「自然治癒力」
中国新聞夕刊 1993年6月4日 コラム「でるた]
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わたしたち日本人の8割は宗教を聞かれると無宗教と答えるそうだ。しかし、決してそうではなく、またそう答えてはいけない。宗教を持たない人は人間ではない、というのが国際的常識である。

正月には初詣にお宮に行き、クリスマスを祝い、結婚式は神前で葬式は仏式、家には神棚と仏壇がある。本来われわれは多神教なのである。ルーツはアイヌ民族らしい。自然と共に生きた時代の人の宗教とも言える。

八百万の神を祭り、苦しいときには神頼みをし、それでもだめなら神も仏もないとうそぶく。結局われわれは多神教でありながら人間しか信じない人間主義なのである。どんなことがあっても神を信じる神様主義の人達から見ればきわめて特異な存在なのである。

ところで、最近、新しい医学の一分野として人間本来の自然治癒力を高めてガンでも治してしまおうという方法が注目されている。全人医療(ホリスティック・メディスン)という。

それは決してある特定の薬を飲むとか特定の治療法を受けるということではなく、心の問題であるらしい。どんな病気でも自分で治すのだという信念をもって、人間が本来持っている自然治癒力を高める治療や訓練をして、病気という人生のハードルの一つをうまく飛び越えようという試みである。精神神経免疫学という学問的裏付けもある。

自分で治すという信念と自然治癒力に基づいた治療こそ、人間主義の日本人にとって、病気を克服するための最も適した方法ではないかと思う。

「欧州ホスピス視察研修旅行記ーその1」「院長の呟き」
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