平井堅

Ken Hirai
Ken Hirai
Ken Hirai



gaining through losing




堅さんの魅力って何なんでしょう。今の時代に、女性が男性に求めているものは、決して
男らしさなんかではないと思うのです。男らしさというものの中には、詩だとか、繊細さ
とか、エロチシズムなどといったものは、入り込む余地なんてありませんものね。でも、
平井堅の世界には、それがあるのです。



Sony Music Online Japan-ー平井 堅ー


Ken Hirai (on bbs)



果てない旅路に安らぎを求めて、いつしかかの胸にいかりをおろす・・・
としたら、堅さんの胸の中がいいよねって思えるくらい素敵!。

人と人との係わり合いが、どんどん薄っぺらになり、愛が便宜的なものに
なりかけている世界で、平井堅の世界は、何かを理解するために・・・、
そのために必要なやさしさが漂っていますものね。
とろけてしまいそうな奥の深い世界へ!。



堅さんのことは、テレビの歌番組などで存在は知っていましたが、たくさんのアーティスト
の一人に過ぎませんでした。それが、彼に惹かれていくキッカケは、たまたま、NHKに
チャンネルを切り替えたとき、丁度、堅さんが"お爺さんの古時計"を歌っているところ
だったんですね。やさしくて、心のこもった、深い味わいのある声を聞いた時、彼の全てを
一瞬に感じとった気がしました。それは彼にしか歌えない、世界に一つしかない堅さんの
大きな古時計の歌でした。顔が希薄な今の日本人、千と千尋の神隠しでも、出てきた顔なし
が今の日本人の姿なら、堅さんは自分の顔をしっかりもった、アーティストとして、きっと
今の日本人としては珍しい存在かもしれません。この曲は、彼が幼い頃に、母が歌って
くれた、いわば、彼の音楽の原点だそうです。そんなエピソードもやわらかくて素敵です。
GTLのアルバムの撮影で着ていた服と、仲居くんととんねるずの一人が司会するテレビ
番組に出ていた時の服と、NHKの"大きな古時計のルーツを求めて"に着ていた服装が
同じで、普段着っぽい服だったということも、何となく身近に感じられて、素敵でした。
彼は、恥ずかしがりやで不器用な人なのかもしれない。でも、それを補って余りある人間性
が詞の中や曲のな中に溶け込んでいて、詞の意味は苦悩でも、癒し系に繋がっているのね、
と思いました。と同時に、どんなに時が流れても、彼は彼でいつづけられる人だと・・・。



about Lyrics



堅さんが、歌を始めたのは大学に入ってからとのことで、2年後のソニーオーディションに
合格して、横浜市立大を卒業してから、活動をはじめるのですが、その後5年間の低迷期が
あります。きっとその間に培われたものは大きいのかもしれない。楽園のヒットで、一発やで
終わらないで、その後もヒット曲を送り出すことの難しさを考えると、やっぱりあの5年間
は堅さんにとって、内面的なものの深みを増していった時間なのかもしれません。私には、
ヒット曲と呼ばれているものの歌詞の意味が見えてこないものがたくさんあります。そう
いった場合はたいてい、言葉を意味としてよりも、ムードをかもし出す道具として使っている
のでは?って思えてきます。でも、堅さんの作詞する歌詞には、深い意味と味わいがあります。
言葉は、単に記号でもなければ、道具でもない・・・、それは、心と知性そのものなのだと・・・。




"Gaining Through Losing"というのは、「失う事で得られるもの」という意味です。平井堅は、
「傷ついたり、失ったり、悲しい事があるからこそ、人は暖かく優しくなれるんじゃないか?」
そう思って、この曲を書いたと言う。自分の痛みを知ってこそ、相手を傷つけてはいけないと
思うものだし、人に優しくもなれる。そういうことなんでしょうね。




エロスとは何か?。それは人間とは何かと同じくらい難しい問い。でも、これが、堅さんが彼の
音楽の中で、常に問いかけているテーマではないのかしらと思います。彼がエロスの向こう側
に何を見ているのかは、私達は、ただただ堅さんの歌から、感じとることだけでしか、近づくこと
ができない・・・。人は誰でも、生まれた時からエロスの壷をもっている。恋の感情の高まりや
官能の悦びを封じ込めた壷を・・・。でも、これは極めてタブーに属するものですから、心の奥
の奥にしまいこんでいる内に、いつの間にか消えてなくなってしまったりしてしまうのです。
堅さんは、いつまでも、自分の中から、エロスの壷が消えないで欲しいと願っているのかもし
れませんね。なぜなら、この不可思議なものは人間存在の核心に深く横たわっているから・・・




堅さんの作詞の中の、"愛し始めた時にもう、別の愛を探し始めてる"とか、"誰かの女性
ほど、その蜜をすいつくしたくなる"という歌詞をみてしまうと、「え?」と戸惑ってしまう人
もきっといることでしょうね。ですけれど、彼の年齢や、知的能力や、感性や、人間性を考
えた時、単に性愛(エロス)のみをテーマにしているのではなくて、本当はその先が重要な
のではないかしらと思います。欲望というのは、人間の本質ですし、それを否定したところ
で救われるものでもないですものね。大切なことは、俗なものを排除して、排除して、聖な
るものを純粋培養するのではなくて、いえ、むしろ、そのような聖なるものは本当の聖では
なくて、俗なものの中から、葛藤や苦悩を通して、たち現れる聖が、本当の意味での聖なる
ものだと、一連の堅さんの作品から、理解してます。エクスタシーの絶頂で、一瞬の炎とな
って燃え尽きたいという切望と、一分でも生命を維持させたいという切望との間で引き裂か
れている・・・それが人間なのかもしれません。もちろん、これをあからさまにするのは、
タブーですけれど、堅さんは、あえてそれをテーマにすることによって芸術的価値を見出
そうとしているのはないでしょうか?。エロスは彼のもう一つの永遠のテーマなのです。




LoveLoveLove



2001年11月28日発売の"LEMIX ALBUM"CDジャケットの写真を見た時、心が震えました。
堅さんって、本当に深い奥行きのある世界を持った人だと思いました。東大寺に、運慶の
彫った金剛力士像が、門の左右に一つずつあるんですけれど、仁王立ちした二体の力士像
は、世間の様々な悪い出来事を追い払うかのように怒っているんですよね。しかも、向かって
左の一体は、口を「あ」と開いていて、右にあるもう一体は、「うん」と閉じています。全ては
「あ」の音から始まって「ん」の音で終わるという仏教思想があるみたいです。あうんの呼吸と
いう言葉はそこから出てきたようです。堅さんのリミックスアルバムのジャケット写真は、目を
開いた金色の堅さんの顔左半分が、右はじに、そして、目を閉じた銀色の堅さんの顔右
半分が、左はじに位置しています。金剛力士像は二体ありますが、本当は同一の力士という。
そう考えると、堅さんのこのアルバムのジャケットの写真は、東大寺の金剛力士像とどこか
ダブります。2001年は、アメリカでのテロや、アフガンの空爆で、罪もないたくさんの人たち
が命を落としています。そんな暗い悲しい出来事に対しての、堅さんの無言のメッセージを
みたような気がしました。1人の人間にはどうすることもできない、自然や歴史の巻き込みが
ある。もし、安易に言葉にすれば嘘になる。だから、黙ったまま、目を開き、目を閉じる・・・。
そして、想いは、音楽にたくして・・・







LEMIX ALBUM の中に、平井堅が自ら作詞・作曲した英語の作品「One Love Wonderful world 」が
新曲として一曲だけ入っているんですけれど、その詩の内容をみてみますと、生前、ジョンレノンが
唱えていたLOVE&PEACEの思想が堅さんの中に、しっかりと受け継がれているのを感じないでは
いられません。堅さんが、あのニューヨークでのテロ事件後の武道館でのライブで、「イマジン」を
歌ったことや、ジョンレノンの命日にあたる12月8日に、KEN'S BAR 大阪公演を決定したことなど
は、ジョンレノンの想いや考えを、一人のアーティストとして、受け継いでいきたいという彼の気持
ちの現れではないでしょうか。そして、ジョンとヨーコが唱えるラブ・アンド・ピースの中心にある思想
とは、「非暴力」「ユーモア」「人間の信頼にもとづく楽観主義」「世界を動かすのはリーダーではなく
ひとりひとりの生き方」・・・。ヨーコはいう「青い空の美しさに、アートは超えられない」・・・。自然の
美しさは、それこそ神の造形物。人間が超えられるわけがないということは、きっと誰でもが感じる
ことではないでしょうか。でも、愛と平和はどうでしょう。愛と平和は人間が生み出すもの。つまり、
ジョンとヨーコは、人間が作り出すものとして、愛と平和こそ、究極の芸術なのだという認識が
ラブ・アンド・ピースの思想とともにあったのではないでしょうか。そして、堅さんもそれをしっかり
と感じているからこそ、「One Love Wonderful world 」という作品が、今、ここにあるのです。




Beatles & a fair poet




2002年の最初のシングルは、ベイビーフェイスがプロデュースした「Missin' you 〜It will break my
heart 〜」。英語バージョンも素敵ですけれど、堅さんがアレンジして作詞した日本語バージョンは、
不思議な内面的世界が広がり、彼の極上のベルベットボイスとともに魅せられます。力強さ、繊細さ、
優しさ、愁い、喜びと苦悩。。。全てを知ったものの声であると思うのは私だけでしょうか。しかも、彼の
内面に少しでも触れることができたなら、彼の知的かつ情緒的レベルの高さに驚かされることでしょう。
この曲をきけばきっと、たとえヘタレにみえても、男は一人の女性をどこまで愛し続けられるかで
その真価が問われる?と感じるのではないのでしょうか?。




堅さんの歌う「大きな古時計」はシンプルで素朴で、それでいて私達の心惹きつけてやまない魅力をもって
いますよね。透き通るほどのやさしさが、哀愁を帯びた彼の声にのって魂に突き刺さってくる感じがしませ
んか?。存在するもの全てには時が刻まれるていくという不思議さ。決して逆戻りはしない・・・。この歌は
人生というもののある種のイメージをかもし出していますよね。しかもこの大きな古時計は実は堅さんその
ものなのかも。大きな古時計がおじいさんの人生に時を刻んできたように、堅さんも今の時代の人たちの中
に自分の歌を通して時を刻んでいくのではないでしょうか。




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