「自然治癒力」から「自己治癒力」へ
広島県保険医新聞コラム「路面電車」 1995年7月1日(第229号)
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風邪という病名から直ちに死を連想する人はいない。風邪は自然に治ると言うことを誰もが知っており、また自然に治ることを信じているからである。風邪をひいたことのない人はいないと思うし、多い人は一年に何回も風邪をひく。

ここに癌という病気がある。この病気も三人に一人は罹るというありふれた病気である。それにもかかわらず、癌の場合は風邪とは全く異なり、癌すなわち死というイメージがある。癌の診断、告知、治療のあらゆる面でこの悪いイメージが付きまとい、知らないあいだにマインドコントロールされてしまうことが多い。

「癌」という文字からしてすでにイメージが悪いので、「がん」とか「ガン」としたり、果ては病名を変えようという話さえある。しかし、癌も治るのである。なぜ病気になるのか、なぜ病気が治るのか、を考えれば分かることであり、まずそれを信じることである。

この冬は風邪が大流行した。来る日も来る日も風邪の患者様ばかりであった。喘息の人が一人だけ肺炎になって入院したが、全ての人が治癒した。病気と自然治癒力の力関係だ。治療は対症療法と生活指導(休養、水分・ビタミン・栄養の補給、入浴の禁止、うがいなど)だけだった。風邪の大流行が予想されたときから、私は絶対に風邪をひかないと決めて、徹底したうがいの実行と摂生とでついにこの冬は風邪をひかなかった。これは自己治癒力の勝利である。

癌の場合も全く同じだと思う。ただ、癌の場合には病気そのものが風邪よりも少し手強いので、それなりの方法を考えなければならない。要点は三つある。心の持ち方、生活習慣(特に食生活)それに自然治癒力である。手術、放射線療法、化学療法の近代医学の手法だけでは癌を治すことができないという事実はもはや明白である。同じ癌、同じ進行度で、同じ治療をしても、治る人と治らない人がいる。さらに、進行癌であっても、近代医学の治療を受けることなく、癌が治ったり、癌を治したりした人は少なくない。

癌になったことに感謝し、癌は治ると信じて、癌と闘うことである。自分の癌は自分で作ったものであるから、まずその原因となった心の持ち方と生活習慣を変えなければならない。もちろん必要に応じて近代医学の治療を適切に行なうことも大切である。そして、自然治癒力を高める治療を行なうことである。自ら目覚め、実行し、自然治癒力を高めることができれば、それは強力な「自己治癒力」となって、癌を克服することができるのである。

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