福島原発事故

ついにチェルノブイリに並んだ福島原発事故!広がる放射能汚染と広がる住民避難地域
福島第1原発 政府、レベル7検討…最も深刻 
毎日新聞 4月12日(火)1時29分配信
核を持ちたい原発推進派の政治家(中曽根康弘氏)が強引に予算をつけ、原発生みの親の企業家(正力松太郎氏)が強引に導入した日本の原発。
国は原発推進のために創った色々な法律で電力会社を保護し、莫大な補助金で地域住民と地方自治体を原発誘致に引きずり込んだ。
根本的な解決策がない原発の危険性と処理方法がない放射性廃棄物の問題、繰り返し発せられた警告を無視して地震列島にひしめく54基の原発。
ついに起きた隠蔽体質の国と電力会社が金とウソで作った安全神話の崩壊!!今、日本国民は現実を見つめて目を覚ますとき!!
「諸悪の根 源」は経済産業省であり国だ!
 政官業(裏に御用学者とアメリカ)で安全性を犠牲にして経済性を追求
[繰り返し発せられた警告] 原発事故→地震の歴史、それに第三者や市民の意見などは無視された
→「機能しない組織は再生を!」鎌田實のブログ2011年5月9日/原発事故227

→「情報公開は民主主義の原則」鎌田實のブログ2011年5月7日/原発事故221
→「浜岡原発運転停止を要請」2011年5月6日/原発事故220

→「原子力村」鎌田實のブログ2011年4月29日/原発事故199
原子力安全委員会:日本の行政機関のひとつ、内閣府の審議会等のひとつ(高給・無知の集団)
原子力安全・保安院:資源エネルギー庁の特別機関、経済産業省の一機関(建て前だけの役所)
東京電力に任せきりの調査と対策で放射能垂れ流し、社会を混乱させる停電、そして仲間同士の非難合戦(隠ぺい体質の役所と企業)
[<福島原発>「天災ではない」佐藤栄佐久・前知事] 毎日新聞 4月4日(月)12時11分配信
[佐藤栄佐久・前福島県知事が告発 「国民を欺いた国の責任をただせ」] 週刊朝日 3月30日(水)17時56分配信
[福島原発事故に関する小出先生のコメント] 京都大学原子炉実験所助教・小出裕章先生から「STOP!上関原発ML」へのメイル
[福島第一原発事故、スリーマイル超えレベル6相当に] asahi/com 2011年3月25日3時0分
[農産物放射能汚染 内部被曝の防止が重要] 大阪大名誉教授 野村大成 中国新聞 2011年3月22日
→「内部被曝」鎌田實のブログ2011年5月7日/原発事故223

[被災者は忍耐だけでなく要求を!] 毎日新聞 余禄 2011年3月21日
[福島第一原発事故は原子力開発の歴史上、最も深刻なレベルにある] 福島原発事故、二大事故との違い 2011年3月18日18時55分

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福島第1原発 政府、レベル7検討…最も深刻
毎日新聞 4月12日(火)1時29分配信

 内閣府の原子力安全委員会は11日、福島第1原発事故について、発生当初から数時間、1時間当たり最大1万テラベクレル(ベクレルは放射能の強さ。1テラベクレルは1兆ベクレル)の放射性物質を放出していたとの見解を示した。現在は1時間当たり1テラベクレルほどまで落ちているとみている。数万テラベクレルは原発事故の深刻度を示す国際原子力事象評価尺度(INES)の最も深刻なレベル7にあたる。今回の事故は数時間の放出でレベル7に相当するため、現在レベル5としている政府は、引き上げの検討に入った。過去に発生したレベル7の事故には86年のチェルノブイリ原発事故がある。INESは、程度の低い方から、レベル0〜7の8段階に分類している。スリーマイル島原発事故(79年、米国)はレベル5、茨城県東海村で起きたJCO臨界事故(99年)はレベル4とされている。

福島第1原発の事故と現状(2011年4月10日付朝刊)【1〜4号機を図解】福島第1原発の現状を見る

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東京電力:石田顧問辞任へ 天下り、なれ合い半世紀 「原発安全規制に緩み」

 福島第1原発事故を契機に去就が注目されていた経済産業省OBの石田徹氏が、東京電力顧問を辞任する。「官民の癒着が事故を悪化させた」との批判を受け、枝野幸男官房長官が経産省幹部の電力大手などへの再就職自粛を指示したためだ。政府は、旧通商産業省時代から半世紀近く続いてきた東電への天下りを厳しく監視し、安全規制体制への不信感を払拭(ふっしょく)する考えだ。

 東電による経産省OBの天下り受け入れは、旧通産省時代の62年、石原武夫・元次官が取締役に就任し、副社長などを歴任したのが始まりだ。その後も、増田実・元資源エネルギー庁長官、川崎弘・元エネ庁次長、白川進・元エネ庁次長とほとんど切れ目なく天下り組が就任し、現在は6人の副社長ポストのうち1人は経産省OBの指定席とされている。

 経産省OBの受け入れは他の電力会社も同様だ。塩川鉄也衆院議員(共産党)が衆院内閣委員会に提出した資料によると、電力大手10社に取締役として天下った同省OBは累計で45人に上る。

 電力会社が天下りを受け入れるのは、エネルギー政策への影響力を期待するためだ。電力会社は官庁の規制を強く受け、原発の安全規制や電気料金改定まで、エネ庁や原子力安全・保安院の政策に経営が左右される。90年代後半以降は電力自由化の制度設計が焦点となり、電力会社は政府の審議会などを通じて政策への関与を強めた。今回の事故でも「官民のなれ合いが安全規制の緩みにつながった」(野党幹部)との見方が強い。ただ、電力会社への天下り規制を強化するだけでは、なれ合いの構図は消えない。

 同省は09年12月現在、計785の公益法人(財団、社団法人)を所管するが、原子力安全・保安院とエネ庁の所管法人の中には、経産省OBや東電出身者らが理事や監事などで在籍し、業界から会費などの名目で資金を集めて天下りの受け皿になっているケースも少なくない。政府内には「公益法人が癒着の温床となっている実態にも切り込む必要がある」との指摘もある。【三沢耕平】

 ◇民主政権、無策浮き彫り

 民主党政権が踏み切った経産省幹部による電力会社各社への再就職自粛は、自公政権下での「退職前5年間の職務と関係の深い業界への再就職は2年間禁止する」措置の復活といえる。「天下り根絶」をうたった民主党政権は、実効性のある対策を全くとれていないのが現状。批判を受けて対策を急ぐ泥縄的対応に追われている。

 枝野氏は官僚の再就職に関し「省庁のあっせんがなければ天下りに該当しない」との立場だった。しかし、18日の記者会見では「原子力という関心の深い問題で強い疑義が持たれた。(再就職が)法律上問題ないとしても、法に反しない範囲でやれる対応をする」と方針転換した。

 官僚OBの天下りは野放し状態となっている。自公政権の再就職禁止措置は、07年成立の改正国家公務員法で「再就職等監視委員会」の設置に伴い廃止。しかし、民主党が委員人事に同意せず、監視委が休眠し、機能していないからだ。

 枝野氏は「法改正が良かったかを含め、抜本的な検証が必要だ」と述べ、所管業界への再就職自体を規制する考えを示唆。一方、他業界への天下りに関しては「国民とともにある企業や業界なら独自で判断するだろう」と述べ、当面は各業界の自主性に委ねる考えを示した。【吉永康朗】

【関連記事】

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毎日新聞 2011年4月19日 東京朝刊

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[繰り返し発せられた警告]

『原発への警鐘』 内橋 克人 (1986年9月15日発行 講談社文庫)
スリーマイル島、チェルノブイリなどで起きた原発事故は、あらためて原子力エネルギーの怖さを実感させた。
世界各国で安全神話がくずれているのに、なぜか日本だけが"原発過密国"に驀進する。
住民の不安を解消しきれないままに、日本列島"原発基地化"を強行する危険な狙いと全容を、迫真の取材で暴く。
『隠される原子力 核の真実』 原子力の専門家が原発に反対するわけ 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章(2010年12月12日発行 創史社)
『動かない、動かせない「もんじゅ」』 
高速増殖炉は実用化できない 原子力資料情報室 小林 圭二(2010年12月8日発行 七つ森書館)
『危険でも動かす原発』
ー国策のもとに隠される核兵器開発ープルサ−マルは何のため?東海地震でも大丈夫? 内藤 新吾(2008年7月16日発行)

『地下深く永遠に〜核廃棄物・10万年の危険〜』 NHK BS世界のドキュメンタリーシリーズ(2010年 デンマーク)
『原発解体〜世界の現場は警告する〜』 NHKスペシャル(2009年10月)
『なぜ警告を続けるのか〜京都大学原子炉実験所・異端の研究者たち〜』 MBS映像’08(2008年 毎日放送)
『東京原発』2004年公開の日本映画 <東京に原発を!→映画『東京原発』オフィシャルサイト>

原発事故

1957年 ウィンズケール原子力発電所事故(イギリス)
1979年 アメリカのスリーマイル島における原子力発電所事故(アメリカ)
1986年 チェルノブイリ原子力発電所事故(ソ連)
2005年 セラフィールド核廃棄物再処理工場事故(イギリス)
2006年 スウェーデンの原発事故
2007年 柏崎刈羽原子力発電所事故(日本)
2008年 フランス原発発事故

チェルノブイリ原発以来、原発事故の恐ろしさが知られるようになって、原子力に対する反対運動が強まり、日本の世論も反対の割合が増えてきた結果、最近では、海外で大きく報道されている事故さえ、日本では報道されないことが続いているようだ。

英国の核廃棄物再処理工場セラフィールドで起きた大事故ですら、ごくごく小さなベタの記事が通信社経由ででたたけだ。スウェーデンの原発事故(10基中4基が停止)は、ニューヨークタイムズ、タイム、ガーデアンなど欧米の主要メディアが大々的に報ずるなか、日本のマスメディアはまったく報ぜず、その後も日本の主要新聞の記事が皆無という異常な事態が続いた。どういうわけか、日本のマスメディア(新聞、テレビ)はこの種の原発事故や核廃棄物再処理事故に係わる問題に押し黙っている。原発事故が起こるたびに日本の電力会社と政府は情報を隠蔽し続けて来た。

BBCでは、世界に核廃止を訴えるべき立場の世界で唯一の被爆国である日本が、地震多発地帯にある狭い国土の中に54もの原発を林立させた核大国になってしまった異常さや、自分の国が落とされた原爆の何千発分にも相当する原子炉に対して、まったく危機管理ができていない異常さ、危険な原発の周りに平気で住民が住んでいる異常さについて言及してる。そして、それは、政府が情報を隠蔽し続けて来たことの結果だと言ってる。

セリエAのカターニアは、放射性物質の流出を理由に2007年の日本遠征を中止するという事態に発展した。日本は原子力事故に関する情報後進国として、世界に認知され、信用されない国になってしまった。2008年の7月にも、フランスで相次いで起こった放射能漏れ事故が日本のメディアではほとんど報道されていなかった。

地球温暖化対策として、原発を推進しようという動きがあるが、この様な事故を見れば、原発がいかに危険で、安全神話がいかに嘘であるかが良く分かる。問題は、こういう原発事故のニュースを隠蔽しようというなんらかの圧力が、日本のメディアにかかっていることだ。

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[原子力安全委員会]

原子力安全委員会は、原子力の研究、開発および利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、および決定することが任務であり、必要な場合は、内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができる。

日本の原子力安全規制は、規制行政庁(経済産業省原子力安全・保安院、文部科学省等)が安全規制を行うとともに、規制行政庁から独立した原子力安全委員会がさらにそれをチェックする多層的体制という建て前。原子力安全委員会は、専門的・中立的な立場から、原子炉設置許可申請等に係る2次審査(ダブルチェック)、規制調査その他の手段により、規制行政庁を監視、監査していることになっている。

近年は、常勤ではあるが定例会議は週1回だけであり、議事録を確認する限り、会合は最短で10分弱、長いもので1時間半となっている。「知識を持ち合わせていないので、東電と原子力安全・保安院にしっかりと指導をしていただきたい」と発言し、国民へと安全確保の案を出すどころか、知識が無くともできる職務であることを露見させた。そして、このような働きで、約1650万円の年収(月給93万6000円とボーナス)をもらっている。

復旧作業員の造血幹細胞の事前採取は不要と判断

深刻な事故を起こした福島第一原子力発電所の復旧作業員には、大量被ばくの危険性があるが、あらかじめ作業員本人の造血幹細胞を採取しておくことで、造血機能が失われた時の治療に備えることができる。この事前採取を日本造血細胞移植学会と国立がん研究センターが提言したが、委員会は、「作業員に精神的、身体的負担をかける」「国際機関での合意がない」「十分な国民の理解が得られていない」として、採取は不要と判断している。大量被ばくの可能性がある作業員が、あらかじめ自家造血幹細胞を採取しておかなかったとしても、造血幹細胞の提供は、(遺伝子型が適応すれば)赤の他人から受けることができる可能性もある。しかし、他人からの移植を期待する場合、必ずしも遺伝子型が一致する提供者が存在するとは限らない。作業員の造血幹細胞採取を却下したのは、国民や諸外国の不信感をあおらせないための政治的配慮ではないか?、と野党若手議員は推測している。

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[原子力安全・保安院]

原子力、電力、都市ガス、高圧ガス、液化石油ガス、火薬、鉱山関係の施設や産業活動の安全規制、保安を所管し、これらの施設に対しては必要に応じて、立入検査、報告徴収、改善命令等を行うことができる。

原子力安全・保安院の行動規範(経済産業省のホームページより)

NISAは、エネルギー施設や産業活動の安全を守り、万一の事態に的確に対応するため、「強い使命感」「科学的・合理的な判断」「業務執行の透明性」「中立性・公正性」の四つを行動規範としています。
   第一に「強い使命感」に基づき緊張感を持って業務を遂行します。
   第二に、安全・保安行政の専門家として現場の実態を正確に把握し、「科学的・合理的な判断」のもとに行動します。
   第三に、国民の皆様の信頼と安心感を得るため「業務執行の透明性」の確保に努めます。情報公開に積極的に取り組み、自らの判断について説明責任を果たしていくことを重視します。
   第四に、「中立性・公正性」を大前提として安全・保安行政を遂行します。

国民の皆様の暮らしを支えるエネルギーの安全や産業の保安をより確かなものとするために、私たちはこれら基本的な行動規範に基づいて、職務を遂行してまいります。

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[東電「隠蔽体質」脈々] (2011年3月16日 朝日新聞・名古屋朝刊)

対応に追われる東京電力の、社員の一人は、ため息をつく。「官邸は何でも事業者(東電)に押しつけてくる。事態の深刻さは承知しているが、私たちが報告する相手は本釆、保安院のはずなのに」官邸との意思疎通のちぐはぐさが際立つ東京電力だが、そもそも都合の悪い事実を隠そうとする姿勢が、今回の報道対応からは垣間見える。原発の状況を公表する際、原子炉内の水位や、放射線の測定結果など都合の悪い数値を進んで明らかにしていない。

15日未明の記者会見では、福島第一原発の正門で高い放射線量が測定されていたのに、その2分前のより小さい測定値を説明。記者から指摘され、高い測定値の存在を認めた。中性子線が検出された事実も、はじめは明かさなかった。中性子線は、核分裂反応を引き起こす。金属板も貫く危険な放射線だ。こうした「隠蔽体質」は、いまに始まったことでない。2002年には原子炉内の設備の損傷隠しが表面化。07年には、原発を停止させる「制御棒」の駆動装置の検査で、福島第二原発の担当者が、予備品の数が足りないのを隠すため、模造品をつくって国を欺いたことが発覚した。

隠蔽の背景には、政治家、官僚との関係がある。「退官直後は顧問に就くが、いずれは副社長の道が約束されているそうだ」今年1月1日付で東京電力に顧問として迎えられた経済産業省・資源エネルギー庁の前長官、石田徹氏。東電もエネ庁も否定するが、「天下り」だということは、経産省幹部の中では、石田氏が現役長官だった昨年夏からとうに認識されていた。役人は、退官後の多額の所得が保証される天下りに血道を上げる。東電は過去3人の通産省(現経産省)OBを役員に迎えている。電力料金改定の許可や規制を握るエネ庁からは石田氏で2人目だ。

政界への目配りも欠かさない。東電の社長、会長を歴任した荒木浩顧問は、新日本製鉄の今井敬名誉会長や三井物産の上島重二顧問らとともに、歴代首相や有力政治家を囲む会を定期的に開いている。現役の日本経団連会長や日本商工会議所会頭が加わる、政財界の結節会議だ。民主党の小沢一郎氏を囲む会もある。荒木氏はその会の世話役的存在だ。電力会社は、原発が立地する自治体の首長選挙となれば、原発反対派の首長を誕生させないため、全国から車両と人をかき集めて選挙応援する。それで当選した保守派の政治家は、電力会社に頭が上がらなくなる。

【放射能漏れ】「東電に堕落の歴史」英紙が隠蔽体質を指摘
2011.3.17 11:25(共同)

 英紙インディペンデント(電子版)は16日、福島第1原発事故への不安が高まっている背景に東京電力の隠蔽体質があると指摘。ガーディアン(同)は日本政府の対応に批判が出ていると伝えた。

 インディペンデントはこれまで東電でトラブル隠しや修理、検査記録の改竄(かいざん)などの不祥事があったことを伝えた上で「東電は事実を伝えるという点に関して、堕落の歴史を持つ」と報じた。

 ガーディアンは、原発事故について「冷却装置の電力の復旧にもっと努力すべきだった」などと対応のまずさを指摘する識者の意見を紹介。 東電の情報提供が遅く、少ないことが批判を浴びているとした。

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「ただちに健康に影響するレベルではない」??
中国新聞 「天風録」2011年4月4日

「放射能で首都圏消滅」「内部被曝の脅威」「お母さんのための放射線防護知識」ー。きのうの読書面に載った東京のベストセラーを見て驚いた。放射能や原発関連の5冊がベスト10に。福島第1原発と200キロ以上離れていても気遣う人が多いようだ▲チェルノブイリ原発事故の5年後に訪れたウクライナの首都キエフもそうだった。原発から150キロ、汚染地区ではない。市場の牛乳や肉、野菜は毎日検査しているという。それでも「子どもたちの健康が心配」との声をあちこちで耳にした▲放射性物質は目に見えない。福島原発の事故でも汚染が周辺地域の土壌や野菜、海へと広がっている。「ただちに健康に影響するレベルではない」と繰り返されても、地元のもどかしさが募るのは無理もない▲医薬品が欠乏していた被爆直後の広島、長崎。民間療法で生き延びたとの体験談もある。ドクダミを煎じて飲み続けたり、ナスのみそ漬けや梅干しを食べたり…。現代医学では説明できないが、被爆者が身をもって実践した養生法ともいえよう▲そんな経験とともに、特産のみそや梅干しを福島の被災地に送る市民の活動が始まっている。チェルノブイリ支援にも取り組んできた府中市の「ジュノーの会」。かの地でヒロシマの知恵が役立ではと願う。

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[<福島原発>「天災ではない」佐藤栄佐久・前知事]
毎日新聞 4月4日(月)12時11分配信

 福島県知事在職中に、国の原子力政策に疑問を投げかけていた佐藤栄佐久氏(71)に、東京電力福島第1原子力発電所の事故について聞いた。佐藤氏は 「深刻な事態は国の原子力政策が招いたもので、天災によるものではない」と強調した。【岩佐淳士、松本惇】

 −−未曽有の事故に、東京電力は「想定外の事態」と繰り返した。

 ◆私でさえ安全と思っていた。経済産業省は「二重三重のチェックをしてい る」「自然災害による事故も絶対あり得ない」と言っていた。国がそれだけ言 えば、地域社会が信用するのは当然だった。

 −−88〜06年の知事在任時、福島第1、第2原発で事故やトラブル隠しが発覚。安全管理に疑問を唱えていた。

 ◆原子力政策は、国会議員や福島のような立地県もタッチできない。政策の基本を定める長期計画策定会議のメンバーの大半は電力関係者の「味方」。政策を実際につくるのは経産省の官僚だ。彼らにとって、良いのか悪いのかは別問題で、一度方針を決めると後戻りしない体質だ。

 −−原子力安全・保安院の経産省からの分離が検討されている。

 ◆分離しないといけない。02〜06年に原発トラブルなどに絡んだ内部告発が、県に21通も寄せられた。保安院に情報提供しても対応もせずに東電へ情報が流されると、告発者は恐れていた。原発の運転を前提に安全面をチェックしろと指示してきたと指摘されるのも、保安院が経産省の一組織だからだ。

 −−第1原発敷地内からは、微量のプルトニウムも検出された。

 ◆3号機で使用中のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料から出た可能性もある。プルサーマルは、専門家から安全性に懸念の声もあったが、国は推進してきた。

 −−多くの住民が原発関連の仕事に従事してきた現実もある。

 ◆原発のない町に帰っても働く場もないという問題は確かにある。ただ、第1原発がある双葉町を見てほしい。原発ができて永久に栄えると思っていたが、すぐに2機増設してほしいという話が出た。財政上の優遇もあったが、09年には自主的な財政運営が制限される「早期健全化団体」に転落した。原発立地の損得を、冷静に考えるべきだと思う。

 −−東電は、第1原発1〜4号機の廃炉を表明した。5、6号機や第2原発はどう扱うべきか。

 ◆第2原発を再稼働させるべきかどうか、まだ自分の中で整理ができていない。原発は1カ所の立地点で1兆円の投資となる。原発の扱いは、エネルギー政策の根幹にかかわる問題だから。

 【略歴】さとう・えいさく 日本青年会議所副会頭などを経て83年参院議員、88年に福島県知事。5期目途中の06年県発注工事を巡る汚職事件が表 面化し、同10月に収賄容疑で逮捕された。無罪主張しているが1審、2審では有罪判決が出て、上告中。02年の東京電力の原発トラブル隠し問題では、原発立地県の知事として、プルサーマル計画への「事前了解」を白紙撤回した。

◆福島第1原発と佐藤栄佐久氏◆
71年3月 福島第1原発1号機が営業運転開始
88年9月 佐藤栄佐久氏が福島県知事に初当選
98年11月 県と地元2町が福島第1原発3号機でのプルサーマル計画受け入れを表明
02年8月 東京電力の原発トラブル隠し発覚
  9月 佐藤氏がプルサーマル計画への事前了解を白紙撤回
03年12月 福島、新潟、福井の3県知事が原子力安全・保安院の経済産業省からの分離を国に要請
06年9月 県発注工事を巡る談合事件で実弟らが逮捕された道義的責任を取り、知事を辞職
  10月 佐藤氏が県発注工事を巡る収賄容疑で逮捕される
10年8月 福島県がプルサーマル計画受け入れ表明
  10月 福島第1原発3号機でプルサーマル発電による営業運転を開始
11年3月 東日本大震災発生

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佐藤栄佐久・前福島県知事が告発 「国民を欺いた国の責任をただせ」
週刊朝日 3月30日(水)17時56分配信

福島第一原子力発電所の事故は周辺の土壌や海水からも大量の放射能が 検出され、世界を震撼させる事態となっている。原発の安全性に疑問を 持ち、一時は東京電力の原子炉17基をすべて運転停止に追い込んだこ ともある佐藤栄佐久・前福島県知事(71)はこう憤る。「諸悪の根 源」は経済産業省であり国だ──。

佐藤栄佐久(さとう・えいさく):1939年、福島県郡山市生まれ。東京大学法学部 卒業後、88年に福島県知事に初当選。06年、収賄容疑で東京地検特 捜部に逮捕された。09年、一審に続き、控訴審でも懲役2年(執行猶 予4年)の有罪判決が出されたが、「収賄額はゼロ」と認定され、実質 上の無罪判決となった。現在、上告中。著書に『知事抹殺』(平凡社) がある。

 今回の事故の報道を見るたびに、怒りがこみ上げてきます。一部の識 者は「想定外の事態だ。これは天災だ」というような発言をしていまし たが、だまされてはいけません。これは、起こるべくして起こった事 故、すなわち“人災”なのです。 私は福島県知事時代、再三にわたって情報を改ざん・隠蔽する東電 と、本来はそれを監視・指導しなければならない立場にありながら一体 となっていた経済産業省に対し、「事故情報を含む透明性の確保」と 「原発立地県の権限確保」を求めて闘ってきました。しかし、報道を見 る限り、その体質は今もまったく変わっていないように思います。端然とした表情で語る佐藤氏の自宅は福島県郡山市内にある。地震か ら2週間以上経過した今も石塀は倒れたままになっているなど、爪痕が 生々しく残る。もともとは原発推進論者だったという佐藤氏が日本の原 子力政策に疑問を抱き始めたのは、知事に就任した翌年の1989年の ことだった。

 この年の1月6日、福島第二原発の3号機で原子炉の再循環ポンプ内 に部品が脱落するという事故が起きていたことが発覚しました。しか し、東電は前年暮れから、異常発生を知らせる警報が鳴っていたにもか かわらず運転を続けていたうえに、その事実を隠していました。県や地 元市町村に情報が入ったのはいちばん最後だったのです。いち早く情報が必要なのは地元のはずなのに、なぜこのようなことが まかり通るのか。私は副知事を通じ、経産省(当時は通商産業省)に猛 抗議をしましたが、まったく反応しませんでした。

 日本の原子力政策は、大多数の国会議員には触れることのできない内 閣の専権事項となっています。担当大臣すら実質的には役所にコント ロールされている。つまり、経産省や内閣府の原子力委員会など“原子 力村の人々”が政策の方向性を事実上すべて決め、政治家だけではなく 原発を抱える地方自治体には何の権限も与えられていないのです。国や電力会社は原発に関して、地元自治体を「蚊帳の外」にしただけ ではないという。佐藤氏が「8・29」と呼ぶ事件がある。2002年 8月29日、原子力安全・保安院から福島県庁に「福島第一原発と第二 原発で、原子炉の故障やひび割れを隠すため、東電が点検記録を長年に わたってごまかしていた」という恐るべき内容が書かれた内部告発の ファクスが届いたのだ。私はすぐに、部下に調査を命じました。だが、後になって、保安院が この告発を2年も前に受けていながら何の調査もしなかったうえに、告 発の内容を当事者である東電に横流ししていたことがわかったのです。

 私の怒りは頂点に達しました。これでは警察と泥棒が一緒にいるよう なものではないか。それまで、東電と国は「同じ穴のムジナ」だと思っ ていましたが、本当の「ムジナ」は電力会社の奥に隠れて、決して表に 出てこない経産省であり、国だったのです。この事件で、東電は当時の社長以下、幹部5人が責任をとって辞任 し、03年4月には、東電が持つすべての原子炉(福島県内10基、新 潟県内7基)で運転の停止を余儀なくされました。しかし、保安院、経産省ともに何の処分も受けず、責任をとることも ありませんでした。それどころか、福島第一原発の所在地である双葉郡に経産省の課長が やってきて、「原発は絶対安全です」というパンフレットを全戸に配 り、原発の安全性を訴えたのです。なんという厚顔さでしょうか。今回の事故でも、記者会見に出て頭を下げるのは東電や、事情がよく わかっていないように見える保安院の審議官だけ。あれほど、「安全 だ」と原発を推進してきた“本丸”は、またも顔を出さずに逃げ回って います。

 さらに、佐藤氏は3月14日に水素爆発を起こした福島第一原発3号 機で、「プルサーマル」が行われていたことに対し、大きな危機感を 持っているという。なぜメディアはこの問題を大きく報じないのでしょうか。「プルサー マル」とは、使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜ たMOX燃料を使う原子力発電の方法で、ウラン資源を輸入に頼る日本 にとって、核燃料サイクル計画の柱となっています。これに対して私は98年、MOX燃料の品質管理の徹底をはじめ四つ の条件をつけて一度は了解しました。しかし、判断を変え、3年後に受け入れ拒否を表明することになりま した。福島第一とともにプルサーマルの導入が決まっていた福井県の高浜原 発で、使用予定のMOX燃料にデータ改ざんがあったと明らかになった からです。

 そして、核燃料サイクル計画には大きな欠陥があります。青森県六ケ 所村にある使用済み燃料の再処理工場は、これまでに故障と完成延期を 繰り返しており、本格運転のメドがたっていません。この工場が操業し ない限り、福島は行き場のない使用済み燃料を原子炉内のプールに抱え たままになってしまう。今回の事故でも、3号機でプールが損傷した疑 いがあります。これからも、この危険が残り続けるのです。昨年8月、佐藤雄平・現福島県知事はプルサーマルの受け入れを表明 し、30日には県議会もこの判断を尊重するとの見解をまとめました。 このニュースは県内でも大きく報じられましたが、その直後、まるで見 計らったかのように、六ケ所村の再処理工場が2年間という長期にわた る18回目の完成延期を表明したことは、どれだけ知られているでしょ うか。

 福島第一原発の事故で、首都圏は計画停電を強いられる事態となって います。石原慎太郎・東京都知事は00年4月、日本原子力産業会議の年次大会で、「東京湾に原発をつくってもらっても構わない」と発言し ましたが、この事態を見ても、同じことを言うのでしょうか。私は06年に県発注のダム工事をめぐり、収賄の疑いで東京地検特捜 部に逮捕されました。控訴審では「収賄額はゼロ」という不思議な判決 が出され、現在も冤罪を訴えて闘っている最中です。その経験から言う と、特捜部と原子力村の人々は非常に似ています。特捜部は、自らのつ くった事件の構図をメディアにリークすることで、私が犯罪者であると いう印象を世の中に与え続けました。今回の事故も重要な情報を隠蔽、管理することで国民を欺いてきたと 言えるでしょう。今こそ国の責任をただすべきときです。 (構成 本 誌・大貫聡子)

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[福島原発事故に関する小出先生のコメント]
京都大学原子炉実験所助教・小出裕章先生から「STOP!上関原発ML」へのメイル

 以下に、原発直後から小出先生が発信された4通のメールを貼り付けています。お役立て下さいとのことです。小出先生は、震災の翌日から、政府や東電の不十分な対応を指摘しつつ、福島原発は破局的方向へ向かっていると、厳しい見通しをされていました。また、4月1日に、米国科学国際安全保障研究所が、今回の事故を「レベル6」に引き上げるべきと提言しています。日本が当初「レベル4」といっていたとき、小出先生は「レベル6」だと、早い時期に おっしゃっていました。

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今現在、1分1秒を惜しむように過ごしており、十分なご返事をする余裕がありません。この間MLに発信した4通のメールを下に貼り付けます。何かのご参考になれば、幸いです。

           2011/4/1  小出 裕章
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12日午後--------------------------------------------------------------------------------------------
皆様

 福島原発は破局的事故に向かって進んでいます。
 冷却機能を何とか回復して欲しいと願ってきましたが、できないままここまで来てしまいました。
 現状を見ると打てる手はもうないように見えます。
 後は炉心溶融が進行するはずと思います。
 それにしたがって放射能が環境に出てくると思います。
 その場合、放射能は風に乗って流れます。
 西向きの風であれば、放射能は太平洋に流れますので、日本としては幸いでしょう。
 でも、風が北から吹けば東京が、南から拭けば仙台方面が汚染されます。
 今後、気象条件の情報を注意深く収集し、風下に入らないようにすることがなによりも大切です。
 周辺のお住まいの方々は、避難できる覚悟を決め、情報を集めてください。

          2011/3/12  小出 裕章--------------------------------------------------------------------------------------------
12日夜
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皆様

 8時の枝野長官の記者会見を聞き、爆発は格納容器と原子炉建屋の間で起き、格納容器はまだあるとのこと、ちょっとほっとしました。
 もし、それが本当なら、爆発は水素爆発です。
 そしてその水素は、燃料棒被覆管材料である、ジルコニウムという金属と水との反応で生じた水素だと思います。
 それが格納容器ベントを開いたことで、原子炉建屋に漏洩し、爆発に至ったと推測します。
 格納容器は放射能の放出を防ぐ最後の砦で、それがまだ形として残っているということは、せめてもの救いです。
 その格納容器の中に、海水を注入するという説明でしたが、どうやって海水を送るのでしょうか?
 そのためにはポンプが動かなければいけませんし、そのためには電源が必要です。
 電源が失われたからこそ、事態がここまで悪化してきました。
 何故、いきなり海水を送れるようになったのでしょうか?
 注水できるポンプの圧力の能力??
 原子炉圧力容器内は大変高圧になっており、消防用のポンプ車の吐出圧力では原子炉圧力容器の中に直接水を送ることはできませんが、格納容器の中であれば送れると思います。
 それでもなお、核の容器の中に水を送る作業はもっと早くやれたはずだと私は思います。
 十分な情報がない中、申し訳ありませんが、正確な判断ができません。
 もし、格納容器内を海水で満たすことができるのであれば、もちろん原発は2度と使えませんが、最悪の破局は免れることが出来ると私は思います。
 格納容器内に海水にホウ素を混入させることは必要です。
 今直面している危機は、原子炉が溶けてしまうこと、そして一度は停止させたウランの核分裂反応が再び始まってしまうかもしれないことの2つです。
 原子炉を溶かさないためには水を供給すること、核分裂を再び始まらないようにするためには中性子を吸収できる物質を供給しなければいけません。
 中性子を吸収する物資がホウ素です。
 ですから、ホウ素を混入した海水を格納容器に注入することは有効です。
 成功してくれることを願います。

 政府の提供する情報は大変不十分です。
 爆発前後で正門前での放射線量が、減ったなどということは、格納容器が破壊を免れたという証明にはなりません。
 単に風向きが変わった可能性の方が遥に大きいです。
 今後も、あちこちからの情報に常に注意してください。

 このメールは失礼ながらたくさんの人たちに一斉に送ります。
 事故の対応に追われており、お許しください。 

         2011/3/12  小出 裕章--------------------------------------------------------------------------------------------
16日午後--------------------------------------------------------------------------------------------
皆様

 崩壊熱のデータを下に貼り付けます。
 100万kWの原発についてのもので、福島第一1号炉は46万kW、2,3,4号は78万4000kWです。
 比例計算してください。
 苦しく悲しい気分ですが、破局に向かって一歩ずつ近づいています。

            2011/3/16  小出 裕章

 電気出力100万kw原発の運転停止後の熱出力
 軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価指針
 1974/5/24(昭和50年4月15日修正)原子炉安全専門審査会

 熱出力   3000 MW
   経過時間  熱出力(kW)
10 秒   156,149
30 秒   124,289
1 分 109,657
2 分 96,748
5 分 81,985
10 分 72,333
30 分 59,309
1 時間 52,327
2 時間 46,167
4 時間 25,877
6 時間 23,068
12 時間 18,954
18 時間 16,897
1 日 15,574
2 日 12,796
3 日 11,407
1 週間 8,972
2 週間 7,372
1 月 5,940
2 月 4,880
3 月 4,351
6 月 3,575
1 年 2,453
2 年 1,944
3 年 1,697
5 年 1,430
7 年 1,278
10 年 1,134
20 年 899
50 年 661
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3月22日午前--------------------------------------------------------------------------------------------
皆様

 「崩壊熱」について、下記のような質問が届きました。
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今晩は.webを拝見しました.
「原発停止後の崩壊熱とは何か」という疑問を持っています.

> 崩壊熱
> http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kid/safety/decayhea.htm
> 原子炉内の核分裂反応を停止させることができ、核分裂による発熱をゼロにすることができたとしても、すでに炉心に蓄積して発熱を続けるこの崩壊熱は決して人為的に止めることができないからである。

ここでは,終了した核反応の熱が保たれているもの,と読めるのですが.臨界が終了した後にも,ぽつりぽつりとウランが分裂するのが止まらずにいるのが「崩壊」であり,そこから発生するのが「崩壊熱」なのかな,となんとなく考えています.実際のところをご説明いただけないでしょうか.なお,私個人に対するコメントというより,一般的な広報としてどこかに掲載していただく事を願います.
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 なるほど・・・、と思いました。
 こうした誤解はやはり広く存在しているのでしょう。
 今、私自身は大変慌しく過ごしていて、申し訳ありませんが、基礎的な事項について十分な解説を書く余裕がありません。
 以下に少しだけ、書きます。

 「放射能」とは本来は「放射線」を出す能力を意味します。
 「放射線」にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線などいろいろなものがありますが、いずれにしてもエネルギーの塊です。
 エネルギーは最終的に熱になります。
 そして、日本では「放射能」という言葉を、「放射能」を持った物質、つまり「放射性物質」を示す場合にも使われます。
 ウランが核分裂するっと核分裂生成物と呼ばれる多種類の放射性物質が解脱されます。
 ヨウ素131やセシウム137などと呼ばれていっるものも核分裂生成物の1種です。
 それらは「放射性物質」であり、「放射線」を放出します。
 つまり、発熱体だということです。
 セシウム137の場合には「ベータ崩壊」とよばれる「崩壊」の仕方でバリウム137に変わるのですが、その時にベータ線とガンマ線を放出します。
 つまり、発熱するのです。
 原子炉が動く、つまりウランが「核分裂反応」をすると核分裂生成物が生まれ、熱が出ます。
 原子炉を止める、つまりウランの「核分裂反応」を止めるとしても、原子炉の中にすでに溜まってしまっている放射性物質自体が「崩壊」して発熱するのが『崩壊熱』です。
 ウランの核分裂反応とは関係ありませんし、「崩壊熱」は、放射性物質がそこにある限りとめることができません。

 この程度の解説でご理解いただけるでしょうか?

 すでに事故から11日経ちましたが、電気出力78万4000kWの福島第1−2,3号機の場合、未だに原子炉の中では6000kW程度の崩壊熱が存在しています。
 1kWの家庭用電熱器やホットプレートあるいは電気ストーブを考えれば、それが約6000個分、原子炉の中で発熱を続けていることになります。
 その熱をとにかく外部に取り出さない限り、原子炉は溶けてしまいます。
 東電福島の人たちの必死の努力が何とか最悪の事態を食い止めています。
 苦闘が実を結ぶことを願います。

2011/3/22  小出 裕章
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Hiroaki KOIDE
Research Reactor Institute, Kyoto University
Asashiro-Nishi 2-1010, Kumatori-cho,
Sen'nan-gun, Osaka, Japan
phone & fax : +81-72-451-2458
fax : +81-72-452-8193
e-mail : koide@rri.kyoto-u.ac.jp
URL : http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/index.html

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[福島第一原発事故、スリーマイル超えレベル6相当に]
asahi/com 2011年3月25日3時0分

 東京電力福島第一原発の事故は、放出された放射能の推定量からみて、国際評価尺度で大事故にあたる「レベル6」に相当することがわかった。すでに米スリーマイル島原発事故(レベル5)を上回る規模になった。局地的には、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に匹敵する土壌汚染も見つかっている。放出は今も続き、周辺の土地が長期間使えなくなる恐れがある。 原子力安全委員会は、SPEEDI(スピーディ)(緊急時迅速放射能影響予測)システムで放射能の広がりを計算するため、各地での放射線測定値をもとに、同原発からの1時間あたりの放射性ヨウ素の放出率を推定した。事故発生直後の12日午前6時から24日午前0時までの放出量を単純計算すると、3万〜11万テラベクレル(テラは1兆倍)になる。
                         事故評価と放射能放出量(朝日新聞) ⇒

 国際原子力事象評価尺度(INES)は、1986年のチェルノブイリ原発事故のような最悪の「レベル7=深刻な事故」を数万テラベクレル以上の放出と定義する。実際の放出量は約180万テラベクレルだったとされる。今回は少なくともそれに次ぐ「レベル6」(数千〜数万テラベクレル)に相当する。 経済産業省原子力安全・保安院は18日、福島第一原発の1〜3号機の暫定評価を「レベル5」と発表したが、今後放出量の見積もりが進めば、再検討される可能性が高い。 土壌の汚染は、局地的には、チェルノブイリ事故と同レベルの場所がある。

 原発から北西に約40キロ離れた福島県飯舘村では20日、土壌1キログラムあたり16万3千ベクレルのセシウム137が出た。県内で最も高いレベルだ。京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)によると、1平方メートルあたりに換算して326万ベクレルになるという。 チェルノブイリ事故では、1平方メートルあたり55万ベクレル以上のセシウムが検出された地域は強制移住の対象となった。チェルノブイリで強制移住の対象となった地域の約6倍の汚染度になる計算だ。今中さんは「飯舘村は避難が必要な汚染レベル。チェルノブイリの放射能放出は事故から10日ほどでおさまったが、福島第一原発では放射能が出続けており、汚染度の高い地域はチェルノブイリ級と言っていいだろう」と指摘した。

 金沢大の山本政儀教授(環境放射能学)によると、1メートル四方深さ5センチで、土壌の密度を1.5程度と仮定すると、飯舘村の1平方メートルあたりのセシウム濃度は約1200万ベクレルに上る。チェルノブイリの約20倍。「直ちに避難するレベルではないが、セシウムは半減期が30年と長い。その場に長年住み続けることを考えると、土壌の入れ替えも必要ではないか」と話した。

 健康への影響はどうか。チェルノブイリ原発事故では、強制移住の地域では平均50ミリシーベルト程度の放射線を浴びたとされる。しかし汚染地での長期の住民健康調査では、成人では白血病などの発症率は増えていない。 甲状腺がんは増えたが、事故当時小児だった住民が放射性ヨウ素で汚染された牛乳などを飲んで内部被曝(ひばく)したためとみられている。飯舘村の24日午後までの放射線の総量は、3.7ミリシーベルトだ。 長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)は「チェルノブイリ原発事故後でも小児甲状腺がん以外の健康障害は認められず、すぐに健康を害するとは考えにくい。高い汚染が見つかった地域では、データをもとに住民と十分に話し合って対応を考えてほしい」と話している。

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[農産物放射能汚染 内部被曝の防止が重要]
大阪大名誉教授 野村大成(のむら・たいせい) 42年名古屋市生まれ。67年大阪大医学部卒。
専門は放射線基礎医学。86〜05年大阪大医学部教授。現在は大阪大招聘教授。
中国新聞 識者評論 2011年3月22日

福島第1原発事故による住民、特に小児への健康影響では内部被曝がより懸念される。ヨウ素は甲状腺、セシウムは全身の筋肉、ストロンチウムは骨など特定の臓器に集中的に取り込まれ、危険性は高い。私は旧ソ連チェルノブイリ原発事故後のユネスコによる現地調査、英国セラフイールド再処理工場の裁判などに関わってきた。その経験から現時点の疑問に答えたい。枝野幸男官房長官らは「直ちに健康に影響はない」と語った。これは原子力事故のたびに国民を安心させるため使われてきた決まり文句である。

正確な測定課題

急性障害(症状は1シーベルト以上、治療しなければ7〜9シーベルトで死亡)は過去の事故例でも、現場の作業員や救援などで立ち入った人に限られている。しかし、住民に問題になるのは、忘れた頃にやってくる、内部被曝の晩発影響(8割はがん)であり、その予防である。特に、風に乗って遠くまで運ばれる放射能を帯びた降下物が呼吸や、やがては水、食物を介して体内に取り込まれて内部被曝する。取り込まれた放射性物質の中には、特定の臓器に集中的に蓄積される元素があり、取り続ければ長期間にわた放射線を浴びる。福島第1原発から約200キロ離れた東京などで検出されている放射線量は風向きや気候で大きく変わる。このまま放出が短期間に収まってくれれば、体内に取り込まれても、首都圏で健康に影響するとは考えにくい。放射能の環境汚染を正確に測り、汚染地域を設定して対処することがすぐ課題になる。チェルノブイリ事故では風向き、降雨などの影響で100-180キロ離れた所に高濃度汚染地域が現れた。

今回、政府は住民を避難させておいて、周辺での農作物の調査が遅れたのではないか。牛の原乳やホウレンソウから暫定基準値を超える放射性物質が検出されても「牛乳は1年間摂取し続けてもCTスキャン1回分程度」だから安全という政府の発表には異議を唱えたい。医療被曝は健康へのメリットが多いから、規制が除外されているのであって、安全といっているのではない。しかも、CT検査はエックス線の外部被曝で、これくらいの線量で発がんの心配はまずない。

これに対し、食物は内部被曝を起こす。住民、中でも子どもに問題なはヨウ素131だ。ヨ素は甲状腺に集まり、ベータ線を出す。半減期が8日と短くても、成長期にある子どもには、取り続ければ危険性が無視できない。チェルノブイリ事故では10代後半の被曝でも、事故15年後に甲状腺がんがピークに達し、通常の10倍を超えた。放射能で汚染した牧草を食べた牛の乳を介してヨウ素が子どもの甲状腺に集中した。それに加え、ヨウ素欠乏地域であったため、甲状腺に放射性ヨウ素がより多く取り込まれ、甲状腺の大量被曝となり、がんを起こした。今回は、放射性ヨウ素の値はチェルノブイリよりはるかに低いが、注意は必要である。

説明を速やかに

セシウムは半減期が30年と長く、全身の筋肉に均等に取り込まれるが、排せつされやすい。予防の観点から、暫定基準値を超えた農産物の移動・摂取は厳しく制限しなければならないことは、放射線障害の歴史が物語っている。風評被害を避けるためにも、政府は土壌や作物を含め、正確な測定値と説明を速やかに示すべきだ。未曽有の大地震津波の被災地を襲った重大な原発事故は一刻も早く終息させ、これ以上の放射性物質の放出を抑えるよう切望する。

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[被災者は忍耐だけでなく要求を!]
毎日新聞 余禄 2011年3月21日

東日本大震災で被災地域に入った外国人記者の中に、韓国の有力紙・朝鮮日報の鮮于鉦(ソンウジョン)記者がいた。東京特派員を5年半勤めた日本通。震災発生直後、取材陣の一員としてソウルから急派された▲東京でレンタカーを借り、通れる道を選びながら28時間かけて仙台に着く。.津波に襲われた現場の無残な光景に息をのみ、家族を失っても静かに耐えて秩序を保つ被災者の姿に胸を打たれた▲だがもっと北部の複数の避難所で、1日の食事がおにぎり一つ、みそ汁1杯か水という実態を見て怪しんだ。外国人が自力で行ける場所に救援の手が届いていないのはなぜだ。救えるはずの命も失われているのではないか、と▲日本の危機.対応能力を信頼していた鮮于記者は考え直した。「マニュアル化されたシステムが、想定を超える被害の中で融通性を欠き、初動の救援が遅れた」「被災者の忍耐を尊敬する。でも耐えるだけでなく、政府をもっと急がせるため要求の声も上げてほしい」▲そんな思いを込めて記事を書いたという彼は「日本を批判する気はない」と言いながら「ただ、あまりにもどかしい」と付け加えた。拙速でも強引でも素早い対応をよしとする韓国世論の感覚だろう▲もっとも、本当にもどかしいのは私たち日本人だ。過酷な運命に直面している被災者への支援も、福島第1原発の危険な状況も、確かな安堵の材料がない。急がねばならない作業は山積している。ここは歯を食いしばり、踏ん張って、力を振り絞らねばなるまい。毎日のように余震が続く中、危機対応システムの再検討も必要だろう。国際社会も注視している。待ったなしだ。

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[福島第一原発事故は原子力開発の歴史上、最も深刻なレベルにある]

福島原発事故、二大事故との違い(1)
ナショナルジオグラフィック
ニュース 2011年3月18日18時55分

3月11日の東北地方太平洋沖地震と津波の影響で、福島第一原子力発電所で爆発事故が発生し、事態収束を図るため懸命の作業が続けられている。原発事故といえばスリーマイル島とチェルノブイリが双璧だったが、福島原発は両者に匹敵する深刻な事態となる可能性があり、いずれは三大原発事故として記録に残るようになるだろう。

 福島第一原発の損害がどの程度深刻になるか現時点で見通しは立っていない。15日の時点で6基ある原子炉のうち3基で水素爆発が発生。さらに、2基で格納容器が損傷、4基で使用済み核燃料が過熱し、極めて危険なレベルの放射線が検出された。構内に残って作業を続ける作業員50人が被曝の危険にさらされるなど、事態は深刻化している。 しかし、1979年にアメリカ、ペンシルバニア州ハリスバーグ郊外のスリーマイル島原発で起きた事故や、1986年のウクライナ北部チェルノブイリ市の原発事故とは大きく異なる点が既にいくつかわかっている。

◆原子炉の種類

 1970年代に営業運転を開始した福島第一は、計6基の沸騰水型軽水炉(BWR)がある。BWRは通常の水を使用する軽水炉の一種で、H2Oの代わりに酸化重水素(D2O)を使用する重水炉と区別されている。スリーマイルの軽水炉は、加圧水型原子炉(PWR)という別のタイプだった。 電力業界の非営利研究機関である米電力中央研究所(EPRI)の原子力担当副所長ニール・ウィルムシャースト氏によると、どちらの原子炉でも水が2つの役割を果たしているという。炉心で発生した熱を取り出す冷却材、そして核分裂反応で放出される中性子の速度を下げる減速材の働きである。 加圧水型では水に高い圧力をかける。炉心が加熱した冷却水を蒸気にすることなく(水の方が蒸気よりも冷却効率が高いため)、沸騰水型よりも高温で運転する。炉心の温度が高くなり、熱効率が上がるのである。一方、沸騰水型は加圧水型に比べ低温のため、原子炉の構造が簡単で、部品が少なく済む場合が多い。

 チェルノブイリは、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK、ロシア語名:Reaktor Bolshoy Moshchnosty Kanalny)である。軽水炉と同様に冷却材として水を使用するが、減速材には黒鉛が使用されていた。イギリスのロンドンを拠点に活動する原子力業界の国際団体、世界原子力協会(WNA)によると、黒鉛の減速材と水の冷却材を組み合わせた原子炉は、ロシアで運転中の数台しかないという。 アメリカでは原子力発電所のほとんどがBWR型かPWR型の原子炉を使用している。「安全性に大差はない」と、ウィルムシャースト氏とEPRIは同意見だ。「どちらもそれぞれ自己制御性(負の反応度フィードバック)を備え、炉内の温度が上昇すると自然に核分裂反応が弱まり、出力が減少する」とウィルムシャースト氏は説明した。「しかし、RBMK型は正の反応度フィードバック特性を持つ。温度が上昇すると出力が上がり、さらに温度が高まるため、原子炉の暴走が生じやすい」。

◆事故の原因

「福島原発の事故では、津波が直接の原因となった可能性が高い」と同氏は指摘する。設計通り、地震の揺れを検知して運転を自動停止したが、 約1時間後に大津波が押し寄せ、すべての電源を喪失した。地震で冷却ポンプの動作を保つ外部電源が停止、冷却系への電力供給を担う非常用ディーゼル発電機は津波をかぶり故障した。非常用バッテリーもわずか8時間で切れたため、移動式発電機が搬入されている。 アメリカの科学者団体、憂慮する科学者同盟(UCS)の原子力安全プログラム(Nuclear Safety Program)責任者を務めるデイビッド・ロッシュバウム氏(David Lochbaum)氏は、「一連の災害と事故との因果関係を判断するのは時期尚早だ」と指摘する。同氏はアメリカにおいて、福島第一と同じゼネラル・エレクトリック社(GE)製の3つの原発で技術者として働いた経験を持つ。

 1979年のスリーマイル島原発事故に関する通称ケメニー委員会の最終報告書では、「機器の欠陥が事故の発端ではあるが、人為的な操作ミスが決定的要因となった」と述べられている。作業員が非常用冷却系統を誤操作により停止してしまったため、深刻な事態に進展した。もし作業員(または監督者)が事故の初期段階で非常用冷却系統を作動させていれば、あれほど重大な事故にはならなかったと同委員会は見ている。 一方、チェルノブイリでは動作試験が行われていた。「計画自体に不備があり、実施時にも複数の規則違反があった」とウィルムシャースト氏は言う。国際連合(UN)によると、予期しない運転出力の急上昇により蒸気爆発を起こし、原子炉の蓋が破損。その結果、溶融した燃料と蒸気が反応してさらに激しい爆発が起こり、炉心も溶融、建屋もろとも爆発炎上したという。

◆問題の究明

 スリーマイルとチェルノブイリ以降の数十年で、何が原子炉内で起こっているのか、原子力発電に関する情報が公開されるようになった。 スリーマイル事故当時に米原子力規制委員会(NRC)の委員だったピーター・ブラッドフォード氏は今週、「スリーマイルでは、事故3日目までに公開した情報のほとんどが不正確だった。燃料溶融の状況や1日目に炉内で発生した水素爆発の事実すら、何年もの間公表されず、情報がまったく闇に葬られていたのだ」と語った。 前述のケメニー報告書では、警報システムの不備を問題に挙げている。スリーマイル事故の最初の数分間、100以上の警報が鳴り響いたが、重要な信号を選択して通知するシステムは確立されていなかった。「状況が急速に変化する事故現場は混乱の極みに陥る。問題は、その状況下における人間と機械との相互作用に注意がほとんど払われていなかったことにある」。 一方、ブラッドフォード氏は次のように指摘する。「コンピューター化と情報伝達の向上により、少なくとも理論的には、日本の当局者は事故の状況をはるかに詳しく把握できたはずだ。だが、スリーマイルにはない地震と津波が相次ぎ、パニックに陥ったことは間違いないだろう」。

福島原発事故、二大事故との違い(2)
2011年3月18日(金)18:55

◆放射能漏れの影響

 スリーマイルと同様に、福島原発の原子炉でも、燃料被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器の3重の壁で放射能漏れを防いでいる。チェルノブイリは格納容器が無い設計だった。放射性物質が大気中に漏出すると、広大な範囲に影響を及ぼす可能性がある。「汚染の度合いは距離と関係ない。つまり、遠く離れているからといって必ずしも被曝量が少ないわけではない」とロッシュバウム氏は説明する。その要因の1つである卓越風により、影響を受ける範囲が変わってくるという。チェルノブイリでは、発電所から150キロ以上離れた場所が数十キロ圏内よりも高濃度で汚染された例もある。 「チェルノブイリはまったく常軌を逸していた。放射性物質は格納容器のない原子炉構造と黒鉛の火災が原因で上空に舞い上がった」。黒鉛火災は10日間続き、長引く漏出の間に天候が変わった。放射性物質の気体と粒子は風に乗って上空まで運ばれ拡散し、現場から遠く離れたところで雨と共に地上に降り注いだという。

 スリーマイルの放射能漏れは即座に健康被害が出るほどのレベルではなかった。国際原子力事象評価尺度(INES)では、最悪のレベル7より2段階低いレベル5(施設外へのリスクを伴う事故)に分類している。チェルノブイリはレベル7(深刻な事故)にランクされ、極めて多数の被曝者を出した。 福島第一は当初、レベル4(施設外への大きなリスクを伴わない事故)にランクされていたが、今後どこまで影響が及ぶのかは未知数だ。300キロ近く離れた東京では15日、通常の23倍の放射線量が計測されたが、同日中に10倍程度にまで下がっている。

  ◆被曝に関する正しい知識を

 アメリカでは、自然界のほか、医療処置や一般的な商品など人工の発生源から被曝する放射線量は、平均で年間6.2ミリシーベルト(1ミリシーベルト=100ミリレム)だという。 AP通信によると、厚生労働省は15日、原発作業員の被曝量の上限を100から250ミリシーベルトに引き上げた。米国原子力エネルギー協会(NEI)の調べでは、福島第一原発の放射線量は15日午後に毎時11.9ミリシーベルトに達したが、6時間後には毎時0.6ミリシーベルトまで低下したという。

 国連とNRCの調べによると、チェルノブイリでは、最初の爆発現場で800〜1万6000ミリシーベルトもの放射線を被曝した作業員600人のうち、134人が急性の放射線疾患を発症したという。このグループの2人は事故時の火災と放射線被曝によって命を落とし、28人が3カ月以内に死亡している。さらにその後、4000人もの人々が被曝によってこの世を去ったとみられている。 公衆衛生の観点から見ても、史上最悪の被害を巻き起こし、6000人以上の子どもたちが放射線被曝によって甲状腺癌(がん)を発症した。そのほとんどは、汚染された牛のミルクを飲んだことによる内部被曝だという。

◆情報開示の大切さ

「福島の危機を乗り越えるために、世界中の原子力業界が共同体勢を取って情報交換している。業界内で活発な情報交換が図られている点で、スリーマイルやチェルノブイリとまったく違う」とウィルムシャースト氏は語る。 当然、原発事故に関する情報は業界外にも伝わる必要があるが、東京電力はこの点で厳しい批判にさらされている。15日には国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が日本政府に対し連絡体制の強化を要請した。共同通信によると、同日に菅直人首相は東電本社を訪れ、幹部を叱責。爆発事故の連絡が首相官邸まで届くのが遅れたためで、「一体どうなっているんだ」と情報伝達の必要性を強く訴えたという。

 スリーマイルの事故当時は、原子炉を冷やして安定化させる作業が行き詰まっていても、当局側は国民に対して「危険は過ぎ去った」と説明するだけだった。チェルノブイリでも情報はほとんど開示されていない。世界原子力協会(WNA)は、「チェルノブイリの直接の引き金となったのは、冷戦時代の孤立状態が生んだ安全意識の欠如だ」との見解を示している。

 アメリカ環境保護庁(EPA)は1986年のある論文の中で、「チェルノブイリ事故では当初、深刻な隠蔽工作が行われた」と述べている。実際、ソ連で大規模な原発事故が発生した事実が国際社会で明らかになったのは、翌日にスウェーデンの原発作業員の衣服から大量の放射性物質が検出されたことがきっかけだった。ただちに発生源の調査が行われ、ソ連は日が変わってからようやくチェルノブイリでの事故を認めた。情報不足のため、死者数から付近の原子炉での火災まで、さまざまな憶測が流れたという。

 日本でも状況が悪化するにつれ、高まる危険性を過小評価するような関係者の発言に非難が集中している。エネルギー環境研究所(IEER)の所長アージュン・マキジャニ氏は、原子力業界が用意した脚本をなぞるかのような日本政府の対応を批判する。「脚本のタイトルは“全然大丈夫”というところだろう」。 「判明した事実と不明点。損害の大きさとそれがもたらす結果。情報を率直に伝えることが、国民からの信頼につながる」と同氏は話す。「しかし現在のところ、会見では放射線量の低さで安全を強調しているが、対照的に避難指示の範囲は広がるばかりだ」。

「Wall Street Journal」紙によると、日本政府は東電からの情報伝達の遅さを非難しているという。憂慮する科学者同盟(UCS)の世界的安全保障プログラム(Global Security Program)の物理学者で、核管理研究所(Nuclear Control Institute)の元所長エドウィン・ライマン氏は、「東電の会見は回を重ねるごとに曖昧になっている」とのコメントを寄せた。 「日本の関係者から出される情報の精度にばらつきがあるのは明らかだ。だが、それはいまだに状況把握に追われている状況を示しているのかもしれない」とライマン氏は続けた。同じくUCSの核専門家エレン・バンコ(Ellen Vancko)氏も、「現場は相当な混乱状態にあるだろう」と同意する。 「アメリカや他の国々の業界で、今回の事故があいまいにされなければよいが」とライマン氏は語った。「福島第一原発事故は原子力開発の歴史上、最も深刻なレベルにあると考えている」。 Josie Garthwaite for National Geographic News

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