◇医療崩壊

<ドクターちゃびんの理念>日本の、これから「医療」安心できますか? NHKテレビ2006年10月14日(土)
国民が、どのような国、どのような医療を望むかということになりますが、こういう議論になるとすぐに、高負担高福祉か、低負担低福祉という問題にされてしまいます。根本的には国の税金の使い方の問題ですし、その根底にあるのは国民と国との信頼関係です。日本では何ごとも「依らしむべし、知らしむべからず」と、正確(正直)な情報提供と対等の立場でのコミュニケーションがないまま、国民が知らないところで税金の浪費(無駄遣い)を続けてきた結果、国民は国を信用しなくなっています。税金を国民の生活の安全と安心のために使うことを最優先させることが大切です。ひとりひとりの国民とくに弱者をまもることが、社会と国の責務であるはずです。いくら最新式で大量の軍備を備えても、国民を守ることはできません。それはかえって国民を戦争の危険にさらすことになります。日本と世界は二度の世界大戦の苦い経験から、国連憲章を作り、それをさらに推し進めて人類の理想を目指した日本国憲法を制定し、その理念をもとに教育基本法が作られています。国が国の責任でしなければいけない仕事は、教育と社会保障と環境保護です。これらの仕事は、市場原理や経済効率では解決できない内容だと思います。いま私たち国民は、日本をどのような国にしたいのか、日本の医療をどのようにしたいのかということを、真剣に考えなければいけない時なのだと思います。

[大増税が医療・年金を破壊する] 財政危機はウソだ。世界一の医療を守るには
菊地英博(日本金融財政研究所所長) 文芸春秋 2008年2月
→「日本の医療を正しく理解してもらうために」 川崎市立川崎病院 鈴木厚先生のページ
[誰が日本の医療を殺すのか「医療崩壊」の知られざる真実] 本田宏 著 洋泉社 2007年9月
「日本の医療崩壊と後期高齢者医療制度」 宇沢弘文東大名誉教授 全国保険医新聞 2008年2月25日
『医療立国論』 崩壊する医療制度に歯止めをかける! 帝京大学前医学部長・大村昭人著 2007年5月
医療費の削減・市場原理主義の導入では、医療改革は成功しない!
[『医療立国論』高齢化社会において、医療、介護、健康産業の需要は拡大する] 帝京大学前医学部長 大村昭人 2007年5月
[あなたも洗脳されていますか?] 広島県医師会速報(第1993号) 2007年11月15日
[情報が正しく伝われぱ医療は窮状から脱する] 本田 宏 週刊東洋経済 2007年l1月3日 特大号
[改革という名の破壊] 広島保険医新聞(第377号)2007年8月10日
[「医療崩壊」というドミノ倒しの先にあるもの] 京都保険医新聞「主張」 第2598号 2007年8月6日
[【07参院選 医療】根本からの論議尽くせ] 中国新聞 社説 2007年7月17日
世界に冠たる日本の国民皆保険制度・WHOが世界一と認めた日本の医療が崩壊します
[国民皆保険制度を崩壊させる医療「改革」法案の強行採決に抗議 !]


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[誰が日本の医療を殺すのか「医療崩壊」の知られざる真実]
本田宏 著 洋泉社 2007年9月
済生会栗橋病院副院長 本田宏(ほんだ・ひろし)*

*1954年福島県生まれ。弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学第3外科にて腎移植、肝移植の研究に携わる。89年から済生会栗橋病院へ。現在、同病院副院長兼外科部長。また、現場で働く者の立場で国民のための医療を考える「NPO法人 医療制度研究会」の代表理事を務めながら、日本の医療の現状を憂い、幅広く執筆活動や講演を行っている。
著書に『日米比較に学ぶ「国民主役」医療への道』『医療白書(2006年度版)』(ともに日本医療企画、共著)がある。

→医療制度研究会ホームページ

病院から医師が消える日もそう遠くはない!
小児科医、産科医だけでなく、外科医や内科医も激務に疲れ果て、続々と地域の病棟から逃げ出している。
「十年後には医師になりたがる人はいなくなるのではないか」
そんな現場の声をよそに、国はさらなる医療費の削減を推し進め、医師の絶対数不足には目もくれようとしない。なぜ、日本の医療はここまで追い込まれてしまったのか。そこには、「医療費は高い」という決めつけの下、財政を締め付けられ続けた病院の悲惨な状況が存在した。「医擦崩壊」の最前線から日本の医療の未来を問う!

各種メディアで大反響! 現役勤務医が厚労省のウソを鋭く斬る!
訴訟リスクに怯え、医療現場を立ち去る医師達。
子どもは産めず、老人は追い出され、病院は続々閉鎖…… 急増する医療難民!
その原因はどこにあるのか?
「2008年を読み解くR25的!新書」に選出(08年1月4日号)
ボクらの健康に直結するこの問題、他人事として済まさないためにぜひ一読をー「R25」
誰が日本の医療を殺すのか、一人ひとりが考える時期に来ているー「週間東洋経済」
最近、医師の書いた本では日本の医療の現実を活写して抜群に面白かったー「老健」
「この活動にかけて死ぬなら本望だ」との諦めの言葉に感動したー「社会保障」
精も根も果ててしまった現場の医師を代弁するー「医療タイムス」
日本の医療の「今、そこにある危機」を検証し、そのゆくえを展望するー「Medical Tribune」


はじめに-ある女医からの年賀状

第一章 今、医療現場で何が起こっているのか

近い将来、日本の医師は全滅する?/「命の最前線」では医師不在がより深刻/大病院では内科医と麻酔科医から減っている/国が「病院つぶし」に躍起になっている?/10年後は入院ベッド数が四割に減る?/「医療難民」二万人、「介護難民」四万人の時代がやがて来る/身内にふりかかつて初めてわかる「痛み」/リハビリ日数の制限で医療難民が急増中/相次ぐ医師や看護師の「逮捕・起訴」/医療事故の根本にあるのは「人手不足」/現場を無視して医療費抑制を断行する行政の愚行/日本の医療は今、崖っぷちに立たされている

第二章 どこを見渡しても日本に医師は余っていない

超高齢社会に向けて医療費を削る国の愚行/医師の数は14万人も不足している!/厚労省が「偏在」を強調するデータのウソ/偏在しているのは役人の脳みそ?/日本の医師数は国家に統制されている/年間100人程度の増員は「焼け石に水」でしかない/四半世紀にわたる「医療費亡国論」の呪い/アメリカと比べると絶望的なスタッフの数/労災認定基準を超えた労働時間は当たり前

第三章 このままでは医療ばかりか日本が崩壊する

「三時間待ち三分診療」の舞台裏/24時聞365日オンコールの日々/医療の進歩が仕事量を劇的に増やした/医師が一人何役もこなしている現場の実態/尋常ではない事務作業の量/「病院機能評価受審」はいらない!/インフオームド・コンセントの苦悩/「土下座しろ!」罵倒される勤務医/研修医の「過労死」はこうして起こった/過労自死した中堅小児科医の悲痛な叫び/当直は勤務時間にあらず/小児科医は現場を立ち去るか、死を選ぶか/安全神話が裏目の「産婦人科」/欧米では「人は誰でも問違える」が常識/看護師の7割以上が「辞めたい」と考えている/女性医師増加で準備しなければいけないこと/アメリカがさらに、医師の増員をする理由とは/なぜ「病床数は過剰」というウソがまかり過るのか/看護師を金で奪い合う時代

第四章 日本の医療費は本当に高いのか

国家財政を揺るがしているのは医療費ではない/高速道路の緊急電話は一台250万円!/日本は社会保障国ではなく、社会「舗装」国だった!/特別会計10パーセントカットで、20兆円捻出できる/財務省のトップがもらした本音/「医者は儲かっているんだろう?」は大きな誤解/勤務医は退職金がほとんどない/病院は儲からないシステムになっている/「薄利多売」で病院は悪戦苦闘/治療費「未払い」の患者さんも増えている/開業医天国の時代も終わった/医療費収入は少ないのに、国民の窓□負担はG7中トップ/日本人は冷たい「イシ」のほうが好き?/日本は社会保障よりも公共事業を大切にしている

第五章 医療崩壊をもたらす国の「甘いワナ」

医療格差を生む「混合診療」の恐怖/民間保険の加入は「よーく考えよう」/なぜアメリカの失敗に学ぼないのか/混合診療導入より先にすべきことがあるはず/「株式会社病院」は、医療者を金の亡者にする/すでに有名撫実化している「国民皆保険制度」/医療の値段は誰が決めているのか/医療崩壊の引き金となった新卒後臨床研修制度/「電子カルテ」は国の第二の公共事業/医師の免許更新制にも、一言モノ申す!/メタボ予防で医療費を削減するのは無理

第六章 日本の医療に明日はあるのか

「世界一」の評価と裏腹な医療現場/世界一の国際評価でありながら満足度は最低レベル/なぜ日本の医療はここまで追い込まれてしまったのか/GHQも日本の医療を非難していた/過去の失敗に学ばない「富国強経」策/国民が幸せになる「豊国幸民」策へ/日本は今すぐ、国力に応じた医療費にせよ/イギリスは医師増加を決断・実施した/医師の絶対数を早急に増やせ/アメリカに学ぶ「チーム医療」/病院と診療所の連携も重要なキーワード/日本の患者さんが求めるものは「赤ひげ」タイプの医師/団塊の世代とそのジュニア世代が押し寄せる前に/医療崩壊は「会議室では止められない」/「貧乏人は死ね」という世の中にしないために/「闘う医療界のスポークスマン」として私はあきらめない

おわりにーある官僚の言葉

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「日本の医療崩壊と後期高齢者医療制度」
特別寄稿 宇沢弘文* 東大名誉教授

世界に誇るべき国民皆保険制度
完全な崩壊への決定的一歩

全国保険医新聞 第2402号 2008年2月25日

*略歴1928年鳥取県生まれ。東京大学理学部数学科卒業後、経済学に転じ、スタンフォード大、カリフォルニア大、東大などで教鞭をとる。現在、同志社大学社会的共通資本研究センター長、日本学士院会員。83年文化功労者、97年文化勲章受章。著書に『経済学と人間の心』、『経済学の考え方』、『地球温暖化を考える』、『社会的共通資本』など。

4月1日から後期高齢者医療制度がスタートする。同制度の問題点について、宇沢弘文東大名誉教授に寄稿いただいた。(中見出し編集部)。

給付の平等性とフリーアクセスの原則

1961年に発足した日本の国民皆保険制度の下、国民のすべては、何らかの公的医療保険によってカバーされる。公的医療保険は社会保険としての性格をもつ。すなわち、保険者は市町村または健康保険組合であって、各人はそれぞれの医療保険が特定する要件をみたすときには、保険に加入することが強制される。国の定める療養規定の範囲に限って、診療報酬の支払いがなされ、保険料はもっぱら、市民の基本的権利の充足、社会的不平等の解決という視点から決められる。とくに、社会保険としての公的医療保険については、各保険者の経営的赤字は、憲法第25条にしたがって、最終的には国が補填するのが基本的原則である。国民皆保険制度の基幹的原則ともいうべき、給付の平等性とフリーアクセスの原則を貫こうとするとき、個別的な保険者について、保険収支のバランスを想定することは不可能である。

皆保険制度を守る医療関係者の努力

国民皆保険制度はもともと、すべての国民が斉しく、そのときどきに可能な最高の医療サービスを受けられることを社会的に保障するという高遇な理想を掲げて発足した。しかし、理想と現実との乖離は大きかった。その乖離を埋めるために、医師、看護師を中心とする医療にかかわる職業的専門家の献身的な営為と、医療行政に携わる人々の真撃な努力がつづけられてきた。病院の物理的条件も医療設備も必ずしも満足できるものではなかった。日本の医師、看護師などの医療専門家の、人口当たりの人数は極端に少なく、その経済的、社会的処遇も、諸外国に比較して極めて低く、また勤務条件も過酷であった。しかし、大多数の医師、看護師たちは、高い志を保って、患者の苦しみ、痛みを自らのものとして、献身的に診療、看護に当たってきた。日本の国民医療費はGDP当たりでみるとき、OECD諸国のなかで最低に近い水準にある。しかし、日本の医療はどのような基準をとっても、最高に近いパフォーマンスを挙げてきた。国民の多くはこのことを高く評価し、医師、看護師をはじめとして医にかかわる職業的専門家に対して、深い信頼と心からの感謝の念をもってきた。

高齢者を犠牲にした極端な医療費抑制

この理想に近い状況は、度重なる乱暴な医療費抑制政策によって維持しつづけることが極めて困難になってしまった。日本の医療はいま、全般的危機といっていい状況にある。かつては日本で最高水準の医療を提供していたすぐれた病院の多くが経営的に極めて困難な状況に陥っている。とりわけ地方の中核病院の置かれている状況は深刻である。数多くの医師、看護師たちは志を守って、医の道を歩むことが極めて困難な状況に追いやられている。この危機的な状況の下で、本年4月1日、医療費抑制をもっぱらの目的に掲げて、後期高齢者医療制度が発足する。この制度は、75歳以上の老人すべてを対象として、他の公的医療保険制度から切りはなして、新しく組織される広域連合を「保険者」として、地域的に分断して、運営しようとするものである。保険料は、もっぱら広域連合の経営的観点に立って(おおむね2年を通じて財政の均衡を保つように)決められ、75歳以上の老人は、生活保護世帯に属するもの以外すべて、これまで扶養家族だった人も含めて個別的に保険科を支払わなければならはい。医療給付についても、信じられないような条件が課せられている。たとえば、闘争、泥酔、著しい不行跡、あるいは自殺未遂で負傷したり、病気になってしまった場合、療養の給付はカバーされない。

とくに深刻な影響を及ぼすことになるのが、被険者資格証明書の制度が全面的に取り入れられることである。保険料の未納が1年を超えると、健康保険証を取り上げられ、代わりに被保険者資格証明書が発行される。しかし、この資格証明書だと、かかった医療費をそのたび、全額、病院の窓口で支払わなければならない。未納保険料を全額支払わないかぎり健康保険証は返してもらえない。「医療費の適正化」という市場原理主義的な名目を掲げて、主として「高額医療費」と「終末期の入院医療費」に焦点を当てて、75歳以上の老人を犠牲にして、極端な医療費抑制を実現しようというのが厚生労働省の意図である。社会的共通資本としての医療を具現化するという高邁な理想を掲げて、1961年発足した、世界に誇るべき日本の国民皆保険制度は、その完全な崩壊への決定的な一歩を歩み始めようとしている。

目本の医療はなぜ深刻になったのか

日本の医療は、何故このような深刻な事態に立ちいたってしまったのだろうか。この深刻な事態を招来させた、そのもっとも根元的なものは、市場原理主義とよばれる似非経済学の思想である。市場原理主義は簡単にいってしまうと、もうけることを人生最大の目的として、倫理的、社会的、人間的な営為を軽んずる生きざまを良しとする考え方である。市場原理主義は先ず、アメリカに起こった。そして、チリ、アルゼンチンなどの南米諸国に始まって、世界の数多くの国々に輸出され、社会の非倫理化、社会的靱帯の解体、格差の拡大、そして人間的関係自体の崩壊をもたらしてきた。

この市場原理主義が、中曽根政権の下に始まって、小泉・安倍政権の6年あまりに日本に全面的に輸入され、日本の社会はいま、戦後最大の危機を迎えている。日本では、市場原理主義が、経済の分野だけでなく、医療、教育という社会的共通資本の核心にまで、その影響を及ぼしつつあるからである。中曽根「臨調行革」路線の下で、厚生官僚によって「医療亡国論」が声高に主張され、医療費抑制のために医師数をできるだけ少なくする政策が取られはじめた。医に経済を合わせるという社会的共通資本としての医療の原点を忘れて、経済に医を台わせるという市場原理主義的主張に基づいた政策への転換を象徴するものだった。現在の極端な医師不足、勤務医の苛酷な勤務条件を招来する決定的な要因がすでに形成されはじめていたのである。

市場原理主義は国民の願いに逆行する

1980年代、財政赤字と貿易赤字という双子の赤字に悩むアメリカ政府は、日米構造協議の席上、日本政府に対して執鋤に内需拡大を求めつづけた。その結末が、日本が10年間で公共投資を430兆円行うという国辱的ともいうべき公約であった。「増税なき財政再建」の旗印を掲げながら、アメリカからの、この理不尽な要求を可能にするために政府が考え出したのが、地方自治体にすべてを押しつけることであった。国からの補助金をふやさないで、すべて地方自治体の負担で、この巨額に上る公共投資を実現するために、詐欺と紛う、巧妙な手法が用いられた。この流れは、小泉政権の「三位一体改革」によって、さらに拍車を掛けられた。その「地域切り捨て」政策と、度重なる暴な医療費抑制政策の及ぼした弊害はとくに深刻である。

市場原理主義の日本侵略が本格化し、社会のほとんどすべての分野で格差が拡大しつつある。この暗い、救いのない状況の下で行われた昨年7月29日の参議院選挙の結果は、国民の多くが望んでいるのは、市場原理主義的な「改革」ではなく、一人一人の心といのちを大切にして、すべての人々が人間らしい生活を営むことができるような、真の意昧におけるゆたかな社会だということをはっきり示した。しかし、今回発足する後期高齢者医療制度は、この国民の大多数の願いを裏切って、これまでの長い一生の大部分をひたすら働き、家族を養い、子どもを育て、さまざまな形での社会的、人間的貢献をしてきた「後期高齢者」たちの心といのちを犠牲にして、国民医療費の抑制を図ろうという市場原理主義的な「改革」を強行しようとするものである。

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『医療立国論』
崩壊する医療制度に歯止めをかける!
帝京大学前医学部長 大村昭人(2007年5月30日 日刊工業新聞社 出版)
医療費の削減・市場原理主義の導入では、医療改革は成功しない!

【目次】
序文
第1章 『医療費亡国諭」から『医療立国諭」へ
1 全ての誤りは1983年の「医療費亡国論」から始まった
2 政府、マスコミが煽る2007年団塊の世代退職の恐怖
3 目先の医療制度の改革が行われている
4 医療制度改革は先進国共通の課題
5 医療を一般の経済原則で考える愚かさ:経済財政諮問会議と規制改革・民間開放推進会議
6 このままでは、国民皆保険制度は崩壊を免れない

第2章 先進国の犯した週ちーアメリカ、イギリス、カナダの医療制度改革
1 漏れたホワイトハウスの機密文書:医療制度改革を掲げないと大統領選に勝てない
2 アメリカの管理医療制度と国民の悲劇
3 アメリカの民間医療保険(HM0‐ヘルス メンテナンス オルガニゼーション)の実態
4 アメリカの民間医療保険と患者の実情
5 医療保険制度は、市場経済に大きな影響を与えている
6 アメリカの民間医療保険と病院との実態
7 HMO(ヘルス メンテナンス オルガニゼーション)の力を牽制する動き
8 モラン対ラッシュープルデンシャル医療保険会社
(HM0-ヘルス メンテナンス オルガニゼーション)訴訟に対する連邦最高裁判所の判決
9 アメリカ国民の医療制度に対する不満は募るばかり
10 連邦政府の無策に失望して独自の皆保険制度を提案した知事たち
11 それでもアメリカの医療の質は非常に高い!
12 イギリスの医療制度とサッチャーの過ち
13 ブレア首相の行った大胆な医療改革:しかしそれが効果を上げるのは大分先
14 医師不足、看護師不足が起こったカナダの例

第3章 先進3ケ国の医療制度改革の失敗から学ぶべきことは、何か?
1 医療費の削減で、医療改革が成功するという幻想
2 日本の医療費は先進国の中で安い
3 民間保険制度と公的保険制度の共存は可能か
4 何でもアメリカのやり方が良いと考える困った人たち
5 アメリカのやり方を真似る前に、解決すべき課題がある

第4章 日本の医療環境と医療事故を考えるー病院勤務医師や看護師は疲労困憊している
1 世界的に見て極めて少ない日本の病院医療従事者(医療施設、病床、医師数、医療従事者の実熊)
2 医療過誤の背景にある深刻な日本の医療提供制度の問題。病院勤務医師や看護師は疲労困憊
3 大学付属病院をも揺るがす深刻な急性期医療のマンパワー不足
4 医師不足は偏在だけではない:絶対数が足りない深刻な日本の状況
5 アメリカの医師養成制度を表面だけ真似た卒後研修必修化:医師不足の後押しをしただけでなく医学部教育を破壊する
6 原因追求よりも責任追求の風潮がある医療過誤問題:予防する最善策は?
7 望まれる中立の医療過誤裁定制度と無過失救済制度の確立
8 スケープゴートにされる大学病院の医局講座制。「白い巨塔」は存在するのか?
9 それでも医学部の改革は必要である
10 メディカルスクール制の導入よりもっと喫緊の重要な問題がある

第5章 混合診療と特定療養費の問題に見る、医療の市場原理化論について
1 なぜ、混合診療全面解禁の必要性が叫ばれるのかー特定療養費というハードル
2 混合診療は国民皆保険制度の崩壊につながるー文化と制度の違いに無知である怖さ
3 特定療養費制度を廃止して欧米で安全が確認されている医療は一括承認せよ
4 市場原理主義は医療の効率化に結びつかない。公的保険と民間保険の二階建は国民皆保険制度を破壊する!
5 保険者の権限強化策は慎重に。まず、医療提供者と患者の裁量権と選ぶ権利を保証することが重要

第6章 目本の医療制度の現状を見てみよう
1 日本の医療制度には、良い点がたくさんある
2 日本の医療費は安く費用対効果では世界でトツプ
3 医療制度の3大根拠、アクセス、コスト、レベルにおいて優等生の日本の医療制度
4 日本の医療制度には問題点も少なくないー遅れている医療の質の標準化
5 医師法17条の呪縛:誤った法解釈による弊害
6 硬直した法解釈のために”お産”の機会が奪われている
7 医療難民2万人、介護難民4万人の悲劇
8 日本の病院運営にも問題がある
9 良質の医療を求めて国外脱出が始まっている

第7章 社会保障制度はこれでよいのか
1 日本の社会保障制度は国際的に見て最低レベルにある
2 先進国の租税負担率、消費税の比較
3 北欧の国々は社会保障費が高くても経済競争力は世界でトップ
4 法人税の負担軽減を求める日本企業の甘え:欧米の企業が負担する法人税と社会保険料の合計は日本よりはるかに大きい
5 日本の税金の使い道は無駄で非効率、一般会計に比べて巨大すぎる特別会計:塩川財務大臣の”お粥とすき焼き”のたとえ話

第8章 日本の医療制度の将来像は?
1 医療は、成長産業:2025年には、65.6兆円と予測される超成長市場
2 しかし、拡大する医療市場は医療の荒廃につながるリスクもある
3 医療市場への投資は、大きな経済波及効果を持つ
4 医療分野は、雇用創出の母体になり得る
5 高齢化社会において、医療、介護、健康産業の需要は拡大する
6 女性医師の働く環境を改善する必要
7 メタボリックシンドローム(生活習慣病)対策が、労働時間の損失を防ぎ経済に貢献する
8 医療の現場で注目されている軽い「炎症」の怖さ
:炎症は万病の元?炎症一元説:がん、心筋梗塞、脳梗塞からアルツハイマー病まで
9 このままでは先進医療で、遅れをとる日本
10 病院へのIT(情報技術)システムの導入は人の代わりにはならない

第9章 改正薬事法と医療にしり込みする大企業
1 時代に逆行する改正薬事法:医療機器と医薬品を一緒の法律で縛る弊害
2 改正薬事法は医療ベンチャーの芽を摘む
3 先進国の中で極めて遅い承認制度ー日本の役人の数は極めて少ない
4 医療機器耐用期間設定という非現実的な政策
5 硬直した官僚機構によるブレーキが医療と経済の発展を妨げる!

第10章 医療立国論ー医療技術で世界をリードして国民を幸せにできる!
1 「国民皆保険制度」は市場経済を支える
2 質と安全のハードルを高くした結果、病院の再編統合は避けられない
3 医療従事者の大幅増員は必須であり可能である
4 保険者の再編統合だけで医療を支える資源は拡大する
5 特別会計の抜本的改革だけで医療は支えられる
6 企業の社会的貢献を欧米並みにするだけで医療を支える大きな資源になる
7 消費税アップは政府の信頼度いかん
8 改正薬事法はすぐに見直す必要がある。市場原理化はこうした医療ビジネスの環境整備を重視すべきである
9 日本は医療立国の力で国民を幸せにできる!

あとがき
参考文献

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『医療立国論』
崩壊する医療制度に歯止めをかける!
帝京大学前医学部長 大村昭人(2007年5月30日 日刊工業新聞社 出版)
医療費の削減・市場原理主義の導入では、医療改革は成功しない!
第8章 日本の医療制度の将来像は?
5 高齢化社会において、医療、介護、健康産業の需要は拡大する

2005年に20%を超えた65歳以上の人口は今後も急速に増加していくと予想されて超高齢化社会が到来することになる。当然ながら医療、介護の果たす役割はますます大きくなる。これからは適切な医療と介護によって高齢者の健康が維持されて、働く意欲をもってもらい社会に貢献できる環境づくりが重要になる。しかし社会保障給付率とか社会保障還元率については、日本はOECD各国の最低に近いぐらいである。

スウェーデンでは社会保障に対する国民の負担率は75%ぐらい。保険料とか税金は日本に比べると大変な負担を北欧の各国民は担っているわけである。これは北欧だけではなくて、ヨーロッパ一般での負担率というのは、一番低いところでも40%の後半から50%、大体60%を超えている。ところが日本は40%にもいかないのである。どうしてそんなにOECD諸国、特に北欧の国々の国民が高い税金や保険料を払って平気なのかというと、かならず自分たちの福祉とか医療とか、そういう形で返ってくるという政府に対する絶大な信頼感があるからである。だから国に任せておけば年をとっても困らないし、老後の不安も無いと考えている。

しかし、日本では年金事業団のグリーンピアヘの無責任な投資などにより、何に使われるか分からないという不安が常に付きまとっている。つまり、政府に対する信頼感がないのである。今の特別会計以外に財政投融資というのがあるが、民営化が2007年10月から決まったものの、慶応大学の土居丈郎助教授の調査では郵便貯金がらみで焦げ付いたのが、分かっているだけで78兆円あるという。分かってないのはもっとあるはずだという。このように、いかに一般会計以外の特別会計や財政投融資などの巨大な資金がいい加減に使われているかという現実があるのだ。もしそういうお金がもっともっと国民の医療とか福祉の方に使われたら、国民は幸せになれるし、しかもそれが決して負債ではなく、将来に向けての投資になるのだということを、国民はもっと知るべきである。無駄使いをしないという政府への信頼があり、実際無駄遣いに対する監視の目がきちっとしていれば、少子化はさほど恐いことではないのである。日本の医療とか介護の将来はやり方次第では明るいのである。

高齢者が昔と比べて、暦の年齢よりも生理学的面ではずっと若返っているわけであるから、70歳でも80歳でも働きたいと思っている人も少なくない。こういう人たちに働いてもらい、自分で自分をサポートしてもらい、保険料とか税金を払ってもらう環境を整備すれば、「昔は5人で1人を支えていたのが、将来は1.5人が1人を支える」というような悲観的で後ろ向きの議論をする必要は全くないのである。そういう人たちが元気で働けるように医療と介護を最大限に使って支えてあげたほうがいい。そうすると、ちょっと具合が悪くなっても、国が後ろで支えてくれる。そしてまた元気になった、もう1回働こうじゃないかという話になるのだ。

例えば、団塊の世代(1947〜1949生まれで、約800万人いる)では、定年後も働きたいという人は85%もいる(2007年3月23日、日経BP社)。

このようなやり方で行けば国の財政も潤うわけで、医療や介護がすべて負債という考えかたが根本的に間違っている。道路を造れば経済が良くなって、医療をすれば逆にマイナス、負債になって重荷になるというのは時代錯誤の問違った議論としか言いようが無い。

24年も前に、当時の厚生省の保険局長が、『医療費亡国論』と言う論文を出したことが一人歩きしていて、高齢社会で福祉や医療が多くなってくるとマイナスの足かせがどんどん大きくなってくるので、経済の足を引っ張るだろうという『医療費亡国論』は根本的に間違っていたのである。24年間思考が停止しているようなものである。国立社会保障・人口問題研究所所長の京極高宣氏もその著書「社会保障は日本経済の足を引っ張っているか」のなかで「社会保障は必ずしも日本経済の足を引っ張っておらず、さまざまな経済効果から、むしろ国民経済にプラスの影響をもたらしている」と述べている(京極高宣:社会保障は日本経済の足を引っ張っているか 時事通信社 2000)。

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[あなたも洗脳されていますか?]
広島県医師会速報(第1993号) 2007年11月15日

日経新間のアンケートによると、福田新政権への要望のトップは財政再建(41.5%)でした。国の借金が836兆円!国民1人あたり657万円となると「何でもします」と頭を垂れそうである。しかし、誰も借金はしていないのである。あたかもサラ金に追われているような不安感に包まれているのは私だけではないはずである。さらに財務省は追い討ちをかけて来る。「このままでは財政は破綻し国は潰れる!」この暗示に最も感化されたのが小泉純一郎である。彼が政権を握った2001年はすでに借金が640兆円であった。国民等しく痛み分け「三方一両損」と訳のわからない言葉にみんな納得させられた。ズタズタの改革が断行された。

昨年12月に医療政策シンポ日医で東京大学の神野教授が「私は経済学者として20年前から日本の財政は破綻する!潰れる!と言われてきてどのように破綻するのか楽しみに待っているのですが、いまだに潰れませんね」と言われ私の脳天に稲妻が走ったのを覚えている。教授によると絶対に潰れないそうである。⊃まり日本の借金は対内債務で「奥さんから借りているのと同じことなんです」しかも、ほとんどが建設国債で大手のゼネコンや銀行が持っているので、国民が借金しているわけではないのです。それなのに国民の借金のように責め立てて医療費の削減まで行われたのである。私も当時は納得させられた1人である。

本当に日本は借金地獄なのか?最近内閣府が公表した日本の資産は、何と836兆円を引いて2640兆円也とあった。どうなってるの!と言いたくもなる。つまり、大豪邸に住んでいて奥さんの借金に脅えている旦那そのものなのである。株式資産だけでも720兆円もある。借金がいやならいつでもゼロにできるのである。なぜ返さないのか?もう理解されたことと思うが、国民を洗脳するのに取って置きのツールなのである。もちろん節約は必要だが、国民の命を削ることはない。しかも2003年から2004年にかけて円高になった時、政府は35兆円を借りて円高を買い支えた。そのドルが利子と円安で実に110兆円に膨らんでいるのである。(外貨準備高)

洗脳されたマスコミは、「日本の医療費は32兆円もしている!」と非難めいた報道をしているが、アメリカは500兆円である。なんと日本の医師は過労死寸前のボランティア的医療をしているのか!しかも8割は保険料十自己負担の自前である。国庫負担は約8兆円である。しかし、医療関係企業などからの税金を20%としても6兆円(不確か)ほどでほば国からの援助は受けていないのである。それにしても国庫負担8兆円も先ほどのアブク銭である110兆円を使えぱ14年問安泰で国民の命を削ることもないのである。

これで洗脳の呪文が解けたでしょうか?国民の洗脳が解けないかぎり医療崩壊のスパイラルは進むでしょう。福田内閣は選挙対策に高齢者医療費負担増凍結(わずか1年)を表明しましたが、そのためのコンピューターシステムの修正に100億円もかかるなんて。100億円で何人の命が救えると思っているのか、洗脳されている役人にはわからないだろうな!(槙坪 毅)

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[情報が正しく伝われぱ医療は窮状から脱する]
国民、政治家は変わり始めたマニフェスト競争に希望
本田 宏*
週刊東洋経済 2007年l1月3日 特大号 「病院の4割が赤字、8割が採用難、500病院身売り」
特集/ニッポンの医者・病院・診療所

*本田 宏:1954年生まれ。弘前大学卒業後、東京女子医大にて腎移植、肝移植の研究に従事。
1989年から済生会栗橋病院勤務。自著に『誰が日本の医療を殺すのか』

マイケル・ムーア監督の映画『シッコ』を見て「なるほど」と思った。アメリカも日本も同じだなと。情報操作ですよ。アメリカ人には、国民皆保険なんて社会主義のシステムだという先入観がある。だから、アメリカ国民は皆保険にしないほうがトクだと思い込んできた。あれほど高い医療費を払わされているにもかかわらずだ。

ひるがえって日本はどうか。たとえば、医療の世界では、医療費を増やすのは無理、下手に医者を増やしたら、歯医者さんみたいになってしまう、という先入観が医者にある。ある高齢の医者から、「本田君、医者が少ないと大事にされていいんじゃないか」と諭された。私が医者の数を増やせ増やせと言い続けている理由がわかってもらえない。われわれが週に60時間以上も働き、徹夜明けで手術に臨み、給料が大手企業のサラリーマンより安くて、場合によっては訴えられて捕まるのにね。それを医者自身がわからない。国民皆保険制度で値段が決まっているから、医者が少なければ給料が上がるなんてことはない。でも、それを理解できない人が多い。

でも、『シッコ』を見てわかりましたよ。要は情報ですよ。情報さえ正しく伝われば、国民の意識が変わる。政治家はそれを認めないわけにはいかない。政治家が変われば官僚も変わらざるをえない。遠回りでも国民に正しい情報を伝えていかなければ、日本はよくならない。それを『シッコ』を見て再認識した。変わると思いますよ、医療はね。だって、この前の白民党総裁選でも、福田康夫さん(現首相)が、「地方には医者がいない、医療が受けられない。これを何とかしないといけない」と一言ったでしょ。よしっ、もう少しだという感じだね。やっばり医療や福祉、教育は超党派で取り組むべきなんです。これらをちゃんとやらない政党なんて、初めから存在する意味がない。医療、福祉、教育は、資本主義社会が健全に育つための最低の基盤(インフラ)なんですよ。これをちゃんとしない国が伸びるわけないでしょう。国民の利害は共通しているんです。

医療の世界では、勤務医はもっと声を上げないといけない。今まで声を上げる団体もなければ、みんなが激務を当然のことと思って働いてきた。ある意味で変わらないとあきらめている人が多かった。だから、私の作戦は、呼ばれたら全国各地に出向く。時間があるかぎり、講演を断らず、問題意識を持っている人に医療現場の実情をきちんと伝えていく。そうすると話を聞いた人が今度は各地で核となって、そのほかの人に情報を知らせていく。それで最近は、医療は確かに大変だ、勤務医が倒れるようだと、俺たちも困るんだよな、と地域の人たちが思い始めた。

これまで国は、医療費は高い、医者は不足していない、偏在が問題だと言い続けてきた。本当は医者は少なく、医療費も安いのにね。正確な情報が伝わらないから、患者さんの怒りの矛先が医療従事者に向けられるんです。でも、希望を持っていますよ。これからはマニフェスト競争になると思っている。医療を国政の争点にしなきゃね。

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[「医療崩壊」というドミノ倒しの先にあるもの]
京都保険医新聞「主張」 第2598号 2007年8月6日

今回の参議院選挙では、年金問題が焦点の一つであった。一方で医療や介護などの社会保障制度の改正は大きな焦点にはならなかった。しかし、今後に予定される医療制度改革は、日本の社会福祉そのものを後退させる危険を持つ。社会保障制度の要といえる医療に対して来年から、医療費適正化の下に行われる診療報酬の改定、後期高齢者医療制度の創設、特定健診・特定保健指導、さらにレセプトオンライン請求の段階的義務化などが予定される。これらの医療制度改革に共通することは医療費の圧縮削減であり、これは社会保障制度を後退させる。政府のいう国家財政赤字を減らすためという「医療費亡国論」的発想で行われる改革は、医療崩壊から社会保障制度の崩壊のドミノ倒しであり、行き着く先は医療従事者の士気の低下、医療の不平等性、安全性とサービスの低下、そして社会福祉の荒廃である。

その一方で、国の国際競争力を損なわないためにと企業法人税率引き下げ、その穴埋めとしての消費税率の引き上げを行おうとしている。GDP比でみると、世界で突出した患者窓口負担の高さ、企業の社会保険料の低率という事実が、日本という国がいかに社会保障を軽視してきたかを示している。社会保障とは国民が福祉サービスや生活補助を、失業、疾病、身体障書の問題があっても平等な生活水準で維持できることを理念とした制度であったはずである。

例えばフィンランドは1950年から40年かけて社会福祉政策に取り組んできた。国と自治体が病院、児童福祉、高齢者福祉から一般医療まで総括している医療制度と日本の医療を比較はできないが、例えば日本はリハビリ日数制限を導入したが、フィンランドでは「リハビリは大きな改善がなくとも個人の生活の質が向上することが期待されることを重視する」と明言している。日本がいかに「場当たり的医療改革」を行ってきているかを考えさせられる。

イギリスでサッチャー政権が長期にわたって医療費抑制した結果、イギリスの医療福祉の荒廃をもたらしたという歴史について、その後ブレア政権が医療費総粋を大幅に拡大し医療制度を立て直したかについて、先進国の中で極端な医療費抑制政策を行おうとしている、わが国の政治家や官僚は学ばなければならない。国民の痛みや不幸を置き去りにして、国の財政や企業の利益を優先することは日本の将来に大きな負債をもたらすことを。

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[【07参院選 医療】根本からの論議尽くせ]
中国新聞 社説 2007年7月17日

安倍政権は医療費削減を主眼とする「小泉改革路線」を受け継ぎ、診療報酬の見直し、療養病床の大幅削減を進め、さらに七十五歳以上を対象とする新医療保険制度も2008年度から始める。高齢者の負担が増えるだけでなく、病床削減で行き場を失う入院患者が「医療・介護難民」になる恐れもある。

一方、産科、婦人科など深刻な医師不足が、離島や中山間地の病院を直撃し、お産や救急医療ができなくなる地域も出てきた。国民が安心して暮らせるには、緊急対策だけでなく、制度の根本的な再構築が必要だ。どういう方向をめざせばいいのか。

自民党は、医師確保のため六つの緊急対策を掲げる。都道府県からの求めで国が病院に医師派遣を要請、研修を受ける病院の定数見直し、勤務医の待遇改善、大学医学部の定員増など―。だが財源はどうするか。医学部定員の削減をはじめ、自民は改革大綱などを基に、医療費の抑制を積極的に進めてきた。緊急手直しにしても、これまでの検証をした上でなければ、場当たり的と見られても仕方あるまい。

公明党は、救急現場へ医師や看護師が同乗し駆け付けるドクターヘリの全都道府県への配備を法制化した、連立与党としての実績をアピール。産科、小児科の診療報酬アツプなどを提示する。

これに対し民主党は、日本の医師数は十万人当たり二百人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均二百九十人に比べ全体としても不足、と主張。まず約10%減となっている医学部定員を元に戻し、地域枠などを設けるとしている。

共産党は、国保の滞納世帯急増の現状から保険料引き下げを提案。窓口負担増の見直しを求める。社民党は、地方交付税の充実で自治体病院を守る、療養病床削減のストップなどを提起する。また、国民新党は過疎地での診療体制充実に目を向ける。

医療に今以上、国費を振り向けるのかどうかで政策選択は変わってくる。たとえ一時的に増えても、医師養成や治療法開発などに効率的に配分する方が、将来の削減につながるという見方もある。医学部の地域枠にしても、地域医療を本来担うべき自治医大の現状分析のほか、防衛医大、産業医大の役割の見直しなど、もっと突っ込んだ制度論議が必要ではないだろうか。

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世界に冠たる日本の国民皆保険制度・WHOが世界一と認めた日本の医療が崩壊します
日本は、ますます不安が一杯、危険が一杯な社会になります
2006年5月17日の厚生労働委員会と18日の衆議院本会議での医療改革法案の強行裁決!
2006年5月17日衆議院厚生労働委員会で、野党議院の質問にまともに答えずに審議を遅らせたあげくの強行裁決でした
質疑打ち切りの緊急動議を叫んだのは寺田議員(広島5区)、強行裁決した議長は岸田議員(広島1区)なのです
[国民皆保険制度を崩壊させる医療「改革」法案の強行採決に抗議!]

仁義なき闘い:多数の横暴・これは民主主義ではありません!
小泉政権はアメリカの傀儡政権:すべてアメリカの要求通りに進んでいます
在日米国大使館のホームページ→主要な政策課題→経済・通商関係→規制改革
日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書(2005年12月7日)
日本政府に規制改革要望書を提出:米国通商代表部 2005年12月7日、ワシントンDC
[弱い者たちの逆襲]<ミニ統一選の様相だった二十三日の選挙サンデー>中国新聞「天風録」2006年4月26日
[政治家は何をする人?政治改革は泥棒や強盗が刑法をつくるようなもの]彼らが一番恐れているのは選挙

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国民皆保険制度を崩壊させる医療「改革」法案の強行採決に抗議します

患者負担増の医療「改革」法案を審議中の衆議院厚生労働委員会は、5月17日、午後12時30分、首相質疑を終了した段階で動議が出され、怒号が上がる中、自民・公明の与党の賛成多数で同法案を強行採決しました。我々は国民無視のこうしたやり方に強く抗議します。また、強行採決に至る動議を出したのが、県選出の寺田稔衆議院議員(広島5区)であり、同議員および動議を認め採決をはかった衆院厚労委員長の岸田文雄衆議院議員(広島1区)に対し、特別に抗議の意を表明します。

医療「改革」法案の内容は、高齢者の負担を2〜3割負担に引き上げる、75歳以上の高齢者全員から新たな保険料を徴収して新高齢者医療制度を作る、高額療養費の月額上限を引き上げる、長期入院高齢者の食費・居住費を全額自己負担化するなどの患者負担増だけでなく、「医療・介護難民」を生む療養病床の廃止・削減、国の責任を放棄し都道府県に医療費「適正」化計画の押しつけ、自費診療を増やす混合診療の拡大など、日本の国民皆保険制度を根底から破壊する改悪法案です。

しかし、これまでの委員会審議では、こうした負担増や制度改悪についてほとんど審議されておらず、地方公聴会では与党推薦人にもかかわらず実質反対を訴えた人が多数でした。本来であれば数回の国会で審議すべきにもかかわらず、与党は、法案審議を実質9日(44時間余り)しか行わず採決を強行したもので断じて容認できません。

政府は今、「歳出と歳入の一体改革」と称し、歳出面では社会保障予算の削減、歳入面では消費税の増税を画策しており、医療「改革」法案もそうした路線上に位置づけられています。当会は医療従事者だけでなく、広範な患者さん・国民とともに、与党のこうした暴挙に抗議するとともに、法案の徹底審議・廃案に向けて全力を挙げる決意です。

2006年5月18日

広島県保険医協会 理事長 長谷 憲
広島市南区金屋町2-15 マニュライフプレイス広島4F

<ドクターちゃびんの解説>
民主主義を踏みにじる強行裁決
衆議院厚生労働委員会で強行裁決した議長・岸田文雄議院(広島県選出の自民党世襲議院)は、
その後、恩賞人事にあずかり大臣になった。
2006年5月17日の厚生労働委員会と18日の衆議院本会議での医療改革法案の強行裁決!
2006年5月17日衆議院厚生労働委員会で、野党議院の質問にまともに答えずに審議を遅らせたあげくの強行裁決でした。
質疑打ち切りの緊急動議を叫んだのは寺田議員(広島5区)、強行裁決した議長は岸田議員(広島1区)なのです。

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