのラジオ局で、その時の様子を語った録音をSP盤のレコードで本人が今も持っている。筆者はそれをお借りしたものの、再生の方法がなくしばらくそのままであったが、インターネットで業者(おそらく個人でしょう)を探し出し、デジタル化することが出来た。その語った内容をを紹介し、写真と共にムッソリーニの訪問の様子を出来る限り詳しく再現してみる。 以降は書籍でお楽しみください。アマゾンのリンク。 レコードのまゆみさんは、ゆっくりとした口調で語り始める。今のテレビニュースのアナウンサーの半分くらいの速さであろう。 「(1942年4月)11日のお昼過ぎ、ムッソリーニ総理大臣が”ローマ日本友の会”会場に見えました。私たち日本の子供はお母さんと一緒に、皆日本の着物でお迎えしました。 ムッソリーニ総理大臣は世界でとてもとても偉い人ですから、どんな怖いおじさんかと思っていましたら、にこにこ笑いながら、並んでいる私たちの頭を撫でてくださいました。とても優しい良いおじさんだと嬉しくなりました。」 以下の写真がその光景である。ムッソリーニが笑いながら、並ぶ日本人小学生の頭(頬)を撫でているのが分かる。まゆみさんは中央で着物を着た右側。 引き続きまゆみさんの語りは、一語一語噛みしめるようにして続く。 「会場に並んでいるたくさんの日本の子供たちの絵を、一つ一つよく見られてから、日本人の皆にご挨拶がありました。(堀切善兵衛駐伊)大使と一緒に皆でムッソリーニ万歳を唱えましてから、藤やアヤメの咲いている綺麗なお庭で、皆お写真を撮りました。 こんな偉いムッソリーニ大臣と一緒にお写真を撮っていただいて、私たちローマの子供は本当に嬉しゅうございました。私たち、大きくなっても、きっとこの日はこの写真と共に、ローマの良い記念になりましょう。」 4月13日の朝日新聞では写真と共に「日本の子供をあやすム首相」の見出しでその日の模様が伝えられている。そこでは 「日本友の会主催の児童展は、ムッソリーニ首相の臨席で開かれた。」と「日本人児童の絵画展」への出席が大使館訪問の公式理由であったと書いている。そしてそれはまゆみさんの述べる「子供たちの絵を、一つ一つよく見てから」とも合致するので、児童絵画展が公式の訪問目的であったと判断できる。 以降は書籍でお楽しみください。アマゾンのリンク。 新聞は続けて 「可愛い日本の坊や、嬢やの姿に魅せられたこの日のム(ッソリーニ)首相は、しっかり優しいおじさんとなり、終始子ども相手に愛想を振りまき、和やかな時を過ごした」と日本全国に紹介されたのであった。 大使館の庭で撮ったのが下の写真である。背後に藤やアヤメが咲いていたのであろう。子供達よりは、母親たちの方が嬉しそうな表情である。中央着物姿の右がまゆみさん。右端は堀切大使。 毎日新聞社のローマ特派員であった小野七郎の長男、小野光春さんは小学生としてこの式に参加した一人であった。戦後すぐの1947年、「僕の欧米日記」という本を出している。そこではこの時のことは次の様に描かれている。 「1942年4月のある暑い日であった。 式が済んで皆、庭に出た。ムッソリーニはにこにこ笑って(自分の妹、小野)紀美子を抱いて写真を撮った。紀美子は”いやん”と言って足をバタバタさせて、抱かれながら暴れた。僕は”失礼なことをする”と思った。」 |
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